ギター バックナンバー

マキタスポーツ('10年4月号)

マキタスポーツ

中途半端で半信半疑がちょうど良い!


自称“ネタの出来るミュージシャン”であり、東スポ映画大賞エンターテイメント部門で期待賞を堂々受賞したマキタスポーツからニューアルバムが届いた。アーティストの声や外見ではなく「作詞作曲方法」を真似するという必殺技「作詞作曲モノマネ」が隙間なく炸裂した本作。「芸人」や「ミュージシャン」といった無用なカテゴライズを笑い飛ばすマキタスポーツは、もはや「マキタスポーツ」以外の何物でもないのだ! インタビュー・文:かわしまりさ(ロフトプラスワン)

──今回のアルバムを出すに至った経緯を教えてください。

 特に理由はないです。まあ、強いて言うなら、そろそろちゃんとネタを一つの形にしたいなと思ったから。ただ単に(ネタを)ライブでやっているだけじゃなくて、もうちょっと広く知られたいという欲もあるんで。

──テーマがお風呂やトイレといった水物じゃないですか、なんでそこに焦点をあわせたのかなと。

 だって一番日常的な、誰でもやることでしょ? すごく容易な素材で、だけど音楽ネタとしてはすごくマニアックなことをやるっていうのが好きなんです。わかりにくくなかったですか?

──歌詞だけ見たら、あの、くだらないというか……

 あ、今くだらないっていいましたよね? それ最高の褒め言葉ですよ(笑)。

──でも、なぜか歌として聴くとすげぇかっこよく聴こえるんですよね。

 いや〜まんまとやられてるね。あなたとはイチャイチャできそうです。

──(笑)。ちなみに最近、芸人さんが音楽をやること多いじゃないですか。それについてどう思いますか?

 それぞれのアプローチって若干異なると思うんですけど、僕と彼らが一番違うのは、彼らはDJみたいな立場で「いいものはいい」というか、ジャンルの衝立を取っ払って音楽を共有しましょうよって事だと思うんです。でも僕は、自分で音楽を作っている。更に芸人っていう素性もあるので、両輪転がさないと意味がないんですよ。だから広く共有しようっていうことよりも、まず自分のものを売りたいっていうのが出発点です。僕「マキタ学級大文化祭」っていうイベント(新宿LOFT、ロフトプラスワンにて同時開催)を何年もやってますけど、あれは僕も含めて、基本的に売るモノがあるアーティストのための見本市なんです。だから出演者はみんなそれに共感できる人たちだし、売るモノがしっかりあって、発想とか作品とかにオリジナリティーがある人たちなんです。

──「マキタ学級大文化祭」の開催地であるLOFTに対してはどんな印象をお持ちですか?

 僕らが昔LOFTとかに持っていたイメージって、もっととんがってたし、もっと遊んでたんですよね。そうして見てみると、あんな近場に新宿LOFTとプラスワンがあって、未だに健全な経営が行われているわけじゃないですか。そうしたら、そこで遊ばない手はないですよね。更に、たまたま巡り合わせでマキタ学級の1枚目のアルバムはLOFTのレーベルから出させてもらったんで、じゃあ尚更そこで遊びましょうよってことです。

──是非これからも一緒に遊んでください! さてお話はCDに戻りますが、今回のアルバムを聴いているとついJポップ的なモノに対する批判精神を感じてしまうんです。

 毒気が強いってことですかね? それは結構言われるんだけど、まあ「からかい」の分量というか、成分の配合の問題だと思うんですよ。そもそもお笑いにはそういった悪魔的な部分があるんだけど、でも僕のやってるコトって、そうは言ってもLOVEがないと出来ないですよ。モノマネの人なんかが一番典型だと思うんですけど、憑依させるのはよっぽど好きじゃないとできない。僕は憑依させる濃度が普通のモノマネ芸人さんに比べると、やや薄いんだと思います。マニアックな話になるんですけど、僕は例えばアーティストの声に似せるとか、姿形を似せて同化してうっとりするような人間じゃないんですよ。その人の考えてることとか、その人が売り出した作品とか、そういう文体に興味があるんです。

──確かに、相当研究されてますね。

 でもね、ホントは完全に声を似せてるものとかの方が、一般的には解りやすいんですよ。で、場合によってはもっと声似せられたなって曲もあったんですけど、そこは敢えてそうしなかった。

──なぜですか?

 僕がやってるのは「アーティストの作詞作曲のモノマネ」であって、声とかってことではないと思う。まあ、そこは完全なるオナニーだと思うんですけど。でも、そもそもモノマネ自体オナニー的な側面はありますしね。

──あと1つ気になったのが、アルバムの1曲目に収録されている「0点の音楽」なんです。

 それは凄くマニアックな、音楽通の聴き方だと思いますね。あのね、良質な音楽ってつまらないんですよ。僕はそれを「シルクドソレイユ現象」って呼んでるんですけど、あまりにもアクロバティックな技とか見過ぎると、全然大したことねぇなって。音楽で言えばジャズなんか一番典型なんだけど、ジャズってものすごく研究されていて、アカデミックに掘り尽くされている、凄く高級な音楽じゃないですか。でもその実、ルノアールでかかってる音楽ですよね。あまりにも凄いことやりすぎてて、完全にイージーリスニング化するんですよ。

 これはスチャダラパーのBOSEさんが言ってくれているんですけど、「0点の音楽」で“おっ”と思ったって。やっぱ言葉に敏感な人とか、基礎があった上でやってるアーティストはそういうのって気にしてくれてんのかなって。多分「0点の音楽」を聴いたとき、何もおもしろくねぇなって思ったと思うんですよ、一瞬。で、何もおもしろくないってことが突っ込みどころになって、自分の中に引っかかってくれたんだと思うんですよ。それをわざと1曲目に僕は入れたかった。

──アルバムの最後にも同タイトルの楽曲が収録されてますが、こちらは歌詞が笑えるモノに差し変わってますよね。でもなぜか、何の笑いもないハズの1曲目の方が、爆笑できたんですよ。

 その2曲って、僕の中では両方あってこそ意味があることなんですけど、僕も基本的には1曲目の方が好きですよ。なんか不親切な感じとか、むき出し感とか。僕、“アーティスト”ってあんまり好きじゃないんですよ。アーティスト面したインタビューとか見てると腹立つじゃないですか。僕がもし2万字インタビューなんかで語ったら、半分は下ネタで、しかも相当笑える下ネタ言ってあげるよと。もちろん独特の世界観を持っているのは良いことなんですけど、なんか一つの物事に縛られたりするのが嫌なんですよ。あんま面白くない。かと言って、「ちょっと待ってくださいよー!」みたいな芸人ノリってあるじゃないですか。あれも凄く嫌いなんです。そういうことやってるから戦争ってなくならないんだよ。一つの方向とかに間引いたりとかね。だから僕は良い意味で中途半端でいたい。半信半疑って、一番良い精神状態じゃないかと思ってる。みんなね、どうしてもどっちかに寄せようとするんですよ。「君はどっちなの? お笑い芸人なの? アーティストなの?」って。そんなの自分の色眼鏡を外して裸眼で見てくれよって。なんでジャンルでくくるのって思う。

──なんかそれを聞くと、また「0点の音楽」の意味もちょっと変わってきますね。

 本当はね、もっといっぱい言い訳したいんですよ。後付でいろいろ言いたいんだけど、まあ、黙ってかっこつけてる方がいいのかな。

──「とりあえず言いたいことはアルバムに全部詰まってるんで」みたいな?

 あ、そういう誌面にしといてもらえる? 「この作品が俺のすべてだし、言い訳しないから、とにかく聞いてくれ(キリッ)」みたいなさ。

──もう無理ですよ!



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Live info.

4月26日(月) @北沢タウンホール
マキタスポーツ 第6回単独ライブ「オトネタ2」

時間: 開場:19時/開演:19時30分
会場:北沢タウンホール TEL.03-5478-8006
(東京都世田谷区北沢2-8-18-2F)
出演:マキタスポーツ
料金:前売2500円/当日3000円
チケット:ローソンチケット 3/1より前売開始
・Lコード(35440)予約  TEL.0570-084-003
・オペレーター予約  TEL.0570-000-407

posted by Rooftop at 12:00 | バックナンバー