様式美への愛と革新性が共存した“ギターの妖精”が語る飽くなき創作意欲
9mm Parabellum Bulletという尋常ならざるエネルギーを放射するカルテットの中で菅原卓郎はバンドの顔役を張り、かみじょうちひろと中村和彦は刀の柄の部分となって屋台骨を支えている。では、滝 善充はただ天真爛漫にギターを操るだけなのか。もちろん答えは否だ。それどころか、大衆性と革新性がギリギリのせめぎ合いの末に極めて理想的なバランスで溶け合った9mmの楽曲がこれほどまでに支持されているのは、以前から作曲の大半を担っている滝の資質に負う部分が大きいのではないかと僕は見る。時にギターを弾くことすら放棄してステージ上で踊り狂うパフォーマンスを魅せる彼だが、このインタビューを読んでもらえれば判る通り、普段は至って穏やかな常識人である。この普通人としての感覚が恐らくは肝で、クセのあるカオティック・コアのような音楽的要素ですら滝の手に掛かるとポップ・ミュージックの絶妙なスパイスとして昇華するのだ。その驚異的なミクスチャー感覚の拠り所を探るべく、最新作『Revolutionary』の制作秘話を交えて話を訊いた。(interview:椎名宗之+やまだともこ)
一番のハプニングは雪山での遭難
──「最高のアルバムが出来た」と菅原さんもブログで書いていましたが、滝さんも同じ手応えですか。
滝:アルバムを作ってる時から手応えは感じてました。絶対手応えのあるものを作ろうと思ったし、手応えが出るまで頑張るぞ! みたいな。いいトラックばかりを録ろうというかなりの気概がありましたね。
──制作前から作品のヴィジョンはある程度見えていたんですか。
滝:1曲ごとに構想はありましたね。こんな感じにやって、あんな感じにやって、これくらい格好いいドラムとベースとギターが録れれば絶対に手応えが出るはずだというところまでは考えて取り掛かりました。
──中村さんに話を伺いましたが、かなりタイトなスケジュールの中でレコーディングに臨んだそうですね。
滝:けっこうパツパツで、今期は全く曲を作れなかったんですよ。『VAMPIRE』ツアーが終わった直後の去年の春くらいに合宿へ行って、そこでいろんな曲を作ったんですけど、今回のアルバムにはその合宿で作った8曲と昔に作った2曲(『Invitation』と『Finder』)が入っているんです。作れたのはその8曲くらいなんですよね。
──『VAMPIRE』の曲作りの合宿の時もいろいろとエピソードがありましたけど、今回も何かハプニングがありましたか。
滝:まぁ、一番のハプニングは雪山で遭難してしまったことですね(笑)。ノーマル・タイヤの車が雪山に突っ込んで、JAFを呼んで…。山中湖の周りの雪道を走っていたんですけど、凄いアップダウンが激しい道で、アップを上がり切れなかったんですよ。10度もないくらいの緩やかな坂道だったんですけどね。その体験が『Lovecall From The World』の異常なテンションに繋がってるんです(笑)。
──まさに“今世紀最大のドラマ”でしたね(笑)。
滝:ホントにそんな感じだったですよ。一瞬、死ぬかな? と思いましたから(笑)。
──そこで一生懸命『命ノゼンマイ』を巻いたわけですね(笑)。
滝:そうですね。巻いて巻いて、何とか生き延びました(笑)。遭難した後、誰かが「歌でも唄おうぜ」って言い出して、何とか明るい気持ちに持っていこうとしたんですよ。でも、しばらく唄うと誰も唄わなくなって。
──遭難したのはメンバー4人だけの時だったんですか。
滝:4人だけでしたね。機材もフルセットで持っていって、身重な状態で遭難したっていう(笑)。雪が何十センチも積もっていたので寒かったはずなんですけど、寒さを感じる余裕もなく。
──よく無事に生還できましたね。
滝:すべてJAFのお陰ですよ(笑)。
──合宿では、各自が曲のパーツを持ち寄って合わせていく感じなんですか。
滝:そうですね。最初からカッチリと作るわけじゃなくて、各々がラフを出す感じです。日頃から温めていたアイディアを出し合って、それでどうなるかみたいにやってましたね。
──今回はリズム隊のおふたりも作曲に参加していますが、曲を採用するジャッジは滝さんが握っていることが多いんですか。
滝:ある意味ではジャッジを握ってますけど、せっかく作ってきたんなら何とかして活かさないと…っていう気持ちがあるんですよ。かみじょう君がパソコンでパチパチやりながら曲を作ってるところも、音楽理論的な指導をさせてもらったり。『3031』はそんなことを繰り返して仕上がった曲ですね。
──かみじょうさん作曲の『3031』も、中村さん作曲の『Cold Edge』も、作曲ビギナーの割にはよく練られていますよね。
滝:そうですね。らしさがよく出てるし、凄くいいと思いますね。
──滝さんは普段、どうやって曲作りをしているんですか。
滝:僕も意外とパソコンでパチパチ派なんですよ。大まかですけど、8割方は完成しているくらいのところまでは作ったりもしますね。ドラムとベースを打ち込んだりして。
──1曲を仕上げるのに時間が掛かるほうですか。
滝:掛かったり掛からなかったりですね。気分が乗ってるか乗ってないかで全然変わるんですよ。『Lovecall From The World』は一瞬で出来ちゃったような曲でしたけど、『命ノゼンマイ』は凄く難しかった曲なので、1ヶ月間ずっと集中して試行錯誤しましたね。
映画の主題歌という新たなトライアル
──映画『彼岸島』の主題歌として書き下ろされた『命ノゼンマイ』は、事前に原作の漫画を読んでから曲作りをしたんですか。
滝:公開される映画の未完成版を合宿中の夜にみんなで見させてもらって、次の日の朝から作り始めた感じですね。その場ではそれぞれが見たイメージでフレーズを並べて、とりあえず録っておくんです。それを後で聴いて、いろいろと積み木のように組み替えていきました。『命ノゼンマイ』はホントに積み木のような曲で、積んで積んで曲にしていった感じですね。
──せっかく積み上げても、しっくり来なければ最後に崩してしまうようなこともあるんですか。
滝:そういうのは意外となくて、土台と最終形は崩さずに真ん中を組み替えたりすることが多いですね。
──ジェンガみたいに構築していくわけですね。
滝:うん、まさにそんな感じです。割と緻密に作り込んでいるんですよ。
──『彼岸島』は“吸血鬼サバイバルホラー”と呼ばれるだけあってかなりおどろおどろしい内容でしたけど、その世界観をちゃんと踏襲していこうとしたんですか。
滝:もちろん。主題歌をやらせて頂くにはがっぷり四つに組んだ曲にしたほうが映画を見る人も楽しいだろうし、映画のイメージに合わせていくことで自分たちも意外な部分を引っ張り出せるし、これはチャンスだと思ったんですよ。それで従来の自分たちのイメージに囚われずに思い切り振り切って、映画の世界観にどっぷり浸ってみることにしたんです。
──でも、いつもの9mmらしさとはそれほど懸け離れていない気もしましたけど。
滝:今となってはそうかもしれないです。完成した当初は画期的だなと思ったんですけどね(笑)。
──いや、スケールの大きい力作だと思うんですが、アルバムの中盤に置いても流れを損なわないなと思って。
滝:そうなんですよね、不思議なことに。最初はアルバムに入れたら流れが変わっちゃうんじゃないかと心配していたんですけど、入ったら入ったで自然に聴けてしまうんですよね。
──映画の主題歌として曲を作ったのは初めてですよね?
滝:アニメとかはありましたけどね。僕自身は『彼岸島』のことを知らなかったんですけど、メンバーの中には知ってる人もいて。そういう話を頂いて、曲作りの余裕もあった珍しいケースだったので、是非やらせて頂きたいなと。面白そうな話だと思ったし。
──ただでさえ過密スケジュールなのに、そこで新たに曲を書き下ろすのは至難の業のように思えますけど…。
滝:でも、せっかく主題歌をやらせてもらえるなら、しっかり書き下ろしたかったですからね。忙しいと言っても、まぁそこそこですよ。昨年度中はいろいろと動き回っていましたけどね。シングルのリリースが続いたり、くるりやイエロー・モンキーのトリビュートに参加したり、ライヴやフェスも多かったですから。あっちこっち転々としていたので、春の合宿で作ったアレンジをレコーディング直前の10月までにまとめることができなかったんですよ。結果的に半年間寝かしてしまったんです。
──半年間寝かせたことがアレンジを見直す良いきっかけになったりとかは?
滝:なかったですね(笑)。ライヴで新曲をやることもあまりないし、そこで曲の反応を窺うこともないですし。基本的に新曲は完成した後じゃないとライヴではやらないんですよ。レコーディング直前にライヴが入ってる時は、度胸をつけるためにちょっとグダってもいいからやってみることもあるんですけど。
──半年間、まるっきり手を加えなかったんですか。
滝:ほとんど寝かせっぱなしでしたね。完全に放置プレイでした(笑)。さすがに途中でこれじゃまずいなと思って、夏前に『光の雨が降る夜に』だけは最後まで仕上げたんですよ。でも、アレンジの詰めの作業は半年間微々たるもので、詰めて詰めて落とし込む作業を最後の最後にさんざんやりましたね。そのせいか、アレンジの詰めから録り終えるまでの記憶がほとんどないんですよ。凄い集中していたので、3ヶ月くらいの期間が一瞬のうちに終わってしまったような感じですね。それだけ充実していたということなんでしょうけど。
スナッパー1本で全部を録り切った
──アルバムの方向性に確信を持てた曲は何だったんですか。
滝:“これは行ける!”と思えたのは『Black Market Blues』ですね。これは絶対に間違いないなと思いました。凄い面白い曲だという自信もあったし、自分の中でも聴く人の中でもかなり特殊な響き方をしてくれるだろうなと。あと、『Lovecall From The World』が出来た時はめったに聴けない凄いテンションだなと自分でも思いましたね。
──一番最初に完成に漕ぎ着けた曲は?
滝:今期では『Black Market Blues』と『The Revolutionary』ですね。それを2曲同時に作ったんです。『Black Market Blues』のアレンジをみんなで考えていた最中は、かなり漲るものがあったんですよ。『Black Market Blues』があまりにも風変わりな曲だったから、和彦が『Cold Edge』という凄くストレートな曲を持ってきたのもいい相乗効果でしたね。いい流れはあったと思います。
──知らず知らずのうちに役割分担みたいなものがあるんですかね?
滝:役割として感じてるんじゃなくて、個々人の感じ方なんでしょうね。その頃はストレートな曲を手掛けてなかったので、それで単純にストレートな曲をやりたかったんじゃないかと思うし、かみじょう君に至っては“好きに作ってくれ”みたいな感じだったし。自分としてはネタ的に大被りするような曲は絶対にやりたくないし、むしろ全曲違うタイプの曲にしたいくらいなんです。目まぐるしいくらいにどんどん変えていきたいんですよ。
──菅原さんが作曲を手掛けた曲がないのは、作詞もしくは歌に徹してもらおうという配慮からですか。
滝:作詞に特化してもらおうと思ったんです。アレンジを詰める時間を削ってでも詞を書かないとレコーディングに間に合わない状況だったので、曲はある程度僕が詰めてメンバーのところに持っていって、卓郎を除いた3人でアレンジを詰めていく手法を取ったんです。その間に卓郎は歌詞に専念する分業制だったんですよ。
──菅原さんの作詞はいつもかなりの難産だと伺っていますが。
滝:確かに。でも今回は、めちゃめちゃ苦労したということもなくて、いいペースで書けてたみたいですけどね。
──滝さんとしては、サウンド面の現場監督としての責任が一気にのし掛かってきた感じだったんですね。
滝:まぁ、メロディは早めに出ていたので、どう聴こえるかというサウンド的なところを詰め切るのを卓郎抜きでやった程度ですよ。曲の長さと文字数くらいは卓郎に伝えておかないと全く進めなくなるので、彼がやらなきゃいけないところを真っ先にやりましたね。
──かみじょうさんがドラムセットを替えたことで上物の音も必然的に変わったと思うんですが、具体的にどんな変化がありましたか。
滝:何と言うか、上物は落ち着いた感じですね。『VAMPIRE』は曲にヴァリエーションがあって、1曲ごとに音が全然違うみたいなアルバムだったんですけど、今回はほとんど同じような音で弾いたんですよ。音が定まったし、敢えていろんな音を出すこともないなと思って。もっとパンチを出すためにドラムセットを替えたので、ギターも一番パンチの出るセッティングじゃないと渡り合えないし、ライヴの音で弾かないと全然しっくり来なかったんです。ほとんど同じギターの同じ音で弾くというのも、ある意味で度胸が必要なのかなと。音色の変化で逃げられないですからね。
──ギターは変わらずESPのスナッパーを?
滝:はい。スナッパー1本で録り切った感じです。
──ある種、ギタリストとしての技量と真価を問われたアルバムとも言えるんじゃないですか。
滝:そうですね。どうにかこうにかな感じでしたけど。ちょっとしたことで違ったふうに聴かせたりとか、音で全体の方向性を持っていくんじゃなくて、小技、小技でどうにか頑張った感じです。
──小技は随所で効果を発揮していますよね。『光の雨が降る夜に』のワウペダルとか。リフやギター・ソロで曲をぐいぐい引っ張っていくのではなく、あくまで曲のパーツの一部としてギターの音が鳴っている印象を全体的に感じますね。
滝:突出した判りやすいリフは少なくなったかもしれませんね。『Black Market Blues』でも全体のバランスを重視して作りましたし。
巧く弾くよりもパンチを出したい
──結成当初から技量も経験値も増したと思いますが、ご自身ではギタリストとしてどう変化してきたように思いますか。
滝:技術的にもサウンド的にも全然良くなってきた自負はありますけど、変わったのは音くらいですね。どんどんいろんな曲をやっていきたい欲求から出てくるギターのアイディアでしかないし、それはインディーズの頃から変わってないです。最初から腹は決まってたと言うか、むしろそのやり方を変えたくないと思うし。あと、巧く弾きたいとは思いますけど、巧いよりかはパンチが出たほうがいいですね。仮にレコーディングで多少荒れてしまったり、大ミスをしてしまっても、いくらでも弾き直すから思い切り弾かせてくれと思います。今回は特にそんな感じだったんですよ。
──ライヴでの勢いをそのまま伝えたかった?
滝:そのままではないですね。人間、誰しも調子のいい時と悪い時があるし、いい時に出せる最大の勢いみたいなものは記録しておきたかったですけど。“これくらいの勢いは常に出していたい”という基準を作りたかったんですよ。自分の中の理想の自分を刻み込んでおきたかったと言うか。
──今回はセルフプロデュースということで、各パートの音決めひとつを取ってもかなりの時間が掛かったのでは?
滝:その辺はエンジニアの日下(貴世志)さんといいやり取りができましたね。日下さんもかなり考えてきてくれたし、特にストレスはなかったです。日下さんのアドヴァイスで曲が劇的に変わったことはなかったですけど、要所要所の聴かせ方はいろいろヒントをくれましたね。『Lovecall From The World』の最後に凄い音圧のファズ・ギターが入りますけど、あそこは12〜13本くらいファズを重ねてあるんですよ。その過程で、上寄りなシャリシャリの音になっちゃったんです。それに対して「もっとちょっとコクがあったほうがいいよ」と日下さんに言われたので、シャリシャリを減らしてコクのあるギターを増やしました。1秒あるかないかですけど、あんな音圧はなかなか聴けないと思いますよ。
──率直なところ、セルフプロデュースをやることに不安はありませんでしたか。
滝:なかったですね。できるなと思っていたし、本気で自分たちの好きなようにやれることが楽しみでもあり喜びでもありましたね。ある意味、自分たちに対する吹っ掛けでもあったし、そこでバンドの力量も見れて面白いんじゃないかと思ったんですよ。(いしわたり)淳治さんにプロデュースをお願いしていた時は淳治さん基準みたいなものがあって、その基準を突破すれば必ず格好いいものが生まれたんです。セルフプロデュースは自分たちで基準を設けることになるんですけど、自分たちが格好いいと思えたり、グッと来る部分を時間の許す限りたくさん増やせばいいんだなと思って。
──いしわたりさんから学べたことはどんなことですか。
滝:淳治さんがそれまでに携わってきたいろんな音源で得た経験値を、噛み砕いた状態で見て学べたことですね。音作りの上でもの凄い近道を教えてもらえたと言うか、確実な方法である上に究極のスタンダードだっていう。それを学べたのは凄くでかかったです。
──セルフプロデュースでこれだけの会心作を完成させて、どんどんハードルが上がっていきますね。
滝:初めて自分たちでプロデュースを手掛ける1作目のアルバムだし、かなりのクオリティの作品にしなきゃいけないなと思ったんですよ。プロデューサーがいなくなったらしょぼくれちゃったよみたいなものには絶対にしたくなかったので、めちゃくちゃハードルを上げて頑張ったんです。その目標をとりあえず僕は超えられたと思うし、次は一気にすっぽ抜けるかもしれないです(笑)。できる上でやらないというのも面白いかなと思うので。
──セルフプロデュースというのは、バンドを結成して初めてアルバム作った時の感覚に近いものなんですか。
滝:全然違いますね。締め切りに追われて余裕のない状況も違うし、当時とはケタ違いの人に聴かれているのも違うし。最初のデモCDなんて、聴かれても何十人程度のものでしたから。ただ、恐ろしい数の人に聴かれるから本気度は今のほうがありますけど、やってることは変わらないんですよね。スピーカーから聴こえてくるのは自分がいいと思えるものなのか、好きな音なのかを追求しているだけですから。
まず自分たちがいいと思えるものを
──ケタ違いの人に聴かれているプレッシャーはやはりありますか。
滝:僕はほんのちょっとだけありますね。でも、今回のアルバムを作る上ではそんなこともほとんど考えずに、まず自分たちが聴いていいと思えるものを作ろうとしました。それだけですね。自分の耳を通過していいと判断できたなら、自分から後ろに音がどんどん流れていっても全然自信は持てると言うか。
──世の注目を浴びるようになって、生活はガラッと変わりました?
滝:さほど変わらないですよ。一番変わったのは、レコード屋さんに行きづらくなったことですね。レコード屋さんに何時間もいるのが学生時代の最大の楽しみだったんですけど、今はあまり長いこといると怖いなと思うようになりました。特に邦楽売り場にいると怖いですね。自分たちのCDが並んでいるのを見ると。
──今の髪型だと余計に目立ちそうな気もしますけど(笑)。
滝:いや、むしろ全然ですね。まぁ、ちょこちょこ街で声を掛けられたりはしますけど。
──バンドが衆目を集めることで、近しいインディー・バンドとスプリットを出すなり、シーンの底上げをしてみようと考えたりはしませんか。
滝:特に考えたことはないですね。僕らにはそんなことができるほどの力もありませんし。特定のシーンに属していたバンドでもないし、ある意味マイペースなんでしょうね。友達のバンドもけっこういますけど、そういうバンドで特定のシーンに属してるのもあまりいないような気がします。
──9mmがなぜここまで圧倒的な支持を得ているんだとご自身では分析していますか。
滝:まず何よりも、自分たちが好きな曲を演奏していることですね。ヘンな音楽も好きですけど、普通の感覚もあるんですよ。普通の感覚を持った人間が聴いて格好いいと思えるなら、いろんな人もそこそこ格好いいと思ってくれるんじゃないかっていう、そんな気持ちでやってますね。自分が“これ、あまり格好良くねぇな”と思ったら、多分みんなが聴いても格好良くないと感じると思うんです。そういう感覚は、みんな同じ人間なんだから一緒なんじゃないかなと。意外にも、自分の趣味に合う人たちが世間にはけっこういたということなんでしょうね。
──聴き手を限定させる音楽性ではないと思うし、かと言ってポピュラリティーに振り切っているわけでもないと思うんですよ。その絶妙のバランスがいいんでしょうか?
滝:何なんでしょうね。たまたまだと思いますけどね(笑)。
──たとえば『Finder』はムダに転調をしまくる曲じゃないですか。ああいうちょっとした一手間が曲のフックになっているし、そうした随所に仕掛けられたトラップが中毒性の高さに繋がっているような気もしますね。
滝:『Finder』は最初のギター・フレーズから連想されるアイディアをどんどん積み上げていったんです。ある種の連想ゲームなんですよね。前のパートを踏まえた上でどう変わっていくかという流れが大事なので、自分としてはいい連想ゲームができたと言うか。一手間は確かに意識しているんですけど、『Finder』の転調は割とトラディショナルな手法ではあるんですよね。曲を一番いい状態で聴かせるためにクラシカルな手法を採り入れた結果、ヘンなふうに聴こえるようになってしまったんですが(笑)。1回聴いただけだと煙に巻かれておしまいになりますけど、何度も聴くと味わい深さが出てくる曲だと思いますよ。このアルバムの中では特にそんな感じですね。
──滝さんのプレイはメタル寄りでスタンダード性が高いですが、あらゆる音楽性を貪欲に呑み込むミクスチャー感覚に長けていると思うんです。伝統と革新が共存していると言うか。
滝:僕はデリンジャー・エスケイプ・プランみたいなプログレ・ハードコアも凄く好きなんですよ。ああいう奇を衒うようなことしかやらないバンドをいっぱい聴いてた時期があったので、何をやっていようとある程度許せる心の広さが出来たんです(笑)。そういうのもあるんじゃないですかね。
頑固なまでの判りやすさで勝負する
──難解な音楽性を最大公約数へ広める能力が滝さんにはあるんじゃないですか? 要するに、翻訳能力が高いんだと思いますよ。
滝:ああ、なるほど。確かに、そういった意味では翻訳はけっこう頑張ってるかもしれないですね。
──ハードコア好きはとかくハードコア一辺倒になりがちだけど、滝さんは視野が広いし、ハードコアの良質なエッセンスを翻訳してアンチ・ハードコアのリスナーにも伝えられるスキルがあると思うんですよ。そういった滝さんの資質こそ、9mmの音楽が幅広く浸透しているキーポイントなのかなと思って。
滝:自分としては単純に判る部分で勝負してますね。ハードコアの格好良さって、凄く重かったり、歪んでいたり、ヤケクソに速かったりする判りやすい部分じゃないですか? そういう部分を判りやすく出せば、ハードコアの格好良さをちゃんと引き出せると思うんですよ。「ハードコアは速いから格好いいんです!」みたいな、ある意味頑固な感じの判りやすさが僕にはあるんです。
──だとすれば、伝染力が強いんでしょうね。メタル嫌いだったかみじょうさんのメタル血中濃度を上げたのは滝さんの努力の賜物じゃないですか(笑)。
滝:確かに、かみじょう君はメタルが心から嫌いだったみたいですからね(笑)。でも、メタルの楽しさを9mmの曲に採り入れていくうちにメタルの楽しい部分だけを伝えることができたと言うか。僕が伝えたいのはメタルのどろどろした部分じゃなく楽しい部分だし、そこに焦点を絞ってかみじょう君に伝えたのが良かったんでしょうね。実は僕も、最初はメタルがかなり苦手だったんですよ。でも、いろいろ聴くうちに“メタルってなんて面白いんだ!”って思うようになったんです。ヤケクソになって速弾きをする単細胞さも面白くていいんですよ(笑)。
──『3031』のサビの間で延々速弾きしているのは笑いましたけど(笑)。
滝:あれはかみじょう君が起こしたフレーズなんですよ。ああいうエクストリームなフレーズこそ、彼の中にメタルが染み付いた何よりの証拠ですね(笑)。
──教則DVDを出してみたいとは思いませんか?
滝:いやぁ、ないです、ないです。何を教えていいのかさっぱり判りませんから。
──9mmのコピーをやっている人は滝さんの速弾きとタッピングは知りたがるはずですよ。
滝:まぁ、タッピングならある程度は教えられますね。レパートリーは少ないですけど(笑)。
──今後のホール・ツアーも楽しみですが、4人それぞれが好き勝手なパフォーマンスを繰り広げてもなぜか統一感が生まれるあのステージはやはり独特ですよね。
滝:それはよく言われるし、特殊ですよね。他のバンドはもう少し統一感を出そうとしてるみたいですけど、ウチらはまず各人のやりたいことを達成するのが第一なんですよ。
──普段、ライヴに備えて体力作りはしているんですか。
滝:腹筋はしてますよ。ランニングはしませんけどね。走ると毛穴が開き過ぎてかゆくなっちゃうんですよ(笑)。開いた毛穴に冷たい風が当たると凄くかゆくなるんです。ライヴの時も毛穴は開くんですけど、熱気が凄いし、汗も出るので大丈夫なんですよね。
──最後に伺います。『The Revolutionary』に“世界を変えるのさ”という歌詞がありますけど、自分たちの音楽で世界を変えたいという意識はありますか。
滝:世界は変わらないです。変えられるものがあるとすれば、聴いた人のテンションでしょうね。そういうちょっとしたことなら変えられるんじゃないかなと。ただ、音楽で政治は変わらないけど、“世界を変えるのさ”と唄われる速い曲を聴いて元気になった人が政治を頑張って変えてくれたらいいなとは思いますね。
9mm Parabellum Bullet
Revolutionary
TOCT-26959 / 2,500yen (tax in)
IN STORES NOW
01 Lovecall From The World
02 Cold Edge(Album ver.)
03 Invitation
04 3031
05 Black Market Blues(Album Mix)
06 命ノゼンマイ(Album Mix)
07 光の雨が降る夜に
08 Finder
09 キャンドルの灯を
10 The Revolutionary
★iTunes Storeで購入する
Live info.
5月1日(土)「ARABAKI RCOK FEST.10」宮城 エコキャンプみちのく
5月15日(土)「F-X」福岡 海の中道海浜公園 デイキャンプ
7月10日(土)「京都大作戦2010」 京都 立山城総合運動公園
Revolutionary Tour 2010
5月20日(木)Zepp Nagoya
5月21日(金)Zepp Osaka
5月26日(水)Zepp Tokyo
6月4日(金)Zepp Sendai
6月6日(日)Zepp Sapporo
6月13日(日)Zepp Fukuoka
6月20日(日)名古屋市公会堂
6月21日(月)NHK 大阪ホール
6月24日(木)NHKホール
Great Hunting
Rooftop5月号に登場していない、菅原卓郎とかみじょうちひろの撮り下ろしフォト&インタビューは、フリーマガジン「Great Hunting」Vol.20で読むことができます。「Great Hunting」は全国のライヴハウス、CDショップなどで配布しています!!
Present!!
9mm Parabellum Bulletから読者プレゼント!!
9mm Parabellum Bulletといいちこの夢のコラボレーション!!
かねてより、いいちこ好きを公言してきた彼ら(特に滝氏)と、いいちこのコラボ前掛けが完成した。こちらの9mm Parabellum Bullet特製前掛けを3名様にプレゼント!!
応募方法
住所・氏名・年齢・職業・電話番号・Eメールアドレス(ロフトプロジェクトのメールマガジンを希望する方のみ)・本誌の感想をご記入の上、官製ハガキまたはメールにてご応募下さい。
rooftop@loft-prj.co.jp
〒169-0073
東京都新宿区百人町1-5-1 百人町ビル3F
Rooftop編集部プレゼント係
までお送り下さい。
締め切りは2010年5月31日(月)当日消印有効
当選者の発表は発送をもって変えさせて頂きます。なお、記入漏れは無効となります。ご了承ください。
※当選した品物をオークション等に出品することはご遠慮願います。
※ご提供いただいた個人情報は、ご本人の事前のご承諾なく第三者に開示・提供しません。
9mm Parabellum Bullet official website
http://9mm.jp/