ギター バックナンバー

DISK RECOMMEND ('10年02月号)

LOFT PROJECTのスタッフがイチオシのCD・DVDを紹介!!
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★以下のジャケットをクリックすると、各レビューが読めます。

メロン記念日 / MELON'S NOT DEAD

EPCE-5692〜3 3,150yen (tax in) / 2.17 IN STORES

 2009年3月にハロー!プロジェクトを卒業したメロン記念日が挑んだ新たなトライアル──それは、ストリートに根差したロック・バンドとがっぷり四つに組んだコラボレート・ソングを5作連続で発表していく“メロン記念日ロック化計画”と題されたプロジェクトだった。
 屈指のアイドル・グループでありながら、そのライヴではモッシュ・ダイヴやクラウド・サーフが巻き起こるという熱く激しいライヴを繰り広げていた彼女たちが初陣の相手として選んだのは、以前から親交のあった異能のお面貴族ことビート・クルセイダース。彼らが提供した『DON'T SAY GOOD-BYE』は、レッドゾーンを振り切った激情サウンドと胸を締めつける哀切のメロディが交錯した紛うことなき名曲だ。結成以来四半世紀にわたってビート・パンクの大衆化に努めてきた先駆者であるニューロティカは、『ピンチはチャンス バカになろうぜ!』というタイトルからしてロティカ節全開バリバリのポップな楽曲を提供。すでにメロンのライヴでは一撃必殺のキラー・チューンとなっている。“ロック化計画”5部作の中でも異色中の異色と言える顔合わせはミドリだっただろう。『sweet suicide summer story』は過ぎゆく夏への焦燥と甘美な陶酔、メランコリックな情緒の果てに昇華した珠玉のラヴ・ソングだ。ライヴで無条件に盛り上がれるアップ・テンポのロック・チューンという過去3作のコラボレート楽曲と大きく趣きが異なったのは、ザ・コレクターズが提供した『青春・オン・ザ・ロード』。往年のブリティッシュ・ロックのエッセンスが詰まったミディアム・テンポの哀愁ナンバーで、ジャケットに使われたモッド・ガールの衣装も話題になった。プリミティヴなアンサンブルと清涼感に溢れたハーモニーを聴かせるゴーイング・アンダー・グラウンドは、不滅のロック・クラシック『レモンティー』に対するオマージュ的要素もある『メロンティー』を書き下ろした。うたかたの逢瀬を愉しむラヴ・アフェアをポップに描いた躍動感に満ちたナンバーである。
 オリジナル・アルバムとしては『メロンジュース』以来2年2ヶ月振りの発表となる『MELON'S NOT DEAD』にはこれらの“ロック化計画”5部作に加え、すでにライヴではお馴染みとなっているロック血中濃度の高い楽曲ばかりが精選に精選を重ねた上で収録されている。楽器もろくに弾けないアイドルがロックを!? といぶかしがる読者諸兄もいらっしゃるかもしれないが、だから何だと言うのだ。あのシド・ヴィシャスだってベースを一切弾けずにセックス・ピストルズに加入したではないか。それに、彼女たちにはれっきとしたパートだってある。斉藤 瞳=セクシー担当、村田めぐみ=メルヘン担当、大谷雅恵=ボーイッシュ担当、柴田あゆみ=ナチュラル担当という重要なパートが。
 ハロー!プロジェクトというメイン・カルチャーをその出自としながらも、ストリートに根差したロック・バンドとコラボレートする器量が彼女たちにはある。何物にも囚われることなくメイン・カルチャーとカウンター・カルチャーを自由に行き来し、時にはその境界線を軽やかに突破するメロン記念日のスタンスは何とも痛快だ。そんな規格外のスタンスをロックと言わずして何をロックと言うのか。
 ここに断言しよう。メロン記念日とは楽器を持たない至高のロック・バンドであると。『MELON'S NOT DEAD』はそのことを雄弁に物語ってくれるはずだ。


(Rooftop編集長:椎名宗之)


綾小路きみまろ / 元祖 爆笑スーパーライブ第0集!〜すべてはここから始まった〜

TECE-25902 2,500yen (tax in) / IN STORES NOW

 古くは怒髪天、最近は戸川 純やサンハウスのBOXセットの仕事でお世話になっているテイチクのT田氏よりある日小荷物が届いた。封を開けると、そこにはT氏が現在担当している綾小路きみまろのCDサンプルが…。一体どうしろと? 本誌の読者にはジャニーズ・シニアをこよなく愛する俺達界隈が多いゆえ、この中高年のアイドルをアピールせよと? まぁいい。聴いてみよう。きみまろの下積み時代のよく知られたエピソードは、高速道路のサービスエリアで休憩している観光バスの運転手やバスガイドに自作の漫談テープを無料配布していたことである。そのテープが口コミで話題となり、一躍その名が知られるようになったのは周知の事実だ。本作は、'99年頃に無料配布していたこのテープを初CD化したものである。言うなれば、きみまろの漫談芸の原点がこのCDには詰まっているのだ。話している内容自体は取るに足らないダジャレも多いが、声の良さ、テンポの良い間合いを活かしたその話しっぷりはまさに立て板に水で、20分強の漫談2本を一気に聴いてしまった。インタビューの原稿をまとめていても、その場の喋りは抜群に面白いのに文字起こしをしたらそれほどでもなかったという人がいる。世の中には話術に長けたラジオ派と文章表現に長けた活字派がいると思うが、僕はどちらかと言えば後者である。それゆえラジオ派には憧れる。お経を聴いて快感を覚える瞬間があるように、研ぎ澄まされた話術は人に昂揚感を与えるのだ。きみまろの喋りはまさにそのいい例で、紛うことなき至芸だ。やはり只者ではない。


(Rooftop編集長:椎名宗之)


keme / 永遠の旅

BQGS-21 2,300yen (tax in) / 3.03 IN STORES

 先日、ボルテイジレコードのサミー前田氏からこのCDを渡されたのだが、まずはこのジャケットにグッときてしまった。女性の顔がアップになった粗い粒子のモノクロ写真は70年代のエレックレコードの作品を思わせるが、中ジャケットのハーモニカホルダーを付けてギターを弾いている姿などは、まさにエレック在籍時の若き吉田拓郎の佇まいだ。まさかこのkemeというアーティストがキノコホテルのギタリスト・イザベル=ケメ鴨川と同一人物だとは言われなければわからないだろう。期待して音の方を聴くと、まずはバンドサウンドで聴かせる1曲目の『7分間のキス』にぶっとぶ。ハスキーボイスで歌い上げるkemeの力強い歌は、あのカルメンマキをも彷彿とさせる。2曲目は一転してしっとりとした弾き語り。ギター1本で歌われるkemeのざらついた歌声がより胸に迫ってくる。フェイバリットだったのはこれもまた弾き語りで歌われる『餌付け』。暗い部屋で一人、深夜ラジオを聴いているかのように、kemeの歌が孤独な世界を包んでいく。過剰に装飾された音楽とは違った、歌の持つシンプルな強さを存分に味わうことができる良盤だ。


(加藤梅造)


[Champagne] / Where's My Potato?

RX-034 2,310yen (tax in) / IN STORES NOW

 ハッキリ言って「オルタナ系」なる言葉が嫌いだ。よく使われるみたいだが「オルタナ系」って何だ? 誰か教えてくれ! 確か「唯一の」とか「替えのきかない」とかの意味なハズだ。SONIC YOUTHやBjorkに使うならわかるが「系」って括れないでしょ? 最近何でもこの言葉でかたずける、頭の悪さ全開な音楽業界人が多過ぎる。もっと勉強しなさい。
 さて、ここで本題の[Champagne]登場。あえて言うならオルタナです。モチロン正しい意味で。Baがアメリカ育ちでVo/Gtが中近東シリア育ち。全員生粋の日本人だが、その音楽センスは他に類を見ない。まず全曲ユーモアたっぷりの詩のセンスがいい。1曲の中で8割が英語で2割日本語という割り当てかたも面白い。一応作詞のクレジットは全曲Vo/Gt川上洋平になっているが、9曲目に『Don't Fuck With Yoohei Kawakami』という、なんと自らをディスる曲がある。それが面白く仕上がればそれでヨシ!なのだろう。ロックの基本精神である。ポップだが絶妙な塩梅で捻くれてくれるメロディーラインと、本人曰く中近東訛りの英語。それに負けないぐらい全パートの一筋縄ではいかないアレンジセンスに脱帽せざるをえない。2曲目の『She's Very』や3曲目の『For Freedom』を聴いていると、デカイ会場のライブでハコが揺れている光景が想像できてしまう。ここまでのバンドは正直、なかなかお目にかかれない気がする。このバンドが認められないなら、日本の音楽シーンの未来は相当暗い。


(新宿LOFT:水野 慎也)


jealkb / makemagic

YRCN-90088 1,050yen (tax in) / IN STORES NOW

 現在“LIVE HOUSE TOUR 2009-2010「異薔薇ノ未知」”真っ只中のjealkb。そのツアー初日のサンフォニックスホールで、ツアーファイナルをもってキーボード&コーラスのchaosさんとギターのmoftoさんの脱退が発表された。その発表があった2日後、彼らにとって6枚目のシングルとなる『makemagic』がリリースとなった。
 表題曲でもある『makemagic』には、「メイクをしてキレイになって前向きに頑張ろう!」というメッセージが込められているそうだが、歌詞を読んで痛いとこ突かれた感が満載だった。気付けば私にはオンナ力が全くと言うほどなかったことに愕然とした。たぶん、ジャケットのはるな愛さんやhaderuさんのほうがちゃんとしてる。そう考えると、haderuさんが書いたこの歌詞も理想論ではなくて、やっぱり“人”の心理をよくわかってる人なんだな〜と、いらん感心まですることになってしまった。
 サウンドはこれまでの低音を聴かせる感じとは一変し、キラキラとしたポップ・サウンド。今作では珍しく作曲がメンバーじゃないというのも、サウンドが変わった理由のひとつだろう。メンバーの脱退や、今作のイメージチェンジなど、改革期を迎えたjealkb。今後は5人でバンドを守っていくとのことで、どのような形になっていくのかがとても気になっている。そして、脱退するお二方には、ぜひ頑張って頂点を目指してもらいたいと思う。


(Rooftop:やまだともこ)


NEON GROUP / manhattan transformer

LMW-01 500yen (tax in) / ライヴハウス・通販のみで販売

 昨年半ば頃に一度バンドを解体し、ギタリストに新メンバー・タカネヨウスケ(ex.THE NOU)を迎え入れ、それに伴いバンド名もそれまでの「Reo Yokomizo & Neon Group」からシンプルに「NEON GROUP」と改めたバンドの最新自主制作音源。
 今作に収められている楽曲はすでにライヴではお馴染みの楽曲だが、音源化でこのように料理されるとは意表を突かれた。しかし、それもそのはず、今作は録音作業まで作曲を手掛けるYOKOMIZOが担う完全な自主制作ということだが、それらの作業を行う傍らで流れていたのはかまやつひろしの『ソーロングサチオ』やスパイダースの『ノーノーボーイ』だったという。それらにインスパイアされたというより、それらが傍らで流れていることによって、これで間違いないと確信したのであろう、まるで初期のキンクスやストーンズのようなザラザラの音。しかし、単に「昭和」や「レトロ」、はたまた「モンド」などというキナ臭いキーワードで括れるものではなく、そのザラついたフィルターの奥にはバーズやティーンエイジ・ファンクラブ、ソニック・ユースなどにも通ずるメロディとリズムがあり、それらを串刺しにするキース・レヴィンやリチャード・ロイドのような硬質で艶やかなギター・サウンドがあり、何よりも際立ってYOKOMIZOの透き通る歌がある。より多様性を見せるようになったが、よりシンプルに向かう姿勢にはブレがない。今年になって早くも次の自主制作音源に向かって動いているとのことで、ファンとしては嬉しい限りだ。
 尚、今作は基本的にライヴ会場のみでの販売ということだが、ライヴに来るのが困難な場合、ホームページからのお問い合わせには応じるとのこと。ライヴ情報などもあわせてチェック!


(プチ週末:HOLLIE)


People In The Box / Sky Mouth

CRCP-10243 1,200yen (tax in) / 2.17 IN STORES

 People In The Boxが、自身初となるシングル『Sky Mouth』をリリースする。昨年10月にリリースされたミニアルバム『Ghost Apple』の時は、1曲目に『月曜日 / 無菌室』から始まり、最後は『日曜日 / 浴室』で終わるという、1枚を通してひとつのストーリーが表現されたコンセプトアルバムとなっていた。今作の『Sky Mouth』も、シングルでありながら統一性が感じられる1枚。
 彼らを日本人が好きなカテゴライズをするのなら、たぶん歌モノのギターロックバンドになるだろう。歌をちゃんと聴かせるとか、ちょっと理数系をにおわせる歌詞だとか、その世界観が確立されているとか、ボーカル&ギター波多野のシンプルで真っ直ぐな歌声など、歌が基調となっていることは確かである。しかし、そこに絡み合う力強くうねるベースだとか、変拍子のリズムだとかが、これまでのそれとは一線を画しているようにも思う。真ん中に歌がありながらも、目まぐるしい程に展開をしていく曲。それなのに、なぜか心地よく耳に届いてくるから不思議。聴く度に彼らの音楽に引き寄せられていくのだ。
 3月にはOne Man Live Tour!! が決定しており、東京は3月20日の渋谷AX!! ここで存分に彼らの音を浴びてきたいと思う。そして、今後も彼らから放たれる楽曲を非常に楽しみにしている。


(Rooftop:やまだともこ)


anonymass / harusame

CXCA-1153 2,415yen (tax in) / IN STORES NOW

 さて、突然ですが『くるり鶏びゅ〜と』はお聴きになりましたでしょうか? 今をときめくフレッシュな面々から、奥田民生、矢野顕子、松任谷由実といった大物までが参加したバラエティ豊かな作品ですが、個人的に気になったのは冒頭の1分間でした。1曲目で『赤い電車』をカバーしたanonymassは「楽器を以て」見事に「電車の走りだす音」を表現しているのです。僕はまさに“sounds like music!"と驚きました。そこでanonymassについて調べてみるとTVCMや舞台、映画で音楽を担当してる方々のバンドなんですねー。通りで器用な訳だ、と合点。
 さて、前置きが長くなりましたが『harusame』は、「お洒落なインスト」という印象。ボーカルは入っていますが、演奏に溶け込む美声なので、「音モノ」として聴いた方が馴染みます。やはり画が加わるとグッと映えそうな作品ですね。ただ『赤い電車』に魅せられた僕としては、部分的にもう少し「遊び心」がほしかったです。
 小林賢太郎(ラーメンズ)プロデュース舞台のテーマ曲も収録されていますので、ファンの方は一度聴いてみてはいかがでしょうか。


(Naked Loft:上里環)


AFRICAEMO / squatter

ZNR-084 2,100yen (tax in) / 3.17 IN STORES

 『残響レコードからAFRICAEMOの1st mini albumが発売されるんです!! 初ライブから1年足らずでフジロックの“ROOKIE A GO-GO”に出演したという経歴を持っているので名前を知っている人もいるでしょう。知らない人はまず聴きましょう!! そして踊りましょう!! いままで残響レコードからリリースされてきた歌モノバンドとはなんかちょっと違うかもというのは聴けばわかります。CDをスタートさせて最初の音が耳に届いた瞬間からパーティーが始まります。1曲目の『Bird』(この曲は残響record compilationに収録されていたのですが、更にアレンジされている!!)から6曲目の『Lazer Beam』まででも踊り疲れてしまうのに、7曲目、8曲目のRemixの2連続で畳み掛ける。そう、彼らはダンスミュージックを鳴らすパーティーバンドなんです。LIVE盛り上がるんだろうな。盛り上がらない訳がないよな。“ただかんじるままにおどりたい”まさにそんな気分です。
 アルバムタイトルの『squatter』=「不法居住者」という意味のとおり意思とは関係なく頭の中に不法に住みついちゃいますよ。』


(新宿ロフト:江幡ミサ)


空間現代 / 空間現代

HEADZ-136 2,300yen (tax in) / IN STORES NOW

 面白いバンド名だと思う。「週刊現代」のパロディーはもとより字面だけだと勝間和代に見えないこともないが、注視すべきはその名前だけではない。音ズレというレベルの問題ではない変拍子/ポリリズムの中を切り裂くギターリフ。そこにのる呟き、呪文、お経にも似た言葉の羅列。ループ、逆回転、ワープを強引に生演奏のみで取り入れた前衛的な着想。おそらく表面的にはそのような特徴を捉える事が出来るが、空間現代の最も特筆すべき点は「音」が「ない」ところにある。スカスカとも違うなんらかの空間の静謐さ。音間のギャップや軋み。CDプレイヤーの意図しない音飛びを恣意的に発生させようという気概。そうした音のない部分を聴く者に想像させる営みはある種のメタ・オルタナティヴ的な要素を多分に含んでいる。是非とも聴いてほしい。と、つらつら書かせてもらったが、実はボーカルが大学の先輩なので、この場を借りてのお祝いメッセージというのが本筋である。しかし、いくら内輪とはいえ、本当に良いものを作ってくれた。しかも、批評家の佐々木敦や作家の古川日出男などの激賞を受けて、満を持してのアルバム発売。野口さん、おめでとうございます!  


(ロフトプラスワン:タナカ)


Good Dog Happy Men / The Light

TBCD-1988 2,940yen (tax in) / IN STORES NOW

 Good Dog Happy Menにとって、約2年2ヶ月ぶりのフルアルバム! その名も『The Light』。それは瞬間のパッと眩しい光を表し、そして人生の中の一瞬一瞬を表している。そんな今作、なんと収録されている12曲すべてが新曲! レコーディングも長い時間をかけて行われたとのことで、私自身も心してGDHMの新しい音楽に耳を傾けた。その瞬間、心臓の鼓動がどくどくっと波打つのを感じた。その鼓動を感じながら1曲目から12曲目まで通して聴いていたら、GDHMが作り出す物語にすーっと引き込まれるような感覚に陥った。そして、熱い蒸気とともにコーヒーがぽこぽこと沸き立つあの感じだったり、風に吹かれて木々がゆらゆらと揺れるあの感じや、雨や雪が空から力強く降ってくるあの感じ…曲によって、様々な情景が目の前に浮かんで来た。そこに通じるのは、「躍動感」。曲から感じ取れる愛や希望に満ち溢れたエネルギーは外へ外へと向かいながら、ひたすら真っ直ぐに突き進む。聴いているわたしたちの心に、彼らの音楽で光を灯す一瞬を目指して。一人きりになりたいときも、誰かに会いたいときも、優しく隣に寄り添ってくれるような最高傑作だ。


(新宿LOFT:松浦由香理)


COKEHEAD HIPSTERS / FREENOTFREE

CHR-003 1,500yen (tax in) / IN STORES NOW

 99年1月30日の解散から07年岐阜での突然の復活。そして08年東京での本格的復活を果たした、COKEHEAD HIPSTERS。当時から唯一無二ともいえるインパクトを与え、クロスオーバー、ミクスチャーの中でも頭角を現していたCOKEHEAD HIPSTERS。2010年になった今でも存在感溢れるパフォーマンスは、まさに必見!! なのである。復活後、COKEHEAD RECORDS設立。UKメロディックハードコアの元祖SNUFFとのスプリット7インチ、初の映像集のDVDを含めて、本作品は自主レーベル第3弾となる。COKEHEAD HIPSTERSがオリジナル・メンバーとしては実に12年ぶりの、問題ともいえる本作品。冒頭から遊び心たっぷりで、COKEHEAD HIPSTERSが愛して止まない90年代を象徴させるラップ、レゲエ、スカ。ハードコア、オルタナとすんなりとはいかない。一癖も二癖もある濃い内容の5曲が収録されている。昨年は様々なイベントやFESへの参加、V.Aへの参加も含めて幅広いジャンルへのアプローチがみえた。マイペースながらも今年は、これまで以上の展開がありそうで、今からドキドキが止まらない。


(下北沢SHELTER:平子真由美)


SuiseiNoboAz / SuiseiNoboAz

ZLCP6 2,100yen(tax in) / IN STORES NOW

 水星発、MATSURI STUDIO経由、地球行き。フジロック'09にも出演し、インディーズロックシーンでは注目を浴びていたSuiseiNoboAzが、2010年、待望のファーストアルバムを発表した。プロデューサーに向井秀徳という強力な個性を迎えて作られた今作。ともすればZAZENBEATSに呑み込まれてしまうのでは、という心配は、聴いてみてすぐに杞憂だったと分かった。切れ味鋭いリフが心地よいキラーチューン『水星より愛をこめて』や、ミクスチャー的要素の含まれた『over the rainbow』などの楽曲では、随所に向井秀徳の影を感じるものの、疾走間のあるオルタナ・ナンバー『メキシコかアイダホ』や、淡々としたベースとファズギターによって描かれる、スケール感の大きな『Happy 1982』などでは素敵な化学変化が起きていて、最高にカッコいいと思った。骨太でソリッドなサウンドに乗せて、激しくもどこか儚い印象を与えるボーカルは、その詩世界が描く情景のように、どこか現実感を失った現実のようで、危うい雰囲気をまとっている。こういう魅力あるバンドと出会えて嬉しい。素直にそう思わせてくれるバンドだ。是非。


(Asagaya/Loft A:山崎研人)


Droog / Droog

RCSP-0019 1,800yen (tax in) / 2.10 IN STORES

 この声、独特すぎて耳に残りすぎる。この曲、暴力的すぎて脳天につきささる。音楽というのは、時には発信となり、表現となり、武器になる。意味の無いことなのだけれど、その無意味の中に起こる強烈なモノに私たちは依存し、心躍らされ、リアクションする。大分からやってきたDroogは、全員が18歳。既に反社会的に学校は辞めてしまった。まさに10代という若さ特有のギラギラした感じが溢れ出ている。歌詞の独特な言い回しからくる、強烈なまでの想いを曲にのせて、BANDという価値観を多いに踏み倒し、刹那的な中に振る舞いの中にも、ハッとさせられる斬新さがある。なんなんだ!?といえる衝撃が走る。最近は音楽の世界でも低年齢化が、かすかに進んでいる気がする。新たな音楽シーンの起爆剤どころか、こんな10代ばかりが登場したら、まさに末恐ろしいのではないだろか。2010年に予定調和は必要ない。存在感溢れるパフォーマンスと新たなる時代の予感を感じさせてくれるBAND、Droog。君たちは歴史の証人になれるか?


(下北沢SHELTER:平子真由美)


fuwala / 声

TERF-001 1050yen (tax in) / IN STORES NOW

 こんちは! 少しずつ暖かくなってきましたね。皆さん風邪ひいてませんか? 急に冷え込む日もあるのでまだまだ油断できませんね! そんな事はいいとして。今月、私がオススメするCDはfuwalaの『声』です。小さく可愛らしい容姿でギターをかき鳴らすシンガーソングライター。このCDは一枚一枚手作りで、こだわりの作りになっているため、大量生産が出来ないのです。その為、ウェブ限定販売になっているのですが、なんと下北沢の mona recordでは店頭販売もしています。このCDには3曲が収録されていて、自分的には、1曲目の『声』の歌詞「髪が、まぶたが、耳の裏側が君の声をさがしてる」というフレーズから、色々な事を考えさせられます。自分の中にゆっくりと入り込んでくる温かい声とメロディーライン。毎日忙しい日々を過ごしている人にこのユッタリとした温かい時間を感じてもらいたい一枚です。


(下北沢SHELTER:飯田)


LOVE LOVE LOVE / プラネタリウム

VICL-36563 1,200yen (tax in) / 2.17 IN STORES

 ミニアルバム『空想パドル』リリース後、間もなく1st single『プラネタリウム』をリリースさせるLOVE LOVE LOVE。今年の彼らはいつになくハイペースで「名曲」を届けてくれるようだ。彼らの武器でもある温もりある歌声、思わず大人の私もキュンとさせられる言葉の数々、わびさびあるメロディーが『プラネタリウム』では本領発揮されている。少しばかり切ないのがまたいい。ただ単純に切ないだけでは終わらない。  カップリングは陽気なナンバーが続き、特に3曲目『それもいいさ』でちょっとした脱力感を味わう事も出来る。  作品を聴く度に思いますが、彼らはいつも等身大で歌を届けてくれる。背伸びする事なく、ありのままの自分達を恥じらいもなく「うた」という形で魅せてくれる。こそばゆい日常が「音楽」を作る上での「原動力」になっている気がしてならない。そして自分だけじゃないんだなって共感出来る事が沢山ある。「うた」っていいな。久々にそう思えた作品に出会えた事、凄く幸せに思います。


(ロフトプロジェクト:樋口寛子)


V.A / Catch one's breath

CHRS-020 1,575yen (tax in) / IN STORES NOW

 私が胸を張って推奨出来るレーベル“CAPTAIN HAUS RECORDINGS”から、レーベルコンピシリーズとして久々のリリース。前回のコンピレーション『worth one's salt』も繰り返し何度も聴きましたが、本作も同様に私の部屋のルームミュージックと化しています。
 前作と違うのはレーベル所属アーティストだけにとどまらず、実際にMY SPACEを試聴していいなと感じたアーティストや他レーベルのアーティストをゲストに招き、バラエティに飛んだ作品。一見バラバラなのかと思いきや、聴き手を意識した心地良さは全楽曲共通。だからこそ1枚を通して存分に楽しむ事が出来る。コンピレーションは軽視されがちですが、決して聴いている人の邪魔をしない作品なので末長く愛聴出来るのがまたいい。
 個人的にはレーベル&コンピ主宰者のクボタさんが在籍しているバンド“Kuh”のファンなので、こうした形で新曲が聴けるのが凄く嬉しい。リリースツアーとして2/11表参道FABを皮切りに全国へ廻るそうなので、コンピと併せてライブをチェックしてみるのも良いでしょう。私も行きたいなぁ。


(ロフトプロジェクト:樋口寛子)


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