ギター バックナンバー

キノコホテル('10年8月号)

キノコホテル

『マリアンヌの休日』という名の夏の宿泊プラン


 生温いメジャー・シーンを震撼させた衝撃のデビュー・アルバム『マリアンヌの憂鬱』から早半年、そのポップで過激で中毒性の高い大衆音楽を拠り所として昇竜の勢いを続けるキノコホテルが『マリアンヌの休日』と題したアルバムを発表する。収録された全6曲は、橋本淳&筒美京平、小林亜星、阿久悠&三木たかし、なかにし礼&井上大輔(忠夫)、平岡精二といった名だたるヒットメーカーたちが残したマニアックかつカルトなナンバーばかり。マリアンヌ東雲が半裸で浜辺に寝そべり真夏のバカンスを享受しているジャケットが示す通り、彼女の作詞・作曲活動はひと休みという体で1967年から1975年にかけて発表された名(迷)曲の数々をキノコホテル流に昇華させた作品集である。「なんだ、単なるカヴァー・アルバムか」と侮ることなかれ。人知れず世に埋もれた楽曲を見いだす慧眼、オリジナルと見紛うばかりの卓越したアレンジ・センス、そして見巧者を唸らせる歌唱と演奏。そのどれを取っても絶品であり、他人の楽曲でもキノコホテルの本質を余すところなく体現している辺り、やはり只者ではない。『マリアンヌの休日』という名の夏の宿泊プラン、満室になることは必至なのでご予約はどうぞお早めに。(interview:椎名宗之)


カヴァーとオリジナルの境界線が薄いアルバム

──最近の皆さんはメディアの露出が激しいので、質問が重複してしまうかもしれませんがご容赦下さい。

マリアンヌ東雲:バンド名の由来とか訊かないでよ。もう二度と答えないから。

──さすがにそれは(笑)。でも、実際どうですか。今年の2月に衝撃のメジャー・デビューを果たして以降、尋常ならざる注目を集めるようになって、周囲を取り巻く環境も大きく変化したと思うんですが。

東雲:全く変わらないわね。こんなにも変わらないものなの!? ってくらい変わらない。むしろ、どんどん人から距離を置かれるようになったわ。

イザベル=ケメ鴨川:友達は減る一方ですよ。

東雲:「どうせ忙しいんだろうし」みたいに言われて、ふて腐れて家で酒を呑んでばかりいるわよ。

──実演会での観衆の反応が過熱気味になったりとかは?

東雲:何も変わらないわね。この間の大阪城野音の時みたいに、雨の中をステージ前まですっ飛んでいってゴロゴロ寝転んだりしないと観衆は沸きません。関西は割とウケがいいんだけど、関東の観衆は相変わらずお地蔵さんのよう。

──ただ、今月は“RISING SUN ROCK FESTIVAL 2010 in EZO”という野外の大舞台も控えているし、着実にステイタスを高めているじゃないですか。

東雲:野外と言っても、“CRYSTAL PALACE”っていうサーカス小屋みたいな特設テントでやるのよ。テントだなんて、暴れまくっていたらすぐに壊れちゃいそうでワタクシとしては心配だわ。

──何だかのっけから後ろ向きな話ばかりですけど(笑)。劇的な変化を天狗になって饒舌に語る支配人を期待しておりましたのに。

東雲:この先、変わる予感もないわね。どうなの、その辺? 実は裏でエマが美味しい思いをしていたりするわけ?

エマニュエル小湊:いや、環境は全然変わってないですね。励ましのお便りも増えるどころか減る一方ですから。

東雲:強いて変化を挙げるなら、単独の実演会をやると酒の差し入れが増えたくらいね。ただ、「持ち帰る身にもなってみなさいよ!」ってくらいに重い一升瓶がやたらと増えたのが困る(笑)。まぁ、有り難いことではあるけどね。

ファビエンヌ猪苗代:私は、お酒ばかりでお菓子が減ったことが悲しいです…。

東雲:お菓子なんて、ワタクシが所望していないから要らない。ワタクシは楽屋に自分の嫌いなものが差し入れてあると不機嫌になるの。

──この際、この誌面を通じて差し入れて欲しいものを挙げておいたほうがいいんじゃないですか?

東雲:じゃあ、現金と書いておいて。それが一番話が早いわ。

──かしこまりました(笑)。で、この度発表となるセカンド・ミニ・アルバム『マリアンヌの休日』についてお伺いしたいのですが、支配人の作詞・作曲活動がお休みということで命名されたタイトルだそうで。

東雲:そういうことです。あまりの多忙さに堪えられなくて、フラッと海外へ一人旅をしようと思っていたのよ。だけど、「次のアルバムまで間があるから何か出しませんか?」とレコード会社から言われて。ワタクシはとにかく休みたかったし、最初は全然乗り気じゃなかったわけ。そこを「カヴァー・アルバムなら大急ぎで曲を作る必要もないじゃないですか」と説得されて、渋々了解したの。ワタクシの休日っていう体で好きなようにやっていいのなら、やってあげてもいいわよ、と。

──選曲はどれもマニアックでカルトだし、カヴァー・アルバムと聞かされていなければキノコホテルのオリジナルだと思うでしょうね。

東雲:そうかもしれないわね。最近はカヴァー・アルバムが流行っているけれど、その手のアルバムは大抵誰もが知っている有名な曲を選ぶじゃない? 『マリアンヌの休日』はそういう方向性からして違うし、収録した6曲とも知らない人のほうが世間では圧倒的に多いわけで、カヴァーとオリジナルの境界線が薄い稀有なアルバムだと言えるんじゃないかしら。



ファズやオルガンを入れればキノコらしくなる

──選曲の基準はどんなところだったんですか。

東雲:特に深くは考えず、上手くやれそうな曲を選んだつもり。『サロン・ド・キノコ』と被っている曲はありましたっけ?

──『恋はふりむかない』だけですね。

東雲:あら、そう? 何故『恋はふりむかない』だけ両方に入っているのか、自分でもよく判らないわ(笑)。

鴨川:まぁ、『サロン・ド・キノコ』は実況録音盤でしたからね。

──支配人が原曲をお気に入りだから今回も選ばれたのかな? と思ったんですが。

東雲:いえ、違います。原曲は凄くダサイし。きっとアレね、アッパーな感じの曲が多かったから、ちょっと落ち着いたミドル系の曲が欲しかったのね。

──他の従業員の皆さんは、選曲にはノー・タッチなんですよね?

鴨川:言うまでもないことです。

小湊:原曲を知ってる曲もあれば、知らない曲もありますね。

──支配人に原曲を聴かされて、「何じゃこりゃ!?」と度肝を抜かれたり?

猪苗代:『山猫の唄』はそういう感じでしたね。

鴨川:私は『謎の女B』だったなぁ。「何なの、これ!?」って思った。

──支配人はああいう昭和のカルトな歌謡曲やGSが思春期の頃から大好物だったんですか。

東雲:そうね。うら若き女学生の頃から好きだったわ。カルトの基準が何なのかはよく判らないけれど。

──『真夜中のエンジェル・ベイビー』を取り上げたのは、支配人がお好きな近田春夫&ハルヲフォンが『電撃的東京』でカヴァーしていたことも大きいですか。

東雲:幼い頃にハルヲフォンのヴァージョンを先に聴いて、そこから原曲が平山みきさんであることを知ったの。自分で言うのもナンだけど、ハルヲフォンよりもいい出来になったと思うわよ。

──全くの同感です。アレンジはどう固めていったんですか?

東雲:曲によって全然違うわね。『〜エンジェル・ベイビー』に関して言えば、ワタクシがキノコホテルを開業する前からあの曲をサーフ・インスト調にアレンジするという構想はあったの。実際、キノコホテルの初代メンバーでやったこともあるんだど、あまり上手く行かなかったわけ。そこへテケテケ・ギターが得意なケメが加入したから、これは丁度いいなと思って。

鴨川:テケテケしかできないものですから。

東雲:ケメのギターがハマって、思い描いていた通りになったわね。それで実演会でもやるようになったの。ケメが奏でる、あのピチャピチャ感が絶妙。

鴨川:自分の中ではアストロノウツを凄い意識したんですよ。リズム・ギターは絶対にアストロノウツのピチャピチャ感を出さなきゃと思って。結構難しいんですよ、アンプも昔のじゃないし。

──テケテケ・サウンドは今の季節にうってつけでもありますね。

東雲:そうね。最初は『〜エンジェル・ベイビー』と『ピーコック・ベイビー』のどっちを押しにするか迷ったんだけど、『ピーコック・ベイビー』はどれだけアレンジを施しても歌謡曲っぽいテイストが色濃く残ったし、『〜エンジェル・ベイビー』のほうが普遍的で間口の広さがあるんじゃないかと思ったのよ。

──原曲にはない、キノコホテル独自の色を出すポイントはどんなところだったんですか。

東雲:原曲はギターがクリーンだったり、オルガンが入っていなかったり、ラッパが入っていたりして、編成自体違うことが多いのよ。だから、どの曲もファズ・ギターやオルガンを入れただけで自然とキノコホテルの音になるという確信が何となくあるわけです。そういう確信の持てる曲を初めから選んだのだと思うわ。

──ケメさんが加入してもう1年半が経つし、アンサンブルも阿吽の呼吸なんでしょうね。

東雲:どうなのかしら。ワタクシはギターが全然弾けないので、ギターに関しては特に何も言わないの。ケメには「好きなように弾きなさい」と指示しておいて、最後に歌が乗った時に「この部分は要らないわ」と省いてもらったりするの。

──最後の最後にお気に入りのフレーズが省かれたり?

鴨川:そういうのはあんまない。不思議なところが使われたりするけど。



コーラスはすべてマリアンヌによる多重録音

──エマさんとファビエンヌさんは今回のレコーディングで自分なりの課題みたいなものがありましたか。

小湊:原曲をあまり聴かないようにして、支配人のやりたいアレンジを何となく聞いてイメージを膨らませるようにしました。

猪苗代:私はまず音を出してみて、「こうすれば格好良くなるんじゃないか?」っていう着想を得て一歩ずつ進んでいった感じですね。かなり行き当たりばったりですけど(笑)。

──支配人はエマさんとファビエンヌさんに対しては注文が多そうですね。

東雲:ええ、相当うるさいわよ。まず最初にリズムから作っていくので。

小湊:フレーズの指定は多いですね。それを元に自分なりに広げていきます。

東雲:ベース・ラインから浮かんでくる曲が多いのよ。

小湊:『ピーコック・ベイビー』もそうでしたよね。

東雲:そうね。ベース・ラインありきのアレンジは今回も多かったし、エマに「こういうフレーズを弾いて」と指示して発展していくケースがほとんどです。ベース・ラインが決まると、ドラムの方向性も自ずと決まるわけ。昔はワタクシがリズムを打ち込んできたものを聴かせていたんだけど、最近は機械に触るのが面倒くさくなっちゃって、全部口伝えでやっているの。そしたら余計手間が掛かっちゃって、どういうやり方が効率的なのか模索している状態かも。

──話を伺っていると、支配人は全然休日を取っている場合じゃないですね(笑)。

東雲:そうなの。時間の使い方がとにかく下手なのが玉に瑕だわ。

──支配人の電気オルガンも過不足なく配されていますが、これも緻密な計算の上に盛り込まれているんですよね?

東雲:計算に見せかけて、実際は単なる思いつきが多いんだけど。「ここはちょっと寂しいわね」と感じたところに音を入れてみたりとか。

──今回のアルバムは支配人の歌が妙味に富んでいて凄くいいんですよね。ミディアム・テンポのグルーヴィーな『ピーコック・ベイビー』の艶やかな歌声は特にグッと来ました。

東雲:『ピーコック・ベイビー』は自分でも気持ち良く唄えたと思うわ。石崎(信朗)さんという歌録りの上手いエンジニアのお陰もあるわね。あと、錚々たる顔触れが作詞・作曲に携わっているだけあって、どの曲も唄いやすかったし。

──『ピーコック・ベイビー』は作曲が小林亜星さんだったり、『〜エンジェル・ベイビー』は橋本淳さん&筒美京平さんというゴールデン・コンビが手掛けていたり。

東雲:小林亜星さんにはキノコホテルのCMソングを作ってもらいたいわね。

──朱里エイコさんの『イエ・イエ』とか日立グループの『日立の樹』(この木なんの木)とか、名作が多いですからね。軽快ながらメロディアスな『恋は気分』は支配人のコーラス多重録音が堪能できる逸品ですけれども。

東雲:『恋は気分』に限らず、コーラスはすべてワタクシがやっているのよ。コーラスはワタクシにとってレコーディングにおける個人的な楽しみのひとつなの。

──そこは他の従業員に任せられないと?

東雲:自分が好きでやっているだけよ。ステージではさすがに自分じゃできないから彼女たちにやってもらっているけれど、コーラスをやりたいがためにレコーディングをやっていると言っても過言じゃないわね。コーラスを録っている時が一番楽しいわ。自分の声ってつくづく変だと思うんだけど、声を重ねていくと気持ち良くなるの。まぁ、ワタクシ一人だけが勝手に喜んでいるだけです。

猪苗代:確かに、『恋は気分』は支配人のコーラスが聴き所ですね。妙に健康的で、歌のお姉さんみたいな感じがしますから(笑)。

東雲:その健康さが逆に気持ち悪い。そこをポイントとして聴いてもらえると嬉しいわ。

──勢い任せに暴走するライヴと、音を緻密に積み上げていくレコーディングは別物として考えているわけですね。

東雲:分けて考えています。潤沢な予算と時間があれば、もっと緻密なレコーディングをやりたいものだわ。



方向性が広がりつつある片鱗を見せた『山猫の唄』

──『恋はふりむかない』は往時の和田アキ子さんを彷彿とさせる重厚なリズム&ブルース・ナンバーですね。

鴨川:「ハッ!」っていうシャウトもあるし(笑)。

東雲:元々はそういうテイストの曲ではなかったんだけど、アレンジをした時にソウルフルな路線を狙った感は多少あるわね。原曲はもっと淡々としていて、聴かせても仕方ないからエマとファビエンヌには聴かせていないのよ。まるで印象に残らないし、こんなGSじゃ「そりゃ売れないわ」っていう感じだから。

──そんなしょぼい原曲をここまで聴かせるナンバーとして昇華させているわけですから、皆さんの技量とセンスが凄まじく高いことを証明していますよね。

東雲:まぁ、そういうことになるわね。原曲を参考にするような部分もなかったし、『恋はふりむかない』は今回の収録曲の中でも相当化けてかなりいい曲になったと思うわ。原曲の曲自体はいいんだけど、アレンジが完全にやっつけ仕事で冴えない感じがしたから。

──『謎の女B』はエマさんのベースがとりわけいい音の鳴りをしていますよね。スンズン腰にクるグルーヴィーさが心地好い。

東雲:『謎の女B』もリズムから作っていって、ああだこうだ言いながら試行錯誤したのよ。

猪苗代:最後の最後までリズムで苦戦した曲ですね。リズムしかないような淡々としたアレンジですから。凄い集中して叩いて、1テイク目で「私はこれでいいです」って言ったんですよ。この曲は何度も叩けないと思ったので。

鴨川:私はどの曲も重ねてますよ。多くて3回くらい。多分、全然気づかれないと思うけど。

東雲:まぁ、ギターは重ねる意味があるけど、リズムはテイクを重ねても大抵ドツボにハマるのがオチよね。

──『謎の女B』の原曲は、初代オバケのQ太郎の声優として知られる曽我町子さんが唄っていたんですね。僕らの世代は『電子戦隊デンジマン』に出てくる悪役・ヘドリアン女王のイメージが強くて、それも含めて支配人にピッタリだなと思ったんですよ(笑)。

鴨川:デンジマン? ヘドリアン? 全然知らない。

──でしょうね(笑)。しかし、この歌の歌詞も凄いですよね。のっけから「謎の女(B)僕をAとする/AとBがある夜会った暗いある酒場」ですから。AとBに設定する意味がまるで判らない(笑)。

東雲:歌詞はくっだらないわよね。どうでもいいことをもっともらしく唄っているという。でも、そんなチープさが愛おしかったりもするの。嫌いじゃないわ、そういう感じ。

──書こうと思ってもなかなか書けない歌詞ではありますよね。

東雲:そう。意味のない歌詞を上手く成立させるのって意外と難しいものなの。当時の歌謡曲をあまり意識しないようにはしているけど、触発される部分がやっぱりあるわよね。くだらない歌から正統派な歌まで、歌詞も曲もそれなりにクオリティが高いのは確かよ。やっつけ仕事も確かにあるけど、プロの作詞家なり作曲家がある程度のレヴェルまで持っていっているから。少なくとも昨今のJ-POPに比べていい仕事をしているし、そういう感覚を自分も持ち続けていたいとは思うわね。

──キノコホテルが只者ではないと改めて感じたのは、最後の『山猫の唄』なんですよ。ラウンジ風情で始まったと思いきや、最後はプログレ顔負けの怒濤のアンサンブルで幕を閉じるという。

東雲:プログレだの何だのはワタクシにとってはどうでも良くて、ああいう激しいインプロヴィゼーションがやりたかっただけなの。最近のキノコホテルはあの手のアレンジが好きで、やたらと尺が長いサイケデリックな曲をオリジナルでやったりもしているの。方向性が広がりつつある過渡期にあるのかしらね。その片鱗を見せる曲があってもいいかなと思ったわけ。『山猫〜』は元々あんなふうに展開する曲じゃないんだけど、思いつきでああいうアレンジにしてみたのよ。

──今はジャム・セッションっぽい曲が増えつつあると?

東雲:そういう曲ばかりじゃないんだけど、インプロヴィゼーションみたいな曲をずっとやりたいと思っていたの。30分通して、ワタクシは一切唄わなくてもいいとすら思っているくらい。まぁ、観衆がそれを見てどう感じるのかは判らないけれど。



海外で消息不明になって伝説のバンドに!?

──なるほど。次のオリジナル作品を予見する橋渡し的なニュアンスも本作には込められているわけですね。

東雲:次なる作品をどういう方向性にするかはまだ決めていないんだけど、『マリアンヌの憂鬱』からいきなり次の作品に行くよりも、『マリアンヌの休日』みたいな作品を挟むことでキノコホテルの多面性を出したほうがいいと思ったわけ。ワン・クッション置く意味でも、こういうタイミングで『マリアンヌの休日』を出すのは結果的にいい流れだなと思って。

──本作のようなカヴァー・アルバムならぬ“昇華アルバム”は今後も是非発表し続けて頂きたいですね。まだまだレパートリーはふんだんにあるでしょうし。

東雲:ご期待に添えたいわね。カヴァーはこれからも新しいのをやっていくと思うので。ただ、それを作品として昇華する時にオリジナルと混ぜたくはないのよ。こうやって時々『マリアンヌの休日』みたいな作品をオリジナルの間に発表していくのは、ひとつのスタイルとして悪くないのかもしれないわ。

──現段階で出来つつある新曲は、やはりスペイシーでサイケデリックな類のものが多いんですか。

東雲:そうでもないです。どんなふうに整備していこうかとワタクシの頭の中で考えあぐねているところなの。

──支配人の脳内の設計図がまとまらなければ、従業員の皆さんも動きようがないですね。

鴨川:そうですね。歌がないと、私が一番動きようがない。

──じゃあ、支配人には早々にバカンスを切り上げて頂かないと(笑)。

東雲:切り上げるも何も、まだ何処にも行ってないわよ! 嗚呼、バカンスが恋しいわ…。

──追い打ちを掛けるようで申し訳ないですが、ミニ・アルバムが続いているので、ぼちぼちフル・レングスのアルバムが聴きたいところですけど。

東雲:ワタクシも聴きたくてよ。『マリアンヌの憂鬱』はその時点であった曲、実演会でやり慣れた曲を詰め込んだけど、その次の作品はそれなりの進化を見せつけたいと思うし、今はその進化をどう形にするかをじっくりと考えているところよ。

猪苗代:同じことばかり続けていると煮詰まるので、実演会でもちょっとアレンジを変えたりしているんですよ。既発の曲でも少しずつ更新していると言うか。

──でも、あまり変えすぎると後で支配人からヤキを入れられそうですけどね(笑)。

小湊:まぁ、そうですね(笑)。

猪苗代:「このパートは私なりに変化を試しているので、ダメならダメと言って下さい」とは言ってるんですよ。

東雲:試したいのなら「どうぞやってごらんなさいよ」って言うけれど、気に入らなければハッキリと「イヤだ」って言うわよ。格好良く変えてくれるのなら全然構わないわ。

──秋にはドイツ・ベルリン〜ポーランド・ワルシャワという海外での実演会も予定されていますが、これは遅延となっている支配人のバカンスを兼ねたものなんですか。

東雲:そんなところね。でも、せっかくのワタクシのバカンスにこの3人が付いてきちゃうんだからウンザリだわ。個人的に東ヨーロッパへ行きたいと思っていたのに、周りの狡賢い大人たちの策略でツアーにされてしまったのよ。バカンスに重たい楽器を持っていかなければならないなんて、エラく不本意よ。

──敢えて東ヨーロッパを訪れる日本のバンドも珍しいですよね。

東雲:スターリンがやっていたわよ。ベルリン〜ワルシャワっていうコースで回ったことがあったわね。

──スターリン、キノコホテルとはコケシ繋がりですね(笑)。今はMySpaceもあることだし、異国の観衆も違和感なく受け入れてくれそうですけど。

東雲:どうなのかしらね。全くもって謎だわ。海外での実演会はこれが初めてなんだけど、果たして無事に帰ってこれるのかしら。そのまま消息不明なんてことになれば、伝説のバンドになれるかもしれないわ(笑)。あるいは、現地の殿方と恋に落ちて亡命するのも悪くないわね(笑)。

──その恋を肥やしにして、またいい歌を聴かせてくれるのなら大歓迎ですけど(笑)。

東雲:ドイツ語の歌なんて、『ジンギスカン』くらいしか知らないけどね(笑)。



秋の東名阪実演会は社運を賭けた一大事業

──ところで、最近は単独実演会も軒並みソールド・アウトじゃないですか。そろそろもっとキャパの大きい会場でやってもいい頃なのでは?

東雲:そうねぇ…JAMやQueくらいの規模をソールド・アウトできないと、先がないのでね。有り難いと思う反面、それくらいできないと…。今は10月のLOFTやQUATTROがどうなるかってところね。

──LOFTのキャパ550人、今のキノコホテルの勢いなら行けるでしょう。何せサブタイトルが“秋の人間狩り”って言うくらいですから(笑)。

東雲:狩って狩って狩りまくってやるわよ。ついでに血を吸い取って差し上げるわ。

──血ィ吸うたろか!? と(笑)。

小湊:あれ、寛平ちゃんになっちゃった(笑)。

──と言うことは、秋の東名阪実演会の動員が来年以降の活動を左右することがあるやもしれぬと?

東雲:そうよ。これでコケたら廃業の危機に追いやられるかもしれないの。キノコホテルの社運を賭けた一大事業なのよ。そのためにもいろんな仕掛けを施したいものだわね。

──新曲も期待できそうですか?

東雲:どうかしら。その頃にはぼちぼちレコーディングに入る予定なので、曲が出来ていないとマズイわよね。

──ドイツの殿方と恋に落ちてる場合じゃないですね(笑)。

東雲:ええ、全く。キノコホテルの事業も拡大していきたいところだけど、ガツガツしているのはワタクシくらいで、ウチの従業員はとにかくのんびり屋だから。

猪苗代:何事もバランスが大切ですから(笑)。

──従業員の意識改革から始めないといけませんね。

東雲:教育するのも面倒。文句は散々言うけれど。ウチは割と風通しの良い自由な社風なのよ。

──ホテルの改装計画のご予定は?

東雲:地下2階に“NAMECO”というラウンジを作ったわ。今回のアルバムはそこで録ったのよ。

──キノコだけに“NAMECO”と。屋上のスペースも有効活用したいですね。

東雲:今の季節柄、ビアガーデンを作るのもいいわね。真っ昼間から一人でビールを呑んで、ハワイアン・バンドに演奏をさせて。

小湊:宿泊客のためじゃないんですね?(笑)

東雲:当たり前よ。ワタクシのためだけにある私設ビアガーデンなんだから。

──ちなみに、“NAMECO”の上の地下1階には何があるんですか?

東雲:この子たち3人が寝泊まりする相部屋が隅っこにあるわ。地下だから窓がない上にコンクリートの打ちっ放しなので、夏は死ぬほど暑いし冬は異常に寒いのよ。あと、同じ階に源泉かけ流しの巨大な浴場があるわね。そこはワタクシだけ使うことが許されているの。

小湊:それじゃ私たちの相部屋、湿気が凄いことになるじゃないですか(笑)。

東雲:別にいいじゃない。キノコは湿気が好きでしょ(笑)。



マリアンヌの休日

01. 真夜中のエンジェル・ベイビー(作詞:橋本淳/作曲:筒美京平)
02. ピーコック・ベイビー(作詞:東大寺千弘/作曲:小林亜星)
03. 恋は気分(作詞:なかにし礼/作曲:井上忠夫)
04. 恋はふりむかない(作詞:阿久悠/作曲:三木たかし)
05. 謎の女B(作詞/作曲:平岡精二)
06. 山猫の唄(作詞/作曲:TEN LITTLE INDIANS)
*映像作品『真夜中のエンジェル・ベイビー』収録(CD-EXTRA仕様)
WAX RECORDS/徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-73550
2,100yen (tax in)
2010.8.04 IN STORES

★amazonで購入する

実演会 info.

8月1日(日)名古屋得三[単独公演]
8月13日(金)RISING SUN ROCK FESTIVAL 2010 in EZO
8月19日(木)下北沢CLUB Que[with:KING BROTHERS]
8月22日(日)大阪Shangri-La
9月5日(日)下北沢CLUB Que[黒沢 進トリビュート]

サロン・ド・キノコ〜秋の人間狩り〜
10月3日(日)大阪 心斎橋CLUB QUATTRO[単独公演]
10月9日(土)新宿LOFT[単独公演]
10月17日(日)名古屋CLUB QUATTRO[単独公演]

キノコホテル official website
http://www.kinocohotel.com/

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