ギター バックナンバー

DISK RECOMMEND ('10年05月号)

LOFT PROJECTのスタッフがイチオシのCD・DVDを紹介!!
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★以下のジャケットをクリックすると、各レビューが読めます。

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9mm Parabellum Bullet / Revolutionary

TOCT-26959 2,500yen(tax in) / IN STORES NOW

 約1年半ぶりとなる9mm Parabellum Bulletの3rd.アルバム『Revolutionary』は、初のセルフ・プロデュース作品。M-1の『Lovecall From The World』は、1分にも満たない今世紀最大のドラマを聴かせ、いつものように絶叫するベースの中村。たった4行の歌詞。こんな短い曲の中で、よくこれだけイメージを掻き立てる曲を作ったもんだと感心をしていたら、まさか元ネタが…だったとは。こんなに格好良く決めている彼らなのに、どこか素っ頓狂なところがいつも好感が持てる。という曲で、幕を開けた『Revolutionary』。M-2の『Cold Edge』は、『Cold Edge e.p.』から。このアルバムの中では唯一中村が作曲を手がけている。M-4『3031』では、ドラムのかみじょうが作曲を手がけ、これまでとは違った雰囲気の曲だ。ギターは同じメロディーをループし、途中ではメタルのような速弾きをし、かと思えば、いきなりパッと開けた雰囲気で少しだけ明るさを持ったギターフレーズになったりと、目まぐるしい展開をする曲。楽曲の構成としては、次にどうなるか全く検討がつかない、そして、彼らの頭の中がどんなになっているんだろうと、より興味を沸かせる1曲。『Black Market Blues』は、個人的に大名曲。『命ノゼンマイ』は映画『彼岸島』の主題歌にもなった曲であり、映画と同じくおどろおどろしい雰囲気を持ち、『Finder』は、どこか昭和歌謡を匂わせ、少し間の抜けた感じを。また、ここまでやるかと思うほどに転調を繰り返す。インタビュー中に中村が、「この曲は変な曲担当です」と言っていたが、これまでの9mmから滲み出ていた昭和歌謡感とはまた違った曲となっている。最後の『The Revolutionary』は、“世界を変えるのさ おれたちの思いどおりに”というフレーズが印象的。これまでの作品で、ここまでストレートな言葉を使っている曲もなかなかないだろう。という全10曲。
 個人的に9mmの聴きたい部分、いや、それ以上のものが全部詰め込まれていたという感じがして、きっと2010年の大晦日を迎えるまでに何度聴くか想像がつかないほどの大名盤だと思う。
 そして少し余談として…。『VAMPIRE』を聴いた時も思ったが、9mmの詞世界をイメージしても、どうしてもモノクロの世界しか浮かんでこない。例えば、『光の雨が降る夜に』の“イルミネイション”や『キャンドルの灯を』の“キャンドルの火を〜”という言葉があっても、色を持ったのはイルミネイションやキャンドルだけで、その周りは全てモノクロなのだ。まさに、今回のジャケのように、何もかもが枯れ果てた大地に不自然なまでに生命力を帯びた木のような雰囲気なのだ。この、思いがけない場所で生命力を宿した木のように、これまでもこれからもしっかりとした根を張って活動していくのだろう。


(Rooftop:やまだともこ)


androp / note

VRES-0002 1,500yen (tax in) / IN STORES NOW

 ライブ以外での露出がない状況が1st.album『anew』から続いているandropが、早くも2nd.album『note』をリリースすることとなった。どんなバンドなのかがほとんどわからないだけに、『anew』の時は、きっと華奢な体に、透き通るような肌を持った男性がいるんじゃないかなどと勝手に想像していたが、今回も音源を聴いて、想像だけはどんどん膨らんでいった。前作に比べるとサウンドはロック色が強く骨太になっていたので、きっと華奢であることは変わらないものの、少しだけ油ものも摂るようになったんじゃないかとか(よけいなお世話だが)、音楽に対してよりストイックになったんじゃないかとか。
 テンポが目まぐるしく変わる『Colorful』では、歌詞から如何様にも風景をイメージすることができる。生まれてからおじいさんになるまでを想像させる『Traveler』は、5曲の中でも特にポップなサウンドで、透明感のあるボーカルと重なることにより、より幅広い層に受け入れられる曲なのではないかと思う。全5曲が、音楽に乗せて物語を聴いているようでもある。
 今回は、タイトルを日本語のローマ字表記にせず(前回で言えば『Basyo』とか)、全て英単語でのタイトルになっており、前回感じていた「何でこうしたんだろう」というモヤモヤは解消された。あとは、andropがどんな人(たち?)なのかを早く知りたい。


(Rooftop:やまだともこ)


小谷美紗子 / ことの は

RDCA-1014 1,600yen (tax in) / 5.12 IN STORES

 オリジナル作品としては『Out』以来約3年振り、玉田豊夢(ds)、山口寛雄(b)とのトリオ編成による作品としては通算4作目となる小谷美紗子の新作は、精選された至上の歌が5曲収録されている。“ことのは”(言の葉)というタイトルが象徴しているように、どの楽曲も日本語を大事にした歌詞を念頭に作られており、部分的な英詞も皆無という潔さ。そのせいか、自身の感性を際限まで研ぎ澄ました上で紡ぎ出される言葉はいつにも増して簡潔にして豊潤だ。すでにライヴでも披露されている『青さ』と『手紙』という名バラードがやはり抜きん出た出来。性急なリズムと全編ファルセット・ヴォイスが有機的に溶け合う『日めくり』、敢えてピアノを弾かずに荘厳な大地のリズムに乗せて唄われる『空の待ち人』の2曲は新機軸だと思うし、PVも作られたリード・チューン的な『線路』の瑞々しさも堪らない。苦渋を舐めながらも明日への希望を忘れぬ姿勢が本作には通底しているが、日々の生活の中で厳しい現実としっかり対峙する冷徹な視座が小谷にはあるので、決して安直な頑張れソングにはならない。むしろその類の歌とはとんと無縁な凛とした佇まい。燃え滾るような情熱はしっかりと渦巻いているが、表向きは柳に風とばかりに淡々としている。その絶妙なバランスがまた素晴らしい。身を挺して守り抜きたい相手に捧げた小谷の“言葉のない手紙”は、感受性が錆び付いていないあなたの元にもきっと届くはずだ。


(Rooftop編集局長:椎名宗之)


スマイレージ / 夢見る15歳

HKCN-50117 1,050yen(tax in) / 5.26 IN STORES

 ハロプロの研修機関であるハロプロエッグから選抜された和田彩花、前田憂佳、福田花音、小川紗季の4人から成る「スマイレージ」は、昨年6月にシングル『ぁまのじゃく』でインディーズからデビューし大きな話題となった。続く第2弾シングル『あすはデートなのに、今すぐ声が聞きたい』が、その曲調、衣装などが、ハロプロの歴史の中でも特に人気の高かった第二期タンポポを彷彿とさせ、私のような旧世代ファンの心をも鷲づかみにするポテンシャルを持っていた。そして第3弾シングル『スキちゃん』、第4弾『オトナになるって難しい!!!』と勢いを止めることなくファン層を拡大していき、遂にメジャーデビューの切符を手にしたのだ。メジャーデビューの条件としてプロデューサーのつんく♂が出したのが「笑顔の写真を1万枚集める」というものだった。自らの撮影とファンからの応募で1万6千枚の笑顔写真を集め無事メジャーデビューを果たした彼女達だが、こういった通過儀礼があるのもハロプロらしい。そしてメジャーデビュー曲『夢見る15歳』だが、背伸びする思春期の気持ちを歌ったダンサブルな楽曲で従来の路線と明らかに異なるのだが、逆にグループの可能性を広げようとする意気込みを感じさせる。対してカップリングの『サンキュ!クレームブリュレの友情』は、既発曲同様の女の子らしいキラキラチューンで等身大の魅力を伝えてくれる。とにかくスマイレージが今最も目が離せないアイドルグループなのは間違いない。


(加藤梅造)


ニューロティカ / 別冊ニューロティカ

NRRC-0003 2,200yen (tax in) / 5.05 IN STORES

 インパクトのあるジャケですね。このジャケのイラストは『ヤマトナデシコ七変化』(ドラマではイケメンがたくさん出演していました)の作者である、はやかわともこ先生の描き下ろしとのこと。今までロティカは、いろんな豪華先生方にジャケやイラストを描いて頂いていたと思いますが、今回はこれまでの中で一番の美男子になっているのではないでしょうか? カタルさん&シズヲさんは目がキラキラしちゃってますし、ナボさんは一瞬わからないですし、ピエロのあっちゃんもかなりキュート。この振り切っちゃってる感じも、女子向けの雑誌風のジャケットがしっくり来ちゃう感じも、全部ニューロティカなんでしょうね。
 サウンドは、1曲目の『限界ギリギリ MY LIFE REVOLUTION』では頭から“らしくない”と言えばらしくないストリングスで「おや?」と思わせておきながら、そこからはいつものニューロティカ。髪をなびかせ風を切って突っ走ります。5曲目の『オレンジの快速に乗って』は、軽やかなメロディーに乗せてあっちゃんが歌い上げているのですが、この曲を聴いているとなぜか加山雄三と海が頭に浮かびます。7曲目の『DANDY DANGDING, DARLIN' DADIDA』は、80年代のロックという印象。結成26年を迎えたニューロティカは、今も昔も変わらないロックを鳴らし続けているということなんだと思います。ちなみにこのCDの最後は、電車の中などで聴くとかなり危ないのでお気を付けくださいませ。


(Rooftop:やまだともこ)


フラワーカンパニーズ / 元少年の歌

初回生産限定盤(DVD付) AICL-2097〜AICL-2098 1,470yen (tax in) / 通常盤 AICL-2099 1,223yen (tax in) / IN STORES NOW

 昨年20周年を迎え、それに伴うツアー、ベスト盤のリリース、またツアー。何かと動きが多い最近のフラカンからシングルが届けられた。それが何と! 現在公開中の映画、『誘拐ラプソデ−』の主題歌というタイアップ付き。『元少年の歌』、「大人」ではなく「元少年」という表現がいかにもフラカンらしい。そして歌詞には「元少年」なる言葉は一切出ず、堂々と「大人」と言いまくっている。こういうヒネクレた所もいかにもフラカンらしい。この手のミドルテンポの曲になると、Vo.鈴木圭介の声は素晴らしく優しい響きになる。「歌」を「歌う」という事の見本のようなボーカリストだなぁと思う。軽くポップなタイトルとは裏腹に、「元少年」の方々には深く刺さる曲なんじゃないだろうか。カップリング(って最近聞かなくなったなぁ…)は、メンバー全員40歳記念? の『40』。内容もそのまんまアラフォー讃歌。もう1曲は、名曲『深夜高速』のアコースティックバージョン。ゲストに盟友奥野真哉(PIANO)と、SOUND PRODUCERとして曽我部恵一を迎えての再録。オリジナルよりもテンションを落とし気味だが、元にある力強さはそのままに、オリジナルとはまた違った角度から染み込んでくる。ゲストチーム二人の手腕に拍手を送りたい。フラカンのライブは、好きなオモチャを持ってハシャギまわっている子供のように見える。確かに「大人」ではなく「元少年」という言葉が1番似合う…いや、まだまだ少年なんだろうなぁ。


(新宿LOFT:水野 慎也)


メロン記念日 / URA MELON

EPCE-5702〜3 5,000yen (tax in) / IN STORES NOW

 メロン記念日の現役活動中に発表される最後のリリース・アイテムは、メジャーで発売された全シングルのカップリング17曲に加え、ボーナストラックとして『Crazy Happy!』まで収録されたカップリング・ベスト・アルバムだ。『恋愛レストラン』、『遠慮はなしよ!』、『さあ、早速盛り上げて 行こか〜!!』といったライヴの定番曲が数多く見受けられることからも判る通り、カップリングと言えども極めてクオリティの高い楽曲が凝縮している。リリースの途絶えた苦難の時期ですら『サクラ色の約束』という胸を締め付ける珠玉のナンバーが提供されている辺り、ハロー!プロジェクトの中でも屈指の楽曲至上主義グループだったと言えるのではないか。また、本作には今年の2月19日にSHIBUYA-AXで行なわれたデビュー10周年記念ライヴの模様を丸々収めたDVDまで付いているという大盤振る舞い。言うまでもなくあの衝撃の解散宣言の瞬間までもが克明に収められているが、映像で見る限り意外とあっさりとした印象を受けたのは僕だけだろうか。あの凍てついた空気は、やはり現場にいた人間にしか判らないものだ。特典映像には、『ALWAYS LOVE YOU』のPVと同曲を提供したBEAT CRUSADERSへの制作秘話インタビューを収録。このインタビュー、実は僕が仰せつかっている。内容は折り紙付きゆえ、冷やかしで結構なので是非見て頂きたい。


(Rooftop編集局長:椎名宗之)


SQ MUSIC / Love SQ

SQEX-10174 2,100yen(tax in) / IN STORES NOW

 FC・SFC時代のキャラクター達がちりばめられ、ドット画の地図で大きく「LOVE」と書かれたこのCD。日本人なら誰もが一度は聴いたことがあるであろう名曲が、表題どおりにミュージシャンの方達のSQ作品に対する「LOVE」と一緒に収められています。今も昔もゲーム好きで、SQ作品に関しては思い出補正もかかり懐古中な自分にとっては、胸躍る作品ばかり。SQ作品のベスト盤のようなこんなCDを待っていた人は、私だけではないはず。原曲のイメージを守りながらも、それぞれの個性が発揮されている全10曲。どの曲がオススメかと聞かれると、聴いた人それぞれで変わってくるとしか言えません。昔ゲーム小僧だった人、今もゲームが大好きという人、老若男女問わず誰でも楽しめる作品群です。自分の中にあるSQに対するLOVEを感じながら名曲の数々を楽しんでください。5月26日には、新作の『CHILL SQ』も発売予定、合わせて楽しむのもオススメ。


(Asagaya/Loft A:柏木聡)


OKAMOTO'S / 10'S

初回生産限定盤(CD+DVD) BVCL-99~100 2,800yen (tax in) / 通常盤 BVCL-101 2,400yen (tax in) / 5.26 IN STORES

 学業とバンド活動を両立させながら、新宿にある某ライブハウスを中心に活動していたOKAMOTO'S。そして今年春にはオースティンで開催された“SxSW 2010 Japan Nite”にも出演し、日本人として史上初! となるメンバー全員10代としての出演を果たす。そんな彼らのnew album『10's』は、沢山のトピックスと共に発売される。もうタイトルからしてズルイ(笑)! ライブでもお馴染みの『恋をしようよ』をはじめ、数曲のカバーを織り交ぜた作品は、彼らのありったけの勢いが詰まった作品。
 もし私がOKAMOTO'Sと同世代に生まれたら、きっともの凄く憧れの対象になっていただろう。そんな彼らと同年代に生まれたティーンエイジャーの皆さんがとても羨ましい。私が10代の時と違って音楽をやれる環境が凄く整っているし、表現出来る場所が沢山あるのは事実。でも、そんな環境に甘える事なく一線で勝負しようとする姿は、若さだけではなかなか出来ない。才能と運に恵まれたOKAMOTO'Sはまさに表舞台に出るべくして出てきたバンドなんだろう。ティーンズバンドに光と道を作ってください! 期待しています!


(ロフトプロジェクト:樋口寛子)


the crickets / Fortune O'clock High

ROJR-0008 1,575yen (tax in) / 5.12 IN STORES

 昨年のRO69 JACK最終選考を通過し、「ROCK IN JAPAN FES.2009」の出演を果たしたthe crickets。自らの音楽と真摯に向き合い、真っ直ぐ過ぎるほどに真っ直ぐな彼らの音楽は、胸の真ん中をじんわりと熱くさせる。そんなthe cricketsの音楽に対する姿勢、そして思いがそのまま詰め込まれた作品『Fortune O'clock High』が5月12日にリリースされる。何処か憂いを帯びたような繊細な山田の歌声が、より一層エモーショナルなサウンドを引き立てて、壮大でメッセージ性の高いロックを聴かせてくれる。the cricketsというバンドが生み出した言葉とメロディが、楽曲となって放たれる瞬間に、それはまた違う誰かのものとなって繋がっていく。このアルバムを聴いて、感動や共感という感情によって心を揺り動かされた私のように、きっとあなたの心にも響くはず。そんな嬉しい予感が止まらない。  


(新宿LOFT:松浦由香理)


サンボマスター / きみのためにつよくなりたい

SRCL-7270 3,059yen(tax in) / IN STORES NOW

 サンボマスターのメジャー5thアルバムが『きみのためにつよくなりたい』が、人気漫画家浅野いにお氏描き下ろしのジャケットで遂に発売! なかなかサンボマスターらしからぬ、思わずジャケ買いしてしまいそうな素敵なイラストでございます(笑)。ただし今までのサンボマスターはともかく、今回のアルバムはこのジャケットがとことんまで合っているのです!
 デビューから今まで“君と僕との世界”を歌い続けたサンボマスターが、新しい境地から歌うラブソング。間違いなくバンドは転換期にきています。次はどんな君と僕との在り方を気づかせてくれるのか期待を抱きつつ、今はっきり言えるのはサンボマスターはあなたのためにまたつよくなっています。すいません、うまいこと言っちゃいました。


(LOFT/PLUS ONE:ケン・イトウ)


世界の終わり / EARTH

LACD-0176 1,890yen (tax in) / IN STORES NOW

 1DJ、ピアノ、ボーカル&ギター、ギターという珍しい編成のバンド、世界の終わり。私が説明するまでもなく、早耳リスナーの間では既に話題である1st album。タワーレコード限定で販売された『幻の命』を耳にした日から、ずっとずっとこのアルバムの発売を楽しみにしていた。発売日当日に『ERATH』を購入しに行き、その日から日に何度も何度も聴いてしまっている。まだあどけない少年のような歌声、決して重さだけを残さずポップに聴かす歌詞とメロディー。すっと耳に入り、心に引っ掻き傷を残す曲の数々。特に胸を打たれたのはM-6『世界平和』。この曲は私にとっての10年代音楽シーンの幕開けを感じました。日々色んな音楽に触れているけど、ここまで心を踊らせワクワクしたバンドに出会えたのは久しぶり。自分よりもひと廻り違うであろう、世界の終わり。これから彼らが奏でる音楽が本当に楽しみで仕方ない。このバンドに関しては作品を何枚出そうが衝撃を残すに違いない。きっと今年1番の出会い。


(ロフトプロジェクト:樋口寛子)


THE抱きしめるズ / 脳内デート

RCSP-0015 1,890yen(tax in) / IN STORES NOW

 このバンドの歌は青臭い。抱きしめるズの歌を聴くと校舎、校庭、学生生活、制服姿の女の子が脳内スクリーンに描き出されてしまう。そしてその初期衝動っぷりはGOING STEADY、銀杏BOYZ以来のバンドだ。オトコならば常に持ち続けている童貞心を揺すぶってくるような言葉のストレートな歌詞。聴いていると思わず体を動かしてリズムをとってしまうようなメロディー。童貞を捨てようが童貞の劣等感を捨てきれないボクのような人間には、まさにたまらないバンドなのだ。
 そんなバンドの1st.アルバム『脳内デート』。タイトルからして抱きしめるズらしい。そして内容もM-1『コロンバイン』からM-9『真夏の絶対領域』まで青臭さ全開で駆け抜けてる逸品です。まさに童貞珠玉のアルバム。さらにライブの勢いもハンパじゃありません。少しでも気になった方はぜひライブハウスに足を運んでみてはいかがでしょうか? そのうちチケットが取れなくなっちゃうかもしれませんよ。お早めにどうぞ。


(Naked Loft:高橋啓)


つしまみれ / Sex on the Beach

VICB-60055 2,800yen (tax in) / 5.12 IN STORES

 前作『あっ、海だ。』から約1年、今年もたっぷり13曲最高のつしまみれが届きました! つしまみれの歌はどれを聴いてもすぐわかる、「えー、この歌つしまみれっぽくねーぞ」ってのがないんですよ。デビューして10年、それってすごい事だと思いません? 彼女たちのネタは底なしなのだ!  13曲目の『人生圏外』は4年前に出した自主制作盤に入っていたものを、今回新録してアルバムに! トリなのになんとまぁ、悲しいタイトル。自主制作盤はもう手に入らないので必聴です。9曲目の『おばあちゃんのブラジャー』かっこいいです、めちゃロックです。だけど干しぶどうでした、まったくひどい(笑)。ちなみに別のアルバムに収録されている歌で『おじいちゃんのおズボン』というのがありますが、それの続編です。5曲目の『桃だろう』は、今回一番のお気に入りです。誰でも知っている桃太郎の物語を全く違う観点で歌にした作品で簡単に説明すると、鬼ヶ島の鬼たちが楽しく酒盛りしてたのに、桃太郎がじゃましたそうな。戦う理由は何? 悪者は誰?! 的なね、なぜか桃太郎が悪者。


(下北沢SHELTER:サチコ)


Fated Lyeno / get over trials

RCSP-0021 1,785yen (tax in) / 5.12 IN STORES

 始まりの予感があるような、そんな春が好きです。様々な出逢いと別れがありますが、全てが始まりのような気がしてワクワクします。今年もまた沢山のBANDからの活動停止や解散の便りがありました。BANDとは自分達の意思とは関係なく進む生き物なのです。だけど、いつまでも下を向いてもいられません。そんな中に届けられた、衝撃すぎる若手がこのFated Lyeno。とにかく、半端無く凄い!! 和歌山県出身、弱冠21歳。完成されたこのBANDの世界観、聴いて頂ければ伝わるはずだが、半端ない!! エモーショナル+プログレ+メロディック+PUNKの中にJAZZという基盤が形成されつつも、それ以上のスケールがこの6曲の中に随所に繰り広げられている。疾走感溢れる演奏とは相反して、垣間見える泣きのメロディー。この構成からは考えられない程、自由自在な演奏力から生み出される展開に脱帽。M-1の『count』は、エモーショナルな激情感の中に、絡み合うリズムライン。M-4『any colors』やM-6『Door』では鍵盤も入り、しっかりと聴かせるバラードもあったりする。特にM-5『weed』はFated Lyenoとしての存在意義を表しているようだ。過去に捕らわれてしまっているBAND不況ともいえるこの時に、一石を投じるべく、Fated Lyeno、ここに見参である。


(下北沢SHELTER:平子真由美)


pertorika / mini theater

自主制作音源 500yen / 発売中

 東京・神奈川で活動をしているPOPSバンド、pertorika。mini album『mini theater』は、切なさ・懐かしさを内包したメロディ、それを温かく支えるリズム、何より類似した物の思い当たらない形容しがたい独特な音を持っている。
 荒さはあるものの、自主制作ながらにもCDのクオリティはなかなかのモノであり、音が心地よく耳からフワッと入る。2曲目の『time』では苦い渋味を、8曲目の『2356』ではフワフワとした柔らかい世界観を、1曲目の『loop』では春に似合う柔らかな風の様なイメージ…など、多彩な色を持つこのCDは、バラバラのようでバラバラでなく、一貫としてノスタルジックなイメージを持つ。
 アコースティックな路上ライブ・バンドスタイルでの箱ライブと、音源だけでは味わい切れないアレンジの広さも魅力だ。活動を始めて1年、3枚目のCDとなるこの『mini theater』。最新テクノロジーを使い、myspaceからデータ配信販売も出来るらしい。ヤバい。科学ヤバい。ライブ会場での物販、HPからの通販もあるそうです。寝るときに聴くと安眠出来ますよー。


(下北沢SHELTER:ハッピーターン)


ミドリ / shinsekai

AICL-2122 2,800yen (tax in) / 5.19 IN STORES

 荒く音数少なく、でも何故か素朴で大きさを感じる意外な1曲目『鳩』から、このアルバムは始まった。いきなり良い意味での期待を裏切られる。そして続く2曲目、3曲目と序盤はミドリらしいハードでプログレッシブでサイケで、そしてジェットコースターのような怒濤の展開。壊れては我に返り、いつの間にかその音に吸い込まれている。5曲目の『スピードビート』は、タイトルとは裏腹に前のめりで確かなリズムを軸に、綺麗なピアノの旋律がとてもさり気なく入ってくる。突然右上でスネアが鳴ったり、下の方からベースのラインが聴こえ、気がつくとその丸い音楽の中心に自分が居て、それを包み込む様に歌が入ってくるような、不思議な歌だと思う。
 そしてこの作品の個人的な注目曲は、鍵盤ハジメがリードボーカルをとる『春メロ』。名曲の予感がするピアノから入り、決して上手い訳ではないが、何か味のある歌が入る。その頼りなさげな歌に、サビで女の子の声が重なる。そしてベースとドラムのリズムも温かみがあって、あの平成直前の良き時代を思い出す曲だった。そんな曲から、リズムでまた引きずり込まれるかと思ったら、突然優しい歌がのってくる。ミドリの『shinsekai』は、新世界ながら、激しいながらも何か温かいやさしい気持ちになるアルバムでした。


(新宿ロフト:大塚智昭)




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