ギター バックナンバー

DISK RECOMMEND ('10年08月号)

LOFT PROJECTのスタッフがイチオシのCD・DVDを紹介!!
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★以下のジャケットをクリックすると、各レビューが読めます。

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ROCK'N ROLL GYPSIES / V

KICS-1602 3,000yen (tax in) / IN STORES NOW

 ROCK'N ROLL GYPSIES、約5年ぶりとなるスタジオアルバム『V』が待望のリリースとなった。そもそもGYPSIESの結成は2001年。元ルースターズの花田裕之、下山淳、池畑潤二、井上富雄の4人が2001年にイベント出演のために集まり、そのセッションが正式にROCK'N'ROLL GYPSIESとなって活動を続けている。メンバーそれぞれが多忙のため恒常的な活動はしていないが、毎年、ライブツアーやイベント、フェス出演をしながら、2005年にはセカンドアルバム『II』、2007年にライブアルバムをリリースしている。ちなみに現在のBassは元POT SHOTの市川勝也。メンバーの池畑が「GYPSIESは、やりたくなった時にやれたらいい」と言っているように自由気ままな活動スタイルのGYPSIESだが、いざ何かがあるとガッとメンバーが集まって尋常ならざるクオリティの作品やライブを私たちに提示してくれる。メンバー同士の信頼感と緊張感が高いまま持続している理想的なロックバンドと言えるだろう。
 今作『V』はシンプルなアルバムタイトル同様、とりわけ派手なことをしているわけではないが、どの曲も一筋縄ではいかないものばかり。オーソドックスなロックンロールを主体としながら、時にはもの物足りないぐらい素っ気なく、時には畳みかけるようにグイグイと演奏を展開してくる。この「押し引き」こそがGYPSIESの魅力で、これぞまさしく大人のためのロックと言うべきだ。全曲素晴らしいが、その中からいくつかピックアップしてみると、まず1曲目の『そろそろ』。イントロのギターリフで早くもゾクゾクとくるが、花田と下山の2本のギターの絶妙な絡みがたまらない。旅に出たくなる気持ちを歌った詞も放浪人・花田らしくて実にいい。2曲目は『OH! MY GOD』。7曲目の『CRAZY ROMANCE』と同じくルースターズのアルバム『KAMINARI』からのカヴァーソングで、ファンにとっては嬉しいサービス。
『KAMINARI』といえば1986年にリリースされ、激しいギターサウンドを基軸に轟音ロックを確立した日本のロック史に燦然と残る作品。ここから2曲取り上げた所に、私のようなルースターズ・フリークは花田×下山の無言のメッセージをついつい感じてしまう。4曲目『穏やかな時へ』は個人的にフェイバリット。ジャムセッションから始まり軽快なリフに繋がる出だしから完璧だが、1曲目と対になるような歌詞の世界観がまたいい。「何処にも向かわず 今日に抱かれよう」という境地は今年50歳を迎えた花田らしいリアルなフレーズだ。6曲目『そんなとこ』は池畑作のハードボイルドな曲。曲の展開は『DO THE BOOGIE』!? カッコイイ。8曲目は下山作の『黒い女』。不思議な歌詞とアシッドなギターがどこまでも気持ちよい。9曲目は市川作の『WORK IT OUT』。R&R GYPSIESのテーマと言ってもいいぐらいイメージぴったりの曲。その他2曲のインスト曲もいい流れを作っていて、アルバムとしての統一感も素晴らしい作品だ。これを聴かなきゃ大人のロックは語れないぞ!


(加藤梅造)


キノコホテル / マリアンヌの休日

TKCA-73550 2,100yen (tax in) / 8.04 IN STORES

 本作は橋本淳&筒美京平、小林亜星、なかにし礼&井上大輔(忠夫)、阿久悠&三木たかし、平岡精二といった昭和の歌謡史に燦然と輝く作家たちが残したマニアックかつカルトな名曲(一部“迷”曲あり)の数々をキノコホテルならではの視点で取り上げ、原曲を独自の色に染め上げたカヴァー・アルバムということになるのだが、この“カヴァー”という言葉がどうもしっくり来ない。原曲を遙かに凌ぐアレンジ能力の才、記名性の高い歌唱法と凄味ある演奏力を持ってすればどんな楽曲でもキノコホテルの刻印が施されるからだ。それ以前に、それがカヴァーだろうがオリジナルだろうがどうだっていい。ただ純粋にいい歌を聴ければそれで充分なのだから。かく言う僕も、本作の収録曲の中でその存在を知っていたのは『真夜中のエンジェル・ベイビー』の近田春夫&ハルヲフォンによるカヴァー・ヴァージョンしかない(オリジナルは平山三紀)。だが、オリジナルと見紛うばかりのマリアンヌ東雲支配人の妖艶な歌声にうっとりできれば他に何も要らない。歌声と言えば、衝撃のデビュー・アルバムから僅か半年で支配人の歌心が格段に増したことを書き添えておきたい。特に3曲目の『恋は気分なの』。胸を焦がすサビのメロディもクセになるが、支配人自身による多重コーラス録音はそれ以上に中毒性が高く、これぞまさに支配人の独擅場、マリアンヌ劇場の真骨頂と言えると思う。彼女たちを色眼鏡で見る人ほど騙されたと思って耳を傾けて欲しい、もうひとつのオリジナル・アルバムである。


(Rooftop編集局長:椎名宗之)


STOCKMAN / EXOTIC

STR-1016 1,800yen (tax in) / 8.18 IN STORES

 マイッタ! 脱帽だ。音が踊りながら喜び勇んでスピーカーから飛び出してくる。ソウル、ファンク、レゲエにアシッドジャズまで。黒づくめで土臭いグルーヴが「ホラ、踊ろうよ」と誘ってくる。至福のダンスナンバー全9曲でトータル34:09。このコンパクトさも良い。最近のインストものは無駄に長ったらしくていけない。途中で飽きてしまう。これはスパッと簡潔だ。歌物もあるが、これもメッセージを簡潔に、声を使って奏でるような感じ。そして何よりも、極めてポップである。ブラックミュージックをルーツとするバンドの多くは、ノリ重視グルーヴ重視で些かメロディーを軽視しがち。STINGの『Englishman in New York』をカバーするあたりは、やはりポップな音楽が好きな証拠。何と言ってもラストナンバーに1番ポップなキラーチューン(個人的に)を持ってくるあたりは、その他の曲のメロディーに相当な自信がないと出来ない。こんな良い曲で終わられると当然アンコールしたくなる。「もっと演れ! 」「足らねぇぞ! 」ヨシ、もう1回最初から。中毒性抜群の極上ダンスミュージック。先日ライブを見た時も弾けまくっていた。PAシステムのままならない場所だったが、音とリズムとメロディーが踊っていた。ライブバンドとしても一級品だ。アフリカの方に楽しくなると両手を上げて足をバタつかせるサルがいるらしい。人間も楽しかったら無心で踊れば良いのだ。人間も所詮サルなんだから。踊り狂ったらいい。


(新宿LOFT:水野 慎也)


Team.ねこかん[猫] / S〜METAL BLADE〜

BZCS-5020 2,000yen(tax in) / 8.18 IN STORES

 「村」としてスタートし、今や「町」、いや「市」、いやもしかしたら「国」にまで発展した(というのは言い過ぎ?)ニコニコ動画。そんなニコ動の大ヒットコンテンツのひとつ「エアーマンが倒せない〜TEAMねこかんversion〜」でその名を轟かせたユニットが、Team.ねこかん[猫]である。でもってこれは、彼らが同人リリースした『S』に新録を追加した一般流通バージョン。自らが中心となって立ち上げた同人サークル「てつ×ねこ」制作の完全オリジナルウェブアニメ『S〜METAL BLADE〜』を背景としているだけあって、一環した世界観が魅力のミニアルバムだ。もちろん、「エアーマン〜」でもお馴染みのハイトーンボイスとハードロックファンの琴線をビシビシ刺激する疾走感は健在で、彼らの本領が遺憾なく発揮された1枚と言えるだろう。「同人」と言っても、ただの素人集団を指す訳ではない。同じ志を持つ者が集まり、1つの目的へ向けて創作活動を行う。そこには「プロ」や「アマ」といった、今や一部を除いて余りに無意味な区分は存在せず、ただ在るのは「創る喜び」。大げさに言えばそういうものだと、個人的には考えている。実際Team.ねこかん[猫]は企業とのタイアップソングの制作なども行っており、その活動の場はこれからも拡大することが予想される。だが本作を聴く限り、妙な「プロ」としての驕りは一切なく、ただ音楽が好きだという一心を貫く気概だけがあり、なんだか嬉しくなった。


(前川誠)


つばき / 夜更けの太陽

UKCD-1130 2,625yen (tax in) / 8.04 IN STORES

 ここ最近気持ちが沈む事が多くて、いつになったら楽しく笑える事ができるんだろうってずっと思っていた。真っ暗な闇の中を、手探りで彷徨い続けているような、見えないものへの恐怖を感じていた。そんな時に届けられたのがつばきのニューアルバム『夜更けの太陽』だった。1曲目は、“明日は明日の風が吹く”という言葉から始まる『太陽』。“明日は明日の風が吹く”…わかってはいるけど、ギリギリまで追い込まれると理解する思考回路が完全に停止し、結局抜けられない迷路に入り込んでしまう。しかし、この言葉がサウンドに乗せて伝えられることにより、全てのものを拒否していた気持ちにスッと風を通してくれたような気がした。
 そんな個人的な話はよいのだが、つばきが10周年を迎えたこの年にリリースされる今作。今月号のインタビューでもボーカル&ギターの一色が言っていた、聴いてくれる方や応援してくれる人たちへの感謝の気持ちと、最終的には自分たちがやりやすい形で一番良いと思えるものが出せれば良いというシンプルな考えに行きついた。この作品にはつばきの3人の音楽に対する純粋な思いとか、音楽に向き合う姿勢が詰め込まれているのだ。前を向いて歩を進めている彼らが、これまで歩んできた軌跡、そしてこれから向かう先が感じられる作品だった。そして、自分のタイミングが重なったというのは大いにあるが、背中をポンと押してくれる作品にこのタイミングで出会えたことがすごく嬉しかった。


(Rooftop:やまだともこ)


MASS OF THE FERMENTING DREGS / ゼロコンマ、色とりどりの世界

TOCT-26992 2,500yen (tax in) / 8.04 IN STORES

 MASS OF THE FERMENTING DREGSのファーストフルアルバム『ゼロコンマ、色とりどりの世界』がいよいよリリースされる。1曲目のタイトル曲でもある『ゼロコンマ、色とりどりの世界』を聴いた時は、「あれ? こんなにポップなバンドだったかな」というのが正直な感想だった。ベース&ボーカルの宮本菜津子の歌声が、華やかでチャーミングで、サウンドは以前は「ガールズバンドなのに“かっこいい”って言葉がここまで似合うバンドはいない!」と思ったほどゴツゴツとしていた印象があったが、アプローチのしかたを変えたんじゃないか、と。アーティスト写真も笑顔を見せているものに変わっていたし。そう思っていたが、アルバムが進むにつれてマスドレの質感をじわじわと感じることになる。『終わりのはじまり』のようなサウンドやリズム、そして菜津子さんの歌声とのリンクのしかた、色気があって、艶っぽくて、それでいて力強くて、これは私にとってこれまでのマスドレであった。『RAT』では歪みが効いたギターを聴かせ(というよりは、アルバムが進むに連れて歪みが多くなっていくような気がする)、骨太な音で聴かせる。また、『サイダーと君』のような横に踊らせるサウンドも健在で、最後の『さんざめく』まで充分楽しめた。この作品を聴いて、9月にAXで行われるワンマンがより待ち遠しくなった。


(Rooftop:やまだともこ)


THE MACK SHOW / Here Comes The Rocka-Rolla 〜情熱のロカ・ローラ〜

初回限定盤:FAMC-040 3,150yen (tax in) 通常盤:FAMC-041 2,835yen (tax in) / 昭和八十五年(2010年)八月六日(広島平和記念日)発売

 昨年秋に突如完全復活を果たしたザ・マックショウのゲット・バック音盤第一弾。プレイ・ボタンを押し、1曲目の『情熱のロカ・ローラ』でいきなりぶっ飛ぶ。小気味良いギターのカッティング一音からして、明らかにこれまでの作品の音像とは違うのが素人の耳でも判るのだ。それもその筈、本作は全編ノー・デジタル、アナログ・テープ一発実演録音というまるで時代に逆行した手法で吹き込まれた志の高い作品なのである。広島出身のKOZZY MACK(vo, g)とTOMMY MACK(b, vo)が青春時代を追憶した甘く切ない“ヒロシマ・グラフィティ”な歌の世界観を描き切るには、アナログ独特の音の温かみ、湿り気、奥行きの深さが必要不可欠・絶対条件であることが聴き進めていくうちに理解できる。この完膚無きまでにこだわり抜いた音作りは失敗が許されない一発録音に懸けた集中力と緊張感があってこそであり、本作完成に至るまでのメンバー及びスタッフの気力、体力、財力の労苦を想像すると筆舌に尽くし難いものがある。イージーに流れてデジタルを駆使しても彼らのセンスと技量があればそれなりの作品は作れるだろうが、彼らは古式ゆかしいロックンロールの原点に立ち返り、偉大なる先人たちと相まみえることを敢えて選んだ。愛してやまないロックンロールに持ち得る情熱すべてを懸けたKOZZY MACKの迸る男気と狂気に何度も身震いさせられる魂の一枚。


(Rooftop編集局長:椎名宗之)


明日、照らす / それから

OBOCD-011 2,000yen (tax in) / 8.04 IN STORES

 明日、照らすの音楽は、胸の中心に真っ直ぐに、痛いほどにズシリと響く。ガラスのように繊細で、心の奥まで見通すような透き通った言葉が、破片となって心の隙間に入り込んでくる。彼らのライブを初めて観たとき、化学反応を起こしたように自然と涙が溢れてきたことを思い出す。ドラマのクライマックス、絶妙なタイミングで主題歌が流れてくる瞬間のように、一瞬にして感情を揺さぶられて、明日、照らすの持つ独特の世界観に引き込まれるライブパフォーマンスは圧巻だ。わたしにとって、当たり前の日常をドラマチックに変えるのはやっぱり音楽なのだと改めて思う。音楽を聴いたり、ライブを観たりして、元気をもらったり励まされたり、時に学んだり、大切な誰かに会いたくなったり…。誰もが主人公で、沢山の感情を積み重ねて、また今日もドラマは続いていく。そして明日に繋がっていく。今日の終わりが、明日の始まり。明日を照らす、君とわたしのそれからの物語を、この作品は優しく彩ってくれる。この作品のリリースを記念したレコ発ツアーも決定しており、東京で彼らに会える日を楽しみにしながら『それから』を聴く毎日だ。


(新宿LOFT:松浦由香理)


Any / 優しい人

PCCA-03253 1,100yen (tax in) / 9.01 IN STORES

 私の目の前に彗星のごとく現れたAny。若干20歳のメンバーで構成されているバンドの割には、それなりのキャリアの持ち主なのである。毎年横浜で開催されているYHMF(10代を対象にしたコンテスト)では、2年連続のグランプリ受賞であったり、超満員のリキッドルームに出演して手持ちのデモ音源を即ソールドアウトさせたり、夏の大型フェスへの出演など、バンドとして評価と知名度を確実に積み上げてきているのである。
 デビュー曲『優しい人』は、バンドとして積み上げてきたものやAnyとしての新たな歴史の一歩が、キラキラしたサウンドと「優しい」言葉の数々に表れている。またこの曲はTBS系テレビ全国ネット「CDTV」8月度のエンディング曲として起用されている。この曲が持つ「優しさ」に触れた人は、ちょっとした「優しさ」を勇気にかえ、人を励ますものとなる事を知るだろう。
 彼らから生まれるであろう名曲の数々に期待を寄せ、この先がとても楽しみでならないバンドの1つです。


(ロフトプロジェクト:樋口寛子)


音速ライン / 空になる

YRCN-95148 1600yen (tax in) / IN STORES NOW

 このミニアルバムに収録されている数曲は既に昨年末には呑みの席で聴かせてもらっていました。その中でもタイトルにもなっている、3曲目収録の『空になる』のメロディや言葉が、私の胸を打った事は今でも忘れられません。またライブでこの曲を聴くと、思わず涙腺が緩んでしまう。前を見ているのだから、「過去」ばかり振り返りたくはないけど、振り返っても良い思い出だなぁ〜と思える事が沢山ある事を、とても幸せに思います。
 このミニアルバムは、私にとってはそんな過去と未来を繋ぐ作品です。インディーズ時代、メジャー時代1年目まで一緒に仕事をしていた彼らが、あの頃と変わらず「良い曲を作る!」という意識の元、活動しているのを目のあたりにすると、とても励まされます。レーベル移籍第一弾がこのミニアルバムで本当に良かったと心から思います。世の中には数ある音楽で溢れていますが、少しでもこのレビューが音速ラインを知るきっかけになってくれたらこんな喜ばしい事はありません。  


(ロフトプロジェクト:樋口寛子)


昆虫キッズ / text

MYRD-11 2,415yen (tax in) / 8.04 IN STORES

 前作より1年5ヶ月。どこか不穏な空気の似合うバンド、昆虫キッズが、そのポップな感覚と、サイケデイリックなセンスと、シュールなイマジネーションに、溢れるほどのアイディアをぶち込んだ傑作アルバムを生み出した。全13曲、50分足らずのアルバムを形成するのは、美しく繊細なメロディに心象風景の描かれた遊びのある歌詞、ロマンチックな転調と切実なボーカルである。どこか雑多で、ポップ、サイケ、ニューウェーブなどをごった煮にしたような印象を受けた前作と比べ、今作は溢れ出る閃きの連続を丁寧に成長させていったというような印象で、バンドとしてやりたいことが明確になっているような完成度の高さを感じた。そこには、今作のエンジニア、GOK SOUND・近藤祥昭氏や、マスタリングのピースミュージック・中村宗一郎氏の影響、そして、昨年、共作アルバムを発表するなどした豊田道倫氏を始めとした、多くのミュージシャンの影響があるだろう。そうして、周りの人々から得たtextを、貪婪に吸収し、思い悩みながら成長していく昆虫の子供たち。彼らが得た数々の体験を磨き上げた結果、生まれた作品こそ今作である。そして、それは同時に、今作が次世代の子供たちにとってのtextとなり得る作品であるともいえよう。まだまだ無限の可能性を秘めたこの子供たちから、しばらく目が離せそうにない。


(Asagaya/Loft A:山崎研人)


タテタカコ / Harkitek or ta ayoro

VPCC81661 2,500yen (tax in) / IN STORES NOW

 初めてライブで彼女の歌声を聴いたとき、そんな小さな体からなぜこんなにも大きな音が、そしてどこまでも透き通った声が出るのだろうと不思議に思ったものだ。
 このアルバムを聴くとその彼女が私の耳元で歌ってくれている気分に浸れ、1枚のアルバムの中に物語があるかのように、飽きずにじっくり聴くことができる。中には朗読もあって、少し怖い気分になってしまった私は独りでは聴けなくなってスキップしてしまったけれども…。でもやはりこの透き通った声とピアノの旋律のおかげで、私の心はとても軽くなっていくのを感じることができるのだ。歌詞の中には風や花や空や草などといったキーワードが多く出てくるので、思わず空を見上げて風を感じ、それでも足りずにもっともっと自然をめいっぱい感じたくなってくる。東京にいるとパノラマの夕焼けや青空を見ることがとても少ないし、夜空を見上げても星がほとんど見えず、のんびり寝転がって星空を見る場所もなく、なんて無機質な生活だろうと思う今日この頃だ。
 アルバムタイトルの『Harkitek or ta ayoro』というのはアイヌ語で「左手に宇宙」という意味を持つそうで、ジャケットや挿絵もアイヌの模様だろうか?不思議な模様の絵が描いてあってとてもステキだ。
 頭がいっぱいな人、イライラしている人、疲れている人、そんな人たちは特に彼女の生み出す音で頭を満たして癒されて欲しいと思う。


(Naked loft:木下花呼)


TIALA / DIRTY FLOOR IN BRIGHT

CH-122 1,890yen (tax in) / IN STORES NOW

 結成から7年、幾度の海外遠征、度重なるメンバーチェンジを乗り越えてきたTIALA。ここに待望の1st.full album『DIRTY FLOOR IN BRIGHT』が完成!
 CD再生ボタンを押した瞬間に、少しの静寂、そして印象的に鳴りはじめるギターのリフが聴こえ、繊細でゆったりとしたテンポに身をまかせていると、いつのまにか変則的かつハ―ドにかわったサウンドに心がヒ―トアップする。そして2曲目、TIALAの真髄とも言えるUSハ―ドコア調のサウンドが炸裂! 曲冒頭からの激しいシャウト! ステージで爆発的に暴れ狂うTIALAの姿が目に浮かぶ。しかし、ただ激しいだけではないのがTIALAの凄いところ。USハ―ドコアを基盤にあらゆるジャンルを飲み込んだその楽曲が、このアルバムの中での起承転結を見事に再現している。それは、これまで様々な困難を乗り越えてきた彼らだからできる技なのであろう。
 日常生活の中で、なにか強烈な刺激がほしいとき、まずこのアルバムをお勧めしたい。


(下北沢SHELTER:田中)


Dr.Downer / さよならティーンエイジ

ODSP-001 525yen (tax in) / IN STORES NOW

 ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文氏を中心に立ち上げられたレーベル“only in dreams”からリリースされることになったDr.Downerの4songs EP『さよならティーンエイジ』。この作品は、4曲入りのシングルで500円。タイトル曲となっている『さよならティーンエイジ』は、耳をつんざくようなギターを鳴らし、音合わせからの流れでリハに入っていくような、あの光景から始まる曲。粒子が粗いというかザラッとした質感のサウンドに、猪股の歌声が乗る。飾り気があるわけではなく、むしろ感覚のままに弾いているのではないかとさえ思う彼らの楽曲だが、作りすぎていないように思わせる感じが肩肘張らずに聴くことができ、Dr.Downerのサウンドを身近なものに感じるのではないだろうか。初めてCDを通して聴いた時には、「すごい音だ!」というのが第一印象だったが…。
 とにもかくにも、この作品をリリースし、やれるところまでやってやろう! という気持ちになった彼ら。次はどんな作品を作るのか、楽しみでならない。


(Rooftop:やまだともこ)


bed / ON OFF

3P3B-64 2,100yen (tax in) / IN STORES NOW

 京都より、ゼロ年新世代ロックシーンの金字塔となるべき、bedが2年ぶりに2nd Album『ON OFF』を3P3Bよりリリースした。昨年の3P3B 10th Anniversary オムニバスアルバムの中でも、その頭角を現していたのも記憶に新しい。US、UK、日本など、様々なオルタナティブ・ミュージックへの想いを随所に感じつつも、日本語詞というところからか、聴いているうちに歌詞がすっと入ってきて、マニアックに思われがちな固定概念を覆してくれる。嫌みのない言葉の使い回しの中に、ふとした希望を届けてくれる。それまで見えていた景色が変わってくるような、そんな感覚。絡み合うギターサウンドにリズムが重なり合って、凄まじい高揚感を引き起こす。聴けば聴く程にくせになる。この素晴らしさを言葉だけで伝えるのは、平面的になってしまい難しいのだが、本当に素晴らしい作品であり、出来るだけ多くの人に触れてもらいたいと思う。名曲揃いなのだが、個人的には『ライン』『エンドロール』は特に。レコ発TOURも控えていて、9/4(土)は下北沢SHELTERにて開催。ライブハウスでこそ、体感して欲しいのだ。


(下北沢SHELTER:平子真由美)


rice / Cicada

初回限定盤:yuri-018 通常盤:yuri-019 1,800yen (tax in) / 8.04 IN STORES

 激しい演奏と、憂いを帯びたメロディライン。儚い生命と、愛する人を想う力強さ。人が持つ相対するものが共存する矛盾を、絶妙のバランスで届けてくれているrice。これまでも、数々のラブソングを創りだしてきた彼らがだが、今回の作品はそれらと一線を画しているといってもいい。決して“綺麗”な言葉だけで描かれるのではなく、恋愛が生み出す“エゴ”が生々しく描かれている。『Cicada』というラテン語で「蝉」を意味するタイトルの通り、季節が移り行く上でいつ別れが訪れるとも知れない儚い時間の中、相手が傷つく結果になったとしても愛を貫き通し、愛する人の言葉で明日を信じて生きる。生ぬるい恋愛観では太刀打ちできないほどの、綺麗事では片付かないリアルな愛の形がそこにある。
 絶対的な演奏力に加えて、1/f揺らぎの希少な声を持つ有紀の声は、質量のある歌詞でさえ心の中にスッと入り込む不思議な力を与える。蝉の鳴き声で、ギラギラした夏の到来と、去りゆく季節を感じることができるこれから、狂おしいほどの愛情に想いをはせながら、この楽曲と共に過ごして欲しい。


(Naked LOFT:嶋田和代)


V.A. / ロフトプラスワン公式サウンドトラックVOL.1

自主制作盤 2,100(tax in)/ IN STORE NOW

 ロフトプラスワンが2010年7月8日で無事15才を迎え、たくさんの大人たちが協力して1枚のCDを作りました。それが『ロフトプラスワン公式サウンドトラックVOL.1』です。近年、CD需要は着実に減ってきていると知りながらも、大人たちは勢力をあげて作ったのです! その内容はとてもとても濃い! 全20曲も揃えたこってり系フルコースは唯一無二です!
 DJ急行さんの出囃しとして有名なニューロティカの『足踏みかませ』で景気よくかっ飛ばせば、M-3では毒蟲から誕生したバンド、ミラ狂美&鬼畜ゲトリストによる『全裸にコート〜露出狂の詩〜』でさらにアクセルは加速! 新録でなくとも一際存在感のあるM-14の『ちゃんとつけてねダーリン』。往年のユーロビートに、パラダイステレビ女子アナたちのゆるゆるな歌声の合わせ技は強烈! M-16〜18はINU-KERAでお馴染みの名コンビ、犬山イヌ子とケラリーノ・サンドロヴィッチによる怒涛の3曲。なんとすべて新録! 心温まる歌詞と2人の歌声の可愛らしさには思わず口元がニンマリしてしまうことでしょう。そしてラストを飾る元気いいぞうさんの『まあ、生きていればよしとする』が色濃い72分を心地よくしめてくれます。多くの大人が携わり、大切に作られたサントラCD。あとはたくさん皆さんの手元に渡ればめでたしめでたし…か?


(LOFT/PLUS ONE:マツダカナコ)


posted by Rooftop at 15:00 | バックナンバー
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