masa
part of bass
論理性と非論理性が共存した才人のイデオロギー
最初はインストが何なのか判らなかった
──konoさんと共にオリジナル・メンバーであるmasaさんも、残響以外からアルバムを出すことは予想外の展開だったのでは?
m:予想外どころか、残響以外でやるくらいなら僕は結成当初にバンドを辞めてましたね。他社でやる以上はお仕事になるし、面白くできなくなると思ってましたから。僕は基本的にやりたいことしかやりたくないんですよ。でも、徳間ジャパンは理解のある会社だったので、まぁいいかなと。
──te'の結成前からkonoさんとは友人だったんですか。
m:いや、全然。対バンをして、その打ち上げで仲良くなるのが普通じゃないですか。でも、当時の僕はバンドマンとは仲良くなりたくなかったんですよ。打ち上げの席でも隅っこのほうでずっと本を読んでる感じだったので。それがある日、konoさんからバンドを一緒にやらないか? と唐突にメールが来たんです。konoさんが前にやってたバンドを僕が客として見に行っていて、向こうからしたら俺が誘えばこいつは乗ってくるだろうと思ったんじゃないですかね。
──masaさんのベース・プレイに惚れ込んでいたからこそじゃないですか?
m:プレイと言うよりも、僕の志向性だったんだと思いますよ。僕がkonoさんのバンドを見てて思ったのは、上手いんだけど地味だし、これじゃ客は付かんだろうなと。僕は一般人にアピールするのを重視してバンドをやっていたので、そういう志向を採り入れたかったんじゃないですかね。konoさんは今も昔もプロデュース能力が凄いし、インスト・バンドを一般的なリスナーに伝えるには僕みたいなのがいるといいし、自分と噛み合うと思ったような気がします。
──masaさんにとってもインスト・バンドは初だったんですか。
m:初でしたね。バンドに誘われた時、インスト・バンドが何なのか判らなかったですから。インストっていうのはハードコアみたいなひとつのジャンルで、てっきりヴォーカルもいるものだと思ってたんですよ(笑)。でも、当時はまだ若かったしプライドもあったので、「インスト・バンド? いいですね、ちょうど俺もやりたいと思ってたんですよ」なんて答えちゃったんですよね(笑)。スタジオに入った時に「で、ヴォーカルは誰なんですか?」って訊いたら、「ん? 歌がないからインストなんだよ」って言われて驚いて(笑)。僕に関してはそんなレベルだったんですよ。ポップスとかにしか興味がなかったし、音楽自体、あまり聴いてなかったんです。それよりも本を読んでるほうが楽しかったし、テレビをつけたら流れてくる音楽が音楽だと思ってましたからね。
──楽器を弾こうと思ったのは何がきっかけだったんですか。
m:楽器は高校3年の終わりから始めた遅咲きなんですけど、当時の僕は大学へ行くほど頭も良くない、かと言ってサラリーマンをやってる自分の絵がどうも浮かばないと。それで専門学校へ行くことにして、ある時にいろんな専門学校が載ってる本をバーッと開いたら、そのページがたまたま音楽学校だったんですよ。それを見て、自分はミュージシャンになろうと思ったんです。
──若気の至りとはまさにこのことですね(笑)。
m:ホントですよ。ミュージシャンを夢見て試行錯誤してるのにCDを出せない人が多い中で、僕は流れ流れて気が付いたらこの徳間ジャパンの会議室にいるわけで、ちょっと申し訳ない気持ちもありますね(笑)。野心も特になく、何となくここまで来ちゃったので。だって、チューニングっていうのがあることを知ったのは、楽器を始めて1年後ですからね(笑)。
──最初からベースだったんですか。
m:ベースでしたね。最初の半年くらいはそれをギターと思って弾いていたんですけど(笑)。
テンポ良く読める文章にはリズムがある
──それじゃインスト・バンドなんて言われても、何のことやらさっぱり判らないですよね(笑)。
m:僕の場合、インスト・バンドっていう括りでやってないのがひょっとしたらいいのかもしれません。バンドっていうのは表現ですよね。表現する以上、4人いるんだったら一番目立ったほうがいいと思いながらフレーズを作ったり、パフォーマンスをやってます。全員がそういうつもりでいるから歌の入る余地がないような気もしますね(笑)。歌モノのバックはある程度演奏を抑えなきゃいけないし。でも、そういうのをやっても面白くないんですよ。
──独学でベース奏法を体得したんですか。
m:独学でしたね。音楽もあまり聴かないから、僕は理論で埋めていくんですよ。konoさんが押さえるコードをジーッと見て、“Cって言うけどナインスが入ってるぞ”とか思いつつ、“こういう響きが欲しいんだろうな”とフレーズを考えるんです。こことここにtachibanaさんがキックを叩くから、“この辺にルート音が欲しいんだろうな”とか考えながら埋めていく。それで8割方は出来ちゃうし、苦戦する曲って滅多にないんですよ。フレーズが確定するのは大抵最後だから、みんなの音を聴いて自分がやるのはこれだなっていうのが8割方、あとの2割ちょっとは感性で弾いてますね。
──長尺なタイトルの考案者であるmasaさんがそんなに理詰めで弾いているとは意外でした。
m:よく勘違いされるんですけど、僕は超理系なんですよ。あの長文タイトルに関して言えば、まだte'を3人でやってた時にシングルを出すことになって、「日本語で長いタイトルはどうですか?」と僕が提案したんです。当時、僕は古本屋で働いていて、そういうのが面白いんじゃないかと思って。最初に10文字くらいのを考えたら、konoさんが悪ノリして「その倍くらいあっても面白いんじゃない?」と。それで20文字にしたら、「ここまで来たらもっと長いほうがいいね」ってことになったんですよ。出す以上は目立ったほうがいいと思って最初は始めたんですよね。
──それがいつしか、曲名は30文字、アルバム・タイトルは29文字の定型になったと。
m:ひねくれ者なので、自分で勝手に括りを付けたんですよ。単純に長いだけなら誰でもできるし、文字数がいつも一緒なのは相当難しいだろうと思って。セカンド・アルバムのインタビューの時に僕が文字数の縛りを言ったらみんな驚いて、そこで初めてメンバーも知ったんですよね。面倒くさくなって今はやめましたけど、昔はネットで日記や小説を書いていて、ずっと書き続けていると文章にもノリがあることに気づくんですよ。テンポ良く読んでいける文章って、ある程度同じ長さになるんですよね。大概、28〜32字くらいにまとまるんです。それが面白くて、全く同じ文字数で日記を書いたりもしたんですよ。
──確かに、面白い文章にはちゃんとリズムがあるんですよね。
m:そうなんですよ。内容が面白いんじゃなくて、読んでいける文章はリズム感がいいから先に進んでいけるんです。古典文学でも、「古本屋の店主が若い娘に恋をした」っていう一言で終わるような内容を一冊にして書いてますけど、リズム感と対象の捉え方が素晴らしいんですよね。エンターテイメントとして優れているかと言えば実はそうでもないってところが僕は好きなんですよ。それで本をよく読んでいたんです。そんな僕の嗜好が最大限活かされているのがte'のタイトルなんでしょうね。
──いつもどんな感じでタイトルを命名しているんですか。
m:スタジオの様子を観察しつつ、どんな方向性で行こうとした曲なのかも踏まえつつ考えてますね。曲が出来たら、礼儀として1曲につき1日を取るんですよ。同じ曲をずっとリピートで聴きながら、そこで思い浮かぶ言葉は何だろう? といろいろ考えながらパソコンで打っていきます。バーッと挙げた言葉を選んで、それに対して10パターンくらいの文章を作って、そこからさらに精選する感じです。曲は感覚で聴かずに、ちゃんと身体に入り込むまで聴くんですよ。曲が染み込んだ時にどんな言葉が降ってくるのかというのが僕のやり方ですね。
言葉に対する並々ならぬ思い入れの深さ
──よく言葉が被らないなと思わず感心してしまいますけど。
m:誰かっぽい文体になったりすることはありますけど、被りませんね。僕は本を読むのが好きで、昔は年に換算すると200冊ちょっと読んでたんですよ。読み過ぎて病院送りになったくらいですから(笑)。
──僕は無学なもので、“誤謬”(ごびゅう)という言葉は今回のアルバムで初めて知りました(笑)。
m:難しいといろんな人から言われるんですけど、どれも意識しないで出てくる言葉なんですよ。いろんな本を読んできたし、古本屋で働いてた環境もあるんでしょうね。レジの後ろに辞典が並んでいて、古い本を読んでいて判らない言葉があるとすぐに調べられたんです。そんな毎日を何年も過ごしていたのもあるし、これでも僕の中では判りやすい言葉でまとめたつもりなんですよね。
──28〜32文字で文章を作るのはお手の物でしょうけど、そこから30字きっかりに収めるのが大変そうですね。
m:28〜32文字で作る癖が付いてるので、実はそんなに苦じゃないんですよ。この作業も6年間続いてますしね。
──これまで命名したタイトルの中で、ご自身でも会心の作だと思うものは?
m:今度のアルバムの中の曲ですかね。今作から自分で造った言葉を使い出したんですよ。“天涯万里”や“勝望美景”という四字熟語は存在しないですから。
──と言うことは、“酒食音律”も…。
m:造語です(笑)。“天涯万里”は上から下まで、右から左まで…つまり世界全体を指す言葉なんですね。それを表す四字熟語がないなら、自分で造っちゃえばいいやと思って。今までは日本語の枠内でタイトルを付けたほうがいいと思ってたんですけど、メジャー作品なのにない言葉を使うのも面白いと思って造語に踏み切ったんですよ。今まではインディーだったので躊躇していたところがあったし。
──ここまで来ると、もはや完全にアートの世界ですね。
m:自分で言うのも何ですけど、言葉に関しては残響のどのバンドよりも思い入れが強いと思いますね。
──インストという言葉のないバンドがタイトルの上では言葉に重きを置いているのが面白いですよね。
m:言葉が得意でインスト・バンドをやってるなんて、自分でもロックだなと思いますよ(笑)。
──海外リリース盤の表記はどうなっているんですか。
m:アメリカ盤は英訳のタイトル、台湾盤は日本語のままなんですけど、僕は翻訳してないんですよ。日本人だし、日本語が一番素晴らしいと思っているので。まぁ、基本的に英語ができないのもありますけど(笑)。
──masaさんの理詰め奏法も本作でいよいよ極まった感はありますか。
m:どうでしょう? 以前に比べてちょっと素になった気がしますね。1曲目の『決断は無限の扉を〜』は完全に僕主導で作らせてもらったんですよ。素材を録ってもらって、後は好きなように作らせてくれっていう。僕が一時期異常に凝ってた変拍子の曲をやりたいと思って、最初はもっと複雑な拍だったんです。それが何が何だか判らない状態になったので、プリプロでもほぼ詰めてない状態で録った素材をエンジニアと話し合いながら作っていくことにしたんですよ。理詰めなので、そういう作業が楽しいんですよね。とは言いつつ、te'はライヴ感にこだわるバンドだし、僕自身もライヴをやるのは好きなんですけどね。
──ライヴもそうなんですけど、理詰めの対極にあるtachibanaさんのドラムと上手いこと噛み合っているのが面白いなと思って。
m:多分、全然違うベクトルだからこそ噛み合うんでしょうね。tachibanaさんは自由に叩くんですけど、ノッてくるとスネアやキックを入れる拍が大体読めてくるんですよ。たとえばtachibanaさんが叩いてないところに僕が入っていって、それが多少ズレたとしても、クリック上でヨレてなければ曲としては成り立つんですよね。あと、ドラムとベースがたまに偶然バコッと合うことがあって、そういう時はtachibanaさんと2人で「神懸かってますねぇ…」なんて話してますけどね。違うルートを通ってきたのに同じ点で着地するのは面白いですよ。今作くらいからそういうのが増えましたね。
わがままと自由にやることは全然違う
──常にバンド全体を俯瞰しているmasaさんの冷静な視点があってこそなんでしょうね。
m:僕は俯瞰でしかバンドを見れないですね。さっきも言ったように、一番年下のくせに僕はやりたくないフレーズをやらないんですよ。そこは周りが大人なので助かってますけど、ベーシストが全体を俯瞰で見れていないとバンドとしては成立しないと思っているんです。でも、te'の場合は僕のやりたいことが意外と通ったりするんですよ。だから凄くやりやすいですね。音楽的に判らないことは、放り投げておけば3人が勝手にやってくれるし(笑)。
──一番やりたくないのは、単調なルート弾きとかですか。
m:ルート弾きも自分っぽいならいいんですけど、自分っぽくないであろうことを強要されるのがイヤなんですよ。「そこでレゲエのフレーズを入れるのがmasaっぽいよね」って言われて、自分もそう思うんならいいんですけど。
──最後の『参弐零参〜』には途中でレゲエのフレーズも出てきますね。
m:そうですね。でも、僕はレゲエなんてひとつも聴いたことがなくて、イメージの中のレゲエを総動員して弾いてるんです(笑)。ベース・パターンも判らないけど、こんなノリだってことはここにルートが入ってるはずだという論理でやってますね。
──ここまで来たら、ルーツ・ミュージックは一切聴かないほうが良さそうですね(笑)。
m:そのほうがいいですね。そういうのを一切聴かない奴でも徳間ジャパンからCDを出せるんだから(笑)。
──そういう音楽的な知恵袋はkonoさんが担っていますしね。
m:そうなんですよ。もう1人音楽に詳しい奴がいたらぶつかると思うし。「モグワイみたいなのがやりたい」「いや、トータスっぽいのがいい」なんて揉めても僕からすれば一緒だし、要するに安室奈美恵じゃなきゃいいんでしょ? っていう感じですから。
──なるほど(笑)。masaさんから見て、ベーシストっぽい発想をする作家っていますか?
m:三島由紀夫はそうじゃないですかね。冷徹な分析をするところもそうだし、感覚よりも言葉遊びを重視するところもあるし。三島由紀夫の一番面白いところは逆説なんですよ。面白い状況を用意しなくても、反対から見ると世の中って面白いよねってことを自然に書くんです。でも、今の作家は主人公を透明人間にしてみたり、特殊な面白い状況を用意してから物語をスタートさせるんですよね。その点、三島は平凡な主人公が平凡に生きてる物語を逆の視点で面白く語るのが得意な作家なんですよ。
──ありふれた日常が非日常に変わる瞬間みたいなものが面白いと?
m:そうですね。非日常がいつの間にか日常になっていたりとか。音楽的な話をすれば、キツい転調をしてるところほど自然に聴かせたいし、転調してないサビほどドーン!と弾奏感で聴かせたいんですよ。
──紋切り型のことを紋切り型のままやらない姿勢はte'に一貫してあるような気がしますけど。
m:そうですかね? それは上物なりドラムが変態だからじゃないでしょうか(笑)。
──でも、hiroさん曰く「masaが一番のビックリ箱」とのことですが。
m:僕はこのバンドの中で自分が一番普通だと思ってますけどね(笑)。僕が正しくて周りが間違ってると思ってますよ(笑)。
──4人ともそう思っているんじゃないですかね?(笑)
m:多分そうでしょうね。各人が思い思いのことをやってるし、「自分こそが正しい」と思っているんだと思います。konoさんがバンドを引っ張ってるように思われがちかもしれないですけど、これだけ濃い面子が揃ってるんだから、ひとたび演奏が始まれば引っ張るも何も関係ないですよ。一番ベストなのは自分のパートだけに専念できることで、他のパートは各自が責任を持って弾くべきなんです。自己プロデュースのできる奴が集まってバンドをやるのが一番楽しいですからね。
──konoさんのインタビューでも“責任”がひとつのキーワードだったんですよ。
m:好きなことを押し通したいんだったら、文句を言わせないように責任を持ってやるしかないですよね。文句を言われるのは言われた本人が悪いし、わがままと自由にやるのは全然違うことですから。
音が噛み合った時に生まれる別の世界
──今回、ベーシストとして新たなトライアルをした楽曲はありますか。
m:4曲目の『夜光の珠も〜』ですかね。これは本番まで何も考えてなかった曲なんです。とりあえずルートで弾いたんですけど、上物を弾きたいと思ってギターをベース・アンプに差して弾いてみたんですよ。あと、5曲目の『勝望美景〜』も何も考えてなかったけど急にアイディアを出した曲ですね。
──アドリブに強い性分なんでしょうか。
m:te'をやってから強くなりましたね。始めて半年くらいはkonoさんにずっと怒られてましたから(笑)。今は論理的に埋めたい派であると同時に、降ってきたものがホントだろうと思うようになったんですよ。降ってきたものが論理上でも合致しているのが一番気持ちいい。予測し得ないものが面白いと思っている割に予測しておきたい、みたいな(笑)。そういうのが最近は上手になってきましたね。あらかじめ決めておくと飽きるじゃないですか。飽きが入っちゃってるなという空気感がなくなるのが一番マズいと僕は思うんですよ。計算され尽くしていてもフレッシュで在りたいんです。と言うことは、録音の当日に思い付いたものが計算され尽くしたものであればベストなわけですよ。その意味で言うと、『夜光の珠も〜』は本番までギリギリでしたね。カウントが鳴って始まっても何も思い付かなくて(笑)。
──そんな時の焦りも演奏に昇華させていくと?
m:焦ったっていいし、一般の人には判らないと思うんですよ。何と言うか、録ってみて良ければいいんです。ちゃんと噛み合ってさえいれば良かったりするので。上手く演奏できたのがいいテイクじゃなくて、演奏が噛み合って曲が活き活きしてるのがいいテイクだと僕は思いますし。
──miimiではバリトン・ギターを弾いていらっしゃいますが、te'との相互作用みたいなものはありますか。
m:基本的にやってることは一緒ですけど、歌モノをやってなかったらインストはやってないし、インストをやってなかったら歌モノはやってないという程度のことですかね。プレイで要求されることは違いますけど、頭の切り替えは得意なんです。僕は基本的に人前に出たくない性格で、人との関わりもあまり好きじゃないんですよ(笑)。でも、1000人の前で演奏しなきゃいけないわけで、切り替えが上手くできないとやってられないんです(笑)。ただやっぱり要らぬ注目を集めてしまうのはストレスだし、自己防衛として“ここに立ってる俺は俺じゃないんだ”と思いながらやってるんですよね。
──そうやって別人格になるのがmasaさんにとっては自然なことなんでしょうね。
m:自分のやり方としては一番自然だと思いますね。多分、人前に出るのは向いてないんですよ。でも、才能がないからと言って諦めるのはロックじゃない。自分なりのやり方を突き詰めたいんです。
──一般の人が公人の顔と私人の顔を使い分けているのと同じなのでは?
m:そんな感じですね。会社では部長だけど家に帰ると赤ちゃん言葉みたいな(笑)。
──そんなmasaさんが音楽以外で歓びを得る瞬間はどんな時なんですか。
m:普段の生活では感知できない世界を感じる瞬間ですかね。演奏もそうなんですけど、僕は別ベクトルの世界観が好きなんですよ。演奏でも、音が噛み合った時に個々人では成し得ない違う世界が生まれるのが楽しいんです。論理的なものが蓄積された挙げ句、音という不確かで今までになかったものが作られる。大質量の恒星が超新星爆発して生まれるブラックホールも、あるのかないのか判らない存在ですよね。論理的なものを突き詰めると論理的じゃないものを認めざるを得なくなる。音楽はそれを一番手軽に実感できる行為だし、te'は僕にとってブラックホールなんですよ。身はないけど実がある。だから辞められないんですよね。
tachibana
part of drums
日本人のアイデンティティを秘めたリズムとグルーヴ
ドラムがヴォーカルと同じ立場になる瞬間
──hiroさんから「tachibanaにはまず筋肉の話から突っ込んであげて下さい」とアドバイスを受けたんですけど(笑)、普段から身体を鍛えているんですか。
t:いや、全然やってないです(笑)。hiroのブログでネタにされるので、何かやらなきゃいけないかなと思って腹筋はちょっとやってますけど。ドラムを叩くのが筋トレみたいなものですね。
──tachibanaさんのバンド人生は最初からドラム一辺倒だったんですか。
t:そうですね。高校の時に叩き始めて、かれこれもう17年くらい経ちます。高校に入って部活見学をした時にドラムを叩いている先輩がいて、それを見て格好いいと思っちゃったんですよ(笑)。それでドラムを始めることにしたんですけど、どうせやるならちゃんとやりたいなと思って、クラシックの打楽器をまず勉強したんですよね。ルーディメンツという太鼓の基礎奏法なんですけど。
──特定のドラマーに憧れて始めたわけではないんですね。
t:そういうわけではなく、自分のやりたいことは何だろう? ってところから始めましたね。高校を卒業した後は音楽の大学へ進んで、そこでまたクラシックの勉強をしました。専門学校へ行くことも考えたんですけど、あまり魅力を感じなかったんです。自分としてはロックのドラムを叩きたかったんですけど、まずは人とは違うことをやらないとダメだなと思ったんですよ。ロック志向だったので、大学では“何でここにいるの?”みたいに思われる異端な感じでしたね。
──クラシックの基礎があったからこそ、インストの自由奔放な演奏という応用も利くんでしょうね。
t:在学中もドラムセットをやりたかったんですけど、それをやるならロックでやってみるよりも別のアプローチで行くほうがいいかなと思ったんですよ。
──te'の面々とはどんな経緯で知り合ったんですか。
t:te'に入る前にhiroと一緒にバンドを組んでいて、その頃にkono君のバンドと対バンして知り合ったんですよ。masaは当時miimiをやっていましたね。kono君のバンドと一緒にイベントをやったこともありました。その後、kono君が新しくインスト・バンドを始めて、hiroがそこに入ることになって、ドラムを探していると。それで「暇そうにしてる奴がいる」ってことで僕にお呼びが掛かったんですよ。最初にインスト・バンドと聞いて、それは需要があるのかな? と若干不安に感じたんですよね(笑)。インストと言えばT-SQUAREとかカシオペアのイメージしかなかったし、ポスト・ロックという言葉もkono君から聞いて初めて知ったくらいだったので。
──それがいざ始めてみると、なかなか奥深い世界だったと。
t:実際に活動を始めて思ったのは、ヴォーカルを意識しないで楽器の関わりだけでひとつの音楽を作るという部分では非常にやり甲斐があるなと。ドラム個人の表現を膨らませていけるところもありましたし、そこはインストの利点だなと思いました。ヴォーカル主体のバンドだとヴォーカルを活かすことに重点を置きますからね。だから自分にとっては願ったり叶ったりだなと思って。
──hiroさんと組んでいたバンドとはまた違ったアプローチを要求されることになりますよね。
t:前にやっていたバンドは女性ヴォーカルありきで、自分はこれだけ頑張っているのに何で評価されないんだろう? という忸怩たる思いもあったんですよ。それがte'の場合は自分がヴォーカルと同じ立場になれる瞬間があるんです。僕だけじゃなく、ギターもベースもヴォーカルの立場でいられる。個々人の楽器を最大限活かせるわけで、ヴォーカルのいるバンドとは全然違いますね。
──masaさんとはキャラクターも音楽的なアプローチも異なるのに、息の合ったコンビネーションを見せていますよね。
t:そこがte'の面白いところなんですよね。人間の集団の理想的な形だと思うんです。それぞれがちゃんと自分の主張を発揮しながらひとつの表現を作り上げているし、歌ありきのバンドはどうしてもヴォーカルが中心になりますから。個人主義が尊重されつつも有機的なまとまりがあるのがte'の素晴らしさだと思います。
楽曲の展開の中で如何に昂揚させるか
──今回のアルバムは音の押し引きが絶妙で、過不足ない音が要所要所で鳴っていると思うんですよ。個人的にはtachibanaさんのドラムにそれを強く感じるんですよね。
t:そう言って頂けると有難いですね。これまで3作作ってきて、自分たちのいいところをもっと出していこうとする上で駆け引きみたいなものが生まれてくるんですよ。今までは勢いをぶつけ合ってパンチのある音を出していたんですけど、みんな少しずつ大人になってきたのかなと。ヘンに引いたスタンスで上手いことやろうというのではなく、荒削りなぶつかり合いはちゃんと残していきたいですけどね。
──『秤を伴わない剣〜』は跳ねるリズムが心地好い楽曲で、リズム隊の腕の見せ所が随所にありますよね。
t:この曲では実験的にドラムを重ねてみたんですよ。自分としては2人のドラムがいるという想定で叩いたんですけど、叩く人間が同じなのでグルーヴも同じで、ちょっと気持ち悪い感じになってますね(笑)。
──『勝望美景〜』は終始ドラムがドカドカ打ち鳴らされて、異常な手数の応酬が堪能できますけど(笑)。
t:あっと言う間に出来た曲のひとつですね。ハチロク(8分の6拍子)で速くて、尚かつシューゲイザーみたいな曲を作ろうとしたんですよ。レコーディングスタジオに入ってから作った曲で、kono君から「リムショット系の音が欲しい」と言われたのでリムショットにしました。kono君はいつも漠然としたことを言うんですよ。「格好いいヤツ」とか「カツカツしてるヤツ」とか(笑)。それに対して自分なりに考えたプレイをして、それでどう変わっていくかなんですよね。
──その場でいきなり録ってクオリティの高い楽曲を生み出してしまうのが凄いですね。
t:メンバーもそれぞれ経験を積んできているし、こう来たらこう来るだろうみたいな読みはできるんですよ。
──その読みを如何に欺くかに気を留めたとhiroさんは仰っていましたけど。
t:確かに、そうじゃないと新鮮味も面白味も損なわれますよね。ライヴでは部分的にちょくちょく変えたりもしているんですよ。それが音楽の面白さですからね。
──インスト・バンドをやるようになって、普段聴く音楽も変わってきましたか。
t:いや、あまり変わりませんね。むしろ、歌モノをもっと聴くようになりました。最近は山口百恵や徳永英明のベストをよく聴いています(笑)。インストをやるようになって、余計に歌が欲しくなっちゃったんですよ(笑)。
──本作におけるtachibanaさんの課題点はどんなところでしたか。
t:te'としてどういう音楽を目指していくかですよね。これまでの3作とは違うte'の聴かせ方をずっと意識していました。そのためにレコーディングのやり方もこだわったし、Protoolsを使って今までにない録り方もやってみましたし。
──1曲目の『決断は無限の扉を〜』ですね。
t:あのレコーディング現場は酷かったですよ。他の3人は録り終わって『M-1グランプリ』を見ていたんです。僕は2時間くらい掛けてドラムを叩いて、「終わったよ」ってみんなに声を掛けたら、「ちょっと待って。決勝で誰が勝つか見てから行くから」なんて言われて(笑)。
──普通はベーシックのリズムを録ってから上物を重ねていくのに、この曲は真逆の発想なのが凄いですよね。
t:この曲は今後ライヴでどう表現していくか、ちょっと揉んでいかなきゃいけないですね。あと、8曲目の『闇に残る〜』は本来ドラムのリズムで来るべきところに来るべきものが来ていない曲なんですよ。ハイハットはハイハットとしての役割を、大太鼓は大太鼓としての役割をしているんです。ドラムセットという概念をちょっと変えてみたと言うか。
──『闇に残る〜』は最後にワルツっぽい展開になってみたり、どの曲も一筋縄では行かない趣向が必ず凝らしてありますね。
t:インストは歌がないし、展開が長いと途中で飽きちゃうんですよ。その展開の中で聴く人を如何に昂揚させるかが全曲のテーマとも言えますね。そこは今回も凄く意識しました。
苦手な集団行動を自分がやれている驚き
──個人的な話で恐縮なんですけど、僕はクリームのライヴ盤が苦手なんですよ。ジンジャー・ベイカーのドラム・ソロを10分以上聴かされるのが苦痛で堪らないんです(笑)。te'にはそういう冗長なところがないし、どの曲も適宜な長さにまとめているのがいいと思うんですよね。
t:クリームの場合は個人の記名性ありきという部分が強いですからね。バンドと言うよりも個人の集合体と言うか。クリームとte'を比べるのもおこがましいですけど、僕らはそこまで個人プレイヤーじゃないんですよ。それよりも、バンドの出している音がどういうふうに流れていくかを常に意識していますね。
──tachibanaさんご自身はドラム・ソロが好きなほうですか。
t:何とも言えないですね。僕はあまり友達がいないほうで(笑)、集団の中で動くのが苦手なんですよ。だから今でも自分一人で何かできることはないかと模索しているんですけど、ドラム・ソロをやっても自己満足で終わってしまうんじゃないかなと思います。
──te'のリズム隊は揃って内向的な性格なんですね(笑)。
t:お恥ずかしながら(笑)。でも、masaも驚いてると思いますよ。こんな自分でも集団の中でやれてるじゃん、みたいなところで。僕自身、凄くびっくりしてますから。そういう共通点はあるかもしれないですね。
──4人の中ではtachibanaさんが一番ジェントルな佇まいですよね。
t:4人それぞれのキャラが立ってますよね。kono君はいつも尖った感性を持っていたり。
──tachibanaさんから見た成長の著しいメンバーは?
t:一番成長したのはmasaじゃないですかね。3作目くらいからmasaが考えるタイトルの内容が変わってきたんですよ。それまでは内向的な感じの曲名が多かったんですけど、3作目くらいから外へ広がっていく感じになってきたと言うか。
──hiroさんについてはどうですか。
t:hiroとは付き合いが長いんですけど、あれだけ読めない男も他にいないですね。未だにこっちが驚かされることが多いんですよ。
──掴み所がないと?
t:自分で言うのも何ですけど、僕は結構掴めるほうなんですよ(笑)。でも、hiroは全然掴めない。
──確かに人当たりは凄くいいし、一見無邪気なイメージがありますけど、実は観察眼が鋭いですよね。
t:そうかと思えば、それほど深く考えてもいなかったり(笑)。とにかく面白い男ですよ。
──本作を聴くとhiroさんのギター・プレイが一段と深みを増したのが判るし、ギターで表現する可能性がさらに増した印象を受けますね。それは各人同じだと思いますけど。
t:リズム的には、masaよりもhiroとのグルーヴのほうが合うんですよね。masaはベーシストとして全体を考えて弾いてくるので、グルーヴ的にはhiroとの絡みのほうがガッチリ来るんです。そこはやっぱり、長年培った関係性もあるんでしょうけど。
──konoさんのプレイに関しては?
t:安定した堅実さがありますね。kono君がバンドの推進力になっているのは確かで、ダメなものはダメ、良いものは良いという振り幅が大きいんです。みんなが満足しないとひとつの楽曲が成り立たないし、そういうところで振り幅の大きい人がバンドの中にいるとメンバー的にはやりやすいですよね。
──konoさんのメンバーに対するオーダーは長嶋茂雄的なところがあるのかもしれないですが(笑)、本質を衝いた着眼点であることは確かなんじゃないですか。
t:そうですね。たまに“エエッ!?”と思うオーダーもあるんですけど(笑)、そこに動きがあると言うか。こっちが考えもしなかったことを言われることで、自分が活性化される部分はあると思います。なあなあにならない良さがあるし、新しい動きができますね。
──te'のライヴ・パフォーマンスの激しさたるや尋常ならざるものがありますけど、ツアーが続くと特に体力の消耗具合が凄まじいことになるのでは?
t:特に竿隊の2人、hiroとmasaは身体が弱いのでボロボロになっていますね(笑)。まぁ、かく言う僕もワンマンの後は全身が痛くて、打ち上げで寝てしまうこともあります。hiroとmasaが前のほうで激しく動き回っているのを見ると、俺のほうが絶対に目立ってやる! と思っちゃうんですよ(笑)。
大切なのは日本人としてのアプローチ
──熟練ドラマーはただ闇雲に激しく叩くことなく、肩の力を抜いて柔らかく叩いて抜けの良い音を出すじゃないですか。ああいう抜き差しの妙を本作のtachibanaさんのプレイからも感じますね。
t:日本人が叩く音と外人が叩く音がまるで違うのは、身体の使い方が全然違うからですよね。上手い人になればなるほど身体の使い方が合理的になってくるんですよ。学生の時に学んだルーディメンツは合理的な身体の使い方をするんです。それがベースになっているぶん、もっと日本人的なプレイをしなくちゃいけないんじゃないかという意識は常に持っています。外人と真っ向勝負したって勝てないでしょうし(笑)。
──歌がないぶんだけ海外へ浸透させていきやすいというアドヴァンテージがte'の音楽にはありますよね。
t:そうなんですよね。アメリカへツアーに行った時に、向こうのお客さんがハチロクの曲に凄く反応していたのが印象的だったんです。ハチロクのノリは海外の音楽にはあまりないみたいで、とても新鮮に響いたんでしょうね。それを見た時、僕らは日本出身のインスト・バンドというアイデンティティをもっと強く打ち出していくべきだなと思ったんですよ。
──海外のオーディエンスの演者を激しく盛り立てる姿勢には凄まじいものがありますね。
t:音楽を楽しむ文化が日本とは根本から違う気がしますね。こっちの熱さが伝わって、ダイレクトに反応してくれるんです。日本の場合はネーム・ヴァリューなりセールスなりで反応が変わってくるじゃないですか。僕らは今よりもっと有名じゃない頃に海外でライヴをやって、その時も何の垣根もなくダイレクトにお客さんが反応してくれたんです。そこでひとつの手応えを感じたし、“やっぱりこれでいいんだな”と素直に思えたんですよ。
──迸る思いをプレイに叩き付ければ、言葉の垣根を超えてそれは必ず伝わると。
t:僕らもいい歳なので、ただがむしゃらにやれば伝わるとは思っていないし、それなりの駆け引きもいろいろとしているんですよ。でも、精一杯やればちゃんと伝わるんだなと思えたことは大きな自信に繋がりましたね。
──本作で言えば『闇に残る〜』のようなスロー・ナンバーにはそこはかとない日本的な情緒があると思うし、その独特の味わいは海外のリスナーにも日本人らしさとしてちゃんと伝わるんじゃないでしょうか。
t:自分が日本人であることは拭えないし、そこで勝負するしかないんですよね。たとえば、レッチリのチャド・スミスと僕のどちらがドラマーとして優れているかを競っても、社会的認知の面でもスキルの面でも圧倒的にチャド・スミスに軍配が上がるじゃないですか(笑)。そこでチャド・スミスを唸らせるために自分なりにどういうアプローチができるかを考えると、チャドにはない日本人としてのアプローチをするしかないんですよね。手数がどうとかの技術的なことじゃなくて、日本人としてのメンタリティに立ち返るしかない。とは言え、日本人のくせに自分は何でドラムセットで叩いているんだろう? ってところから始まっているんですけど(笑)。
──そもそも、ドラムセットという発想は日本人らしくないんですかね?
t:あれは合理主義から始まってますからね。大太鼓、小太鼓、シンバルを一緒にして人件費を減らすために作られたものですから(笑)。自分の地元は新潟なんですけど、佐渡を拠点に活動している鼓童という和太鼓のグループがいて、アース・セレブレーションというイヴェントで彼らのライヴを見た時に衝撃を受けたんですよ。和太鼓で一打を叩く前にドラマティックな瞬間があったりして、思わず息を呑んだんです。それを見て、何で自分はドラムセットで叩いているんだろう? と思って。言ってしまえば、和太鼓の作り方は非合理的なんですよ。ケヤキを一本倒して、真ん中をくり抜いて胴を作って、革張りをして鋲打ちをして…もの凄く手間暇が掛かるんです。鼓童の音楽に触れて以降、日本にはそういう伝統的な楽器があるのを再認識したんですよね。
武士道や書道にも通ずるドラムの奥深さ
──非合理的なものに美学を見いだすって、どことなく日本っぽい風情を感じますね。
t:日本にはアニミズムという世界観があるじゃないですか。あらゆる事象には霊的なものが宿っているという。太鼓もそういうものなのかなと思うことがあるんですよ。太鼓にも人格があると言うか。そういう太鼓を生み出した国の人間として、ドラムセットとどう向き合っていくのかが課題なのかもしれませんね。
──ドラムは電気を介さない原始の楽器だし、演奏する人のプリミティヴな力がダイレクトに反映されますよね。
t:確かに。ホントはドラムセットを全部和太鼓にしたいくらいなんですけどね。でも、ドラムに限らず西洋の楽器を使って日本人らしさを出せているのがte'の凄いところだと思うんですよ。そこは一貫してte'がこだわり続けているところでもありますからね。hiroとkono君はもともとヴォーカルでもあったので、奏でるメロディが日本人っぽいと思うんですよ。
──tachibanaさんが考える“日本人っぽさ”とはどんなところですか。
t:やっぱり、ある物事を表層的に捉えないところですかね。たとえば、一打叩くまでの間に何かが潜んでいると言うか。ちょっと精神的なことかもしれませんけど。
──行間を読み解く感覚に近いですか。
t:そうかもしれません。単純に音が当たっていればいいってわけじゃなくて、微妙なズレや間合いが面白いんです。それをte'は上手いこと表現できているんじゃないかと思いますね。
──本作を完成させたことで生まれたドラマーとしてのテーマみたいなものはありますか。
t:バンドを続けていく以上、飛び越えていかなくちゃいけないことがまだまだたくさんありますね。今は自分の音楽性の幅をもっと広げていかなきゃいけないと思っています。素養として歌モノ以外にもいろんな音楽を聴かなくちゃダメだろうし。
──鍛錬はもちろん大切だと思うんですが、実際に演奏をしていない日々の生活が音符の肥やしになったりもするのでは? 人間的に深みを増すことがプレイに反映されていくと言うか。
t:そうだと思います。そのためにも、もっといろんな音楽を吸収しないとダメですね。でないと、どうしてもプレイに手癖が出てしまうんですよ。手癖を突き詰めていく曲があってもいいとは思うんですけど、それだけじゃバンドとしても個人としても進展がないし、筋肉が衰えてヘタになっていくだけですから。
──やっぱり筋トレが大事という、最初の話に戻ってしまいましたが(笑)。
t:しっかりやります(笑)。まぁ、今はドラムを叩くのが純粋に楽しいし、自分の性には合っていますね。小学生の時にピアノもやっていたんですけど、指が太すぎて鍵盤が当たらなかったんですよ(笑)。ドラムは自分の精神と身体を使って表現するにはうってつけの楽器だと思います。
──話を伺っていると、そのストイックさは武士道にも通ずるものがある気がしますね。
t:似てると思いますよ。司馬遼太郎とかの時代小説が好きで結構読むんですけど、剣の道に近いものを感じますね。あと、書道の筆の流れや押さえなんかもドラムと似てる気がします。勝手な日本人的解釈ですけど(笑)。大学の時のドラムの師匠が言っていたのは、「ドラムは叩けば音が出るし、誰でもできる楽器なんだよ」と。「だからこそ一打叩くまでの感情の起伏をコントロールするのが大事なんだ」と話していたことがあって、まさにその通りなんですよ。ホントに奥が深い楽器だと思いますね。
te'
4th ALBUM
敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。
01. 決断は無限の扉を開くのでは無く無限の誤謬に『終止符』を打つ。
02. 天涯万里、必然を起こすは人に在り、偶然を成すは『天』に在り。
03. 秤を伴わない剣は暴走を、剣を伴わない秤は『無力』を意味する。
04. 夜光の珠も闇に置けば光彩を放つが白日に曝せば『魅力』を失う。
05. 勝望美景を愛し、酒食音律の享楽を添え、画に写し『世』に喩え。
06. 性は危険と遊戯を、つまり異性を最も危険な『玩具』として欲す。
07. 人々が個を偉人と称する時が来れば彼は既に『傀儡』へと変わる。
08. 闇に残る遅咲きは、艶やかな初花より愛らしく『夢』と共になり。
09. 逆さまにゆかぬ年月、幸福に最も近い消耗がまた『明日』も来る。
10. 自由と孤立と己とに充ちた現代に生きた犠牲として訪れる『未来』
11. 瞼の裏に夜明けの眠りが、閉じた瞳と思い出に『目覚め』を求む。
12.『参弐零参壱壱壱弐伍壱九参壱伍九伍弐壱七伍伍伍四壱四壱六四』
徳間ジャパンコミュニケーションズ TKCA-73530
2,800yen (tax in)
2010.6.02 IN STORES
★iTunes Storeで購入する
Live info.
te'「敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での『約束』を。」release tour
7月3日(土)仙台 CLUB JUNK BOX
7月4日(日)新潟 CLUB RIVERST
7月17日(土)千葉 LOOK
7月19日(月)横浜 club Lizard
7月31日(土)鹿児島 SR HALL
8月1日(日)福岡 VIVRE HALL
8月11日(水)金沢 vanvan V4
8月18日(水)徳島 club GRINDHOUSE(ex.JITTERBUG)
8月19日(木)高松 DIME
8月28日(土)広島 CAVE-BE
8月29日(日)岡山 CRAZY MAMA 2nd Room[ONE-MAN]
9月4日(土)札幌 BESSIE HALL[ONE-MAN]
9月11日(土)名古屋 CLUB UPSET[ONE-MAN]
9月12日(日)大阪 十三 Fandango[ONE-MAN]
9月18日(土)渋谷 CLUB QUATTRO[ONE-MAN]
EVENT
TAICOCLUB '10
6月5日(土)長野県木曽郡木祖村「こだまの森」
【時間】OPEN 6/5 (Sat) 13:15 / START 6/5 (Sat) 14:00 / END 6/6 (Sun) 14:00 (予定)
【料金】adv. ¥11,000 (税込) / 駐車券 ¥3,000
【問合せ】TAICOCLUB事業部 03-6303-3690(平日12:00〜17:00)
Easel presents“te' VS world's end girlfriend & BLACK HOLE CARNIVAL”
6月9日(水)shibuya o-west
【出演】te' / world's end girlfriend & BLACK HOLE CARNIVAL / o.a. 蓮沼執太チーム
【時間】open 18:30 / start 19:00
【料金】adv. \3.300 / door. \3.800 (1ドリンク代別途必要)
【問合せ】o-west 03-5784-7088
te' official website
http://tee.daa.jp/