ギター バックナンバー

SA('10年2月号)

SA

歌えよ、戦う俺たちのファイトソング


 日本が世界に誇るパンク・バンド、SAがニュー・アルバム『REVOLT 'N' ROLL』を発表する。今こんなにも真摯に音楽と向き合い、全力でライヴをやり抜くバンドは数少ない。自分は年間500本以上のライヴを見ているが、昨年のベスト・ライヴのひとつが12月に見たSAだった。SAのライヴを見て大いに感銘を受け、自分の人生を振り返り、決意を深め動かされた。決して若くはない彼らがそのすべてを出し切った渾身のアルバムを完成させ、そしてその真骨頂を発揮するワンマン・ライヴを2月21日に我が新宿LOFTで開催する。こんなに光栄なことはない。是非彼らのライヴを体感して欲しい。今こそ立ち上がる時だと感じるはずだから。(interview:大塚智昭/新宿LOFT店長)


ライヴの空気を何色にでも変えられる

──実は今回、僕がSAを表紙にしたいと編集部に拝み倒したんですよ。自分がそうやってお願いするのは年に1、2回くらいで、凄く珍しいことなんです。

タイセイ(vo):おお、それは有り難いね。

──何故そこまでSAを推すのかと言えば、去年の12月にウチでやった2本のライヴ(『SET YOU FREE VOL.263 〜YEAR END SPECIAL 7DAYS』と『URASUJI.』)が凄く良くて、去年見たライヴの中で1、2を争うくらい素晴らしかったんですよね。その時に今のSAをもっとたくさんの人たちに見て欲しいと思ったんです。

タイセイ:なるほど。嬉しいこと言ってくれるね。

──特に『SET YOU FREE』の時は、SAよりも若いバンドたちが割と淡々としたライヴをやっていたんですよね。

ナオキ(g):決して恵まれた状況じゃなかったもんね、あの日は。SAを知らないお客さんもいっぱいいたし。

──そんな状況の中で、SAが狼煙を上げてイヴェントの流れを一変させたんですよ。パンク・ロックは衝撃を与えてナンボだし、SAは聴き手の感覚に訴えかけられる数少ないバンドのひとつだと僕は思っているんです。

タイセイ:ライヴをやる以上、見に来てくれるお客さんには何らかの思いを持ち帰って欲しいんだよね。俺たちも持ち帰りたいしさ。その思いが何なのかは判らないけど、そんなライヴができるように心懸けてはいるね。

──他のバンドも、口ではそういうことを言うんですよね。でも、その結果がなかなか出てこない。

ナオキ:そうだね。心が折れそうになって、会場の空気に呑まれるミュージシャンは多いと思うよ。

タイセイ:途中でライヴを投げる奴が最近は多いよね。

ナオキ:2曲くらい強めのボールを投げて、全然返ってこないともう折れてるみたいなね(笑)。俺は決してドMじゃないけど、そういう状況が嫌いじゃないんだよ。フロアにお客さんがいっぱいいたほうがもちろん嬉しいけど、それはそれで楽しめるから。

──『SET YOU FREE』の時も、SAがライヴを始めたら後ろのほうにいたお客さんが前へ詰め寄って、一気に一体感が生まれましたよね。ライヴをやって訴えて、それが伝わっていく瞬間を目の当たりにしましたよ。僕はその姿にあまりに感動して、逆にフロアから離れていったくらいですから(笑)。

ナオキ:正直、こんなに力を付けていくバンドだと最初は思わなかったね。タイセイとペアを組んでこの面子になって今年で9年目を迎えるんだけど、よくここまで続いてるなと思う。俺が入る以前の再結成したSAを見て、“ウォッ、スゲェ!”って思ったよ。そこで俺が一緒にやることで相乗効果が生まれるだろうと思って始めたけど、これだけ長い間ブレずに折れないでいられるとは思ってなかった。まさか9年目を迎えられるなんてさ。

──そういうものなんですかね。

ナオキ:タイセイも俺も、今までのキャリアの中でひとつのバンドを続けることにかけてはどんどん最長記録を更新してるからね。俺の場合、コブラを3回やって6年、ラフィン・ノーズが5年、ドッグ・ファイトが6年半やから、9年目なんてビックリだよ。

──今のSAは、ついこの間のライヴが一番いいっていう状態をずっと保っていると思うんですよね。

タイセイ:そうかもね。だから、もっとできるんじゃないか、もっともっと行けるんじゃないか、っていう気持ちになるし、その場の空気をどう色付けできるかを考えるようになる。ステージに立つ人間なら判ると思うけど、あの独特の空気を何色にでも変えられると、こんなに気持ちいいことはないわけよ。ちょっと抽象的な言い方だけどね。

──いや、よく判りますよ。キャリアを積んだバンドが陥りがちなのは、ベスト・ライヴだった頃のモードをポイントで繰り返すんですよね。それは見てる側も一度体験したことだし、最初の感動は超えられないと思うんですよ。SAはそういうことを絶対にやらないじゃないですか。

タイセイ:同じことをやるつもりは毛頭ないし、実際、全く同じにはならないからね。

ナオキ:ステージに向かう以前の姿勢っていうのもあってね。タイセイも俺も、今度のライヴは何を着よう? あんな格好がしたい! っていうところから始まってるから。セットに1時間20分掛かる俺のヘア・スタイルも大変だけど、冗談半分でタイセイに「そろそろイメージ・チェンジしていいかな?」って訊いたら、即座に「ダメ!」って言われたもんね(笑)。そういう見てくれの部分で自分たちを鼓舞してるところはあるよね。ステージに上がりたくて上がってるんやからさ。それがいいステージへ結び付く姿勢やと思ってんねんけどね。だって、見て欲しいし、見せ付けてやりたいっていう思いがあるわけやから。

タイセイ:SEが流れて、舞台袖のスタッフの横をすり抜けてステージに立つ時、俺たちはいつもいい意味で緊張してるんだよね。気持ちを集中させて、いい緊張感を保ってステージに向かってる。LOFTでもモニターを見ながら“どれくらいのお客さんが俺たちを見に来てるのかな?”なんて思いながらさ。その緊張感がいいんだよ。それがなくなったら終わるなと思ってるよ。緊張感を保ちながら楽しもうとするから凄くハイになるし、100を超えたくなるんだよ。自分の限界を超えて120の力を出したくなる。そうすると何でもできるような気がしちゃうんだよね。

ロック・スターであるべきという自覚

──SAみたいにロック・スター然としているバンドは、こちらの想像を超えたことをやってくれるんですよね。ロック・スター幻想を抱かせてくれるバンドが最近は少ないように感じます。

タイセイ:確かにね。SAがパンク・ロックというカテゴリーの中で位置付けられているのは誇りにも思ってるんだけど、ロック・スターであるべきだという自覚もあるんだよ。最近は格好付けてロックやってる奴がいないし、格好いい奴もいないし、格好付けてサマになる奴もいないしね。

ナオキ:ホントだね。たくさんのバンドと対バンしても、5回くらい会わないと顔を覚えられない子も多いからね。ステージに上がってる人間なのに、こんなに覚えられないものかな? って思うよ。向こうはこっちのことを一発で認識してくれてるけどね。見た目が鬱陶しいから(笑)。

──SAはまぎれもなくパンク・バンドでありながら、その音楽性はジャンルに囚われない幅広さがあるのが魅力ですけど、今回発表される『REVOLT 'N' ROLL』ではいつになくストレートなパンク・ロックを体現していますよね。

タイセイ:いろんな壁を突き破って幅広い音楽性を志向してきたからこそSAを続けていられるんだと思ってるけど、音楽性が幅広いから筋が一本通っていないかと言えば絶対にそんなことはない自負がある。今度のアルバムみたいに直球のパンク・ロックは飛び出して聴こえるかもしれないけど、俺の中ではそんなに飛び出してないんだよね。俺たちの世代は特にそうだけど、パンク・ロックというものをあまりにも狭く決め込みすぎてる。俺にはそれがつまらないし、SAがいろんな音楽をやってるんじゃなくて、みんながいろんなことをやらなさすぎてるんだよ。

──歌詞がいつになくシンプルでポジティヴになったのを個人的に感じたんですよ。歌詞がパンクなイメージで、サウンドはストレートなロックンロールと言うか。

タイセイ:そこは今回、凄く気に留めた部分なんだよ。それは去年、アメリカでライヴをやったことが大きいと思う。SAは英語でも唄うし、日本語の曲もあるけど、向こうではどっちでもいいわけよ。それなら、伝える側としては日本語で唄いたい意識が芽生えたって言うかさ。それ以降、曲作りをしていく中で歌詞には引っ掛かりを覚える言葉を入れたいなと思ってね。あと、なるほどなって感じる言葉とか。時間が経ってから判る言葉もあるかもしれないけどね。念頭にあったのは、日本語を聴こえやすくすること。その一方で、英語で唄うところはガッツリと唄いたかった。1曲目の『Hey, Hello Mr. Freedom』は90%が英語で10%が日本語だけど、いい感じで英語と日本語を振り分けたかったんだよね。英語でガッツリ、日本語でガッツリっていうさ。そのほうが唄ってても気持ちいいわけよ、実際。伝えたいことや感じてることをひん曲げるよりは真っ直ぐ唄ったほうがいいに決まってるしね。

──確かに。となると、発せられる言葉は自ずとシンプルになっていきますよね。

ナオキ:俺は今回、いい大人が敢えて稚拙な言葉を使ってるのがいいなと思ってね。本来なら10代の衝動で言うような言葉を、40を過ぎた大人がハンマーのように言ってしまってるところが面白い。

タイセイ:いい意味で青臭い言葉を使いたかったんだよね。いつだって青臭くいたいしね。

──『RAD』の歌詞はまさにそんな感じですよね。「やっぱ俺たちイカすぜ No.1」ですから(笑)。

タイセイ:今回のアルバムは、1曲目から6曲目までがひとつの物語になってるんだよ。『Hey, Hello Mr. Freedom』は、くすぶった地下室の中で少年がロックに目覚めるイメージ。『HANG OUT』はその少年が仲間と集まって街角に佇んでる感じで、そいつらが『BASEMENT RAMPAGE』みたいにイノセントなパンクを唄って、連中が東京に出てきて壁にブチ当たるのが『WAITING MAN』。東京で出会った女の子と一緒にロック・スターを夢見るのが『RAD』なんだけど、結局ロック・スターにはなれない。だけど、そんな挫折した男が今は自分の仕事で吠えまくってるのが『RAIN DOGS』なんだよ。そういう流れのあるアルバムが作りたかったんだよね。

ナオキ:今回、歌詞はダーッと一気に書き上げたもんな。

タイセイ:だからいろいろリンクしてるわけ。『HANG OUT』にある「青臭い奴らのカウント4」っていう曲が『BASEMENT RAMPAGE』のことだったりね。



生きることとは戦い続けることなんだ

──『HANG OUT』にも『RAIN DOGS』にも“street”という言葉が使われていて、SAの立脚点が一貫してストリートにあることと重なりますね。

タイセイ:そうだね。ロックンロールはストリートに根差したものだからさ。少なくとも俺たちの世代はそうだった。SAというフィルターを通してノスタルジックな部分を出してみたかったんだよ。って言うのも、ロックンロールが“ロックっぽいもの”に取って代わりそうでさ。パンク・ロックが“パンクっぽいもの”に持ってかれちゃいそうだし、自分たちが体験してきたことは何だったんだろう? っていうのを再確認したかったんだよね。胡散臭いまがいものがあまりに横行しすぎてるからさ。

──『RAIN DOGS』がまさに今のSAを象徴した曲だと僕は思うんですよ。ドシャ降りに立つ野良犬だけど、諦めることなく吠え上げているっていう。

タイセイ:そうなんだよ。今この歳で“ファイトソング”って言葉を最後に使ったんだけど、これも一歩間違えるとダサい言葉になると思うんだ。でも、戦いの歌を唄いたかったんだよ。サラリーマンでも学生でも、どんな立場の人間だって形は違えど日々戦ってるわけだからさ。

──SAはステージ上で戦い抜くことを体現しているから、チープな言葉には聞こえませんけどね。

タイセイ:パンク・ロックで“ファイトソング”なんて青臭い言葉を使うとヘンな解釈をされそうだけど、違うんだよ。生きてるってことなんだ。生きることは戦いなんだからさ。だから、『RAIN DOGS』をライヴでやるとガッツリ来ると思うよ。

──パンクで在り続けることの決意表明みたいな曲でもありますからね。

タイセイ:うん、そういう部分もあるね。やっぱり、剥き出しの言葉で唄いたかったんだよ。俺たちの前を走っていた先輩バンドもそういう言葉で俺たちを揺さぶり続けていたしね。だから、俺たちもそう在りたい。オブラートに包んだり、もうごまかしちゃいけない歳なんだと思うよ、俺たちは。

──今の時代、老いも若きもごまかしてばかりな気がしますけどね。

タイセイ:うつむいたままやり過ごす奴が多い気はする。うつむいて轟音を鳴らしてりゃいいのかよ!? って言うかさ。もっと目を見て話そうぜ! って俺は思うよ。

──そのブレのないスタンスは、去年の渡米経験を経てより明確化された部分がありますか。

タイセイ:多分、腹を決めたってことなんじゃないかな。アメリカでコテンパンにされてたら“ああ、やっぱりこんなもんか”って思っただろうけど、そうはならずに“まだやれるな”って思ったからね。

ナオキ:バンドのポテンシャルは高いよ。他のバンドから「毎年いろんなアイテムをよく出すよね」って言われるし、休むことなく活動してるけど、何なんだろうね。40代も中盤に差し掛かってきてるっていうのに、未だにステイ・ハングリーなんだよ。必ずしもそうなりたかったわけじゃないんだけどね。でも逆に言えば、今もこうしてバンドがやれてることは幸せだと思う。今のポジションを嘆いてもいないしね。嘆いてばかりじゃ何も始まらないし、世の中を取り巻く現状とか今の音楽シーンに対する怒りはずっとあるよ。その思いをいつも等身大の言葉で叫んでるしね。SAはただ10代の言葉を借りてきて唄ってるわけじゃなくて、今も同じ感情を抱いて唄ってるんだよ。

──こんなに青々しくもポジティヴに、相手の目を見ながら歌を届けているバンドが今は少ないんですよね。何だか萎縮した佇まいのバンドが多いし、まるで今の日本社会を象徴しているみたいでイヤなんですよ。

ナオキ:親がごっついお金を注いで音楽の専門学校に入れる時代やからね。そこに入ったからって、心が揺さぶられるものを生めるかって言ったらそうではないと思うよ。

──みんな訴えかけたいことはあるんでしょうけど、真に迫る表現が凄く少ないですよね。それは何故なのかなと思って。

タイセイ:何なんだろうね。俺たちは凄く洋楽的なこともやりたいし、凄くドメスティックなこともやりたい。そういう両極端なことがやりたいんだよ。思春期にもの凄く憧れてた英米のロックやパンクの格好良さを追求したいのと同時に、日本人としてのプライドみたいなものも追求したい。それは海外へ行って凄く感じたね。日本人としてありのままの姿を見せ付けたいと思った。



SAの凄さはステージで証明してみせる

──海外のお客さんはノリが良くて、日本のバンドでも受け入れてもらえる印象がありますけど、SAは海外と同じノリで日本でもフロアを沸かせているんですよね。

タイセイ:そう、本質的な部分では変わらないんだよ。別に外人にならんでもいいなと思う。何て言うか、最近はどっちつかずのバンドが多いよな。

──どっちつかず…今の日米関係みたいですね。

タイセイ:そうだね。じゃあ、今度は俺が総理大臣になるか?(笑)

──みんな文句ばかりは一人前だけど、大事な時はうつむいてばかりで何も行動を起こさない。ファイトソングを胸に秘めていないし、戦おうとしないんですよね。

タイセイ:端っから戦おうとしてないよね。そりゃ、みんなイヤだもんね。面倒臭いし、傷付きたくないだろうし。だけど、ちゃんと戦っていかないと楽しくないし、熱く生きられないよね。そういうことを唄えてるのがSAの良さのひとつなのかなって思うよ。

ナオキ:今度またラフィンやコブラと一緒に回る『R&R CIRCUS TOUR』があるやん? どうせまた仲良し小好しが集まってやってんのやろ? って思われる部分もあるかもしれへんけど、こっちは“ブッ倒してやる!”って思ってるからね。絶対に俺らのほうがエエ! 勝負にもならないくらいの差を見せ付けてやる! ってさ。そこまでやりきって初めて「楽しかったね」って言い合えるものにしたいよね。地方で久し振りに3バンドが揃って、嬉しく思ってくれるお客さんもいるかもしれないけど、そこで真剣勝負を見せなきゃただの懐メロ大会で終わるからね。そんなのはまっぴら御免だよ。懐メロを聴くんやったら百恵ちゃんだけで充分やから(笑)。今の20代、30代のバンドで、いい意味で力強く発破を掛けてくれるバンドがもっといて欲しいんやけどな。

──なかなかいませんよね。世代間が断絶しているようなところもあるし。

タイセイ:それは感じるね。『SET YOU FREE』みたいに、そういうのを打破しようとするイヴェントもあるけど、その中でもバンド側が壁を作ってるところがある。若いバンドの中へ果敢に飛び込んで、そこでも対等に勝負を挑むSAみたいなバンドは少ないよね。先輩だから偉いとか、売れてるから凄いなんて関係ないんだよ。ステージに立ったら歳もキャリアも関係ないんだから。何でSAが凄いのかっていうのはステージで証明しようと思ってるからね。そのためには体力を付けなアカンけどな。

ナオキ:ホントやねんな。気力を補うにも体力が必要だよね。

タイセイ:40を超えるとステージであまり動かなくなるミュージシャンも多いけど、ロックってやっぱり飛んだり跳ねたりケツを振ってナンボってところがあるじゃない? 少なくとも俺はそういうロックが好きだからさ。

──片意地張って格好いいロックを後進の前で見せ付ける上の世代も減ってきましたよね。

タイセイ:格好いいことは何て格好悪いんだろうっていう風潮がちょっとあるよね。でも、格好いいもんは文句なしに格好いいんだよ。早川義夫さんの言葉を否定するようで悪いけどさ。みんなどこかシラけてる感じがするんだよね。斜に構えてシラけてるのが格好いい、みたいなさ。全然違うんだよな。好きなミュージシャンのTシャツを着てたらそれでロックか!? とも思うしね。俺はバンドのTシャツをあまり着ないんだよ。だって、そいつに負けてることになっちゃうから。ピストルズとかのTシャツを着ちゃったら、それを超えられないってことだから。俺は自分の顔のシャツを着たいくらいだよ(笑)。昔、T・レックスがやってたけどね。マーク・ボランもロック・スターだったよな。

──こんな閉塞した時代だからこそ、僕はロック・スターが必要だと切実に思うんですよ。

ナオキ:今の面子になって軽く500本近くのライヴをやって、オリジナル・アルバムは10枚を超えてるし、この歩みは自分たちでも凄いと思うんだよ。でも、俺たちだけでできることには限りがあるし、もう少し後押ししてくれる力があればなと思うね。そうすればもっと周りの目も変わって“ああいうバンドを目指そうぜ”っていう奴らが増えて、骨太なバンドが今よりもたくさん出てくる気がする。自分たちでできる範囲のことを目一杯やってきた自負はあるよ。ただ、「よろしくお願いしますよ」って頭を下げることは大ッ嫌いやから。ちょっと売れてる奴らと絡んだりとかさ。



あと何年、全力で走ることができるか

──SAはそういうスタンスの反対側にいますからね。

ナオキ:うん。だけど、理解を示してくれる人たちに対しては「何か力になってくれたら嬉しいよ」って言うけどね。それはいつも切に願ってることやから。バンドなんて、毎年1年を更新することが奇跡だと俺は思ってるんだよ。SAは有り難いことに更新できてるし、俺たちももうちょっと先にある景色を見たいなと思うしね。“あと何年できるんだろう?”っていう漠然とした恐怖もあるわけやんか。俺くらいの年齢のバンドはみんなそう感じてると思うよ。あと何年、全力で走れるのか。タラタラ続けることくらい誰だってできる。久し振りに再結成します、5年振りにアルバムを出します…そんなスタンスでやるのは誰だってできるよ。でも、全力で走ることができるバンドは限られてる。SAの場合は、さっきタイセイが言ったいい意味での緊張感が音やステージに反映してるんだろうね。まぁホントに…どこを向いても嘆かわしいことばかりだね。テレビを見ても情けない番組しかやってないしさ。音楽番組ってどこへ行ったんだろうね?

──番組を作る側のやる気を感じませんよね。制作サイドはそれで何がやりたいんでしょうね?

ナオキ:たまに音楽番組を見ると、一時代を築いた人がカラオケで懐メロばかりを唄ってるもんね。『ファイティング・エイティーズ』とか、昔は気骨のある番組もあったのにさ。

タイセイ:お前がどれだけ辛いかを滔々と唄った歌なんて聴きたくねぇよ、と思うことはあるね。

ナオキ:歌詞の字幕スーパーを見ると、最近の流行歌はビックリするくらい酷いもんな。

──自戒を込めて言いますけど、ライヴハウスをやる側も単なるハコ貸し的な発想をする人が多いと思うんですよ。ノルマを取って交通整理をするだけの殿様商売って言うか。

ナオキ:アメリカのライヴハウスはノルマがないんだよね。

──チケットの売り上げは100%バックなんですよね。チケットの価格設定も安くてお客さんが入りやすいと聞いたことがあります。人と集まってお酒を呑んで楽しむ習慣が日本にもっと定着すればいいなと僕は思うんですよ。海外は居酒屋よりもパブが主流で、パブの向こうにライヴをやれるスペースがあるんですよね。その意味で言うと、日本は音楽を聴くことが本当の意味でまだ身近じゃない気がするんです。ライヴハウスで生のライヴを見ること自体がひとつのイヴェントになっているけど、日常生活の中で呑みに行って、そこでやっているライヴに対価を払う感じになればいいなと思うんですよ。

ナオキ:確かにね。この間、阪神にいた小林繁が亡くなったやん。あの人、スポーツ・キャスターの先駆けなんやけど、ただ「やってくれ」と言われてやってるだけのスタンスじゃなく、自分で会社を興してスポーツ番組を作ろうとしてたらしいんよ。自分の目線から視聴者に対して訴えかける報道番組をね。そういうスタンスが大事なんやろうね。音楽の仕事に携わる人が“今のままでいいのか?”と危機感を募らせて独立して、その人の信じる目線で制作に力を入れれば、音楽業界は俄然活気付くよね。小林繁、単なる男前じゃなかったんだね。熱すぎる男だったんだなと思ってさ。

──そういう人の背中を見ながら、信じたことを行動に移せる人がもっと増えればいいですよね。

ナオキ:今の俺たちくらいの世代が日本社会の中枢にいてこの社会を動かしてるわけじゃない? その世代がロックの衝撃を一番受けたはずだし、その目線で信念を貫いて何らかのムーヴメントを興せばいいんじゃないかと思うよ。そうすれば多少は景色が変わる気がする。景色、変えたいなぁ…。この10年、ロックの世界は相当キツい景色になってきてるからね。俺たちがデビューした85年くらいが一番いいのかどうかは判らないけど。バンド・ブーム前夜で、ライヴハウスがまだ危険で淫らな場所だった頃ね。

ロックという名のアートを共有すること

──ライヴハウスに初めて足を踏み入れる人をどれだけ増やすかが僕らのテーマだと思っているんです。ライヴハウスに行ったことがある人って、国民の100人に1人くらいだと思うんですよね。1人を何とか3人にするだけでも環境は良くなるはずなんですよ。自分はそれが楽しいから仕事にしていて、1本のライヴを見てその人の人生が変わることだってあるし、ライヴハウスは面白い人が集まる場所だってことをどうすれば知らしめることができるのかを常に考えていますね。その手段のひとつとして有効だと思ったのが12月にLOFTで見たSAのライヴだったんですよ。こういうライヴを見せればどんな人の心でも動かせるはずだと思いましたから。

タイセイ:あの時のライヴはお客さんの中へ突っ込んでいってさ、後ろのほうには俺たちのことを初めて見るような人たちも多かったわけじゃない? その人たちの表情が明らかに変わったのが手に取るように判ったんだよね。それこそが表現だし、ロックという名のアートの共有なんだと体感したよ。若いバンドのイヴェントに出て、SAを初めて見る後ろのほうのお客さんがどんどん前へ押し寄せてくることの快感もある。そこに言葉は要らないんだよね。だって、その場で初めて聴く曲なんだから歌詞なんて判るわけがないんだから。いいんだよ、何でも。声出せばいいよ、まずはそこから始めよう、っていうさ。それがSAのやろうとしてるパンク・ロックの表現方法なんだよね。

──今の面子になって9年目を迎えても、また新たな扉を開いて現状を突破していけるのがSAがSAたる所以だと思うんですよね。

タイセイ:うん、そう思う。だからたまに、選ばれた人間なのかなとも感じるよ。自画自賛するわけじゃないけど、たまにそうやって調子に乗ることはあるね(笑)。

ナオキ:いや、それくらいの自覚がなきゃダメだよ。自覚と言うか、そこまでの思い込みがないとね。バンド以外のことは何もできないんだから。もの作りに長けた奴に「自分、何でもできるんだね、凄い才能を持っとるね」って何気なく言うたら、「でも、こっちはナオキさんみたいに曲を作ったり、ライヴ・パフォーマンスなんてできませんよ」って言われたことがあるんだよ。あ、そうか! と思ってね。「充分に私たちを感動させてくれてますよ」って言葉を聞いて、誰でもできることじゃないんだなと思ったよ。タイセイも俺も30年近くこうしてバンドに携わってきて、何度でもやめるタイミングはあったはずなのに、結局はしんどいほうを選んじゃうんだよね。

──バンドって、しんどいけど面白いものですよね。

ナオキ:そうなんだよ。しんどくなきゃ面白くないからさ。

タイセイ:さっきの話に戻るけど、しんどくても戦わなきゃダメなんだよね。『RAIN DOGS』の「正義になれず 悪になれず」という歌詞に俺はメッセージを込めたつもりなんだけど、正義にもなろうとしないけど悪にもなりたくないっていうスタンスが一番良くないんだよ。悪になれとは言わないけどさ、どっちかの一番になれよ、って思うね。そういうことを声高に言えるお兄さんがいたほうがいいよ。根拠なんて要らねぇよ。野良犬みたいにただ吠えてるだけでいい。理由なんて後から付いてくるからさ。俺たちはこれからもいろんなものを超えていくけど、見てる側も超えていかなきゃダメだよね。お客さんがオイオイ言うのはいいけど、それも決まりでやらなくていいんだよ。もちろんこっちが煽る部分もあるけど、予定調和にやらなくていい。予定調和になった途端につまらないものに成り下がる。何かを超える瞬間みたいなものがいつだって見たいし、そういうのを体現していきたいね。その瞬間に凄いエネルギーが生まれるし、そのエネルギーで世界を変えられるかもしれないからさ。

──変えましょうよ。SAにはまず日本の音楽シーンを変えて欲しいですね。

タイセイ:エラいでっかいことを背負い込まされたぞ、オイ(笑)。よし、判った。やってみようか。ズッコケることもあるかもしれないけど、コノヤロー精神で行くよ。



NEW SICKS SONGS ALBUM
REVOLT 'N' ROLL

01. Hey, Hello Mr. Freedom
02. HANG OUT
03. BASEMENT RAMPAGE
04. WAITING MAN
05. RAD
06. RAIN DOGS
PINEAPPLE RECORDS DDCQ-6006
1,800yen (tax in)
2010.2.03 IN STORES

★amazonで購入する

Live info.

REVOLT 'N' ROLL TOUR
2月6日(土)仙台 CLUB JUNK BOX[with:THE CHERRY COKE$]
2月11日(木)名古屋 BOTTOM LINE[with:LOWER CLASS BRATS (from USA), JAPAN-狂撃-SPECIAL]
2月13日(土)大阪難波 ROCKETS[with:LOWER CLASS BRATS (from USA), JAPAN-狂撃-SPECIAL]
2月21日(日)新宿 LOFT[ONE MAN]

R&R CIRCUS TOUR 2010
3月7日(日)HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA]
3月13日(土)岐阜 club-G[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA, RADIOTS]
3月14日(日)長野伊那 GRAM HOUSE[with: LAUGHIN' NOSE, COBRA, VEGETABLE LIFE, THE LITTLE RICE]
3月27日(土)松坂 M'AXA[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA]
4月17日(土)いわき club SONIC[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA]
4月18日(日)仙台 CLUB JUNK BOX[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA]
4月23日(金)club FLEEZ 高崎[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA, RADIOTS]
4月25日(日)富山 club MAIRO[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA]
4月28日(水)大阪 BIG CAT[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA]
4月29日(木・祝)名古屋 CLUB DIAMOND HALL[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA, RADIOTS]
5月1日(土)熊本 Be-9 V-2[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA, THE PISTON SLAPPIN', BUILD]
5月2日(日)福岡 Be-1[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA, THE BEAT GO'S]
5月4日(火・祝)米子 BELIER[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA, THE COMIN']
5月6日(木)渋谷 O-EAST[with:LAUGHIN' NOSE, COBRA, RADIOTS]

SA official website
http://www.bandsjapan.com/sa.html

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