ギター バックナンバー

コウサカワタル('10年8月号)

コウサカワタル

伝統とテクノロジーの幸せ過ぎる融合


三線を皮切りに、日本人には馴染みのないサロード、ダンバウ、クニィなどといった世界各地の伝統楽器にエレクトリック・テクノロジーをかませ、全く新しい音像を産み出すインストゥルメンタルプレイヤー、コウサカワタル。「カフェがお似合いのヒーリング系でしょ〜」なんてしたり顔のヤツラを一瞬でノックアウトさせるディープなサウンドは、間違いなく最新鋭なのに細胞レベルの郷愁を呼び起こす、掛け値なしにヤバイ体験! 沖縄を拠点にする彼に、メールでインタビューを敢行した。(interview:前川誠)


フェイバリットは
『グラディウス』

──ご自身のルーツは「幼少の津軽三味線の生音体験とゲームミュージック」とのことですが。

父が青森の出身で、家に津軽三味線のレコードがあったり。僕が赤ちゃんの頃に高橋竹山のコンサートに連れて行ったそうです。僕は会場ではスヤスヤ寝ていたらしいので、弦の音が心地良かったんでしょうね。中学生の頃はブルースにはまっていたのですが、今思えば五音音階という津軽三味線にも共通する部分に知らず知らず共感していたのだと思います。
 ゲームについては、小学生時代にファミコンが全盛期だったのですが、父が厳しく、僕は買ってもらえなかったんです。そこで、パソコンを勉強したいからという大義名分を思いついてMSXというキーボード付きゲームマシンを買ってもらいました。一応、雑誌を見ながらプログラミングをしてみたり……。結局、MSXで最も印象深いのがシューティング・ゲームの名作『グラディウス』。一面のボスの手前の火山で手こずってると、速いBPMの電子音楽がループして、しかも自機のレーザー発射や命中の効果音がそれにアクセントを与えていて。それがちょうどディレイを使って弾いた時のミスタッチのようなアクセントになってて心地良いんです。あの当時のゲームの音って、凄く脳に突き刺さって来た感じがします。『Stringed Unchained』収録曲だと、「インカルシペ流星群」が大体あのくらいのBPMになってるんじゃないかなぁ。でも、それを作ろうと思ってた訳ではなくて、三線とディレイを使うやり方を続けていたらあのくらいの速さが気持ち良くて落ち着いた感じです。
 ちょっと前まで、ゲームに影響受けたってなんとなくかっこ悪いと思ってたから公には言わなかったのですが(笑)。僕のパフォーマンスのリフや差し音の感性は、ここから来ている気がします。

──本格的に音楽の道を歩むことになったきっかけは?

 公園で三線を調弦していた時でした、三本の弦の音が揃った瞬間に風が良い角度で鳴らしていったんです。それはそれは優しく広がる音で、「唄で邪魔をしないで、この音の質感をしっかり伝えたい」と思いました。
 それからガットギターと三線でアコースティックに作った『沖縄のカケラ』と、ディレイと三線のみで3曲入り46分という実験的アルバム『TEXTURE OF SANSHIN』を作り、運良くBEAMS RECORDSやBBCラジオの目に(耳に?)留り、自主制作CD-Rなのにいろんな雑誌にも紹介されて、「この道に呼ばれてるかも」と思いました。

──コウサカさんは演奏する楽器をひとつに限定しませんが、それはなぜですか?

 例えば。ギターが一番付き合いが長いのですが、十年以上やっててもトレモロという奏法が全然出来なくて。で、頑張らずにサロードやドゥタールを弾いてみたりしたんです。しばらくしてギターを触ると出来るんですよ! トレモロが! 他の楽器を無理せず楽しむ事で、より簡単に幅広い技術を得られる! これも発見です。様々な楽器がいつも技術や表現力のブレークスルーと新鮮な気分をくれるんです。
 それと何より楽しいですからね。バロック期のヨーロッパのリュートの仲間のテオルボとか、インドのサロードとか弾き比べてみると、似ている部分と独自のアイデアとが浮き彫りになって。そうすると、ヨーロッパ人が造ってきた文化や、アジアで培われてきた文化が音から感じられて、何冊もの本を読んでもピンと来ないような事も演奏で体感できてしまう。弦楽器だけに絞っても膨大な種類があって、それぞれに様々なアイデアが詰まってる! 本当に尽きない。

──沖縄の地を現在の活動拠点に選んだ理由は?

 沖縄には僕が5歳の時に家族で北海道から移住したのですが、色白でロン毛(おかっぱ?)、標準語の僕は馴染めなくて。中学受験して、中高は埼玉の私立の学校で寮生活をしてました。そんな十代のある日、ベースでチャーリー・パーカーを弾いてたら、スウィングがジャズのそれでなく、エイサーのハネ方になってて「あー、俺は沖縄を否定して飛び出したけど、しっかり影響受けちゃってるんだなー」と感じて。そしたら逃げていられないので、落とし前つける為に沖縄と寄り添ってみようと思いました。でも現在では沖縄に恩返しが出来たらと思います。お世話になってますから。



楽器は最も美しく、
所有すべき価値のある「道具」

──アルバム『Stringed Unchained』を聴かせて頂いたのですが、コウサカさんの楽曲からは、まるで聴いていることが「旅」そのものであるように、様々な「風景」が想起されました。

 僕はこれまで様々な地域で暮らして来ました。江別(北海道)の白樺並木も、沖縄のヘゴの木も。そのどれもが郷愁の対象なんです。演奏中は頭を空っぽにするので、記憶の底に積まれている情景が現れるのかも知れませんね。風景を感じていただけたのならとても嬉しいです。僕自身、音楽には意味を持ったメッセージを持たせずに、純粋な美術として楽しみたいんです。

──本作の収録曲はコウサカさんの独演とゲストを迎えた曲の2つに分けられますが、その間には、意識としてどういった違いがあるのでしょうか?

 共演はお祭りですね。音楽って楽しい!! って全身全霊で幸福最大限なシナジーを体感させてくれます。反面、僕は閃きをジワジワ形にする為の孤独が好きなので、独奏ありきですが、やはりこれもバランスが大事で、日常(独奏)と祭り(共演)を違う物として楽しんでいます。

──本作のコンセプトを教えてください。

 過去のソロアルバムには通底するコンセプトがありました。それは、激しい感情表現を廃し、心を中庸に保つという事。
 でも、今回はあえて喜怒哀楽と起承転結がある作品造りに挑戦しました。個人的にも製作期間中に祖母が亡くなったり、沖縄の米軍基地がいつまでも無くならないなどの悲しみや怒りといった感情を公の場に表す事をしてみようと思いましたし。実際は、肉親の死に直面した悲しみから、個の死を抱きつつ、新たな命を育む世界の豊穣に気付くなど。表現としては負の感情から抜けて、前向きな方向性を与えられたと感じます。旅先での共演などはハプニングですが、それらがあった事で起承転結の波を作れたと思います。
 作品を通して“一つの大きな流れ”というのは意識していて。例えば、「雀らは山原の森に」では一種、間抜け感のある、聴いてて力の抜けるような感じに。「カッコウは白樺の森に」では、素朴でありつつ森の雄大さを感じてもらえるように演奏していますが、それぞれのムードを強調するように両方の曲でほとんど同じメロディーが繰り返されます。

──コウサカさんにとって「楽器」とはどんな存在ですか?

 それ自身もその目的も含めて、最も美しく、所有すべき価値のある「道具」です。

──ウェブサイトでも言及されている「インディペンデントであること」とは、コウサカさんにとってどういうことですか?

 それが僕の生き方として最も大切にしたい部分なんですよ! インディーズというと、荒削りなロックバンドしか思い付かないのが一般常識だと思いますが、そうではなくて。組織に依存せず、言うべき事は言い。自分の事は責任持って自由に生きる事。それが僕のインディペンデントな生き方です。

──今後、「音楽」とどのように付き合っていきたいですか?

 様々な音楽ジャンルがありますが、面白い物は新旧こだわらずに、八方美人的になんでもやりたいですね。演奏では、その楽器のポテンシャルを最大限に引き出して、お届けできれば嬉しいです。

──最後にまるで関係ない質問ですが、もし生まれ変わるとしたらどんな動物になりたいですか?

 どこかあまり人の来ない山深い森の木。数百年かけて成長した末に、楽器になるのも良いですね。木も動物扱いで良いですか?



『Stringed Unchained』

U-Zhaan(ASA-CHANG&巡礼やrei harakamiとの共演でも知られる日本随一のタブラ奏者)、尾上祐一(自作楽器「回擦胡」奏者)ほか、豪華ゲストが参加!

RFRN-0002 / 2,100yen(tax in)
RefRain RECORDS
8.18(wed) IN STORES

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posted by Rooftop at 15:00 | バックナンバー
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