近藤房之助 The Buried Alive<近藤房之助(Vo/G) 小山英樹(Key) 川相賢太郎(G)>
オープニングアクト:矢口壹琅&Mud Pie Mojo<矢口壹琅(Vo) KJ(B) FUMI(G) DAVEアイバ(Hp)>
中央線に寄り添い、縁のミュージシャンで彩るVINTAGE A シリーズ企画、第3回目は、7月7日にニューアルバム『1968』をリリースされた近藤房之助さんのライブ。ジメジメと湿気を含んだ熱気がアスファルトから照り返し、汗で張り付いたシャツでビールを煽るサラリーマンで溢れかえる街の中、ラフなスタイルで会場入りされた近藤さんはとても紳士的な佇まいで、清廉されたダンディーなブルースマンだった。カラッと乾いた土煙舞う舗装されていない荒野の道も、はたまた、昼間からバーボンで溺れた酔いどれ詩人が煙たくたむろするBarが絵になる風土も無い日本には、ブルースが介入できる隙間は完全にマイノリティだ。その中で、ブルースのニュアンス及び音楽的土壌を理解し、表現するには、それ相当の技術と、気概と、生粋の適当さが必要だと思う。
今回、近藤さんは、自身のセルフライナーノーツで、ブルースに対しての自らの距離感を、絶妙な言い回しで言及されていた。「熱願冷諦」だと。1968年を境にブルースを演奏することに熱願し、その思い入れとは裏腹に、知れば知るほど離れていくブルースに対して、ゆっくり冷諦していったのだというのだ。それでも、演奏したい気持ちが途切れないのは、ブルースがあまりに魅力的な音楽だったから。ブルースを表現するのに必要なセンスや技量を、背伸びすることで、つまりは音の感触を自分なりに構築することで、オリジナリティーを産み出せたのだと、演奏をライブで目の当たりにして、強く感じた。近藤さんが小山英樹さん(key)、川相賢太郎さん(G)に目配せすると演奏は滑らかに始まり、何よりも低音が印象的で、出音で唸ってしまった。『Rainy Night in Georgia』や『Knockin'On Heaven's Door』などのカバー曲には、MC含めて、甘美なまでの色気がビリビリと伝わり、会場をまるでメンフィスのBarに変貌させるほど素晴らしかった。
近藤さんのライブでは定番の曲『Travelling』(1994年発売のアルバム『23A Benwell Road』収録)では、ワンフレーズが一曲の背骨になり、ループして、力強いハーモニーを奏で、お客さんをトリップさせていた。そしてラスト1曲、『You are so beautiful』。この日の阿佐ヶ谷の夜を全て包み込むような優しい歌声と、ブルースマンの切なさとが混じり、日常のうだつの上がらなさを許容してくれているような、そんな気にさせてくれた。
若き日にブルースに憧れた純度の高い思いが、年輪を経て、爪弾くギターにバーボンがすすむ、印象的な夜を演出するのだなぁと、音楽ファンとしてなぜかどうしよもなく嬉しい気持ちにさせてくれたライブだった。(阿佐ヶ谷ロフトA:金枝)
1.Cissy Strut
2.Stormy Monday
3.No Man Is An Island
4.Jealous Guy
5.Let's have a natural ball
6.Rainy Night In Geagia
7.Fusa SOLO(近藤さんソロタイム)
8.I'm in love
9.Knockin' On Heaven's Door
10.SLAVE TO LOVE
11.Rock Me Baby
12.Travelling
13.You are so beautiful
アンコール
ダンス天国