何をしようがブレない自信がある
多才かつ異才の人である。世間にその名を轟かせた『忍風戦隊ハリケンジャー』は言うまでもなく、最近では『侍戦隊シンケンジャー』のお祭りワッショイなエンディングから、『ハートキャッチプリキュア!』のとことんキャッチーなオープニングまで、アニメ/特撮ソングシンガー/メイカーとしてとんでもなく振り幅の広い能力を発揮する。かと思えば、自身が率いるブラスロックバンドZ旗では『太陽に吠えろ!』もかくやと思わせるハードボイルドな世界を魅せる。そして、そのすべてにおいて、揺るぎない芯を貫き通すのだ。アニメ/特撮ソングのツボを痛快に押さえ、常にロックなアティテュードを崩さないこの才能は、アニメファンならずとも刮目すべき!(前川誠)
チーム「高取ヒデアキ」
──5/15に「四六時夢中シンケンジャー」が百筆目(イベントで歌った回数が100回目)を数えたということで、おめでとうございます!
ありがとうございます!
──高取さんの楽曲ってどこかしらバンド的というか、ライブハウスの匂いがするんですよ。
結局アニメの仕事って、番組のために、その番組を活かす楽曲を作ることじゃないですか。それをずっと続けていると、ついブレていっちゃうんですよ。自分が分からなくなってしまうというか。でも僕にはZ旗というバンドがあるので、何をしようがブレない自信があるんです。だからこそ絶対楽曲にZ旗のテイストは出てくるし、そもそもウチのメンバーがレコーディングに携わったりもするから、つい香ってしまう部分はあると思います。
──Z旗は高取さんにとって「芯」になっているんですね。
ですね。最近つくづく思うのが、作曲のクレジットで「高取ヒデアキ」って書かれてはいるけど、結局僕らはチームなんですよね。
──そういう感覚って、アニソンなどを作っている方の中でも珍しいのでは?
昔の歌謡曲を作るような分業制が、良い意味で残っている世界ですからね。でもそんな中で毎回コンペがあって、他の方と戦わなくちゃいけない。そのとき皆さんは個人戦でやられているところを、僕はチームで挑める故の安心感というか、絆は毎回感じますね。
──そもそも高取さんのルーツって、どこにあるんでしょうか?
十代の頃から国立のリバプールというライブハウスで、ハコバンをやってました。当時はARBとかザ・モッズとかが大好きで、まあ、どロックですよね。その後、今から16年前にとあるバンドでメジャーデビューするんですが、その頃ブレてしまったんです。時代も時代だったので、自分のやりたいことと求められていることのギャップを感じて、それを上手く噛み砕けなかった。それは自分の中に芯がなかったからなんでしょうね。ロックをずっとやり続けてはいたんだけど、理想と現実の狭間で、自分自身を見失ってしまったんです。
それでもう一度ロックバンドをちゃんとやろうと思い、新たに始めたのが基本的に今と同じメンバーのバンドだったんです。
──その頃、アニメの仕事を始められたんですよね?
そのちょっと前ですね。ふとしたキッカケで話をもらって、そうしたらNOBU(実弟)もちょうどその頃ヒマを持て余していたから、ちょっと面白いことできるんじゃない?って。アニメに革命起こしてやろうぜ、なんて意気込みで取りかかったんですが、見事に叩かれて(笑)。まあ、そんな甘いもんじゃなかったですね(笑)。
ただ、そこで勉強できたこともあった。そして自分のバンドはバンドでずっと続けていたんですが、02年に『忍風戦隊ハリケンジャー』の楽曲を手がけることになったんです。
それから1年間、大きなステージで子供たちを前にして歌い続けたんですけど、とにかくあんな沢山の人たちの前で歌えるっていうことに単純に興奮したんですね。しかもああいうステージってすごく広いのに、たまにスーツアクターさんが助けてくれるくらいで、歌うときは独りだったりするんですよ(笑)。そのとき、これをバンドでやれたら更に最高だろうなあって。それでバンド熱が今まで以上に高まって、Z旗を立ち上げたんです。
──転機は『ハリケンジャー』だったと。
そうですね。いろんな状況が変わりました。
良いものに大人も子どもも関係ない
──確かに03年以降、手がけたアニメ/特撮ソングの数が急増します。でもそうして創作活動を続けるなかで、それこそ理想と現実の間でジレンマを感じたことは?
正直な話、アニメの仕事ってめちゃくちゃ面白いんですよ。ここ数年良い番組に出会えてますし、何の違和感もなくやれてますね。もし制作中に「どうしても」ということがあったら、限られた時間の中でプロデューサーと話し合うノウハウも身についたし、こちらからいろんな提案ができるだけの引き出しの数も以前に比べて格段に増えましたから。それもチーム戦だからこその強みだったりするんですが。
──番組の主題歌を作る楽しみって何処にありますか?
表現の究極って、映像と音楽が一致したときだと思うんですよ。特にアニメはいろんな表現ができるから、時々とんでもない絵が付くことがあるんですよ。だいたい音楽が先にできるんですが、それに対してどんなアンサーが返ってくるのかを待つのって、楽しいんですよね。それで「ええっ!!」っていう絵が来たときの感動は何ものにも代え難いです。
あとはやっぱり、子供達が口ずさんでくれるっていうのも大きいですね。だって、子供の頃に観てハマったものって、一生残るじゃないですか。下手したら墓場まで持っていってくれる(笑)。それはやりがいがあるし、意識して子供達の心に残るような曲を作ろうとしますね。イヤでも覚えさせてやる! って(笑)。
──言われてみれば、バンド時代と今ではリスナーの層が違うんですよね。
でも結局、良いものは良いし、子供とか大人とか関係ないんですよ。昔はそこを分けて考えていたけど、今はあまり考えなくなりましたね。しかも子供に届く曲って、めちゃくちゃ難しいんですよ。雰囲気だけじゃ絶対伝わらないし、メロディーがしっかりしてないとみんな歌ってくれないから、イメージ先行じゃなくてもっとハッキリしたものを作らなくちゃいけない。で、そういうモノを作っていれば、大人たちもちゃんと聴いてくれるんですよ。
──そうした高取さんの軌跡を収録したソロアルバムが7/21に発売されますね。
僕はとにかくいろんな変遷があって今に至るんですが、まあ楽しくやって来たんだなっていうのが分かる作品になっていると思います。
──そう、高取さんの作る曲って、楽しそうなんですよね。
昔ハコバンをやってた頃って、勝手に自分の中で縛りを作ってその中で小さくまとまっていたんですよ。自分ではそれが大きな世界だと思い込んでいたんですけど、端から見たらものすごい小さい所にいた。それがアニメの世界に飛び出して、自分がブレないっていう自信ができたときには、どんなことをやっても楽しめるようになったし、楽曲の中でいろんな冒険ができるようになった。歌い方もアレンジも歌詞も、何をやっても自分の楽曲として「面白いでしょ?」って言えるようになれたし、これからまたいろんなことができるだろうな、次は何をしてやろうかっていう期待はありますね。
──すっごく充実してますね。
仕事的にはそうなんですが、とにかく時間が足りない。バンドをもっと詰めたいんですけど、時間がない。それだけですね。あとは楽しくやれてます。
この旗を挙げ続ける
──なるほど。そのZ旗なんですが、今後はライブハウスでもどんどんライブを行っていきたいんですよね?
そうですね。僕がいることで「アニソン」っていう括りが出来て、それが足かせになっちゃっている部分は正直あるとは思うんだけど、でもZ旗のポテンシャルってすごく高いし、ちゃんと生の演奏を聴いてくれれば納得させられるだけの自信はある。だからいろんなバンドとも対バンしていきたいし、それこそ新宿ロフトに出たいなあ、なんて(笑)。
──こちらこそ是非お願いします!
まあウチらがやってることって、音楽的にはいろいろあるけど、結局は大人のヒーローソングなんですよね。僕がガキの頃にカッコイイと思っていた世界観を音にしているだけで。そういう意味では、アニソンとか特撮ソングとかと余り変わらないのかな、とも思いますね。
──すごく新宿という土地の似合う世界観ですよね。
だから新宿でもっとやりたいんですけどね。前は路上ライブでCDを5,000枚とか売ったりしていたんですけど、最終的にやり過ぎて警察に捕まっちゃいまして。「君たちの売上と演奏力は新宿ナンバーワンだよ」って言われましたけど(笑)、それから新宿の路上ではできなくなっちゃったんですよ。
──表現の場所として路上を選んだのは何故ですか?
まず時間に縛られないこと。そして、どんな場所でもどんな環境でもできる自信があったからですね。やっぱり、他人ができないことをしたいと思ってたし、そう考えるとこれだけ大所帯のバンドが新宿の路上でやるのって面白いよなって。怖い人とも話つけなくちゃいけなかったりとか、いろいろ大変でしたけどね(笑)。でもお蔭様で、肝は太くなりましたよ。
今はその延長なんですが、池袋の西口公園にあるステージで、無料ライブを完全に合法で(笑)、不定期でやってます。鈴木美潮さんとも一緒にコラボしてるし、5/30には影山ヒロノブさんが飛び入りで参加して「CHA-LA HEAD-CHA-LA」を歌ってくれたりとか、いろいろ面白いことやってます。
──そちらも頑張ってください! ちなみに今後、テーマ曲を作ってみたい作品ってありますか?
できればオープニングとかエンディングだけじゃなくて、1つの作品の劇伴まで含めた全ての音楽をZ旗で担当してみたいですね。しかもそれが、Z旗の世界観に合ったハードボイルドな作品だったら更に良い。それが、僕がこれまでアニメに携わって体感してきた、音楽と映像が一体になったときの興奮を突き詰めた最終形だと思ってます。
──それは良いですね! いつ頃までに実現させたいですか?
まあ今すぐやりたいんですけど(笑)。でもこういうのってタイミングだから、とにかくウチらはその時が来るまで旗を挙げ続けますよ。
INFORMATION
Project.R presents
高取ヒデアキ vs SisterMAYO 1stアルバムリリースライヴ
日程:8月1日(日) OPEN16:30 START17:00
場所:LIVE HOUSE 渋谷TAKE OFF 7
チケット:前売り¥3, 500 当日¥4,000(+ドリンク代¥500)
チケット発売日:6/5(土)からイープラスにて発売
問い合わせ:LIVE HOUSE 渋谷TAKE OFF 7 03-3770-7755
MAIL:liveto7@kox-radio.jp
URL:http://www.kox-radio.jp/to7-top.html
ALBUM 2010/07/21 Release
高取ヒデアキ ベストアルバム「参上!』
COCX-36247 ¥2,500(税込)
高取ヒデアキの初のベストアルバムが登場! おなじみの曲からレア音源までを収録し、シンガーとしての高取ヒデアキの魅力をぎっしり詰め込んだマスターピース!
高取ヒデアキ公式ウェブサイト
http://www.starball.jp/takatori/
Z旗公式ウェブサイト
http://www.starball.jp/z-ki/