ギター 今月のRooftop

DISK RECOMMEND ('10年09月号)

LOFT PROJECTのスタッフがイチオシのCD・DVDを紹介!!
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★以下のジャケットをクリックすると、各レビューが読めます。

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a flood of circle / ZOOMANITY

DVD付初回限定盤:VIZL-397 3,150yen (tax in) / 通常盤:VICL-63657 2,800yen (tax in) / 9.15 IN STORES

 “ZOO”(動物園)と“HUMANITY”(人間性)を掛け合わせたタイトルからも判る通り、a flood of circle(以下、afoc)のサード・アルバムは獣や魑魅魍魎の姿を通じて人間性の本質や愛と自由とは何なのかを炙り出した重厚な作品である。そう書くとやけに生真面目に受け取られるかもしれないが、佐々木亮介(vo, g)がしたり顔で哲学めいた歌を唄うわけでは決してない。歌詞は彼一流のユーモア・エッセンスが随所に散りばめられてあるし、ヴァラエティに富んだ楽曲とサウンドの多様性が壮大なテーマをいい塩梅でアク抜きしている。愛と自由と言ってもジョンとヨーコ的なそれではなく、日々の生活に横たわる自身の身の丈に合ったものである。トライバル・ビートが効いた先行シングル『Human License』同様に否応なく気持ちが鼓舞される『Black Magic Fun Club』や『Chameleon Baby』、跳ねるリズムが心地好い『ロストワールド・エレジー』など、プリミティヴなロックンロールのダイナミズムに特化したアレンジも冴えていて、対象化しづらいテーマをれっきとしたエンターテイメントとして昇華させている手腕は見事と言う他ない。メンバーの失踪という試練にも耐え、afocはブルースをアップデートさせた理想的なロックンロールの雛型を本作で遂に体現するに至ったと言って良いだろう。
 作品全体が架空の動物園という体を取りつつ、そこに棲む動物の衣を借りて“それが人間として本当に正しいことなのか?”を見極めんとするのが本作の主題だが、明確な答えは敢えて提示されていない。『Human License』のサビにもあるように、答えが判らないまま疑って戦いを挑むだけだ。だが、答えを求めて暗闇に手を伸ばす満身創痍の姿だけはどの楽曲からもしっかりと窺える。現状に甘んじることなく、それでも敢えて茨の道を突き進むこと。それはパラドックスを抱えながらパレードを続ける彼ららしい流儀であり、インディーズ時代のセカンド・ミニ・アルバムに収録されていた『ロシナンテ』でも“何かをなくしながらそれでも行かなくちゃ”と唄っていた通りである。ロックンロールは現実生活の辛さを忘れさせてくれる特効薬ではない。神経の一本一本をサンドペーパーで擦られるような痛みを携えながら敢えて荒野を往くのがロックンロールだ。“まだ行ける、まだやれる”と何の根拠もなく唱えながら今日を凌ぎ明日へと繋げることをafocが揺るぎない確信の下に明示した意味においても、本作は後にキャリアの分岐点となるであろう記念碑的な作品なのではないか。
 余談になるが、本作のタイトルが『ZOOMANITY』と聞いた僕は、スマイリー原島氏率いるアクシデンツのメジャー・デビュー・アルバム『HUMAN ZOO』のことを即座に連想した。『HUMAN ZOO』は当時のペイズリー・アンダーグラウンドに呼応した国産サイケデリックの名盤だったが、ブルースに根差した肉感的なロックンロールを奏でる afocがサイケデリックの志向性を持ち得たらまた面白いことになりそうだなとふと思った。


(Rooftop編集局長:椎名宗之)


ION DISSONANCE / CURSED

DOOM-0026 2,100yen (tax in) / IN STORES NOW

 メープルシロップとセリーヌ・ディオンで有名なカナダのケベック州で結成されたハードコアバンド、アイオン・ディソナンスの4thアルバム。細かく言うとジャンル的にはマスコアに属するらしいのだが、要するに突拍子もないリズムの展開と不協和音とデスヴォイス満載のアレのことである(よく分からない人は、ギャーギャーゴーゴーしてる音楽だと思えば良い)。とは言え、いわゆるThe Dillinger Escape Planフォロワーにありがちな高学歴な匂いが一切しないのが、逆に好印象。バンドメンバーの写真を見るといかにも田舎のアホ不良白人だし、曲名も『We Like To Call This One - Fuck Off』とかだし、混沌とした曲展開からも構築の美学などではなく、もっと刹那的な香りがぷんぷん漂ってくる。エクストリームミュージックが何らかの形で「暴力」を扱う音楽である以上、少なからずこういった暴力性は必要とされるし、このメンバーが実際どうだかは置いておくとしても、不良と音楽がイコールで結ばれる文化圏が醸成したジャンルであることを殊更に強調した彼らの戦略は的を得たものである。ジャケットのアートワーク含めひとつもヒネリは無いが、だからこそ一旦ハマると抜け出せない、ある意味核心を突いたバンドだ。ちなみに、いきなりメロウなボーナストラック(M-13)はどうかと思うが、いきなりテクノな日本盤ボーナストラック(M-14)は、セパルトゥラのリミックスを思い出させるアホな出来で最高。


(前川誠)


ザ・ガールハント / ザ・ガールハントのベスト〜マスザワ盤〜

FLOWER-104 / 2,100yen (tax in)

ザ・ガールハントのベスト〜チバ盤〜

FLOWER-105 / 2,100yen (tax in)
通販(POSCA)にて9.17販売開始

 ザ・ガールハントが結成から8年という、なんの節目かはよくわからないこの年に、ついにベスト盤をリリースする! しかも、マスザワ盤とチバ盤の2枚に振り分けられ、1枚が18曲というフルボリュームの計36曲の中に、それぞれ新曲が3曲ずつ。これまでに作品はたくさんリリースしている中に、企画盤としてリリースされた夏の迷盤『Live in HAWAII』からの選曲もある。あの時はなんて作品を作ったんだろうと思っていたが、こう並んでみると違和感なく、むしろアルバムの中のフックとなって作品をさらに盛りあげているという、当時は想像すらしていなかった役割を果たしている。また、1st.の『ロマンチック・キャンペーン』(2002年リリース)からも1曲ずつ入っている。チバ盤の『ワイオーユー,エヌジーヤング』は、1st.ならではの勢いとか若々しさがふんだんに詰め込まれて、どこかむずがゆくなる感も否めない。この曲から考えると、2007年にリリースされた『セカイクル』の『さくら』など、だいぶ変化した結果なのだと感じた。
 責任を持って楽しむことをコンセプトに置いているだけに、サウンドのポップさ、キャッチーさは充分で、幅広く愛される楽曲であることは確かだ。メンバーチェンジがあったりと、幾度となく変化を繰り返している彼らの歴史をここで一度確認し、今後のガールハントにも期待しよう!! ガールハント汁100%還元。汗にまみれてます。


(Rooftop:やまだともこ)


SION / からっぽのZEROから

TECI-224 1,000yen (tax in) / 9.22 IN STORES

 プライヴェート・アルバム『Naked Tracks 3〜今日が昨日の繰り返しでも〜』、ファン投票で選ばれた上位10曲を盟友・松田文と新たなに録り直した『I GET REQUESTS』と怒濤のリリース・ラッシュに沸くSIONだが、デビューから四半世紀を迎える今年はまだまだけっぱり続ける。古巣であるBAIDISレーベルからの発表となる本作『からっぽのZEROから』は、“SIONと福山雅治”名義で発表した『たまには自分を褒めてやろう』以来5年振りにGoofy moriをプロデューサーに迎えたデビュー25周年記念マキシシングル。カップリングの『そしてあ・り・が・と・う』と共にアレンジを富田素弘(藤井フミヤの『Another Orion』や福山雅治の『桜坂』の編曲家として知られる)が手掛けているが、2曲とも打ち込みを基調としたデジタル・サウンドという異色の仕上がりなのが特筆すべき点である。SIONに打ち込みだなんて、まるで鰻と梅干しみたいな食べ合わせの悪さじゃないかと感じる人もいるだろうが、ところがドッコイ、これがなかなか滋味に富んで味わい深いのだ。社会の中で苦境を強いられている同世代に向けたと思しき『からっぽのZEROから』での滾るようなメッセージは無機質なサウンドだからこそ余計際立って伝わるし、“積み重ねぶち壊し今の俺をさがす”と唄われる一節には武骨な男の身の来し方が滲み出ていて、何度聴いても胸に沁みる。来月発表されるオリジナル・アルバムと野音が俄然楽しみになってきた。


(Rooftop編集局長:椎名宗之)


STARBOARD / 夢で逢えたら

HAUS-4 1,000yen (tax in) / 9.12 IN STORES

 先日、STARBOARDの『Drive-in』を友人と聴いていたら「あぁイイね。ドライブでも行きたくなるねぇ」と、友人は言った。曲名を全く知らずにそう思ったらしい。そういう意図があって作られた曲なのかは定かではないが、何となく…音楽と人の思考がリンクしたような、そんな瞬間だった。今回のSTARBOARDの新作『夢で逢えたら』は、2007年にリリースされた『Drive-in』の再録(Rework)と新曲2曲を加えたシングル。オリジナルバージョンの良さを引き継ぎ、よりライブ感を増した音の上に乗る声は、独特の透明感を持って言葉をダイレクトに伝える。そして何より、珠玉のメロディーラインが聴き手の心を鮮やかに色付けてくれる、あらためてこれぞ! な名曲。新曲『Reprise』もいかにも「らしい」仕上がり。優しく聴こえる詞とメロディー、時折みせる憂いのある切なさを見事に同居させる。シンプルな日本語を丁寧に歌いこみ、柔らかさも強さもある絶妙なバンドサウンドで表情豊かな曲になっている。もう1つの新曲『夢で逢えたら』は、アコースティックギターと打ち込みのリズムが、何とも言えない浮遊感を出して夢心地な気分になれる。たった3曲のシングル盤ながら、STARBOARDの良さが余す事なく詰まっている。何より最初に書いた友人のように、「〜したくなる」みたいな、ささやかながら人の気持ちや心を動かせる不思議な魅力を持っている。当たり前の日常の風景を、チョットでも変えたい人は是非。


(新宿LOFT:水野 慎也)


Dirty Old Men / somewhere

UMCK-1368 1,500yen (tax in) / 9.15 IN STORES

 5月にインディーズ時代の曲と新曲を混ぜた『Time Machine』をリリースしたばかりのDirty Old Menから、早くもニューミニアルバム『somewhere』が届けられた。コンセプトが“前へ進む”とあるだけに、『Time Machine』と比べても、7月に行われた渋谷クアトロでのワンマンを見ても、バンドが一歩ずつ一歩ずつ前へ進んでいることを感じることができた。
 聴く側の感情ともリンクする飾らない歌詞、ボーカル&ギター・高津戸の切なくもあり、儚くもあり、心情をダイレクトに伝える歌声、そしてバンドアンサンブルの妙。私は、言葉をメロディーに乗せてはっきりと伝えられるバンドに魅力を感じるのだが、Dirty Old Menはまさにそれで、1曲1曲に琴線を刺激される。個人的には、前作に入っていた『桜川』を越えたかと思うほどの大名曲『泣いてもいいかな』は、男子の弱い部分やらが剥き出しになっていて、それはもう胸をギュッと締め付けられるような、この曲を聴いた時に本当に良いバンドに出会えたことを心から感謝した。その2曲あとに収録されている『MY HERO』は、インタビューを読んで頂くといろいろと見えてくるかもしれないが、こんな一面もあるのかと意外でもあり安心した楽曲でもあった。今回も前作に続き、ミニアルバムであるが、次はフルアルバムでDirty Old Menの曲を聴きたい。楽しみにしています。


(Rooftop:やまだともこ)


真野恵里菜 / 元気者で行こう!

HKCN-50131 1,050yen (tax in) / 9.15 IN STORES

 「まのえり」こと真野恵里菜のメジャー8枚目のシングル『元気者で行こう!』が間もなくリリースされる。グループアイドルを中心に盛り上がる最近のアイドルブームの中にあって、デビュー時よりソロアーティストとして王道アイドル路線を地道に走り続けるまのえりはとりわけ注目すべき存在だ。これまでもオーソドックスなアイドルポップスを上手く現代風に聞かせてきたが、今作はタイトル通り人生の応援歌としてビートパンク的なノリノリの楽曲に仕上がっている。曲中の印象的な掛け声「言いたいことは言っちゃいな!」の部分は、僕のような中年世代にはピンクレディーのヒット曲『ピンクタイフーン』を連想したりもするが、働くサラリーマンを対象にした歌詞からしても、多くの世代に受け入れられる可能性を持った今時めずらしい楽曲なのだ。さらに、この曲のミュージックビデオを堤幸彦が監督しており(作品中ではまのえりが監督しているという設定)、コメディードラマ風のPVは何度見ても楽しいものになっている。こういう曲は誰にでも歌えるものではなく、やはり人一倍の努力家として知られるまのえりだからこそ説得力を持つのだと思う。僕としてはこの曲とスマイレージの『○○がんばらなくてもええねんで!! 』があればこの不景気な世の中もなんとかやっていけそうだ。カップリングの『家へ帰ろう』は一転してしっとりとした美しいバラード。歌詞が半分英語で歌われ、まのえりの新たな可能性を感じさせる。とにかく大推薦。


(加藤梅造)


オワリカラ / ドアたち

XQIY-1101 2,500yen (tax in) / IN STORES NOW

 海外での10日間に渡るライブツアーを終え、現在新宿の音楽シーンで最も注目が集まっているバンドといっても過言ではないであろう4ピースバンド“オワリカラ”が、待望の公式1st.アルバム『ドアたち』をリリースした。サイケデリック・ロックというカテゴリーで表現されているように、60、70年代のロックシーンを思い出させてくれるノスタルジックなサウンドの中で、メンバーそれぞれが独自に影響を受けてきたという音楽のイメージを自由にミックスさせて製作されたという曲は、どこか心地良く、それでいて強烈なインパクトを与え、耳に残って離れない。彼らが10代の頃に眺めていた世界観を、現在を生き抜く若い世代に伝えていきたいというメンバーの強い思いのもと、このアルバムを通してリスナーが日常の中で「ドア」を開け、雑踏の中から新たな感覚や世界を見つけ出すことのできる1枚になっている。現在このアルバムを引っさげての全国ツアー真っ最中の彼ら、今後もその活躍から目が離せない。


(Asagaya/Loft A:轟木愛美)


COUNTRY YARD / Modern Sounds

URCS-126 2,415yen (tax in) / 9.22 IN STORES

 それまで別々のBANDで活動していた仲間が2007年に集結、そして結成されたのがCOUNTRY YARD。初めて聞いたという方も多いと思うが、名前だけでも覚えて欲しい。記憶に新しい所で、NO USE FOR A NAMEのトリビュートへ参加。自主で単独音源やSPLITを出しながら、焦らず、独自の活動を続け、満を持して1st.アルバム『Modern Sounds』をSTEP UP RECORDSからリリースする。メロディックシーンでは珍しいくらいの正統派。どこか懐かしくそして切なく、ハイレベルな演奏力もさることながら、その圧倒的な歌唱力から、初めて見たLIVEで涙しそうになった時と同じように、一気に引き込まれた。近年稀にみる感動と衝撃を与え、知らないと損をするといっても過言ではない逸材だ。全12曲、等身大の彼等の可能性が随所に散りばめられていて、個人的にはM-1『Seven Years Made My Now』からM-6『if You Say Goodbey』までの流れが最高にグッとくる。9/23下北沢ERAからリリースツアーも開始。ファイナルは12/11新宿ACB。多くの人に触れてもらいたい、そしてライブハウスで自分の眼で確かめて欲しい。


(下北沢SHELTER:平子真由美)


銀杏BOYZと壊れたバイブレーターズ / SEX CITY 〜セックスしたい〜

SKOOL-025 1,995yen (tax in) / IN STORES NOW

 2010年初頭、銀杏BOYZのボーカル峯田は「舞台の音楽を担当して欲しい」と要請を受けた。「峯田が台本を全部読み全体を把握しつつ、そのイメージにとらわれずに普段の銀杏BOYZの活動ではできない事をやる」というのがファーストイメージだったらしい。舞台「裏切りの季節」(作・演出 三浦大輔)の劇伴全曲集『SEX CITY 〜セックスしたい〜』は、この舞台のために書かれた壮大な組曲である。200曲を越える曲がメンバーによって作られ、容赦なく捨てられていった。
 この芝居観たかったな〜。それにしても、売れっ子峯田は色んなライブ会場を混乱させ回ったあげく、映画の主人公に続き芝居にも進出か?(ライブやれ〜! との声を無視しやがって(笑)。)だんだんケラさんに似てきた峯田。次はちゃんと社会的に重い政治評論家とトークをやったら? でもこのアルバム、いつもの銀杏を聴くより安心して様々なシーンが組み込まれていて、時にはBGMとして聴ける。なんて…天才児峯田よどこへ行くんだい? 本当に欲張りな奴だな。  


(平野悠)


Crush Tears / Crush Tears T

DGBA-10002 3,150yen (tax in) / IN STORES NOW

 現在の女性声優で王道にして極北である小林ゆうが「YU」名義(演技、没入、憑依でも可)で本格ロックを提供するのがCrush Tears。その1枚目のアルバムがこれ。声優がロックをやるのではなく、小林ゆうがロックと混ざっている。混沌であり有機的。大槻ケンヂが詞を提供した曲も、カルメン・マキの『私は風』のカバーも、杉田智和とのミニコントが挿入される楽曲も、すべては意味があるのだがその意味はわからなくてもいい。小林ゆうをよく知らない、という人。そもそも声優のCDを聴いたことのない人も是非聴いて…、いや感じてほしい。パンクもニューウェイブもハードロックもプログレも、どんどん取り込んで「自分のもの」にしてしまう小林ゆうを「戸川純に匹敵する」と言った大槻ケンヂの言葉は正しい。そして小林ゆうの無意識過剰さは、彼女が小林旭の女体化であるという仮説を強く裏付けるものとなるのだ。ロフトで原爆オナニーズや非常階段とCrush Tearsが共演する近未来を強く希望する。これは冗談ではない。


(鶴岡法斎)


THE JUNEJULYAUGUST / THE JUNEJULYAUGUST

JJACD-1 1,050yen (tax in) / IN STORES NOW

 バンドというのは、まさに運命共同体のようなものだ。それぞれが自らの人生を歩む中で、音楽を愛し、楽器を鳴らし、歌を唄い、時に音楽を通じて歓喜し涙を流したりする。そんな感情を共有することが出来る素晴らしさに、改めて気づかされた作品がこの『THE JUNEJULYAUGUST』だ。nilのボーカル&ギターである高野哲、openingのピアニスト佐藤統、そしてHUMAN TAILのドラマー梶原幸嗣によって結成された THE JUNEJULYAUGUST(略してジュンジュラ)の1st Single。全3曲収録で、彼らそれぞれの過去・現在・未来がそのまま詰まったような音楽を感じることが出来る。互いをミュージシャンとしてリスペクトし合い、信頼し合ってあるからこそ、力強くて何処か繊細で、人間味のある深いロックンロールが生まれるのであろう。年内にはアルバムも発売し、年末にはツアーを控えているというジュンジュラ。それぞれに別のバンド活動も行いながらも、精力的に活動する彼らにこれからも熱いエールを送りたい。


(新宿LOFT:松浦由香理)


八十八ヶ所巡礼 / 八+八

PPR-1004 2,000yen (tax in) / IN STORES NOW

 ネクストネオサイケデリックプログレッシブ革命の到来。御静聴願います。お経の墨に身を包み、狂気に満ちた歌声と変幻自在かつ変態ベース・マーガレット廣井、往年のメタルヒーローを彷彿させつつ凶暴かつ妖艶なギタープレイ・katzuya Shimizu、爆音×豪快×暴力的なドラム・KENZO。個性派揃いの3人からなる八十八ヶ所巡礼。そんな彼らの集大成作品、ファーストフルアルバム『八+八』が発売された。度重なる修行・苦行を経て作り上げられた新曲8曲に、ボーナストラックとして過去の音源からセレクトした8曲の計16曲収録のファーストにしてベストアルバム的内容の1枚に。『日本』では、君が代のフレーズを取り入れ、愛国心を燃やせ! と唄い叫ぶ。『仏滅トリシュナー』では、え? メタル?! 的ピロピロギター炸裂。唯一無二の独特な歌詞と複雑な曲編成からなる楽曲達。平均年齢22歳という若さでこのセンス…最高の親孝行してます。異様なテンションで迫り狂う八十八ヶ所巡礼独特のグルーヴは中毒性が非常に高く、病み付きになる事間違いなし。


(YOUTH/田村建史)


Paradise / Alcohol River

MYRD-12 1,890yen (tax in) / IN STORES NOW

 奇跡のバンドである。ボーカル・呼詩によるステージ内外での暴力的、破壊的、そして病的ともいえる、非健全なる行動により、警察沙汰になること数回、ライブハウス出入り禁止になること数度、幾度とない解散の危機を乗り越えてのファーストアルバムが遂に発表された。彼らのライブを見ると「バンド」というものがなんと運命的なものなのかを実感させられる。リードボーカルもこなすドラム・関口萌のメロディセンスは、ダウナーな雰囲気の中にあって異様ともいえるポップ感を放つし、ギターの冷牟田王子が鳴らす硬質のサウンドは、聴く者の心になんらかの傷跡を残していくし、変遷激しいベーシストのポジションには、昨年夏に新加入した石川潤がうまくはまったみたいだ。そこに、圧倒的存在感を放つボーカルが姿を現すと、ステージ上の空気はこれ以上無いほどにぎりぎりの様相を呈し、他の介入を受け付けないほどの輝きを放つ。その様子は、まさしくParadiseと呼ぶにふさわしく美しいものとなる。今作では、狂っている現状を呪い、そこからの脱却・至高を図る色が濃くなっている。2曲目『Tonight!』で、僕は初めて、こんなにも切実で焦燥感にかられた「tonight」という単語を聞いた。1曲目『Crazy Train』で歌われるような列車は遂に動き出した。このバンドがどこへ向うのか、どこへ連れて行ってくれるのか、とても楽しみだ。


(Asagaya/Loft A:山崎研人)


HARCO / Lamp&Stool

MTCA-3017 2,500yen (tax in) / IN STORES NOW

 2年8ヶ月ぶりにリリースされるオリジナルアルバム。前作からそんなに月日が過ぎたという感じがまるでしない。それはHARCOが音楽とエコをテーマにしたイベントを主催したり、様々なCM音楽を手がけたり、楽曲提供をしている事もあり、お茶の間で彼の曲を耳する事が多いからだろうな。ふと耳にする人も多いと思うので、この機会に彼の世界をじっくりと堪能してみるのはいかがでしょうか。
 今回の新作は、ジャズ〜ボサノヴァ〜ソウル〜ソフトロック〜ヒップホップなど様々なジャンルの音楽がクロスオーバーしたHARCO流ポップスが主流。GOING UNDER GROUND『ハミングライフ』、トッド・ラングレン『Be nice to me』のカヴァー等を含んだ全12曲は、日々の生活を彩ります。ずっと聴き続けていたくなるような作品を毎度発表するHARCOさんをとても尊敬します。これからも聴く人のライフスタイルに寄り添うような素敵な作品をお待ちしております。


(ロフトプロジェクト:樋口寛子)


フジファブリック / MUSIC

AICL-2155 3,059yen (tax in) / IN STORES NOW

 今夏大盛況にて無事終了した“フジフジ富士Q”でのアンコールで初めて聴いた『会いに』。それが、私にとって『MUSIC』の片鱗に初めて触れた瞬間でもあった。前を向いて力強く、ビターで爽やかなメロディーが会場中に響き渡る。『会いに』を聴く度に、あの時の光景とその時味わった感情をふと思い出します。
 志村君が残した作品は、バンドメンバーが注入した新たなアイディアが形になった『MUSIC』となり、バンドの結束力と力強さを過去最大に感じる事が出来る。そして、相変わらず人を動かすメロディーと言葉の強さにハッとさせられ、不器用な人間の答えとこれからが少し覗けた気がした。これからもずっと私の中で鳴り響く『MUSIC』。素晴らしい音楽をずっと追っかけていきたい。そう思わざるえない『MUSIC』。志村君が温めていたアイディアがこうして形になって本当に良かった。この作品を聴いたリスナーのみんなはきっと同じ事を思っているはず!


(ロフトプロジェクト:樋口寛子)


ラビラビ / ベイビィ・ブーム

JTR-008 2,000yen (tax in) / IN STORES NOW

 ふたりの打楽器と声&mixという編成で、自然と一体になり即興で紡ぎ出す【音楽】は、優しさや力強さ祈りや喜びに満ち溢れ、聴く者を唯一無二の世界へ導いていく。『ベイビィブーム』に収録されたひとつひとつの楽曲は、手に取るように優しく、ライブとは違った仕掛けが加わる事によって、ラビラビの情熱がスピーカーから広がり、鼓動と共に部屋が真っ赤になるようだ。CDでこんなライブ感を感じた事もないし、ドキドキした事もない。まるで取れたての無農薬野菜の様だ。形は違うけど味はどこにも負けない。シンプルが一番なんだと教えてくれる。ラビラビのライブを見てCDが欲しくなったのだが、CDを聴くとやはりライブが見たくなる。ラビラビは1年間に100本を越えるライブ、フィールドレコーディングを行うサウンドジプシー。そんなラビラビが来る9月12日Naked Loftでランチライブを行い、自ら持参した千葉の食材と現地の声と共に発信してくれる。こんな贅沢なチャンス滅多にない。是非まだ出会っていない方、遊びにきてください。ネオネイティブよ集まれ!


(Naked LOFT:nora)


posted by Rooftop at 15:00 | 今月のRooftop