エモーショナルもポップ感も、切なさも楽しさも、全部ひっくるめた
チャーミング・ロックという新たな時代を切りひらく
さき、マチャーキー、546の3人で活動をするドナテロが、満を持して1st.アルバム『ドナテロの化けの皮の剥がし方』をリリースする。“チャーミング・ロック”と喩えられる彼らのサウンドは、ボーカル・さきのチャーミングな部分を全面的に押し出し、ポップだったりロックだったり、切なかったりパワフルだったり、カラフルな表情を持っている。また、このサウンドに重なる伸びのあるさきの歌声はドナテロの魅力のひとつでもあり、彼女から発せられる言葉のひとつひとつは、聴く者をドナテロの世界にスッと導いてくれるようで心地よい。
今回は、メンバー3人にアルバムのこと、そしてこれまでのこととこれからのことを伺った。歌詞からも何となくは気付いていたが、さきが男子2人を引っぱっている様子がよく感じられる時間だった。やはり女子は強い!?(interview:やまだともこ)
CDをリリースできる喜び
──さきさんは、ここ最近喉を痛めていたそうですが大丈夫ですか?
さき(Vo&Gt):2ヶ月近くお休みを頂き、病院の先生には、喉を使ってるから完ぺきには治らないと言われてますが、もう大丈夫です。
──お二方は、さきさんの声が出ないと聞いた時に、バンドはどうなるんだろうという不安はありました?
546(Dr.&Cho):4/1の下北沢シェルターでのライブの朝「声が出ない」とメールが入ってきたんです。その後に病院に行って、医者からは声を出すことを止められていたんですけど、本人がライブはやりたいって言ったので、念のためモニターを3つ用意してもらい、その日はライブをやったんです。完全ではなかったですが、30分のステージはちゃんとやりきったので、大丈夫だろうなというのはライブ後に感じました。
マチャーキー(Ba):僕は「お話があります」ってメールが来て、今まで辞めたメンバーからのメールも「お話があります」だったので、ヤバイなって思いました(笑)。だから続けられるならいいやって、安心したのは事実です。
──メンバーチェンジは何度か繰り返していたんですか?
さき:この3人は高校生の時から一緒なんですけど、当時は4人バンドだったんです。私がボーカルで、最初のギターの子が辞めてすぐに別のギタリストを入れたんですけど辞めてしまい、それなら私がギターを弾くってなったのが4年ぐらい前。3人になった1年後には自主でアルバム『りんごとニュートンとドナテロ』(2007年8月)を出してツアーをしていたので、その勢いがなければ今でも弾けてないかもしれません。ギター脱退後の4日後にはライブがあって、それも3人でやりきりましたから。
──どうやったんですか?
さき:なんかできたんです。ギターソロとか弾きましたよ。
──それはすごい気合いですね(笑)。そういう気合いで乗りきってきたものって、今までいっぱいありそうですね。
さき:喉もそんな気がします(笑)。ただ、コードとかは今もよくわかってないので、ずっと感覚で弾いてますが…。
マチャーキー:だから、アレンジの時にドラムとベースをひたすら回させられるんですよ(笑)。
さき:延々に回してもらって、気持ち良い音を探してアレンジしていくんです。
──となると、アレンジは時間がかかるんじゃないですか?
546:感覚なので、意外と早いですよ。
──作曲は546さんがやられてますが、曲を作っている段階で他のパートの音もだいたいのイメージは出来ているんですか?
546:いえ、弾き語りで作るので、メロディーだけ渡してこれは歌詞が乗せられそうだというのをスタジオに持ち込んで、みんなでアレンジするという感じです。
──そして、今回ついにニューアルバム『ドナテロの化けの皮の剥がし方』がリリースされますけど、自主制作でリリースした中からも何曲か入り、今とこれまでがちゃんとわかる作品になりましたね。
さき:『ホワイトラビット』と『ROSSO』は昨年自主盤で出して、そのリリース後にはアルバムを作ろうと3人で話をしていたんです。その時には、アルバムタイトルとコンセプトは決まっていました。
──なぜタイトルは『ドナテロの化けの皮の剥がし方』だったんですか?
さき:短いタイトルがあまり好きじゃないんです。あとは人間誰しも隠しているものってあると思うんです。私も音楽以外ではたくさんありますから(苦笑)。それと『ホワイトラビット』の歌詞の内容が、今の3人がやってきたこととか伝えたいことなので、その意味も全部含めてこのタイトルにしました。
──初の全国流通ですが、自主で制作している時と比べて気持ちや演奏力など変わったところって感じてますか?
546:バンド自体が成長していると思います。全国で売ってもらえるというのも大きいんですけど、いろいろあってのアルバムで、メンバーそれぞれ人間的にもバンド全体的にも成長していると思うので、そこが一番大きいですね。
マチャーキー:1枚目を出して以降、音源を出したいけど出せない時期もあって、その間に曲もいっぱい作りましたし、今回はたくさんある曲の中から選べる強さもあったかもしれません。
さき:誰かの手を借りると自分たちを見失うところってあるんですけど、今回は良い意味で以前とは変わらずに好きなようにやらせてもらえたのでその辺は楽しくできました。
──1枚目の時は自分がギターを弾かなきゃという焦りや必死さもあったと思いますけど、ちょっとは余裕が出てきたんじゃないですか?
さき:それはありますね。レコーディングも3人では2回目なので、任せるところは任せて良いんだなというのもわかってきていますし、基本は歌もギターも好きなようにやらせてもらっているので、少しミスっても感情がちゃんと入っていたり、感覚として私が良いと思えばオッケーなんです。だから、レコーディングはすごく楽しいんです。
マチャーキー:今回、サウンドプロデューサーに昔からお世話になっている田中さん(株式会社アンダーフラワー・アパートメント代表取締役)を迎えて一緒に作ったんですが、アレンジや構成を変えてくれと言われることもなく進みました。
さき:田中さんは、『Jackie's POCKET』とかでは「今の音、ぶっとくてかっこいい」ってずっと言ってました(笑)。最初に「今のドナテロの良さは削りたくないから、好きなようにやりな」と言って下さったんです。出会ったのは1枚目のアルバムの時なんですけど、『ホワイトラビット(はあと)ROSSO』を出した時に、改めて田中さんにお渡ししてまた一緒にできるようになったので、『ホワイトラビット』と『ROSSO』は特に思い入れがあります、東京に出てきて初めて出した音源でもありますし。
──田中さんと出会ってからバンドのモチベーションは変わりました?
546:はい。特に2回目に会った時は変わったような気がします。
感覚が一番大事
──先ほどマチャーキーさんがアルバムを作るにあたって曲がたくさん出来ていたとおっしゃっていましたが、実際どれぐらいできていたんですか?
マチャーキー:アルバム2枚分ぐらいはできていましたね。
さき:その中から今回はポップな感じを出したかったので、マイナー系の曲は全部削りました。歌重視の作品にしたかったんです。もちろん入らなかった曲の中には明るい曲もありましたけど、頑張って作ったみたい曲がたくさんあって、思い出として苦しかったので、それはドナテロっぽくないんじゃないかと思って削って今の12曲になったんです。
──“ドナテロっぽい”とご自身で思うのはどんなものですか?
546:普段生活している中で、ここが一番インスピレーションで動けるというか、思いついたことだけで成り立ってるみたいな感じはあります(笑)。それと、バカなことができるという部分は大きいですね。
──考えすぎた曲だから外した曲があるように、感覚を一番大事にしているということですか?
さき:そうだと思います。
──選曲のジャッジは、どなたがしているんですか?
さき:最終的には私がしている気がします。メロディーに言葉が乗らなければできないので。歌詞を書くのは難しいですよ。何を書けば良いのかがわからなくなって、自分らしさを見失って書けなくなった時期もあったんです。今は乗れば1時間ぐらいで書けることもあります。
──ということは、『ホワイトラビット』や『ROSSO』は、昔からある曲なので必死の思いで書いたものなんですか?
さき:『ホワイトラビット』はもがいていて、何でもいいやと諦めた時にスラスラ書けました。何かに捕らわれていて、いいやと思った瞬間に解放されたのかもしれません(苦笑)。
──とは言っても、歌詞の中では“孤独と闘うのさ”みたいな、諦めてるとは思えない言葉が乗ってますけど、この曲を聴いた時に現実を変えたいのかなという感じがすごくしたんです。当時、そんな感じってありました?
さき:はい。そんな感じでした。
──『クタビレアンブレラ』の歌詞には、“こんなあたしをイイ子だと 騙されてるフリをして”というフレーズがありましたけど、マチャーキーさんと546さんをさきさんがすごく従えているんだろうなと勝手に想像していましたが、実際はどうですか?
さき:私もそう思います。キャラクターが出ちゃってますね(笑)。546は曲に関していろいろ言いますけど、最終的には一番私らしくいて欲しいと望んでいると思うんです。その曲を書いている時に、普段歌詞を書く時は一人称を“僕”って使うんです。これが、私らしくいられるからなんですけど、「この曲では“僕”ってやめてみたら?」と言ってもらい“あたし”にしたんです。歌詞の内容が実はけっこうエグいんじゃないかと思うんです。そのエグい表現も546とマチャーキーの存在があるから中和できていると思いますし、たぶん女ばっかりでこの曲をやると気持ち悪いと思うので、そのバランスがドナテロは良い気がします。
──マチャーキーさんから見たさきさんってどんな方ですか?
マチャーキー:ストレートに何でも言ってきます。あとは後ろから見ていて、ギター持ってる時は格好いいですね。3人で初めてライブをやらなければならなくなった日のソロを、最後まで聴いた時は鳥肌が立ちましたよ。本当に大丈夫かなという不安は少しありましたが、本番に強いので心強いですね。
546:僕は、さきの方が年齢はひとつ上なんですが、妹的な姫的な感じで見ています。
さき:でも私、男には負けたくないんです。バンドに関しては特にそう思っていて、他のバンドのギタリストとかもすごく見ますね。
──こうやってお話をしていると、皆さんのワイワイした感じは作品でもそのまま出てる感じがあって、『うそつきたまご』は、バンドの雰囲気がすごく出ていますよね。
さき:あんな感じでリラックスしながらワイワイ録りました。
──この曲は、アルバムの中では珍しくアコースティックバージョンですけど、フックを入れたかったみたいなニュアンスはあったんですか?
546:それは狙ってます。もともとはバンドアレンジで作っていたんですけど、うまい具合にいかないねという話になって、アコースティックにアレンジし直したんです。最初にイメージしていた曲とはガラッと変わりました。
──演奏自体はノリ一発で録っているんですか?
さき:はい。ただ、私はメインのギターしか弾いてなくて、重ねる音は全部546がアレンジして弾いてます。なので、この曲は3人で合わせて録って、546がギターを別で録っているんです。他の曲もそうなんですけど。ライブは3人の音でやりますけど、私があまりコードを弾かないので弾かなきゃいけないところを足すのは546なんです。弾きながら歌うだけでカツカツなんですよ。最初は、エフェクターを踏むタイミングも取れないから、家で紙にエフェクターを書いて練習しました。最初はひたすら弾きながら歌って、紙のエフェクターを踏んで。
546:ダンレボ(Dance Dance Revolution)みたいな感じですよね(笑)。
現状維持は望んでいない
──ところで、ドナテロはさきさんのボーカルが魅力のひとつでもあって、この声があってこそのバンドなんだろうなと思いましたが、歌いづらい曲とかあまりないですか?
さき:言葉が詰め詰めのものは苦手です。言葉が大事にできないというのもあるので、歌いづらいと感じるかもしれないですけど。
──テンポ的に歌いづらいものは?
さき:そんなにないです。メロディーが良ければスーッと出てくるので。
──『グッバイエルマー』は4つ打ちで楽しそうに歌ってる感じがありましたね。
さき:これはすごく良い感じに詞が乗りました。メロディーもノリが良いので、言葉が入ってきますよね。歌詞を書くためにもメロディーはすごく重要で、メロディーに乗る事によって言葉の響きとか感じ方が変わると思っているので、たぶん詞だけは書けない。先に詞を書いてメロディーを乗せるとかもやってみましたけど難しい。
──歌詞のデキが全然違う?
さき:はい。乗り方が変わってくるし、言葉の生かし方が違うんだと思います。
546:さきの言葉でなくなってしまうんです。
さき:たとえば“キュムロニンバス”(『Cb』より)って普通に生活していたら使わない言葉だと思うんです。だから、詞を先に書けと言われたら、この言葉は出てこなかったと思う。曲を聴いてイメージしたものを書くのは、私の楽しみのひとつなんです。
──歌詞がなかなか書けなかった曲はあります?
さき:『Cb』ぐらいです。『リンガーリング』はメロディーからすぐに出た言葉ですけど、珍しくサビ以外が決まらなかったとかはあります。歌詞が書けない曲は半年ぐらいほっときますね。逆に『1ミリ』や『ホワイトラビット』や『ROSSO』は書き始めたら早かったです。
──546さんが曲を出したのに、全く歌詞があがらなくて急かすことってあるんですか?
546:たまにやってみるんですが、ムダなことはわかっていますから(笑)。書けって言って書いてもそんなに良い詞ではないので、できなければ曲をボツにします。
──それはさきさんの気持ちが乗ったものが、曲として良くなると信じているからということですか?
546:それは絶対です。
──ご自分で歌詞を書いてみようというのはありませんでしたか?
546:………無理です(笑)。自分から出てくる言葉の浅さがすごいわかるというか…。
さき:私も546のメロディーには敵わないと思うんで作ろうと思わないです。
──『Cb』の途中で、テンポが極端に変わる部分がありますけど。
さき:これは546の好みです。
546:レコーディングの時にクリックをずっと鳴らして、2拍を3分割にしている感じなので、スローテンポに聴こえますけど拍は譜面上では一緒なんです。そういう変な仕掛けが大好きなので、それに無理矢理歌詞を乗せてもらっています。
さき:だから、最初は歌いにくかったですよ(苦笑)。今ではなぜか546のほうがズレるんですけどね。
──『クタビレアンブレラ』では、思いがけないところにギターソロが入って不意をつかれた感じがしましたけど。
546:そこはもともとはAメロの回しで歌詞を乗せる予定だったんですけど、歌詞ができないって言うからそこで歌詞を一区切りさせて、静かめなギターソロから急にBメロに行ったんです。どうしたら自然にその部分が生きるか考えたんです。ここは僕のインスピレーションでした。
──546さんは、メロディーメイカーとしていろんな曲を聴いてるんですか?
546:洋楽邦楽問わず常に家で流していますけど、聴いてるような聴いてないようなという感じです。そういう曲からインスピレーションを受けて自分たちの曲に反映させることはないですね。自分の曲じゃない気がしてくるので、あまりやらないほうが良いなと最近は思ってます。
──自分から生まれてくるものだけを信じて?
546:はい。間違いかもしれないですけど(笑)。
──ところで、5月に発売されたタワーレコード限定シングルの『ホワイトラビット』の反応はどうですか?
さき:良いみたいです。
──アルバムにうまく繋がる感じになりそうですね。では、今のバンドの状況はどう感じてますか?
さき:不安と期待が同じぐらいです。今までとは違い、目に見えた動きがあるのでそこに惑わせられないようにちゃんとしないとと思っています。
マチャーキー:僕はライブがしたいです。アルバムに入っている曲でまだ演奏していない曲もあるので。
546:僕は早く次のアルバムが出したくてしょうがないです。
──バンドとしては今後どうなっていきたい?
さき:メジャーデビューはしたいですね。現状維持は望まないので、ワンステップ上に行きたい。今回のシングルで少し名前を知ってもらえたので、もっともっと知ってもらいたい。もっと大きい会場でやれるようになりたい。ワンマンもやったことがないので、とりあえずワンマンは近いうちの目標ですね。
──チャーミング・ロックという今までにないジャンルですが、今回のアルバムは、546さんから見てチャーミングさはちゃんと出ていると思いますか?
546:出ていると思います。
──アルバムが出て復活ライブをやり、再スタートという感じもありますね。
546:ようやくライブが出来ますし、さきの声をナマで体感してもらいたいので、アルバムを聴いてからライブにぜひ来て下さい。
さき:写真を見るとおしとやかそうに見えているかもしれないですけど。キャラも全然違いますし、ライブに来てもらいたいですね。
546:おしとやかじゃないということは、アルバムを買ってもらったら、いろいろと見えてくると思います。
ドナテロの化けの皮の剥がし方
POPTOP-0004 / 2,000yen (tax in)
レーベル:POPTOP
6.16 IN STORES
1. ホワイトラビット
2. リンガーリング
3. ROSSO
4. クタビレアンブレラ
5. 6cm
6. うそつきたまご
7. リモートコントロール
8. Jackie's POCKET
9. Cb
10. グッバイエルマー
11. fairy tale
12. 1ミリ
<CD購入者特典>
CDを購入された方限定で、7月17日(土)に下北沢GARAGEで行われる“ドナテロの化けの皮の剥がし方”発売記念ライブイベントに優待価格でご入場頂ける特典付!
※詳細はHPでの発表、またはCD帯裏記載をご確認下さい。
★iTunes Storeで購入する
Live info.
6月11日(金)LIVE INN ROSA syncl#28@第二弾!!
6月24日(木)下北沢GARAGE
7月17日(土)下北沢GARAGE
ドナテロ official website
http://donatello.syncl.jp/