ギター バックナンバー

THE MACKSHOW('10年8月号)

THE MACKSHOW

永遠のロックン・アイドル、奇跡のゲット・バック!
昭和八十五年・夏、愛と平和とロックンロールを奏でる不滅の青春音盤が堂々の完成!


 これはラトルズがビートルズを凌駕したということなのか!?
 昭和八十三年(2008年)四月十三日、日比谷野外大音楽堂でのステージを最後に活動休止、昨年秋に赤坂BLITZでのワンマン・ライヴで突如として完全復活を果たした国産ドメスティック・ロックンローラー(絶滅危惧種として本誌認定)、ザ・マックショウ。再始動後に発表される初のオリジナル・アルバム『Here Comes The Rocka-Rolla 〜情熱のロカ・ローラ〜』はオールディーズ・バット・ゴールディーズなロックンロールの作法に立ち返り、細部にわたって心血を注がれた金字塔的作品だ。これまでも古式ゆかしいニッポンのロックンロールを現代に蘇生させ、老いも若きも興奮の坩堝へと導いてきた彼らだが、本作は何やら気合いの入り方が徹頭徹尾尋常ではないのである。全編ノン・デジタルのアナログ・テープ一発実演録音という居合い抜きの如きレコーディング手法は元より、ただひたすらに感情を昂ぶらせるツイスティン・ビートに胸を締め付けるグッド・メロディはさらに純度を増し、KOZZY MACKとTOMMY MACKのホームグラウンドである広島を舞台にして甘く切ない十代の追憶を描いた“ヒロシマ・グラフィティ”とも言うべきコンセプトの秀逸さも実に心憎い。しかも、発売日は広島平和記念日にあたる8月6日という徹底ぶりなのだ。
 本稿は、技法も流儀も姿勢も昭和五十年代(フィフティーズ)へとさらに深化させた意図をメンバー全員に尋ねた貴重な質疑応答の記録であると同時に、生ける屍とも言うべき去勢された音楽ばかりを量産する業界への警鐘でもある。心して精読して頂きたい。(interview:椎名宗之)


野音のライヴでみんなを卒業させてあげたかった

──昨年の華麗なる復活劇の背景には、活動存続・再開を求めるファンからの2万通を超える投書や署名があったそうですね。

KOZZY MACK(以下、K):うん。署名、嘆願書、泣き落とし、中には恫喝まであったよ(笑)。コルツの活動とかやりたいことがたくさんあっての活動休止だったんだけど、マックショウを聴きたい、観たいっていう人がそれだけいる以上、やらないのはマズイだろうと思ってね。

──コルツを復活させた成果がマックショウの活動再開にフィードバックするようなことはなかったですか。

K:コルツを復活させて良かったのは、音楽の楽しさを改めて実感できたことと、ずっと待っていてくれる人がいるんだなっていう再確認だった。でも、ただでさえ人数が多くて集まりづらいし、コンスタントに活動を続けるのは大変だなと思ってね。年齢的なこともあるし、親の面倒も見なくちゃいけないしさ(笑)。ただ、あんなに長いことやってなかったバンドなのにほんの数時間で復活ライヴのチケットが売れ切れたりして、励みになったバンドマンもいると思うんだよね。

──確かに。TOMMYさんもコルツを再開させて手応えは大きかったですか。

TOMMY MACK(以下、T):マックショウは3人だから、改めて人数が多いなと思って。俺、いなくてもいいかな? とか思ったし(笑)。マックショウは見られてる感も強いし、責任を背負ってる感じがあるからね。コルツはヘンな気負いもなく、みんなでワイワイやって楽しめると言うか。どちらも楽しいんだけど、そういう違いはあったかな。

──マックショウの活動を休止するに至ったのは、やはり煮詰まりみたいなものがあったからですか。

K:まぁ、やり切った感はあったよね。ひとつのエンターテインメントとしては、その前の年くらいがピークなのかなと思った。日本の古き良きロックンロールや昭和という時代、キャロルの疑似体験を含めてみんなマックショウを好きになってくれたと思うから、一度ちゃんと卒業させてあげたかったわけ。みんな学校をろくに卒業してないような不良ばかりだし(笑)、俺もそれを体験したかったしね。そのためにも、キャロルと同じく4月13日に野音で終わらせるのは必須だろうと。4月13日に野音を使えるのはあの年しかなかったし、それ以降は何年も先まで空き日がなかったから、ここでやっておこうと思ってね。そこでライヴをやって、もう辞めたいと思ったら「辞める」って言うつもりだったんだけど、準備をしてる段階からどうも辞めるって感じじゃなくてさ。活動休止したらしたで、「ちっとも動かずに、一体どうなってるんだ!?」ってけしかけてくるピュアな連中が多くてね。まぁ、有り難いことだけど。

──去年の10月に赤坂ブリッツでカンバック・リサイタルを敢行した時は「やっぱりこれだな!」という感触がありましたか。

T:ぶっちゃけ、弾きながら「こんなことやってたんだ…」って思って(笑)。1年半はブランクとして短いようで長くて、久しぶりに自分自身と戦うみたいなところがあったね。

──復活を遂げた時点で今回のリリース・プランはすでにあったんですか。

K:いや、全然。でも、何も出さないつもりじゃなかった。赤坂ブリッツみたいな大きい会場でやるのは流れとしていいなと思ったし、その後は小さいライヴハウスでやることを決めていたからさ。リセットする意味でも赤坂ブリッツは良かったね。お客さんもそこでいい具合にクール・ダウンできた気がする。あのまま行くと、お祭りみたいになっちゃってちょっとヤバかったよね。音楽を主体にやっている以上、単なる空騒ぎになるのは避けたいからさ。

──そんな過程を経て発表される今回の『Here Comes The Rocka-Rolla〜情熱のロカ・ローラ〜』なんですが、『情熱のロカ・ローラ』のイントロで聴かれるギターのカッティング一音からして気合いがケタ外れに違うなと思って。僕はこれまでの敢えてチープに施した音質が愛おしかったんですけど、今回はアナログ・テープを使った真に迫る音質で、過去の諸作品と比べて本気度が土台から違うのを感じたんですよね。

K:本気度はケタ違いにあるよね。マックショウを始めた頃は自分たちの手で何でもできるプロツールスが出始めの頃で、一番ミニマムの編成で録ったわけ。コルツをやってた頃の大箱のスタジオを使った普通の録り方に飽きたのもあるし、見積もりを取ると何百万もしてアホらしくなってさ。だったら自分たちだけでガレージっぽく倉庫で録ってみようと始めたのがマックショウだった。そのうちスタジオも自分たちで構えて、博多のスタジオにあったテープ・レコーダーをもらって、卓を揃えて、テープ・マシーンは3台になって…趣味の域を遙かに超えるようになった(笑)。そうやってヴィンテージの機材を使いながら何から何まで自分たちの手で作り上げる手法は、前回の『CANDY GOLD SUNSET〜燃えるサンセット〜』でやり切った感じがあったんだよね。



ロックンロールはプロツールスなんかじゃ録れない

──去年の復活ライヴ時に会場で発売されたシングル『A HEART BEAT'S TONIGHT/首都高ムーンライト』がモノラル方式のアナログ・テープ録音だったのは、そんな経緯もあったんですね。

K:うん。アナログ・テープで録って思ったのは、結局ヴァーチャルなものはヴァーチャルでしかないってことなんだ。だからこその良さはあるけどね。それまでのマックショウのチープな音質が好きだった人はたくさんいるだろうけど、それは敢えてそんなふうに作ったものだし、やり尽くしちゃったからさ。ここまで来たら、ある種どんな音でも作れてしまう。そのままのやり方でどんどん作る人と、そこで全部捨てちゃう人がいるとすれば、俺は完全に後者なんだよ。今までの活動も全部そんな感じだから。一度すべてが完成すると、即座につまらなくなっちゃうんだ。プラモデルも作ってる過程が面白いし、完成したら興味がなくなるからさ。

──だからこそ、今回は自前のロックスヴィル・スタジオを出て外部のスタジオを使ってみたと。

K:そういうこと。コルツが一番最後にスタジオでやったセッションを収めたのが『JAIL'S OUT』というアルバムなんだけど、今回はその時と同じく西早稲田にあるアバコ・スタジオで録ってみた。同じ部屋、同じコンソールを使ってね。そこで一発録りで勝負してみたかったんだ。って言うのは、コルツで最後にやった時もほぼ一発で録ったんだけど、余りにコストが掛かりすぎてね(笑)。プロツールスが出てきたのはその後だから。

──あれから10年が経過して、今度はプロツールスを使った音作りに限界を感じたわけですね。

K:俺が達した境地は、ロックンロールはプロツールスなんかじゃ録れないってこと。ここではっきり言うよ。みんなプロツールスを使ってるけど、あんなのはウソっぱちだって。プロツールスを捨てるまで、絶対にロックンロールは戻って来ない。それを実感したわけ。デジタルを使えば古き良きロックンロールみたいな音を作るのは簡単だけど、どこか魂の抜けたものになる。ヴァーチャルで魂すらも作れるけど、そういうのは活動休止前にやり切った。後に残されたものは、魂を刻み込んだ本物を作るしかない。それが出来る自信があったから、やってみようと思ったんだ。魂を刻み込む以上、そりゃ本気になるよね。

──アナログ・テープを使う以上、失敗が許されないという緊張感と対峙することになりますよね。

K:事前に何度もリハを繰り返したよ。誰かが一度でも失敗したら一から録り直すのが約束事だった。何故ならそれが古来から在るロックンロールの録り方だし、同じフィールドに立つっていうのはそういうことなんだよ。もちろんコーラスやギターのダビングは後からやったけど、それも極力その場でやることにした。ヴォーカルは全部その場で唄ってるし、差し替えは一切しないのがルール。だって、24チャンネルなのに20チャンネルしか動かないテレコを使ってるんだからさ(笑)。後からちょっとバスドラを上げることもできない。そこでトラックダウンまで全部やっちゃうんだから。徹頭徹尾、ノン・デジタルなんだよ。

──一発録りをやるにも、それ相応の演奏技術が求められることになりますよね。

K:表現力が問われるよね。本来は作品の中にデータがきちんと並んでいればいいってわけじゃなくて、パフォーマンスが必要なんだよ。そのパフォーマンスを聴いてリスナーは興奮するわけだから。それがいつしか、ただデータが並んでいるものを格好いいと捉えるようになってしまった。純粋なロックンロールが廃れた一因はそこだよ。すべてがデータ化、数値化されてしまったことがね。数値化されないのがロックンロールなんだから。確かに、致し方ない部分もあるよ。アナログ・テープを確保するのは大変だし、単純にコストも掛かるしさ。でも、そこでこだわりを持ってロックンロールを体現するヤツがいないから下の世代が続かない。そんなところに足を突っ込んだら大ごとだぞと思ったのと同時に、そこに足を突っ込まなければロックンロールを好きでやってることにはならないと俺はある時期から思うようになったんだよね。

──気力、体力、財力を駆使しなければロックンロールの偉大なる先人たちと比肩し得ないと。

K:そこまでやらないと広島“風”お好み焼きで終わるんだよ(笑)。マックショウも今まではロックンロール“風”な作品を残してきた。でも、今回は真っ正面からロックンロールをやり切ったんだ。



ミニマムな編成の中での最大級のパフォーマンス

──でも、マックショウが作る広島“風”お好み焼きはセンスが巧妙で、それはそれで絶品でしたけどね。

K:まぁね。“風”ならではの美味しさはあったと思う。

──それが今回は広島で過ごした青春時代への追憶をテーマにしたコンセプチュアルな部分もあるし、純然たる広島のお好み焼きを作ろうと真っ向から挑んでいますよね。

K:ロックンローラーがそういうコンセプトや「自分たちは広島出身なんだ」というプライドにこだわらなくなって久しいわけよ。でも、昔はレコード会社でディレクターを交えて「自分たちにしか描けない広島をコンセプトにしたアルバムを作ろう」なんて会議を真剣にやっていたんだ。俺たちが感銘を受けたアルバムっていうのは、そういう小さなこだわりの結晶だったはずなんだよ。

──発売日が広島に原爆が投下された8月6日の平和記念日というのもこだわりのひとつですね。

K:間に合わなかった可能性もあったんだけどね(笑)。8月6日の発売日から逆算してマスタリング日を設定して、それまでに3日間集中して録ったんだよ。そういうやり方しかできないし、やりたくなかった。

──期日的にも体力的にも極限まで自身を追い詰めて、その状態で生まれ得たものを残したかったということですね。

K:魂を込めるにはそういうやり方しかないんだよ。日本語で言えば「火事場のクソ力」でマジックが生まれる。チェス・レコードをモデルにした『キャデラック・レコード』っていう映画があったけど、チェス・レコードでもサン・レコードでも録り方は同じだよね。掘っ立て小屋みたいな町工場を改装した所でレコーディングのチャンスはたった一度だけ。しかも、テレコに直接マイクをぶっ差すような環境でさ。歌詞もメロディもその場で変わったりして。本来のレコーディングはそういうものだし、俺たちも今回は同じやり方を踏襲したんだよ。事前に用意した歌詞やメロディもいくつかあったけど、曲作りはほとんどスタジオに入ってからやった。さすがに『情熱のロカ・ローラ』みたいなテーマとなる曲は作ってあったけどね。

──キワキワまで自分自身を追い込んで初めて生まれる力ってありますよね。

K:TOMMYが手練れで弾いたフレーズにもNGを出してね。曲の進行を急遽変えて、その場で慌てて考え出したフレーズが逆に良かったりする。もっと時間を掛ければもっと良くもなっただろうし、満足していないギター・フレーズや歌も正直あるけど、それを言い出したらキリがない。ライヴでやればまた変わっていくし、俺たちのオリジナル曲に完成形なんてないんだよ。

T:まともなレコーディングって言うとおかしいけど、あれだけ集中して録ったのは久々だったよね。緊張感も凄くあったしさ。

K:顔色が変わってたもんな(笑)。

BIKE BOY(以下、B):俺は初めてですよ、ちゃんとしたレコーディングを経験したのは。それまでは練習スタジオに毛が生えたような所でしか録ったことがなかったんで。

K:知らないうちに勝手に録られてたりとかな(笑)。

T:BIKE BOYが真っ青になってたのが判ったから、なるべく顔を見ないようにしたんだよ。緊張が移るからさ(笑)。

B:その場の空気に呑まれちゃって、1番の歌詞を叩いてるのに途中でどこを叩いてるのか判らなくなってくるんですよ。

K:息ができないくらい張り詰めた空気だったからね。あれは俺も久々だったよ。

──ザ・フェイスの面々によるハンドクラップまで一発録りだったんですよね。

K:うん。ハンドクラップが失敗しても一からやり直したから。でも、どの曲も本チャンテイクは2回くらいだったね。録り終えたら、その場でどんどんトラックダウンしていって。

──千本ノックみたいなレコーディングですね(笑)。今回はローリー時代からの盟友であるFUZZY MACKこと藤井セイジさんがリズム・ギターとコーラスで、MICKY“SLIM”MACKこと伊東ミキオさんがピアノとハモンドオルガンでそれぞれ参加されていますね。

K:藤井はマックショウのほとんどの作品に関与していて、カープで言えば衣笠祥雄みたいな立ち位置なんだよね。今までの作品でも一緒にコーラスをやってたりしてさ。

──KOZZYさんを山本浩二とするならばYK砲ですね。

K:そんな感じだね。自分のグルーヴを出しつつもバッキングに徹するギターを弾けるのはあいつくらいだからさ。小学校1年くらいからの付き合いだから全部を任せられるんだよ。伊東ミキオは広島じゃなくて熊本の出身だけど、絶大な信頼を置いている。有能なセッションマンだからレコーディングの手順も心得ていて、バーッと譜面を書いてエンジニアに説明もできるんだ。その場の潮時の判断もできるし、唯一マックショウを客観的に見られるしさ。この布陣が揃えば、ミニマムな編成の中でも最大級のパフォーマンスができるんだよ。




広島の地名を盛り込んだ追憶のラヴ・ソング

──言うまでもなく全曲捨て曲皆無なんですけど、頭の5曲の流れが最高にいいんですよね。とりわけ、広島の地名が随所に盛り込まれた『熱帯ドライヴ』と『100メートルの恋』の出来が抜きん出ていると思うんですよ。

K:まぁ、広島の人間じゃないと判らないだろうなとは思ったんだけどね。

──調べさせて頂きましたよ。『熱帯ドライヴ』に出てくる「ナタリー」は佐伯郡廿日市町阿品(現廿日市市)に実在したテーマ・パークだったり、『100メートルの恋』の「100メートル」は広島市の平和大通りのことだったり。

K:知らない人には何の意味もないことなんだけど、俺はそういうのが好きなんだよね。知ってるヤツだけがグッと来る感覚って言うかさ。ビートルズの『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』だってそうじゃない?

──ジョン・レノンが幼少期に通っていた孤児院ですからね。『ペニー・レイン』だってそうですし。

K:そうそう。「ストロベリー・フィールズってどんな所なんだろう?」とか思いながら俺は音楽を聴いてきたし、同じように感じてもらいたいという狙いもあったんだけどさ。マックショウの歌詞は全部実話を基にしているし、俺の頭の中に情景が残っているから説得力があるのかもしれないね。

──奥田民生さんも「遊園地と言えばナタリー」と話していたそうですが、KOZZYさんとTOMMYさんも「ナタリー」には足繁く通ったんですか。

K:小さい頃からよく行ったよね。だって、遊園地はそこしかないんだから。今みたいに大型の娯楽施設がたくさんあったわけじゃないしさ。

T:東京ディズニーランドもまだなかった時代だからね。

──100メートル道路は広島平和記念公園に隣接しているし、その広島平和記念公園と原爆ドームを結ぶ「相生橋」が歌詞の中に出てくることを考えると、『100メートルの恋』はマックショウなりのラヴ&ピース讃歌と言えそうですね。

K:そういうことだね。100メートル道路って今の広島の若い子に言っても通じないかもしれないけどさ。カープがセ・リーグで初優勝した時にパレードをやった所でもあって、俺も当然見に行ったよ。行かないヤツなんていなかったくらいでさ。俺は何故か床屋のおっちゃんと手を繋いで見に行ったけど(笑)。

──そう言えば、初回限定盤のカラーDVDに今回のレコーディング風景が収録されていますが、そこにさり気なく山本浩二の写真が盛り込まれていましたね(笑)。

K:今はネットを使えば何でも調べられる世の中だから、何でも判ってしまうのがつまらない反面、調べられるからこそ面白さが判る部分もあるよね。何事も手軽に調べられることが音楽をつまらなくさせている一因だとは思うんだけど、だからこそ仕掛けられる罠もあることは確かなんだよ。まぁ、仕掛ける以上は歌詞を書くのに凄い時間が掛かったけどね。

──本作の収録曲は概して歌詞の胸キュン度がグッと増しましたよね。

B:そう、青春度がね(笑)。

K:今まではくだらなさの中にも胸キュンが入ってる感じだったけど、歳を取るとやっぱり涙もろくなってくるんだよね。『あしたのジョー』を読んで号泣するしさ(笑)。ちゃんと自分自身も胸キュンできるような歌を唄いたかったんだよ。

──歌の世界観だけを見ると、KOZZYさんのソロ作よりも今回の作品のほうがパーソナリティが色濃く出ている気がしますね。ローリー、コルツも含めたこれまでの全キャリアを含めて。

K:結果的にそうなったかもしれないね。十代の頃の甘酸っぱい記憶をテーマとして取り組んだし、リスナーと共有できるのはそういう部分じゃないかと思ってさ。以前、17歳くらいの子に「マックショウの歌詞、泣けますよね」って言われたことがあって、青春時代の追憶というのは普遍的なテーマなんだなと思ってね。

──十代の若いリスナーにもマックショウが奏でるロックンロールの純度の高さがちゃんと伝わっている何よりの証拠ですね。

K:だったら尚のこと、本気で追い詰めたレコーディングをやらなくちゃダメだと思ったんだよね。ある種、失礼かなと思ってさ。コンセプトもテーマもはっきりしていたし、それならアナログの手法を取るしかない。すべては必然だった気がするよ。従来のリスナーにも新しいリスナーにも納得してもらえるだけの作品を作れた自負はあるよね。

──ロックンロールとしてのいい音は間違いなく過去随一ですよね。世間的にいい音なのかどうかは判らないですけど。

K:そういうことに尽きるんだよ。世の中的にいいか悪いかなんて知ったことじゃないから。

T:基本的にやってることはこれまで通りなんだけど、今回は気持ちの入れようが違うからね。さっき話に出たKOZZYの発破の掛け方もよく判るし、ふんどしを締め直せたのが音によく出てると思う。しばらくちゃんとベースを弾いてなかったし、久しぶりに真剣に弾いた気がする。ちゃんとリハをやってアレンジを詰めたのも久しぶりだったし、「意外に弾けるな」と思ったら楽しくなっちゃってさ(笑)。



「ここ一発で仕留めるしかない」という心意気

──レコーディング風景の映像を見るとヴィンテージの機材をこだわって使っているのが窺えますけど、細部にわたってキッチリこだわって作り上げたことを伝える意義のある映像だと思ったんですよね。

K:プレーヤーやレコーディングに携わる人以外に興味があるのかな? と思ったんだけど、レーベルのA&Rに「機材を見せましょう」って強く推されてね。確かに使ってるリボンマイクも50年代のヴィンテージだけど、俺はそういうのを得意気に見せるのは粋じゃないと思ってさ。リスナーには何の関係もないことだしね。

T:いっそのこと、機材に全部値札を貼っておけば良かったよね。「これは100万円」とかさ(笑)。

──でも、そういう細かいこだわりにニヤリとするリスナーは少なからずいると思うし、それを見てマックショウの魅力に益々ハマっていく人も多いと思うんですよ。僕自身がそうですから。

K:まぁ、そう言ってくれるなら良かったのかな。とにかく作品の出来には満足してるよ。すべては一期一会、背水の陣で臨んだからね。後から何とかしようなんて考えが甘いんだよ。保険なんてないんだからさ。

──現状のレコーディング・システムはアナログ・テープの時代に立ち返ったほうがいいような気がしますね。

K:もしくはアナログ・テープに代わるものがあればね。テープは限られた資源だからさ。ヒントとしては回るものなのかなと思うよ。ハードディスクも回ってるっちゃ回ってるんだけどさ(笑)。レコードだってカセットだって回るわけじゃない? CDですらトレイの中で回ってる。多分、CDって回さなくてもいいのに敢えて回るように作ってあると思うんだよね。

──テープが回るのも運任せみたいなところがありますよね。

K:そうだよね。録れてないかもしれないし、消えちゃうかもしれないんだから。

──退路を断って、一期一会に懸けてこそ真に迫る表現ができるということなんでしょうね。

K:そういうことだと思うよ。消えちゃったらもう一度やるしかないけど、別に何度だってやるしさ。それを最終的にマスタリングでCDにするために一回デジタルにはするんだけど、それまでは全くのノン・デジタルなんだよ。バンドで音を発信している段階はまだいい。でも、その音がデジタルの卓を通り、プロツールスを通り、プラグインを使ったりする時点でクソになるんだよ。俺が総理大臣になったら、プラグイン禁止令を施行するよ(笑)。あんなもん、上っ面だけ綺麗な絵と同じだよ。魂はどこにもない。デジタルを介して削ぎ取られるものがあっても利便性が優先される時代の中で、削ぎ取られて残ったものが今の世の中にあるクソみたいな音楽なのだとしたら、それはもう方向を変えるしかない。俺はこの8年間くらいデジタルの録り方を研究してきて、自分の声がどう変わるのか、バスドラの音はどうエッジが消えていくのかとかをずっと分析してきたんだよ。

──その研究の成果が今回のアルバムであると。

K:うん。いろいろ試してみたけど、デジタルで何をやってもダメだった。我慢できる許容範囲はあるよ。大きいスタジオでちゃんとしたコンソールがある場合、プロツールスを使っても大丈夫な時はあった。だからと言って、結局のところそれは絵に描いた山並みの風景と同じで、本物の富士山の美しさにはかなわない。夏の朝の空気の匂いとか直射日光のジリジリした熱さまでは伝え切れないんだよ。パソコンの画面から匂いがしてこない限り、音楽はパソコンじゃ作れないね。ロックンロールは根源的なピュアな部分が大切なのに、それをデジタルに削がれちゃ何も残らないんだよ。

──『首都高ムーンライト』の「運転手さん、追い越すぜ」という歌詞の乗せ方が僕は凄くいいなと思って、そういう日本語の歌の化粧ノリもアナログの触感のほうが向いていると思うんですよね。細かいことかもしれませんけど。

K:そういうのは絶対にあるよ。俺もテープを聴きながら唄って演奏もしてるからしっくり来るしね。それを後からいじって何とかするなんてさ、ケーキ屋が生クリームのケーキを後で手直しするようなもんだよ(笑)。神に対する冒涜だよね。それなら最初から作り直したほうが断然早いよ。他のバンドは何でマックショウみたいに真摯な姿勢で音作りに励まないんだろう? と思うよね。俺たちはそこに命を懸けてるからさ。多分、みんなマックショウが凄い儲けてると勘違いしてると思うんだよ。ライヴもデカい会場でやって、CDもある程度売れてるからね。でも、利益は全部音作りの研究に費やしてるんだよ。全然儲かりっこない(笑)。だからこそ新しい作品を作り続けなくちゃいけないし、毎回新たなテーマや発見が生まれるわけ。同時に演奏するからこそこういう音の積み重ねができるんだなとかさ。これまで切ったり貼ったり研究してはみたものの、結局はその場の偶発性に優るものはない。森羅万象、そういうことなんだよ。これから先は今以上にシンプルに研ぎ澄まされたドキュメンタリー性の高いロックンロールをやりたいね。日本特有の侘・寂や日本男児の格好良さを出すには「ここ一発で仕留めるしかない」っていう心意気が大切だし、本来の意味でのロックンロールっていうのはそういうものだと俺は思うからさ。



Here Comes The Rocka-Rolla 〜情熱のロカ・ローラ〜

01. 情熱のロカ・ローラ
02. 首都高ムーンライト
03. 熱帯ドライヴ
04. 恋は45rpm
05. 100メートルの恋
06. 悲しみを抱きしめたままで
07. スウィート・リトル・シックスティーン(通常盤のみ収録)
08. いかしたマギー・メイ
09. 魅惑の深夜パーティー
10. 八月のムーンリバー
11. ロックンロール・ミュージック(通常盤のみ収録)
12. 今夜はスタンド・バイ・ミー
13. 83413(今夜は最高)
14. A HEART BEAT’S TONIGHT
B.A.D RECORDS UNITED / MEDIA FACTORY, INC.
初回限定盤:FAMC-040/全12曲収録(初回限定盤カラーDVD付)/3,150yen (tax in)/初回限定収録カラーDVD:マックショウ・ヒビヤ〜復活の軌跡〜ライヴ映像『首都高ムーンライト』『ビッグママヘイヘイ』他、『A HEART BEAT’S TONIGHT』レコーディング短編ドキュメント・フィルム収録
通常盤:FAMC-041/全14曲収録(初回盤未収録曲2曲収録)/2,835yen (tax in)
昭和八十五年(2010年)八月六日(広島平和記念日)発売

★amazonで購入する

Live info.

LONDON NITE 30周年 夏祭り
昭和八十五年八月六日(金)新宿ロフト
OPEN & START 23:00
LIVE:THE MACKSHOW/氣志團
DJ:大貫憲章/ヒカル/稲葉達哉/SHOJI/YOSSY/U-ichi & SPECIAL GUEST
info. LOFT:03-5272-0382

『Here Comes The Rocka-Rolla』発売記念スペシャル・コンサート〜ロカ・ローラがやってくる!〜昼の部[タワーレコード全国7大都市インスア・イベント]
昭和八十五年八月七日(土)タワーレコード福岡店(14:00〜)
昭和八十五年八月八日(日)タワーレコード広島店主催 会場:アリスガーデン(広島市西新天地公共広場/15:00〜)
昭和八十五年八月十五日(日)タワーレコード梅田大阪マルビル店(15:00〜)
昭和八十五年八月二十一日(土)タワーレコード新宿店(15:00〜)
昭和八十五年八月二十二日(日)タワーレコード仙台パルコ店(15:00〜)
昭和八十五年八月二十八日(土)タワーレコード札幌ピヴォ店(15:00〜)
昭和八十五年九月十八日(土)タワーレコード名古屋パルコ店(15:00〜)

『Here Comes The Rocka-Rolla』発売記念スペシャル・コンサート〜ロカ・ローラがやってくる!〜夜の部
昭和八十五年八月七日(土)福岡スパイラルファクトリー
昭和八十五年八月八日(日)広島バックビート
昭和八十五年八月十五日(日)大阪・難波ロックライダー
昭和八十五年八月二十一日(土)東京・新宿レッドクロス
昭和八十五年八月二十二日(日)宮城・仙台enn 3rd
昭和八十五年八月二十八日(土)北海道・札幌PIGSTY
昭和八十五年九月十八日(土)愛知・名古屋タイトロープ

B.A.D RECORDS UNITED official website
http://bad-rec.com/

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