ギター バックナンバー

石頭地蔵('10年2月号)

石頭地蔵

狂気と哀憐を誘発する火の国産鋭角サウンド


 世界最大級のカルデラで知られる阿蘇山を擁する熊本で40年以上にわたり熟成発酵された超弩級突然変異バンド、石頭地蔵。昨年11月に処女作のリマスター盤を発表したばかりの彼らが、矢継ぎ早にセカンド・アルバム『カーバイト』を発表する。闇雲に歪みまくった狂気に満ちたコード感、完膚無きまでに鋭角な殺傷能力の高いギター・リフ、まるで底なしの泥濘のようなボトム・ライン、素っ頓狂だが滋味に富んだ唄いっぷり。そのどれもが規格外の乱調子なのに、やさぐれた音像とは裏腹のインテリジェンスも文学性の高い歌詞からほのかに感じられる。どうやら奇を衒っているわけではなさそうだ。だとすれば、この火の国に狂い咲いたエラーの花は如何にして萌芽したのか。リーダーの芥川勝則にメール・インタビューを試みた。(interview:喜多見 歩)


ほんの少しひねって組み合わせる妙味

──ドラムの臼井さんによるブログによると、結成当初は「おっさんが暇な時に集まって『セッションでもしようか!』ってくらいのバンド」だったそうですね。そもそもの結成の経緯から聞かせて頂けますか。また、当初はどういった音楽性を志向していたのでしょうか。ジャキジャキ切り刻むような鋭角サウンドが石頭地蔵の大きな特徴のひとつだと思いますが、リチャード・ヘル&ヴォイドイズやテレヴィジョン、日本で言えばフリクションといったバンドの音楽がバック・グラウンドにあるのではないかと個人的には感じます。

芥川:当初はバンドと呼べるものではなく、ひたすら爆音でワンコードのリフを延々繰り返すセッションを続けていて、お互いの演奏の手癖の確認をするような感じでした。セッションを重ねるうちに、メンバーの相性の良さとこのメンバーだったらできるかもしれないと思える音楽性が定まってきて、オリジナル曲を作り始めました。バンド名は最初のライヴの時に必要になり考えました。自然な流れでバンドが出来たと思います。テレヴィジョン等の挙げられたバンドはメンバー共通の好きなバンドでもあり、オリジナル曲を作る際に意識したバンドでもあります。

──最初に出来たオリジナル楽曲は『トルコ』と『car crash△oil』だったそうですが、“おっさんの趣味”という範疇では到底括りきれない、バッキバキなオルタナティヴ楽曲だと思います。その2曲はどんな経緯を経て生まれたんでしょうか。

芥川:私がシンプルなリフを作り、それぞれのメンバーがフレーズを考えました。フレーズそのものはシンプルなものばかりなのですが、ほんの少しひねって組み合わせることで思い浮かんだ楽曲のイメージに近づけることができたと思います。

──昨年11月に自身のバンド名をタイトルに冠したファースト・アルバムをデジタル・リマスター盤として発表しましたが、この意図とは? また、リマスターに際して特に気を留めた点はどんなところですか。オリジナル作品との相違点も教えて下さい。

芥川:P-VINEのディレクターである、パニックスマイルの吉田 肇さんからの要請でリリースしました。バンドとしての意向はありませんが、再発する機会をくださった吉田さんに感謝しています。オリジナルより音質がクリアになり、印象がまた違って聴こえると思います。

──芥川さんの描く歌詞の世界には文学性の高さを感じます。歌詞の面で、石頭地蔵の音楽を通じて訴えかけたいテーマとはどんなことですか。また、影響を受けた詩人や音楽家を挙げると?

芥川:私は洋楽コンプレックスがあり、意図的に日本語であっても聴き取りづらい唄い回し、また一聴しても意味が判らない言葉を多く使いました。文学性を感じるのは高村光太郎の詩集から言葉を引用しているからだと思います。ただ、セカンド・アルバムでは安易な引用はしないようにと思いました。音楽性もそうなのですが、既成の作品から引用及び編集をするようなことは、後に演奏していて居心地が悪く感じる場合があるのでなるべくしたくないのですが、どうしてもしてしまう場合があります。そこを通過して自然に、オリジナルな歌詞が作れたらと思います。

──パンク・ロックの表現の発火点は基本的に“怒り”ですが、芥川さんが楽曲作りをする際も“怒り”が発火点であることが多いですか。また、今最も“怒り”を感じていることは何ですか。

芥川:バンドで表現する時に個人的には怒りはありません。自分なりですが、ガッツ、もしくは熱意といったことがしっくり来る気がします。もしかしたら、単なる思い込みだけかもしれません。私は好きなバンドのように演奏したいだけで、それがパンク・ロックでした。問題意識が低いのかもしれませんが、今、特に怒りを感じることはありません。


ロックの伝統的なメロディを外す唄い方

──芥川さんの張り叫ぶ歌唱法は独特で中毒性がありますが、以前セッションをしたこともあるダモ鈴木さんのフリーキーなスタイルからの影響もありますか?

芥川:ヴォーカルはある時、高い声で叫ぶように唄ったのをテープに録って聴いてみると、自分でもましかなと思えるようになり、また唄い回しについても好きなヴォーカリストをイメージして唄ったら、そんなに悪くないかもと思えるようになりました。オリジナル曲を作るまで、バンド内で誰がヴォーカルをするとかは決まっていなくて、自分のヴォーカルのスタイルを試してみたいというのがあって、自分がヴォーカルをしたいとメンバーに申し出ました。ダモ鈴木さんのヴォーカル・スタイルを意識したことはないのですが、その影響を受けたザ・フォールのマーク・E・スミスの唄い方が大好きで、間接的に影響を受けていると思います。もっと大きな括りで言うと、ロックの伝統的なメロディを外す唄い方が好みで、そのほうが、日本語で唄っても自分の考えるロックに近いのではないかなと思いました。

──石頭地蔵の音像はとにかく生々しく鋭角的ですが、普段から音作りで最も意識的なのはどんな部分でしょうか。たとえば、映像喚起力の有無といったような。

芥川:曲を作る時はなるべく情緒的な響きにならないようなコード展開を考えています。曲の骨格はリズム隊のみで成り立つのですが、その際、強いタッチで演奏し、音が硬質で太くなるようにしています。そこにギターはハイコードのリフや高いキーの単音のフレーズを絡ませて、こちらも弾くタッチが強かったりします。それが、鋭角的な印象を与えていると思います。

──今回発表されるセカンド・アルバム『カーバイト』はファースト・アルバムでの凶暴さをさらに増幅させた感がありますが、コンセプト的なものは何かあったんでしょうか。

芥川:コンセプトは特にありません。凶暴さはコード感、フレーズ、演奏のタッチから浮かび上がるものと、セカンド・アルバムではギター・アンプをフェンダーに替えたので、サウンド面でも荒さが出たのかもしれません。

──吉田さんからは何らかのアドバイスを受けたんですか。

芥川:レコーディング、ジャケット等、吉田さんにはバンドのやりたい意向を伝え、自由にさせていただきました。制作の過程で判らない点があった場合は、吉田さんに判断してもらいました。

──本作で特筆すべきは、やはり9分を超える大作『誘発』だと思いますが、バンドにとっても新機軸ですね。どことなくテレヴィジョンの『マーキームーン』を彷彿とさせますが、こうした大作志向は以前からあったんですか。

芥川:もともとギターを自由に弾ける所が欲しかったので、後半の展開を考えました。『マーキームーン』みたいだといいのですが、『誘発』はかなりシンプルでもっとラフです。

──アルバム・タイトルになっている“カーバイト”=“炭化物”とは何のメタファーなんでしょうか。

芥川:『発光カーバイド』の歌詞にある、“カーバイトで〜”と唄う所の唄い回しをメンバーが気に入っていて、それでタイトルになりました。メタファーはありません。

──ジャケット写真にある地蔵の群れは熊本の名所なんですか。

芥川:五百羅漢という所です。名所みたいです。もともと、P-VINEから宣伝用の写真が欲しいということで友達に頼んで撮影しました。友達のおかげで予想以上の仕上がりになったので、アルバム・ジャケットにも使いました。

──熊本という土地柄が石頭地蔵の音楽性に影響を与えている部分はありますか。

芥川:土地柄はあんまり関係ない気がします。ベースの高木と私は80年代後半にフリクションのライヴを熊本大学で観ているので、その影響はあると思います。ちなみに今回のセカンド・アルバムのエンジニアの方は、その熊本大学でのフリクションのライヴを主催した方です。

──現在は練習の度に新曲を作っているとのことですが、どんな作風の楽曲なんですか。

芥川:新曲を作る際はちょっとしたことなのですが、今まで作った曲とは違う要素を取り入れているようにしています。最近は音数を減らしてシンプルな感じになればいいなと思って曲を作っています。

──デラシネやロレッタセコハンといった若いバンドとも交流があるそうですが、今の若いバンドに対して思うところとは?

芥川:私たちは2001年に34歳で結成したので、その頃の若手は逆に私たちよりキャリアのあるバンドばかりでした。バンドについても年齢は関係なく、バンドそのものの音楽性が好きか嫌いかだけで、今の若いバンドに対しても同じく思います。

──今後、石頭地蔵として実現させたいこと、やっていきたいこととは?

芥川:メンバーはそれぞれ思う所があると思いますが、個人的にはもっと自分で納得できる曲を作りたいです。



カーバイド

01. panico sorriso
02. 退屈な店
03. 蜂の巣
04. 発光カーバイド
05. 灰原で…
06. 誘発
07. ちりん
08. 高速エレベーター
09. 火葬
10. 地帯
11. I can't ration (you knowledge configuration)
12. 猥 (Y)
P-VINE RECORDS PCD-93319
2,415yen (tax in)
2010.2.17 IN STORES

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Live info.

Sliver 10
2月27日(土)大牟田 Club Fuji
with:VELOCITYUT, 忘却コード, 電卓, etc...

YOLZ IN THE SKY&石頭地蔵 ダブルレコ発@福岡
2月28日(日)福岡 キースフラック
with:YOLZ IN THE SKY, ヨヨヘヨヨ a.k.a. EEVEE, ガロリンズ

石頭地蔵『カーバイド』発売記念東京ライブ
4月9日(金)渋谷 7th FLOOR
with:To Be Announced

4月10日(土)秋葉原 CLUB GOODMAN
with:To Be Announced

石頭地蔵 official website
http://www.geocities.jp/ishiatamazizo/

posted by Rooftop at 12:00 | バックナンバー
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