WE'RE THE MOTHER of MEATLOAF!
1991年に結成され1994年にレコードデビューしたSUPER JUNKY MONKEY。ボーカル・MUTSUMI、ギター・KEIKO、ベース・かわいしのぶ、ドラム・まつだっっ!!の女性4人によるこのガールズバンドは、当時世界的に勃興していたオルタナティブ・ロックシーンで頭角を現し、最もライブハウスのフロアを熱狂させるバンドとして国内はもちろん海外にもその名を轟かせた。アルバムを出す毎に音楽的進化を続け、ジャンルを越えて多くのファンを獲得したSUPER JUNKY MONKEYだが、1999年にMUTSUMIが不慮の事故で亡くなったことで、突然その活動が止まってしまった。
それから10年。3人のメンバーによる10年ぶりのSUPER JUNKY MONKEYのライブが、2009年6月20日に朋友WRENCH、JASONSらと共に行われた。『SONGS ARE OUR UNIVERSE』と題されたこのライブは、当時を知る者から、バンドの名を伝え聞いたネクストジェネレーションまで幅広い層に迎えられ、10年のブランクを微塵も感じさせない驚くようなライブパフォーマンスが繰り広げられた。不世出のボーカリストMUTSUMIは目の前からはいなくなったが、彼女は歌(SONGS)の中に確かに存在し、KEIKO、しのぶ、まつだっっ!!のパフォーマンス、そしてオーディエンスの熱狂により表出した世界(UNIVERSE)では、MUTSUMIが“今、ここ”にいることを誰もが感じていただろう。
この奇蹟のような一夜が今回DVDとなってリリースされることになり、その発売を記念して8月3日にはCLUB QUATTROでまさかのライブが開催される。さらに7月30日にはフジロックフェスに出演することも決定した。SUPER JUNKY MONKEYを再び体験することができる絶好の機会を前に、ベースのかわいしのぶにお話を伺った。(Text:加藤梅造)
お客さんがこの日を待っててくれた
──まずは昨年の6月20日に行ったSUPER JUNKY MONKEY 10年ぶりのライブについて、どういう経緯で開催が決まったのかを教えて下さい。
しのぶ 一昨年(2008年)の末頃に「来年でMUTSUMIが亡くなって10年だね」「なんかやったりするかねえ」って話をなんとなくしていて、それでだんだん具体的になり年明けに「やってみるか」と。一番の問題はギターのKEIKOがアメリカ在住という所だったんだけど、ちょうど赤ちゃんが2月に生まれるからその後なら子供も連れて日本に来れそうということで。
──それまでは再結成の話はなかったんですか?
しのぶ 全然なかった。周囲の人達も、SUPER JUNKY MONKEYが新しいメンバーを入れてやることはないとわかっているから、そういう話は出なかったんだと思う。
──実は僕もSUPER JUNKY MONKEYが再びやることはないと思ってました。
しのぶ 私もやらないと思ってた(笑)。やりたくないってことじゃなくて、多分ないだろうなと。
──1999年5月の「MUTSUMI TRIBUTE」のライブはこれで最後という感じだったんですか?
しのぶ 終わったという感じもなくて、ずっとほうりっぱなし? だから今回10年目という区切りがあったから、みんなだんだん「やっちゃう?」っていう雰囲気になったと思います。
──やるとなったら練習もしなければならないですよね。
しのぶ そう!それが大変で。KEIKOが来日できるのがライブの1週間前で、実質4日ぐらいしかリハをできなかったんです。その前に一度、松田と2人でリハした時はお互い大丈夫かいなという感じがあって、3人の音が合うかどうか心配だったんですが、やってみたら息がすぐあったんです。それよりも問題は3人の体力と持久力で…。今、10年前みたいにライブをやったら死んじゃうなって思いました。若いうちにやっといてよかった〜(笑)。いつもうちらのライブはお客さんがステージに上がってきたりメンバー同士もガンガンぶつかったりと全力で汗まみれのライブばかりだったので、いつになったらテレビで観るようなバンドみたいにのんびり落ち着いて演奏できるのかなってよく思ってました(笑)。楽しいんだけど、いつまでこのいっぱいいっぱいのライブが続くのかなって。
──客としても同じことを思ってましたよ。自分の体力がいつまで持つのかって(笑)
しのぶ 見る方もたいへんだよね。うちらチビッコだから前にこないと見えないですもんね。
──しのぶさんはこの10年間、フリーのベース奏者として多くのユニットやセッションをこなしてきてますが、SUPER JUNKY MONKEYとして10年ぶりの演奏はどうでした?
しのぶ 全然違いましたね。それは意外だった。10年間いろいろな形でやってきて、演奏自体のプレッシャーはなかったんですが、SUPER JUNKY MONKEYの場合は、いつもと違う何かを使わないといけないバンドなんだなと。殺伐としてるわけじゃないけど、ほんわかとしたコミュニケーションじゃないんです。考えるよりも先に突進していく感じ? 闘っている訳じゃなくて、全員がそれぞれ自分の真っすぐさで向かっていかないと振り落とされてしまうような、オチオチしていられない感じがありますね。
──ライブの選曲はどのように決めたんですか?
しのぶ まずはKEIKOがギターを弾きながら歌える曲で、しかも今の体力でやれる曲(笑) あとは3人で演奏してもカッコよく聞こえるものに。
──KEIKOさんがギターのリフを弾きながら歌うという制約がありながら、それでもいわゆる代表曲が揃いましたね。
しのぶ KEIKO、ほんとうにすごいよね。
──10年ぶりのライブをやってみてメンバーのみなさんはどうでした?
しのぶ とにかく6月20日のライブはものすごくハッピーだった。正直、メンバーもあそこまで盛り上がることは想像してなかったし、あれだけのお客さんがこの日を待っててくれたというのが本当にありがたいことだなと思いました。
ある意味、これは予想外の展開
──そして昨年のライブがDVDとして発売となり、その発売記念ライブが決まったわけですが、この展開は嬉しいですね。
しのぶ 去年のライブが終わってまたできたらいいなと思ってたけど、それが翌年に実現するとは思ってもなかった。もともとDVDを出す予定はなかったので。
──ライブの時点ではDVD化の予定はなかったんですか。出してくれてよかった!
しのぶ そこは小林社長の決断が大きいですよ。 小林由紀夫(3rd Stone From The Sun代表) やっぱりライブがすごくよかったからこれはちゃんと残したかったし、3人の演奏でも全然OKだというのを自信を持って出せるなと。ある意味、これは予想外の展開なんです。
しのぶ そう、DVD発売も予想外でしたが、またその発売記念ライブまでやろうっていうのがね! しかもフジロックの出演まで決まって。
──ファンとしてはめちゃめちゃ嬉しいニュースですよ。今まで、MUTSUMIというボーカリストがあまりにも凄すぎて彼女がいないバンドが想像できなかったんですが、3人のSUPER JUNKY MONKEYというのも充分すごいんだってことを去年のライブでまざまざと見せつけられて。だからこそ、もっとライブをやって欲しいという声があちこちからあがったし、今後の活動にもつい期待してしまうんです。
しのぶ 今後の活動というのは正直何も考えてなくて、今回も一部では「復活」みたいに言われてますけど、活動再開となるとやっぱり曲も作りたくなると思うし、まだそこまでの気持ちにはなってないと思うんです。今回のライブも去年と同様すごく楽しみだけど、先のことは何も考えてない。
──去年から1年後にまたライブが見れるだけでもありがたいことです。
しのぶ 10年ぶりにライブをやったことは自分にとっても衝撃で「そうか、こういうことだったんだ!」と改めて自分たちのやっていたことがわかったんです。だから今こうしてライブができることによってSUPER JUNKY MONKEYが「過去のバンド」じゃなくなって欲しいという気持ちがあります。確かにMUTSUMIが亡くなってしまってバンドも止まってたんですが、自分の中では過去のバンドという気持ちはなかったので。昔を知らない人が今のライブを見たことをきっかけにさかのぼって聴いてもらえたらいいなと思います。
──しのぶさんの中ではずっと進行型だったんですね。
しのぶ 10年間1回もやってないのにね(笑)。でも、かわいしのぶって誰?って聞かれたときには、SUPER JUNKY MONKEYのかわいしのぶなので…。なんかね、地球に帰還したみたいな感じです。宇宙を旅して地球に帰ってきて改めて「あー、こういう星だったのか!」って(笑)。
常に先へ行くMUTSUMI
──今回DVDの他にCDとして1998年9月のロンドン・アストリアホールでのライブ音源が全曲収録されてますが、これがまた貴重ですね。MUTSUMIさんの死後、SUPER JUNKY MONKEYの未発表音源としてリリースされた未完のアルバム『E・KISS・O』のライブバージョンとも言えるもので。
しのぶ 私は『E・KISS・O』に入っている曲がすごく好きで、この先を聴きたかったという気持ちはありますね。自分でいうのもなんですが、今出したら売れると思います(笑)。『E・KISS・O』に入ってるのは1曲目以外すべてデモとして録音したもので、中でも「Towering Man」は録音当日にMUTSUMIが「こういうの考えてきたんだけど」ってメロディを持ってきたので、その場で新しいリフやアレンジを作って、できたてをそのまま録りました。
──僕はこの『E・KISS・O』のデモ音源が最終的にアルバムとして完成したらすごいものになったと思うんです。ミニアルバム『SUPER JUNKY ALIEN』がさらに進化を遂げたんじゃないかと。
しのぶ MUTSUMIは常に先に先に行くタイプだったんです。メンバー全員が納得できるような曲が完成した頃にはMUTSUMIは次に興味がいっているということの繰り返しで、この時も私は曲を作りながら頭が追いついていなかったんです。MUTSUMIの中にはイメージが広がっていたんだと思うんですが。
──SUPER JUNKY MONKEYはアルバムを出す毎に進化していましたが、『SUPER JUNKY ALIEN』と『E・KISS・O』はとりわけ変化の度合いが大きかったと思います。
しのぶ 初期のハードコアっぽい曲が好きな人にとってはその辺りから賛否が分かれたんじゃないかな。その頃は、1曲1曲というよりはアルバムまるごと、ライブまるごとで何かをやろうとしてたんだと思う。
──それが「何か」というのは?
しのぶ 少なくとも私はよく分かってなかった(笑)
──そう聞くとなおさら『E・KISS・O』の完成型を聴いてみたかった! そういう意味でも、今回その一端を伺い知ることができるライブCDが収録されてすごく嬉しいです。
小林 このロンドンのライブはメンバーもすごく気に入っていたから今回出せて本当によかった。
──ほかにもDVDの映像特典として、初期SUPER JUNKY MONKEYのビデオ作品『キャベツビデヲ』が収録されているのも得した感じです。僕もVHSで持ってますがまさかDVD化されるとは思ってなかった。
しのぶ この前、シェルターでDVDの上映会(6/19深夜開催)をやった時、あんなに大勢でこの『キャベツビデヲ』を観てるのがすごく可笑しくて。それもみんな真剣に観てるから(笑)。曲に合わせて叫んでいる人もいて、SJMのお客さんさすがだなって。
小林 これがライブ録音というのが今思うとすごいね。
しのぶ 上手いんだよあの頃!(笑)。今の十倍ぐらい上手かった。
小林 当時、ライブ録音を残しておきたいということで録ったんだけど、結果的によかった。ライブはごまかしがきかないから。
──あえてライブ録音だったんですね。
しのぶ あとMUTSUMIがメジャーで出す前にインディーズで出したいというのにこだわってたんです。
──なるほど。でもライブCDは分かるんですが、ビデオ作品までインディーズでよく出しましたね。ライブとは別にビデオ撮りもしている訳ですから。それもキャベツの山に埋まったり着ぐるみで演奏したり(笑)
しのぶ メンバーからはそういうアイデアがいっぱい出てくるんです。あれもやりたいこれもやりたいと。そういうアイデアをちゃんとやってくれるスタッフに恵まれてたんです。普通だったらキャベツ百個も買うぐらいならもっと別の所にお金使えよってなりますよね。
小林 出てくるアイデアがみんな面白かったから、どんどんやっちゃえと。
しのぶ それでメンバーがどんどんわがままになっていったんですよ(笑)
引力が働いている方向がきっとある
──ともあれ6月にDVD発売、7月30日にフジロック出演、8月3日に発売記念ライブとにわかに慌ただしいSUPER JUNKY MONKEYですね。
しのぶ 今度のライブについて言うと、いま行こうかどうか迷っている人がいたら、是非観に来た方がいいですよ。次いつあるかわからないですから。あとその時に体力があるかどうかも…(笑)
──それ以降の活動については白紙なんですか?
しのぶ そうなんですよ。何か決まってたらお知らせできるけど……ホント何もなくて。
──でもこれで終わらないような予感もしますが。
しのぶ ああ、わかります。その時になってみないとどうなるかわかりませんが。
──あとは運命に委ねるしかないって感じですか?
しのぶ カッコよく言うとそうかもしれない。音楽をやっていくって、そういう所があると思う。20代の頃は全部自分でコントロールできてると思い込んでいたものが、ある時点から、よくも悪くもその人の道がある気がする。他の道も選べるかもしれないけど、委ねたときに引力が働いている方向がきっとあると思うんです。SUPER JUNKY MONKEYに限って言えば、ガンガン活動してた時どういう気持ちだったか思い出せないけれど、いま音楽ってもの自体をやる感覚は、当時とは明らかに違ってますね。運命的なものがあるとしたら、また(SUPER JUNKY MONKEYを)できることが単純に嬉しいし、いま自分が楽器を演奏していることが幸せだと感じることですね。それは委ねる感じかもしれない。
──僕は去年のライブを体験して、SUPER JUNKY MONKEYという存在が思ってた以上に大きかったんだと個人的にも客観的にも思いました。運命として見れば、MUTSUMIさんももちろんいるし、お客さんもスタッフもずっとそこにいるんだなって。
しのぶ 私もそう思う。去年やった時から、SUPER JUNKY MONKEYというバンドを客観的に見てる自分とバンドの中でやっている自分と両方いるのかもしれない。客観的な自分は10年以上前のMUTSUMIがいる自分たちを見てるし、現在進行形でやっている自分もいる。そういう2つの感覚がありますね。
小林 去年やった時はまだそこまで客観的になってなかったかもしれないね。だから今年のライブは去年とは見え方が全然違うんじゃないかな。
しのぶ うん、今年はまた今年のライブなんだろうね、きっと。
『SUPER JUNKY MONKEY LIVE』(DVD+CD)
-WE'RE THE MOTHER of MEATLOAF! HYPER COLLECTION-
JHBA-623 3,990yen(tax in) / IN STORES NOW
(収録内容)
DVD
「Songs Are Our Universe」LIVE at 恵比寿リキッドルーム(2009)
「キャベツビデヲ」インディーズ時代ビデオクリップ集(1993)
「LIVE COLLECTION」1993〜1998までのライブ映像集
CD
「J-Beats」でのライブ全曲(1998、ロンドン・アストリアホールでのTV収録ライブ)
Live info.
8/3(火)SHIBUYA CLUB QUATTRO
We're the Mother of Meatloaf!
スーパージャンキーモンキーDVD発売記念LIVE
(出演)
SUPER JUNKY MONKEY
Buffalo Daughter
opening guest:BO-PEEP
18:00/19:00 前売4,000yen(tax-in)
7/30(金)FUJI ROCK FESTIVAL出演