ギター バックナンバー

怒髪天('10年3月号)

怒髪天

ダンディーなオトナマイト4人衆が体現するド真ん中のJAPANESE R&E!
上原子友康が語り尽くす怒髪天という名の深遠なる小宇宙


 一体何処まで自己新記録を塗り替えていくのか。純真な歌がギッチリと詰まった傑作をコンスタントに発表し、ことごとく前作を凌駕した新しい作品を我々に提示し続ける怒髪天。『オトナマイト・ダンディー』と題されたフル・アルバムもまた、昨年4月に発表した『プロレタリアン・ラリアット』のクオリティを容易に突き抜けている。結成四半世紀の祭典モードだった昨年はライヴ動員の激増と大幅なメディア露出に沸いた1年だったが、聴き手の情感ド真ん中に訴えかける歌をこしらえることは決して疎かにしなかった。そのことを『オトナマイト・ダンディー』は如実に物語っている。日々の生活の中で巻き起こる喜怒哀楽を軽やかにしなやかに描写した歌々は大いなる人間讃歌であり、日常という名の壮大なドキュメンタリー映画に伴走する妙味に富んだサウンドトラックである。そのサウンドトラックの音楽監督はギターの上原子友康で、ここ数年の彼の曲作りに対する貪欲さ、スキルの向上、ライヴ・パフォーマンスに向かう意識の変化が近年の怒髪天を着実に好転させている気がしてならない。予想外の着地点に到達する曲作りの化学変化やどんな楽曲をやっても不朽の“JAPANESE R&E”となるのは代替不可の4人が携わるからこそだが、その根幹を成すのは間違いなく上原子の存在である。本誌では彼にスポットを当て、『オトナマイト・ダンディー』の制作過程と怒髪天という深遠なる小宇宙の如きバンドの核心に迫った。(interview:椎名宗之)


何をやっても怒髪天らしさが出る

──遂に明後日発売となる『オトナマイト・ダンディー』ですが、シングルにもなった『オトナノススメ』の録りから含めると割と長いスパンで完成に至ったことになりますよね。

上原子友康(以下、友):長かったね。『オトナノススメ』の録りが去年の7月だったし、曲作りから含めると1年近く経ってるかもしれない。矢継ぎ早に曲を書くペースにはもう馴れたよ。今もまさにその時期なんだけど、新しいアルバムが出る頃にはもう次の作品用の曲を作るパターンがここ何年も続いてるしさ。そのサイクルが出来てるから、曲作りがそんなに大変だとは思わなくなった。レコーディングが終わったと同時にやりたいことがまた出てきちゃうんだよ。いろいろとやりたがりなんだね。

──高橋竹山とストラングラーズが奇跡の融合を果たした『GREAT NUMBER』、サンバのリズムを基軸とした『セバ・ナ・セバーナ』等々、楽曲のレンジがグンと広がった『プロレタリアン・ラリアット』を発表して以降、作風がより一層自由になった手応えはありますか。

友:『プロレタリアン・ラリアット』は確かにヴァラエティに富んだ曲が揃った作品だったけど、あそこから一気に曲の振り幅を広げた意識もないんだよ。曲調としては昔から自由にいろんなことをやってるしね。まァ、今回は今まで以上に自由な作品になったとは思うけどさ。多分、同じタイプの曲ばかりやってると飽きる性分なんだろうし、“何かないかな?”って常にアイディアを模索してるんだよね。

──友康さんの“1人ミクスチャー感覚”が年々大変なことになっているのを感じるんですが。

友:怒髪天を特定のサウンド・スタイルでやろうとは思ってないし、結局は自分が楽しみたいだけなんじゃないかな。リフが8ビートの曲だけをキッチリやっていれば格好イイかな? と思う時もあるんだよね、ロック・バンドとしては。でも結局、ドリフ的な要素を採り入れた曲もやりたくなっちゃうし、そういうのをやってると『ド真ん中節』みたいな王道もやりたくなる。全部を引っくるめて自分達と言うか、それが正直な自分達の姿なんだよね。どんなタイプの曲をやっても「怒髪天だね」って言われる域を真剣に目指していきたいしさ。

──全員が楽器を置いてタキシード姿で合唱するなんて、怒髪天にしか成し得ないことですからね(笑)。

友:あれはちょっと一線を越えたよね(笑)。でも、この4人が集まって何かを表現すれば、それが自ずと怒髪天になるんだよね。何をやっても怒髪天らしさが出るんだよ。

──本作の選曲は、友康さんが用意した数多くの楽曲の中から純粋にトライしてみたい楽曲を他の3人が“怒髪天らしさ”はさておきでチョイスしていく手法だったそうですね。3人と言うか、2人だと思いますが(笑)。

友:そうだね(笑)。アルバムはいつもコンセプト立てて作ってないからいろんな曲があって、スタジオでメンバーやスタッフに聴かせて反応の良かった曲を練り上げていくスタイルは昔から変わらないんだけど、今回は増子ちゃん(増子直純)が唄ってバンドで鳴らした時の絵が想像しづらい曲ばかりをみんなが選んだんだよね。今回用意した30曲くらいの中で、『俺ときどき…』とか『ふわふわ』とかが選ばれるのが俺は意外だった。みんながあまりやりたがらないと思ったし、何より増子ちゃんが歌詞を付けづらいと思ってたからね。いつもなら「これはムリだね」「違うよね」っていう曲をみんなが面白がってくれたって言うか。

──『俺ときどき…』は安全地帯のサード・アルバム辺りを彷彿とさせるアーバンなアコースティック・ナンバーですけど(笑)。

友:作ってる時は全然そんな意識はなかったんだけどね(笑)。自然にイイなと思ってさ。

──個人的には『俺ときどき…』と『オレとオマエ』にまず惹かれまして。『オレとオマエ』はかつての『友として』や『あえて荒野をゆく君へ』の世界観を踏襲した友情の絆を描いた歌なので、一発で心を鷲掴みにされたんですよ。

友:その2曲は今回のアルバムを象徴してると思うよ。『オレとオマエ』は80年代っぽい8ビートのポップな曲にしたくて作ったんだけど、サビの“オーレと、オマエ”っていう部分は最初に“オーオオ、トゥナイト”って唄ってたんだよね(笑)。何が“トゥナイト”なのか自分でもよく判らないんだけど(笑)、デモの段階ではいつも適当なことを唄ってるからね。旧友との固い絆を唄ったテーマは従来の増子ちゃんの確たる世界観なんだけど、それをああいう曲調に乗せて違う響きに聴こえてるのがイイなと思ってさ。“オーオオ、トゥナイト”が“オーレと、オマエ”になった時は“やった!”と思ったし、あの部分が実は今回のアルバムの中で俺が一番気に入ってるところなんだよね。

──それは20年以上育み続けてきたソングライティング・チームの結束力の賜物なんでしょうね。

友:だと思う。増子ちゃんからは「“オーオオ、トゥナイト”が耳にこびりついて、もうそれしか付けられないよ」って言われたけど(笑)、ちゃんとした歌詞にしてくれたからね。

シミも坂さんも腕を上げたと思う

──デモはいつもどれくらいまで作り込んでおくものなんですか。

友:最近はけっこうカッチリと作ってるかな。簡単にドラムを打ち込んで、ベースも弾いて、“ラララ…”ってメロディを唄ったりして。特に今回の収録曲はコードとメロディだけだと伝わりづらいと思ったし、リズムとベース・ラインがあって初めて1曲みたいな感じだったから、割とちゃんと作ってみたんだよね。『武蔵野流星号』みたいな曲だったらコードと“ラララ…”だけでみんなも雰囲気を掴んでくれると思うけど、『ふわふわ』みたいな今までにないタイプの曲は作り込んでおく必要があった。『ふわふわ』はベース・ラインから出来たような曲だしね。

──そう、本作はベースとドラムの音がいつにも増して凄くいいと思ったんですよ。あれは何故なんですか?

友:プレイヤーがイイんじゃないかな?(笑) エンジニアの人は『全人類肯定曲』辺りからずっと同じなんだけど、今回はどのパートもよく録れてるね。特にシミ(清水泰而)は腕を上げてると思うよ。ベース・ラインはシンプルなんだけど、ぶっとく支えてる感じが前作くらいから強くなった。『アフター5ジャングル』や『俺ときどき…』とかのベース・ラインも格好イイし、コピーしたくなるベース・ラインが実は凄く多い。『俺ときどき…』はベースとドラムだけを聴いててもノレるよね。

──『アフター5ジャングル』のように文字通りジャングル・ビートのナンバーは今までありそうでなかったですよね。

友:やってそうでなかったね。一時期はアダム・アントとかにハマってて、ジャングル・ビートはいつかやりたいと思ってたんだよ。あの曲は坂さん(坂詰克彦)がよく頑張ってるね。ここ1、2年くらいで坂さんのプレイ・スタイルや音の鳴りが変わった気がする。坂さんは自分からそういうことをあまり言わないけど、坂さんなりに追求してるんだと思う。その代わり、よくスティックを飛ばすけどね。この前の練習の時なんて、メガネのレンズまで飛ばしてたから(笑)。叩いてたスティックが自分のメガネの裏から当たって、レンズだけポーンと5メートルくらい飛んでたよ(笑)。曲の初めで飛んじゃったみたいで、練習だからそこで止めてもいいのに、そのまま3曲くらい通しで叩いてたね(笑)。

──リズム隊が着実にスキル・アップしているのが如実に伝わるアルバムだとも言えませんか。

友:ホントだね。何年か前と比べると、曲が形になるのが凄く早くなってるしさ。前はレコーディングする頃になってやっと形になるのが普通だったんだけど、今は真っ新な新曲でも最初のリハで録りに入れるくらいのレヴェルにすぐなるからね。

──シミさんと坂さんの話が出たので増子さんについても伺いたいのですが、今の歌唱力と歌詞の表現力を友康さんはどう見ていますか。僕は『ド真ん中節』の質実剛健な歌詞の世界と凄味を増した唄いっぷりに堂々たる風格を感じたのですが。

友:今回で言えば『悪心13』や『アフター5ジャングル』もそうだけど、俺が最近作るのは歌詞をイメージしづらいメロディが多いと思うんだよ。『ヤケっぱち数え歌』も“ダララダララダララダララ…”って続いていく曲だしさ。歌詞をどう乗せてくるかな? って思ってるところに“これを乗せてきたか!”って驚くことが多いよね。『オトナノススメ』や『ド真ん中節』、『武蔵野流星号』みたいにずっとやってきたスタイルの曲はパーッと情景が浮かびやすいけど、歌詞を書くのが難しい曲が今回は多かった気がする。でも、付けづらいと判ってるのにそういう曲をあえて選んだように思うね。だから、歌詞が上がってくるのが凄く楽しみだったよ。『ヤケっぱち数え歌』みたいなハード・ロック調の曲とかさ。

──ああ、『ヤケっぱち数え歌』は友康さんの中でハード・ロックなイメージだったんですか。僕は歌詞の世界観も相俟ってブルース・ロックっぽいなと思ったんですよ。

友:ああ、ホント? 俺の中では70年代のハード・ロックなんだよ。キッスとかあの辺の。2人のギタリストが同じフレーズを延々弾いてるムダな感じって言うか、同じフレーズ弾くなら1人でイイじゃんっていうのが昔のハード・ロックには多いじゃない?(笑) ああいうのをやってみたくて。そんな曲に数え歌をぶつけてくるんだから増子ちゃんは凄いよ。最初に歌を合わせた時は感動したもんね。

──考えてみれば、数え歌というのも今までの怒髪天の曲にありそうでなかったですね。

友:初だね。増子ちゃんもずっと数え歌みたいな曲をやりたいって昔から言ってたけど、それにハマる曲がなかったんじゃないかな。それが今回、何故かこのハード・ロック・ナンバーに白羽の矢が立ったという(笑)。


想像と違うところへ転がる面白さ

──すでに楽曲の興味深いエピソードを語って頂いていますが、友康さんなりの視点で全曲を駆け足で追っていきましょう。まず、『オトナノススメ』は如何にも怒髪天らしい軽妙かつストレートな楽曲ですね。

友:曲調としてはこれぞ怒髪天! っていう感じだよね。仮歌の時は頭の部分を“ラ、ラ、ララン、ラ、ラ、ラ、ララララ”って唄ってたんだけど、オトナをテーマにした歌詞に決まった時から増子ちゃんの中ではもう“ババンババンバンバン”しかなかったんだろうね(笑)。パーンと開けたアレンジになってるし、演奏してても気持ちイイ曲だね。長年やってると“こういう曲をやると盛り上がるかな?”っていうのが当然あるんだけど、常にその裏を行きたいんだよ。速いBPMでやれば確かに盛り上がるけど、そうじゃない『ヤケっぱち数え歌』みたいなテンポの曲でもリズムで踊らせたいんだよ。そういう裏切っていきたい感じは常にあるね。

──その『ヤケっぱち数え歌』は友康さんのギター・キッズ的DNAから生み出された曲ですが。

友:そうだね。でも、実はこれ、自分の中で一時期ブームだったヒップホップにインスパイアされた曲でもあるんだよ。

──エエッ!? ヒップホップを聴きながらワインを嗜むとか?(笑)

友:うん、あるある(笑)。ラジオを聴いてたらヒップホップの格好イイ曲があって、ああいう3連ノリのオーセンティックな曲調は面白いと思ったんだよ。それに今的にはダサいハード・ロックのリズムをミックスすれば面白いものが出来そうな気がして。3連で歌詞を乗せていくのは増子ちゃんもやったことがないから唄うのが大変だったと思うけど、割とすんなり行ったね。もしかしたら増子ちゃんにはヒップホップの素質があるのかもしれない(笑)。

──ズミ・ザ・MCもヒップホップ的なリリックから『ド真ん中節』みたいな王道曲までレンジが凄まじく広いですね(笑)。

友:『ド真ん中節』は王道だね。これはデモを聴かせた時から全員が「絶対やろう!」って言ってたし。

──デモの段階から“ドンドドン”だったんですか?

友:いや、“ラーララー”だったかな(笑)。いわゆるハチロク(8分の6拍子)の曲なんだけど、この手の曲をあまりやってなかったんだよね。大昔に『明日の唄』っていう曲があったけど、あれは演歌のほうに寄ってるんだよ。そうじゃないハチロクの感じで、ギターもずっと鳴りっぱなしでベースもドンドコ言ってるみたいな曲をやりたかった。増子ちゃんの中ではすぐに歌詞のイメージが湧いたみたいで、歌詞を見せてもらったら今とほぼ同じ状態で出来上がってたね。“ドンドドン”って歌詞を見た時に、このサビは絶対にみんなで一緒に唄おうって思ったよ。文字面だけ見ると“ドンドドン”って凄い言葉だけど(笑)、俺達は最初からすんなり受け止められたんだよね。

──『オレとオマエ』のイントロで聴かれるキーボードは友康さんが弾いているんですか。

友:うん。俺も増子ちゃんが書く『オレとオマエ』みたいな世界観は大好きなんだよ。ただ、80年代っぽい軽い曲調だから、まさかあんな歌詞が乗るとは思わなかったね。

──昔だったら、ああいうグッと来る歌詞にはウェットなメロディが寄り添うことが多かったですよね。

友:そうそう。メロも一緒に泣く感じだった。そういうふうにしないと気が済まなかったんだけど、『オレとオマエ』のAメロ自体は侘寂がないと言うかカラッとしてるよね。そこにあの歌詞を乗せてくれたのが凄く嬉しかったし、そういう試みが実は一番やりたかったことなのかもしれない。あと、この曲も全員で合唱がしたかったんだよ。最初は増子ちゃんが独りで唄ってたんだけど、みんなで唄った瞬間にキュン度が上がったんだよね(笑)。

──『俺ときどき…』の音像こそ、まさに新機軸ですね。

友:憂歌団とかがみんな好きだったし、アコースティック・スタイルはもともと好きなんだよね。この曲はメジャーセブンスっていう爽やかなコードなんだけど、それは増子ちゃんの世界観じゃないなって勝手に思ってたわけ。でも、俺自身は好きなコードだから、曲としては作ってたんだよ。で、“こういうのもあるよ”って軽い感じで聴かせたら「是非やろう!」ってことになって。

──今にも降り出しそうな曇天をサウンドで見事に具象化しているのが素晴らしいなと思って。

友:『俺ときどき…』も『ド真ん中節』もそうなんだけど、朝のウォーキング中に浮かんだ曲なんだよね。特に『俺ときどき…』は俺の中で1日がこれから始まる爽やかな曲で、増子ちゃんが付けたウェットな歌詞とは真逆のイメージだったんだよ。増子ちゃんの歌詞は天気も雨だし、最初は正直、この曲には合わないなと思ったの。でも、増子ちゃんが唄ったら違う感じに転がっていって、これもイイなと思ってね。俺が想像してないところに転がっていったのが今回のアルバムの面白いところだと思うし、『俺ときどき…』は特にそうかな。

我流で編み出したリヴァース奏法

──『武蔵野流星号』を改めてアルバムに収録したのは、バンドにとっても絶対の自信作だからですか。

友:そうだね。やっぱり聴かせたかったし、外す理由がなかったと言うか。

──“ラブソングを歌わない男”が照れくさそうにラブソングを唄い上げるのがまた何とも…(笑)。

友:相当照れくさいみたいだね(笑)。曲調自体は前からあるものだけど、自転車に乗って彼女に会いに行く世界観は今までなかったよね。ライヴで演奏してても、仕事終わりでしゃかりきに自転車を漕いでる情景が浮かぶんだよ。この曲はタイトルもみんなで考えたんだよね。あと、「自分の会社から彼女の家まで距離的にはどれくらいだろうね?」なんてみんなで話してさ。「4駅、5駅くらいかな?」とかね(笑)。

──そうやって歌詞の世界観をちゃんと4人で共有しているんですね。

友:3人はね(笑)。

──ああ、メガネのレンズを豪快に飛ばす方以外は(笑)。

友:でも、坂さんが一番ロマンチストだったりするから、実は一番理解が深いのかもしれない。

──ちなみに、仮歌のタイトルは最初どんな感じだったんですか。

友:たとえば『ヤケっぱち数え歌』は『トレック・ブギ』。トレックっていうのは札幌に住んでた頃に一緒にライヴをやったロシアのハード・ロック・バンドで、それが凄いダサくて俺は大好きでね。アレンジしてる時にトレックのことを思い出したんだよ。『ド真ん中節』は『ハチロク』。『オレとオマエ』は『Oh! トゥナイト』(笑)。『俺ときどき…』は『ネオアコ』だね。

──『悪心13』で弾いているのはリゾネーター・ギターですか?

友:いや、アコギをスライドで弾いてるだけ。二日酔いの歌だし、ちょっとゴミ箱みたいな音が出ればイイなと思って(笑)。耳障りな感じを出したかったんだよね。それにはエレキじゃないなと思ってさ。『悪心13』のサビには珍しく女性コーラスをフィーチャーしてるんだよ。今までなら俺がコーラスをやってたんだけど、曲調的にストーンズのコーラス隊みたいな感じが欲しかったんだよね。

──『ダイスを転がせ』みたいな感じと言うか。

友:そうそう。ボディコンのお姉ちゃんが3、4人いて、その中の1人が背の高い黒人だったりしてさ。そのコーラス隊が(英語っぽく)“二度ト呑マネェ〜”って日本語をよく判ってないけど言わされてる感じで唄うって言うか(笑)。何度か俺が入れてみたんだけど雰囲気が出なかったから、女性のコーラス隊に頼むことにしたんだよ。あれはバッチリだったね。

──『ふわふわ』には人力テクノっぽいニュアンスも若干ありますね。

友:俺の中ではテクノっていう発想が全然なくて、ストラングラーズみたいなパンクに近い感じだった。『ロンドン・コーリング』の頃のクラッシュとかね。ベースが凄いフィーチャーされてビートが利いていて、でも踊れるみたいな。増子ちゃんはテクノっぽい感じに聴こえたみたいで、歌の録り方もちょっと変えてみたんだよね。あと、俺が新しいギターの奏法を開発して、それをこのギター・ソロで弾いてるのにも注目して欲しいね。

──奏法の開発だなんて、そんな新堀寛己博士みたいなことを!(笑)

友:テープの逆回しっぽく聴こえるフレーズを考えたんだよ。ビートルズがやってたリヴァースっぽい音でさ。

──『トゥモロー・ネヴァー・ノウズ』みたいな感じの。

友:そうそう。ああいうのを人力でやりたくて、凄い練習して編み出したんだよね。流行らないかなと思ってさ。まァ、絶対に流行らないだろうけど(笑)。いつもそんなことばかり考えてるんだよね。いつか音楽の歴史に名前を残せないかな? とか(笑)。地味にそういう細かいことをスタジオでやってるんだけど、他のメンバーの目がけっこう冷ややかなんだよね。ギターで逆回転を試してみたり、キーボードをピコピコやってると、みんなホントに不安そうな顔でこっちを見てるんだよ(笑)。「一体どうなるの?」「何をやりたいの?」って言われると、「いろいろあるから楽しみにしてて」みたいに答えるんだけどさ。

──でも、完成型を聴けば他の3人は「こういうことか!」と納得するんですよね?

友:うん、2人はね(笑)。ただ、いろいろと音を足して最終的なジャッジをする時に坂さんの社長のハンコがやっぱり大事なんだよね。「サイコーです!」って言われると、“ああ、良かった! 坂詰さんにOKをもらえた!”って思うからさ(笑)。間違ってないんだなって言うか、凄く勇気づけられるし、自信が湧いてくるんだよ。

──社長は『アフター5ジャングル』での趣向を凝らしたリズム・パターンとか、自分の演奏にしかまるで興味がなさそうですけど。

友:実際、自分のことにしか興味はないだろうね(笑)。


全身でギターを鳴らしたくなった

──オーラスを飾る『我が逃走』はカントリー&ウエスタンの曲調で、バンドのスキルをまざまざと見せつけるアレンジの妙味が楽しめますね。

友:『我が逃走』はもともとエレキだけを使った直球の2ビートで、リズムを録ってる時まではカントリーでも何でもなかったんだけど、ギター入れをしてる時にアコギを入れてみたくなったわけ。普通とは違う響きのアコギをね。もの凄く高い所にカポを付けてバンジョーっぽい響きにしたらイイ感じのカントリーになって、この路線がイイなと思ってさ。面白いことに歌詞は逃走をテーマにしたものが付いたし、結果的にはカントリーっぽい音と上手く噛み合った気がするね。

──立ち向かうべき対象とは“闘争”するのがすべてではなく、“逃走”することも時には大事だという歌詞がちょっと新しいなと思ったんですよね。

友:そうそう。新しいよね。これも歌詞を見た時に初めて見る感じだなと思ったよ。まァ、言ってることは一貫して変わってないんだけどね。

──しかしこう見ると、ここまで振り幅の広い楽曲を1枚の作品として昇華させているのが奇跡にも感じますね。引き出しが多いという言葉では到底済まされないと思うんですけど。

友:何なんだろうね。さっきも言ったように、いろいろとやりたがりなんだと思うよ。4人の中で一番やりたがりなのが俺なのかな。演奏面で言えばシミも坂さんもよく付いてきてくれるなって思うし、冷静に考えるとよくこれだけいろんなタイプの曲をやってるなって我ながら思うね。

──でも、この『オトナマイト・ダンディー』はあっと言う間に40分弱を聴き終えてしまうし、何度でも聴けるスルメ作品ですよね。かつての怒髪天はフル・アルバムだとちょっとトゥー・マッチな部分があったじゃないですか。それがようやくフル尺のアルバムでもイイ塩梅で聴かせられる技量を身につけたのかなと思って。

友:そうだね。あまり長いアルバムは俺も好きじゃないし、曲もムダに長いのは苦手なんだよね。曲をシンプルにする方法が最近になってようやく判ってきた気がする。昔は強弱を付けて大袈裟にしてみたり、展開を多くしてみたりしたけど、そこはあまり大事じゃないんだよね。第一、込み入った曲だとライヴで間違えるしさ(笑)。上手いことごかましてるだけで、“あ、今、1フレットずれたな”って気づいてる人もいると思うよ。まァ、最近はそういうライヴでのちょっとした間違いも気にならなくなってきたけどね。自分で都合良く解釈してるよ(笑)。

──昔の友康さんは、ライヴ・パフォーマンスも東海林太郎みたいでしたよね(笑)。

友:直立不動ばかりだと面白くないし、ただCDを再現してるみたいでさ。もっとその場の雰囲気に身を任せて、全身でギターを鳴らしたくなったんだよ。昔はライヴで間違っちゃいけないと思ってたし、CD通りに弾きたかった。でもそれならCDを聴いたほうがイイし、その場で盛り上がったら正直に自分を出すし、それで間違えたらそれはそれでしょうがないしね。そういうのを全部踏まえた上でのライヴだからさ。もちろん間違えないに越したことはないんだけど、別に歌詞が飛んでもイイと思うんだよね。もっと大事なことがライヴにはあるんじゃないかと最近は思うから。

──そういった友康さんの意識の変化がバンドにフィードバックして、近年の堂に入ったライヴ・パフォーマンスとして帰結している気がしますね。

友:ライヴに対する心構えは確かに変わったよね。前に出るにも一歩だけとかだったし(笑)。ライヴってそんなもんじゃないよね。

──4人が純粋にバンドを楽しんでいるのはライヴからもよく窺えますよ。

友:凄く楽しいね。バンドをやってる時が一番楽しい。毎年楽しくなってるからね。去年よりも今のほうが楽しいし、来年は今よりも楽しくなってると思うよ。

10年後もムキになって速弾きを!?

──『オトナマイト・ダンディー』ということで、友康さんが理想とするダンディーなオトナ像を伺いたいのですが。

友:ダンディーって言うと、俺の中ではレディー・ファースト的なイメージだね。カフスボタンの付いた品のあるワイシャツを着て、淑女を尊重してもてなす感じ(笑)。岡田眞澄みたいな感じだよね。中高の頃はジュリー(沢田研二)をテレビで見て格好イイなと思った。『カサブランカ・ダンディー』っていう名曲もあるしね。

──“ボギー”ですね。ハンフリー・ボガートみたいにトレンチコートの襟を立てて葉巻を吸うのはダンディーですよね。

友:シガーバーとかでね。俺はタバコをやめちゃったから憧れがあるよ。増子ちゃんはこないだ取材で葉巻を吸ったみたいで、「絶対に吸うもんじゃない!」って言ってたけど(笑)。2、3日経っても吐き気が収まらなかったらしいよ。

──ダンディーなギタリストを挙げるとすると?

友:鮎川 誠さんとかかな。大御所っぽい部分もあるけど、永遠のギター少年みたいな部分もあるじゃない? あのバランスがイイと思う。

──友康さん自身はもう充分にダンディーなオトナじゃないですか?

友:いやァ、全然だよ。ダンディーになんて全然なれてない。俺もカフスボタンの付いたワイシャツを着たいよ(笑)。中学生の頃からギターを弾き初めて、やってることがずっと変わらないじゃない? 教則本を見ながら弾いてみたり、いろんな奏法を試してみたりするのは中高でやってたことだし、全然成長してないなって最近よく思うんだよ。だから、振り返ってみると“こんなので大丈夫かな、俺?”ってたまに不安に感じることもある(笑)。

──いや、僕から見れば怒髪天の4人はこれからもずっとその背中を追いかけていきたい立派なオトナなんですけどね。

友:ドラムは抜群にダンディーだけどね(笑)。確かに、ウチのメンバーはみんなオトナだよ。昔のことを考えると、シミは特にオトナになったかな。あいつが1人だけ年下っていうのもあるんだけど、俺達よりも2つ下なのに“オトナだなァ…”って思う時はけっこうあるね。こんな歳になっても自由奔放にバンドをやれてるやんちゃさもイイとは思うけど、俺だって岡田眞澄みたいにダンディーになりきりたいよね。英国紳士的な感じでさ。中央線沿線じゃなく、横浜とかに住んでるのがダンディーなのかな? …って、勝手なイメージだけで話してるけど(笑)。

──お楽しみ係を自称する怒髪天の無邪気で自由奔放な活躍を見て、オトナになるのも悪くないと感じる人はたくさんいるでしょうね。

友:オトナになると何をやっても怒られなくなるけど、そのぶん全部の責任が自分自身に降り掛かってくるんだよね。ムチャに酒を呑むのも自由だけど、次の日に二日酔いになっても誰も注意をしてくれないしさ。今日もリハで「養命酒って効くのかな?」って話になったんだけど、やっぱり健康が一番大事だよ。まァ、楽屋に養命酒やニンニク卵黄、やずやの香醋とかが並ぶロック・バンドもどうかとは思うけど(笑)。

──友康さんが増子さんとタッグを組み始めた20歳の頃は、怒髪天がここまで息の長いバンドになっているとは想像できなかったんじゃないですか。

友:全然想像付かなかった。ギターは一生弾いていきたいって若い頃から思っていたけど、まさか未だに速弾きの練習をしてるとはね(笑)。それこそダンディーなギタリストになるはずだったのに。でも、たかだか20年くらいじゃ内田勘太郎さんみたいにシブくはなれないよね。50年くらい弾いてたらシブくなれそうだけど。

──今の充実した活動ペースで行くと、この先の10年もあっと言う間なんでしょうね。

友:最近は自分が50代になるのも想像できるようになってきたしね。60代は…ちょっと考えたくないけど(笑)、怒髪天はどんなことになってるんだろう? テンポの遅い曲をシブくアコースティックな感じでやってるよりも、ムキになって速弾きをやってそうな気がするな。あえてムチャクチャ速いリズムを坂さんに叩かせてそうだし(笑)。まァ、とにかく4人が健康でバンドをやっていられさえすればイイかな。それに尽きるね。



オトナマイト・ダンディー

01. オトナノススメ
02. ヤケっぱち数え歌
03. ド真ん中節
04. オレとオマエ
05. 俺ときどき…
06. 武蔵野流星号
07. 悪心13
08. ふわふわ
09. アフター5ジャングル
10. 我が逃走
TEICHIKU ENTERTAINMENT / IMPERIAL RECORDS TECI-1277
2,800yen (tax in)
2010.3.03 IN STORES

★amazonで購入する

Live info.

ONE MAN
『リズム&ダンディー“Dメン2010 日比谷より愛をこめて”』

4月17日(土)日比谷野外大音楽堂

TOUR
『オトナマイト・ダンディー・ツアー 2010“NEO ダンディズム”』

5月3日(月・祝)千葉LOOK
5月5日(水・祝)宇都宮HEAVEN'S ROCK
5月6日(木)水戸LIGHT HOUSE
5月9日(日)京都MUSE
5月11日(火)神戸STAR CLUB
5月12日(水)岡山PEPPERLAND
5月14日(金)大分T.O.P.S
5月22日(土)金沢vanvan V4
5月23日(日)浜松MESCALIN DRIVE
5月29日(土)郡山CLUB#9
5月30日(日)仙台CLUB JUNK BOX
6月4日(金)滋賀U★STONE
6月5日(土)大阪BIGCAT
6月10日(木)高松DIME
6月11日(金)広島NAMIKI JUNCTION
6月13日(日)福岡DRUM Be-1
6月18日(金)函館CLUB Cocoa
6月20日(日)札幌PENNY LANE 24
6月26日(土)名古屋CLUB QUATTRO
7月4日(日)新木場STUDIO COAST

EVENT
3月7日(日)『夢チカ LIVE SP in Zepp Sapporo』(札幌 Zepp Sapporo)
3月14日(日)『KKT ROCKET COMPLEX×FMK RADIO BUSTERS Presetns SOUND BLOW Vol.2』(熊本DRUM Be-9 V1)
3月20日(土)〜22日(祝・月)『ロックの学園2010』(三崎ロック学園/旧神奈川県立三崎高校)
3月22日(祝・月)『SANUKI ROCK COLOSSEUM - road to MONSTER baSH- BUSTA CUP』
3月23日(火)高知X-pt.
4月1日(木)『THE BACK HORN“KYO-MEI大会”』(福岡DRUM Be-1)
4月8日(木)『THE BACK HORN“KYO-MEI大会”』(広島ナミキジャンクション)

怒髪天 official website
http://dohatsuten.jp/

posted by Rooftop at 12:00 | バックナンバー
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