ギター バックナンバー

ストライカーズ('10年4月号)

ストライカーズ

全力で楽しみ、全力で伝える
より伝えるために見つけ出した新しい表現方法


 リリースを重ねる毎に違った表情を見せるストライカーズの、2nd.ミニアルバム『PANDEMIC』(訳:感染)がリリースされる。このリリースを盛りあげるためにと、1月から自主企画“ストライカーズ パンデミック”を開催し、全国規模でミュージックウイルスの感染者続出中!?
 前作『GOLD』でも超アッパーなサウンドを聴かせてくれたのだが、今作『PANDEMIC』では前作をはるかに超える振り切り感を見せたストライカーズ。もっとちゃんと伝えたいという気持ちが強くなった彼らは、歌詞もサウンドもわかりやすいものを提示した反面、なぜか全身タイツを着てしまうというアイディアが浮かんでしまった。これによって、イロモノだとか思われてしまうかもしれないが、今回は表現の仕方がこの形だったというだけで、彼らは相変わらず真面目に音楽に取り組んでいる。とにもかくにも「伝えたい」という気持ちは十分にあるし、何より心から楽しんでいることは一目瞭然であろう。今後の彼らがさらにどんな形になっていくのかは想像がつかないが、きっと『PANDEMIC』が多くの人をジワジワと取り込んでいくことになるのは間違いないだろう。(interview:やまだともこ)


ストレートしか投げられなくなった

──昨年秋ぐらいには制作にとりかかっているというお話を聞いていたのですが、『PANDEMIC』が出来上がってみてどうですか?

星野:レコーディングはけっこう難航しました。スケジュール的にもそうなんですけど、土壇場で1曲作ったりして。でも『PANDEMIC』は、やりたいことはまだまだありますけど、これまでの中で一番やりたいことができました。

──特にどんなところが変わったみたいなのってあります?

星野:宅録の部分も少しはあるんですけど、今回はちゃんとレコーディングしているんです。あと、歌詞もメロディーも今まで書きたい放題書いていたのを何回か直したりとか、少し詰めて作ったりとか。それをするのが当たり前なんですけど、バンドを始めて10年近く経って初めて音源を作るっぽい曲の作り方をした気がします。

──曲作りに対する意識が変わってきたということですか?

星野:見せたい面をちゃんと表現しようと思ったんです。メロディーを妥協しないで作るというのはもちろんですけど、1曲目の『パンデミック yeah yeah』に関して言えば、今までの歌詞って自分なりの表現は保ちつつおもしろい言葉のニオイさえあれば言葉に意味がなくても良いと思っていたんです。でも、今回は聴いて「そうだよな」って思えるような感じにしたいなって何回か書き直した結果、“CLAP YOUR HANDS! ほら歌おうぜ”っていうフレーズが出てきたんです。こういうことを伝えたいんだ、シンガロングしたいんだ、みんなで踊りたいんだというのをちゃんと言おうと思ったんです。そうじゃないと意外とみんなシンガロングしてくれないんだなって。

MKTMN:カラー的にいろんなところを見せようというのはなくなりましたね。変化球を投げていたのがストレートしか投げなくなったみたいな。

──『パンデミック yeah yeah』は、よりポップ・ソングとして通用する曲になった気がしますね。

i-ZUCCA:アルバムの中で一番最後に作った曲なんです。他の6曲が出来ていて、自分達がやりたいことや見せたいことを、もう少しわかりやすく提示できるものを入れたほうが伝わりやすいんじゃないかって。どういう雰囲気の曲で、どういう歌詞にしようというのは見えていたので、メロディーの選択とか、音の選び方とかもやりやすくて、普段の曲作りよりはスムーズに行った気がします。

星野:ただ、ゴールの像が見えてるのに、それに見合うメロディーとか歌詞が出て来ないのは苦労しましたよ。

松岡:それはけっこう大変だったよね。

星野:こんな曲が欲しいというのは共有して持っているんですけど、曲を出せば出すほど「あと30%足りない」とか。そういう曲がまこちゃん(MKTMN)と松岡くんと俺にあって…。

松岡:全部70点ぐらいだったので、それを部分部分で全部くっつけたんです。

星野:そしたらまさかの210点を取ったんです。

──なるほど。ところで、この曲で編曲にクレジットされている水口浩次さんはどんな方なんですか? “Beat Happening!”の主催者の水口さんだと一瞬勘違いしましたよ。

星野:名前も一文字違いですからね。水口浩次さんは作曲家さんなんです。自分達でアレンジすると今までの引き出しからになる可能性が高くなるので、作曲家としてやってる人から見てバンドを伝えやすいアレンジってどういうものなんだろうっていうのは興味があって一緒にやったんです。

松岡:人数が一人増えれば評価する最大公約数も増えますからね。水口さんは、楽曲をよりシンプルにしてくれましたよ。

MKTMN:僕だったらギターをこうしたほうがいいとか、その辺で止めておかないと他とバランスが崩れちゃうみたいなところを見てくれて。

──確かに『パンデミック yeah yeah』の歌い出しの部分は、聞こえる楽器の数が少ないですよね。

松岡:ベースとボーカルだけなんですけど、そんな曲今までなかったですから。

MKTMN:ギターは2人いるし、上物はシンセ的なものも入れていたりするので、上物が多い分引くところは引くという部分は勉強になりましたよ。だからライブ中、暇な時間があるんです(笑)。今まで弾かないところがないぐらい弾きまくっていたので、ライブで初めてやった時に長い間何もやらないからどうやってたちふるまおうかって思いましたよ。今後こういう楽曲が増えるかもしれないので、そこは課題でもありますね。

──そういえば、この曲のPVが相当ヤバイと伺っていますが…。

星野:アルバムタイトルが『PANDEMIC』なので、ミュージックウイルスを撒き散らすというコンセプトがあったんです。で、ウイルスっぽい格好をしようっていろいろ考えたんですけど、予算との兼ね合いもあって全身タイツという結果になって。全員色違いの全身タイツで臨んだんですよ。

──全身タイツを着て、どこで録ったんですか?

星野:上大岡にあるヘリポートに行ったんですけど、その日が強風で…。

Yoshi-ito:しかも、風からの雨で(笑)。

松岡:2時間で撮影中止になったんです。

──そのPVはどこで見れるんですか?

松岡:マイスペースとかYou Tubeにアップされます。マイスペでは制限付きでフリーダウンロードができるんです。

星野:ダウンロードしたら何かが起こるPVになっているので、ぜひダウンロードしてもらえたらと思っています。

i-ZUCCA:おもしろ半分で見るにはちょうど良いPVですから。




もっといろんな歌詞が書いてみたい

──5曲目の『流星群』は、初めて恋愛を題材にした聴かせる曲になりましたよね。

星野:今までって、Aメロまでの歌詞はラブソングっぽいのにサビは生き様っぽかったり、『今夜はトゥルットゥ』もそうなんですけど一貫したテーマで書いてないんです。この曲は先にメロディーがあってミドルテンポの曲調だったので、恋愛的な歌詞を書いてみようって。でも、自分の中に恋愛の引き出しがなかなか見あたらなくて、一生懸命探してちょっと隅っこにあったもので書いたら、すごいトレンディードラマみたいな言葉しか出て来なかったんですよ。

──その中で、出せる最大限を出したと。

星野:そしたら彼女に振られた歌詞になってしまったんですけど、最初はイマイチ伝わりきらない雰囲気ものの歌詞だったので、もっとダイレクトな言葉で書いてみようってこうなったんです。

MKTMN:星野さんってもともとはロマンチックな男なんですよ。

星野:そう、俺、超ロマンチストなんですよ。ただ経験が伴ってないというか、ドラマチックな経験をしてなくて、思想だけロマンチックになっていっちゃってるからエピソードがウソっぽくなるんです。それこそ、僕は死にません的な感じなんですよね。

──ということは、妄想はすごい?

星野:妄想はしてますけど、妄想だけでは恋愛の歌詞は書けないですからね。恋愛の歌詞が書ける人ってたくさん恋愛してるんだろうなって思いましたね。でもこれをきっかけに、もっといろんな歌詞が書いてみたいと思いましたよ。

i-ZUCCA:この曲はアレンジも歌詞も行ったり来たりしたから、悩んだ部分は大きかったですね。『パンデミック yeah yeah』ができる前の曲なので、『流星群』をわかりやすい曲にしましょうって作っていたんだけど、『パンデミック yeah yeah』を作ることになってから、歌詞を恋愛っぽくしましょうって変えて。そういうつもりで歌詞を組み立ててないから、全部立て直して、時間はかかりました。

星野:さっき恋愛の経験が伴ってないと言いましたけど、この話の元になっているのが、中3の時に振られた体験ですからね。そこに“最終電車”という、大人っぽいスパイスをかけつつ作っていったんです。

──“大人=最終電車”っていうのも、どうなのかなって思いますけどね(苦笑)。でも星野さんって、クソアツイみたいな感じがあるじゃないですか。

星野:クソアツイという感じを出してるつもりはないんですけど…(苦笑)。

──そうですか。それなのに、恋愛になるとこんなに弱くなるんだというギャップはおもしろかったですよ。

i-ZUCCA:女々しいですよね(笑)。でも人間味があって良いですよね。今までの「この人何考えてるんだろう」みたいなところから見ると。

──また、この曲ではみなさんの魅力のひとつである美しいコーラスも入っていて、曲のイメージを広げますよね。

星野:気付けば小田和正さんのような歌詞になってしまったんですが、『流星群』のコーラスは僕らも気に入ってますよ。

MKTMN:今までこだわってやってきたハーモニーが、さらに進化した形で曲に出せたから良かったなと思います。

──その次の『爆発しそうなボルケーノ』は、歌詞のイメージを『流星群』と繋げた訳ではないですよね?

松岡:なるほど。意識はしていないですけど、そういう取り方もできますね。

星野:これは好きな女の子に告白できないんだけど、女の子への思いが強すぎて時々泣いちゃうぐらいアツイ男の話です。

i-ZUCCA:それで、海岸を走っちゃうような…。

星野:完全に青春時代から止まってますね。実際大学が江ノ島から近かったので、1人で海に行って本当に泣いたことはありますけどね。その思い出がここに来るとは思ってもいませんでした。と言っても、当時書いていた歌詞は、理解できるもんならしてみろって思いながら書いていた哲学的なものばかりでしたけどね(苦笑)。夏に合宿に行った時にワンコーラスはできてる曲がほとんどだったんですけど、『〜ボルケーノ』はラララしかできていなくて、飯喰った後に俺とまこちゃんで20分ぐらいで作り上げた曲なんです。

MKTMN:食後のコーヒーを飲んでるぐらいの感じでしたね。

i-ZUCCA:翌日の午前中には、演奏も全部終わって。

MKTMN:とにかく早かった。

──“乗りこなしながらキミのキスマークをイメージしてる”という歌詞は、気持ち悪くていいなって思いましたけど。

i-ZUCCA:書いたときもこの歌詞はないなって言ってましたけど、そのダサイ感じが良いんですよ。




何かが間違ったらすごい良い

──ダサイはストライカーズにとっては褒め言葉ですよね? 今回全体的にサウンドが古いというかチープだなというのが第一印象だったんです。これも狙ったところではあるんですよね?

星野:そういうシンセが入ってますからね。自然に狙ってるんでしょうね。それか人間がチープかのどっちかです(笑)。

i-ZUCCA:ギターシンセの音ってチープな音なんですよ。前の『GOLD』も、ギターシンセが入ってすごいチープになりますし、その“らしさ”みたいなところを今回もふんだんに入れてみたんです。ないと物足りない。ダサさが足りない。

──かっこいいよりダサイほうが、求めているところではある?

i-ZUCCA:かっこいいところで勝負したら、かっこいい人たちはいっぱいいますからね。それに、チープな音が入っていた方が楽しさも倍増するし。

星野:ライブで、この人たちダサイのに、すごい楽しそうだな、こんなに爆発出来るんだなって思いません?

──ライブで、何かを受け取ってる人たちはいっぱいいると思います。

星野:それが大事なんです。俺達何人かの人に「何かが間違ったらすごい良い」って言われていて、誰が何を間違えるのかすごいワクワクしてるんですよ。ライブは、とにかくおもしろかったとか、何か気になったとか、とにかく楽しかったという感想が一番嬉しいんです。

──楽しいに理由はないですからね。

星野:感性ですからね。

i-ZUCCA:僕らって冴えなかったりするのかもしれませんけど、それでもこれだけ人を楽しませることができるんだって勇気がわいてくれる人がいたら嬉しいです。

MKTMN:自分がかっこよくないことはそろそろわかりますよ。ライブやっても、かっこいいって言われないなって。

星野:かっこいいとは言われない。おもしろいですねとか、アツイですねとか、そういう言葉はよく言ってもらうんですけど。

──でも、他にいないですからね。ストライカーズみたいなバンドって。

星野:これを真面目にやっていいのかっていう疑問が出るのかもしれないですけど、俺らはすごい真面目にやってます。

──それって、『DunK!!!!!!!!』の歌詞にある「言ってる言葉の意味は不明だがとにかく凄い自信で乗り越えたい」っていうことですよね。

MKTMN:そういう気持ちって大事ですよね。

──聴く側はこういうのを求めているんじゃないか、というのは考えたりするんですか?

星野:考えてないです。みんな楽しいに違いないっていう確信を持ってやってますから。こういうご時世だからこういう曲がいいんじゃない? って何曲か作ったことがあるんですけど、全然良くないんです。

松岡:本人がやりたくてやってるわけじゃないから、その時点で伝わらない。

星野:でも、今はやりたいことは見えてきていて、それを突き詰めれば突き詰めるほど恥をさらすというか、全身タイツもそうですけど、これ楽しいっていう確信があるから、全身タイツにも喜んでなれる。喜びのタイツです。

MKTMN:楽しんでるっていう感じを視覚的に出したいって思ったら全身タイツしかなかった(笑)。

i-ZUCCA:自分達が楽しいことをやってないと、映像ではもっと伝わりづらいですからね。とりあえず俺達はおもしろかったです。

星野:メロディーはこだわって作っているから、全身タイツを着ていても曲が良ければいいんじゃないか。…これは違うな(苦笑)。でもこれが世に広まったら、みんな気付くと思うんです。大事なこと以外は大事じゃない。だから、服装は全身タイツでも良い。

MKTMN:そんなことはないと思うけど…(苦笑)。

──これを着ることによって、見る側はオバカだなって思いましたけど、それを全力でやってることや楽しんでいることは十分に伝わってますよ。

星野:やってる方が楽しくないと、見る側も楽しくないはずですから。

i-ZUCCA:音楽は真面目にやってますけどね。

──それも伝わってます。ただ、真面目が違う方向に行ってるんですよね。かっこつけたいというバンドが多い中、そうじゃないかっこつけ方というか…。

星野:競争相手もいないのに、みんなとは違うゴールに向かって猛ダッシュしてますから(笑)。

──でも、このCDを出したら状況が変わりそうですね。

星野:もう変わる。変わりたい。

MKTMN:感染者を続出させたい。

──まずはライブを見てもらいたいですね。魅力のひとつでもありますし、なんだかわからないけど楽しいみたいな雰囲気はありますからね。

星野:それなんですよ。なんだかわからなくていいんですよ。

i-ZUCCA:楽しいのが嫌な人はいないですからね。キモイのは嫌かもしれないけど。

MKTMN:…キモイ要素も十分あると思いますけどね。

i-ZUCCA:すれすれのところを行ってるとは思っています。

──いや、けっこう振り切れていると思います。

星野:でも、ライブは毎回全力疾走ですし、アツさがないと伝わらないですからね、なんでも。

(LIVE PHOTO BY:クラカタレイコ)




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PANDEMIC

XQGK-1003 / 1,890yen (tax in)
4.07 IN STORES
1. パンデミック yeah yeah
2. DunK!!!!!!!!
3. 今夜はトゥルットゥ(album mix)
4. vs DarkNesS
5. 流星群
6. 爆発しそうなボルケーノ
7. FIREs 〜love is allばりの気持ち〜
Bonus Tracks
(gift , THE WORLD Live at CLUB Que 2009/12/04)

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Live info.

4.11(sun)新宿LOFT ※ ROOFTOP PROOF 2010 〜MELON KINEN-BI LOFT LAST GIGS
4.25(sun)下北沢CLUB Que ※ストライカーズ パンデミックepisode III
5.14(fri)大阪 福島 2nd LINE ※ストライカーズ パンデミック episode IV
5.15(sat)名古屋CLUB ROCK'N'ROLL ※ストライカーズ パンデミック episode V
6.18(fri)Shibuya O-WEST ※ストライカーズ パンデミック final episode (4/7 HPにて詳細発表)

ストライカーズ official website
http://www.the-strikers.com/

posted by Rooftop at 12:00 | バックナンバー