ギター バックナンバー

キノコホテル('10年2月号)

キノコホテル

集団中毒!キノコホテル


 さかのぼること約2年半前、静かな森の奥深くに、キノコホテルというかわいくも不気味な名前のホテルがひっそりと創業した。そのホテルについては、退廃的なサロンであるとか、女だけの秘密の花園であるとか、深夜の狂宴が開かれているとか、いろいろな噂が伝えられてきたが、ついに今年2月、キノコホテルの支配人・マリアンヌから私たち宛に1通の招待状が届けられた。
 自主制作シングル盤『真っ赤なゼリー』がインディーズチャートの首位となって以降、人工的近未来感とノスタルジーが奇妙に交錯したロックサウンドで、瞬く間に中毒者を増殖させたキノコホテルは、実演会(ライブ)を記録したDVDとCDで勢いをつけ、いよいよ1stアルバム『マリアンヌの憂鬱』でメジャーデビューとなったのだ。
 この招待状を手にした者が、実際にキノコホテルを訪れるかどうかはもちろん自由だ。「行きはよいよい帰りは怖い」という注意書きも見落としてはいけない。しかし人間は快楽なしには生きていけないし、そもそも快楽と中毒を同時に体験するのがロックという表現なのだ。さあ、鍵を開けろ! (text:加藤梅造)


キノコホテル創業

──いよいよ待望の1stアルバムをリリースするキノコホテルですが、これまでの歴史などを聞かせて下さい。まずは創業当時の話を聞きたいのですが。

マリアンヌ 創業時のメンバーは今はもう私だけなので、私がお話しするしかないわね。

──資料には2007年6月にキノコホテル創業とありますが、マリアンヌ支配人はキノコホテル創業の前に別のバンドをやっていたそうですね。

マリアンヌ それは半年間ぐらい遊びでやっていた程度です。そもそも本腰を入れてバンドをやろうとは思っていなかったし。ただ、その半年の間に自分で作った曲がいくつかあったので、このままやめてしまうのももったいないかと。

──前のバンドを止めた原因は何だったんですか?

マリアンヌ 主に人間関係。私についていけないとか言われたりして、気づいたら誰もいなくなってた……(笑)

──その時からS的なキャラクターだったんでしょうか?

マリアンヌ 元の性格ですからね。前のバンドには私よりも経験も多くテクニックもある男性のメンバーがいて、その人に言いたいことを言ってたら呆れてしまったみたいで。

──その後にいよいよキノコホテルを創業するわけですが、最初からバンドのコンセプトはあったんですか?

マリアンヌ 今度は全員女の子でいこうと思って従業員を探したんです。もともとコンセプチュアルなバンドをやりたかったわけではないんですけど、キノコホテルという名前にした以上そうせざるをえなくなったというか、自分で自分の首を絞めたというか。

──僕が初めて観た時は、キノコホテルという名前とバンドの持つ世界観はかなり密接な感じを受けたんですが、最初は試行錯誤もあったんですか?

マリアンヌ 初めからカッチリと決まっていたわけではなく、しかもメンバーがまだ流動的だったので、コンセプトを考えるまで至ってなかったんです。

──当初はガレージバンドというイメージが先行していたと思いますが。

マリアンヌ そもそも私はキノコホテルでガレージをやっているという意識は全くなくて、多分下手くそだからガレージって言われるのかと思っていたんです。最初からこういうイメージの曲を書こうという意識はなく、たまたま私が作っていた曲がそういった年代性を感じさせるようなものだったのではないかと思います。

──70代的なものを意識していたわけではなかったんですね。

マリアンヌ 昔はバイオリンを習っていたこともあってクラシックしか知らない人でした。一時期、GSとかを聴いていた時期もありましたが、それもただの通過点。その後は別の音楽を聴いたり、音楽そのものから離れた時期もありました。それで自分で作曲をするようになって出てきたのが今やっているような音楽だったので、その時にはじめて自分がこういったものが好きだったのかと気づきました。だからキノコホテルはコンセプトよりも曲ありきで始まったんだと思います。その曲を表現するためにどうしたらいいのかを考えた結果がキノコホテルだった。

──それまでに影響を受けた歌手とかいるんですか?

マリアンヌ いや、歌うようになったのがそれこそ3年前ぐらいからなので。歌うことに興味があったわけではなくて、自分で曲を作った時、人に歌わせるぐらいだったら自分で歌ったほうがいいかと思ったぐらいで。未だにこんなんでいいのかしらと迷いながらやっています。

──なるほど。じゃあマリアンヌさんにとっては作曲を始めた時からキノコホテル的なものが始まっていたとも言えますね。作曲はいつ頃からされているんですか?

マリアンヌ キノコを創業する前の年くらいからかしら。それ以前には自分が曲を作るとかバンドをやるとかは全然考えていなかった。たまたまあるきっかけで曲を作ることになって、それから1週間後ぐらいに初めて作った曲が、のちの「真っ赤なゼリー」なんですけど。


 
マリアンヌ東雲(支配人/歌、電気オルガン)   イザベル=ケメ鴨川(電気ギター)

従業員募集

──マリアンヌさんの世界観は最初からかなり確立されていたように思いますが、キノコホテルが今の従業員(メンバー)になるまで結構大変だったのではないですか?

マリアンヌ そうね・・・色々あったわね。人事異動も激しかったし。

──では、今の従業員の方々が就業した経緯を聞いてみたいと思います。最初に入ったのはベースのエマニュエル小湊さんですが、当初は物販スタッフだったとか?

エマ そうなんです。それが前任のベーシストが辞めた時に「ちょっとベースやってみない?」と誘われて、それで2ヶ月間ぐらいサポートをしていたんです。

マリアンヌ その時は彼女がまだ正式にはできないということだったので、オーディションをしていて、そこに立ち会ってもらっていたんです。

エマ そのうちにだんだんうずうずしてきて、ある時「私、やっぱり正式メンバーになりたい!」って言ったんです。オーディションを見ているうちに「こんな子にやらせるぐらいなら私がやる!」って。

マリアンヌ 私も初めからそうなるのを狙っていたんです。しめしめと。

──マリアンヌさんの策略にまんまと乗せられた訳ですね(笑) 最初から正式メンバーにならなかった理由は何だったんですか?

エマ 私はそもそも女の子だけでバンドを組むっていう考えがなかったんです。でもサポートでやってるうちにだんだん楽しくなってきて。女の子だけだと衣装も凝ったりできるし、なによりもやっている曲が演奏していてどれも楽しいものだったんです。

──それまでエマさんはどんなバンドをやってたんですか?

エマ 下北沢によくあるようなギター系のバンドです。男の子がさわやかに青春を歌うような(笑)

マリアンヌ 草食系男子がね!

──次に、ギターのイザベル=ケメ鴨川さんとドラムスのファビエンヌ猪苗代さんが就業するわけですが、ケメさんはどういった経緯で?

ケメ まあ、なんていうか斡旋されて。

──斡旋?

ケメ プロデューサーのサミー前田さんから斡旋されたんです。当時、エレキギターはもう一生弾かないと決めてアコギで弾き語りのソロ活動をしていたんです。それで1ヶ月間の臨時従業員ということで入ったのがきっかけで。

マリアンヌ 前任のギタリストがわりといいプレイヤーだったので、その穴埋めをできる娘がなかなか見つからなくて苦労しました。一瞬、廃業の文字が脳裏をよぎったり・・・

──ケメさんはキノコホテルと平行してソロ・フォークシンガーとしても活動していますが、もともとはフォークが好きなんですか?

ケメ フォークが好きというよりは、一人でやる方が楽だっていうのがあって。

──それがエレキギターを持って再びバンドに入ろうと?

ケメ キノコホテルのことは全く知らなかったんですが、初めて聴いた時になんか関わりたいなって思ったんです。

──一方、ファビエンヌさんはメンバー募集に応募したんですよね?

マリアンヌ メンバー募集じゃなくて「求人広告」です。

ファビエンヌ 当時やっていたバンドが一区切りして、次の活動拠点を探している時にキノコホテルの音源を聴いたんです。それが自分が気に入っていた音楽とフィーリングがぴったりで、ああこの人について行こうと思ったのが応募したきっかけです。

──気に入っていた音楽とは?

ファビエンヌ 音楽性は全然違うんですけど、生き様というか、発信しているものに近いものを感じて、ああこれは絶対おもしろいはずだと。

──その音源というのは当時のキノコホテル唯一のシングル『真っ赤なゼリー』ですよね。確かにあのシングルは当時のインディーズチャートを席巻しましたが、考えてみればそれはマリアンヌさんが作った初めての楽曲なんですよね?

マリアンヌ そうですね。初めて作った曲でもあるし、初めて歌って、初めてバンドで演奏した曲でもありますね。

──それがいきなりディスクユニオンのインディーズチャート1位になったわけですからねえ。ただ、それ以降はライブDVDやライブ盤のリリースはあったものの、今回の1stアルバムまでの約2年間スタジオ盤のリリースをしなかったんですが、これもまた究極のじらしプレイと言えますね。

マリアンヌ 本当はライブ盤は出したくなくて早くスタジオ盤を出したかったんです。でも話をすすめている内に従業員の退職などもあって、のびのびになった結果なんです。決してじらしてた訳ではない。

──なるほど。でも意図してなかったとはいえ、その2年の間にキノコホテルの知名度がぐんぐん上がった結果、今や最も待ち望まれる形での1stアルバムリリースになったと言えますね。

マリアンヌ そうですね。無駄はない感じはします。


エマニュエル小湊(秘書/電気ベース) ファビエンヌ猪苗代(ドラムス)

支配人からの調教

──今のバンドの状態は、演奏的にもキャラクター的にもベストな状態に近いんじゃないでしょうか?

マリアンヌ はい、この4人になってからが本当のキノコホテルだと言ってもいいくらい。いろんな意味でバランスがいいんではないかしらね。ケンカもないし、でも言いたいことはみんなハッキリ言うし。

──端から見てると、マリアンヌさんが他の従業員を恫喝しているようにも見えますが。

ファビエンヌ 恫喝?

マリアンヌ 恫喝の意味がわかってないみたい。調教です、「調教」。

エマ それは……

ケメ もう毎日、泣きながら練習しています。

マリアンヌ 過去にはみんなの前で従業員を吊し上げたりしたこともあったんですが、そうすると辞めてしまうんです。それ以来、叱るときは影で呼び出してチクチクと嫌みを言うように方針を変えました。

──従業員のみなさんは、支配人から言われてきつかったことはありますか?

ファビエンヌ この衣装着ろって言われた時が一番つらかったです。

マリアンヌ ああ、この娘はミニスカートに抵抗があったらしくて、履きたくないって言うからキレましたよ、支配人は。

──でもそれは最初からわかって入ったんじゃないですか?

ファビエンヌ チラシで支配人の写真は見ていたんですが、まさか自分もこの衣装を着るとは思ってなかったんです。

──でも今やこの衣装はキノコホテルのトレードマークと言えるほど浸透してますよね。

マリアンヌ ミニのミリタリー服というのは早い段階から構想していたんですが、仕立屋をどうしようかと悩んでいた所、ちょうど服飾学校に行っている女の子がライブのお客さんで来るようになって、その子に相談して作ってもらったんです。

──キノコホテルには専属の記録係(カメラマン)もいるし、いわゆるキノコ・サポーターと呼べる人達が周りにたくさんいますよね。

マリアンヌ ええ本当に、ありがたいことです。私たちは音楽をやることしかできないので。

──調教の話に戻りますが、エマさんはステージ上でもよく支配人にいじられていてますよね。あれはどうなんですか?

エマ まあ…、嫌いじゃないです。

ケメ いつも漏らしてるよね(笑)

エマ 一番対極的というか、支配人はSですが私はドMなので…、利害関係が一致してるんです。

──それは素晴らしい(笑) あとケメさんはライブ中に支配人からディープキスの洗礼を受けることが多いですが、あれも調教の一種なんでしょうか?

ケメ 一番きつかったのが、ステージ上でいきなりワインを口移しで飲まされた時があって。私、ワイン飲めないんで「もう、やめて下さい」って。

マリアンヌ 拒絶してるのがわかったんですが、それが面白くて(笑) わりと最近のことだわね。

ケメ 去年の年末の実演会でのことです。

歌と物語

──1stアルバムの話をしていただきたいのですが、ライブではお馴染みの曲がずらりと揃った感じになってますね。

マリアンヌ 今までさんざん実演会でやっていた曲を今回スタジオ盤で改めて聴いてもらうんですが、聴き慣れた人も初めて聴く人も、それぞれどんな反応があるのだろう? と思います。

──全8曲ということで、CDとしては短い感じもしますが、収録曲をあえて少なくしたんでしょうか?

マリアンヌ 本当はもっと候補曲があったんですが、削りに削った結果こうなりました。最初から狙ったわけではないんですが、聴いてみると案外これぐらいが丁度いいのかしら、と。一つの物語のように起承転結があって、一通り聴き終えた後にもう一度最初から聴きたくなるような感じになっているのではと思います。

──確かに、もっと聴かせてくれよと思いますよね。まだじらすのかと。

エマ Sだよ…。

──今、ぼそっと言いましたね(笑)

マリアンヌ キノコホテルの周辺にはSの人もいるんですが、いつの間にかMに転向してしまうケースが多いかも(笑)

──曲と同様、歌詞もまた独特なんですが、歌われている内容は情念的な恋心をテーマにしている歌詞が多いですね。

マリアンヌ どうなんでしょう? 実はあまり伝えたいことはなくて、実際、私は歌詞を書くのがすごい苦手なんです。できることなら人に頼みたいぐらい。歌詞がうまくできなくてボツになった曲もありますから。

──それは意外ですね。言葉に出来ないぐらいの激しい感情が伝わってくるのですが。

マリアンヌ そんなに激しい恋もしてないですから。したいわとは思うけど。

──いや、支配人の恋愛遍歴は非常に興味がある所です。プライベートでもドSなのか? とか。

マリアンヌ プライベートではドMを愛せないんです。男としては見れない。なにかやらせる分にはいいんですが…。まあ、そんな話はどうでもよくて。

──歌詞の話に戻りますが、今の時代、マリアンヌ支配人のように女の情念を歌う人っていないですから、そこがグッとくるんですよね。

マリアンヌ そうねぇ。世の中に恋愛の歌は多いですが、“ずっと一緒だよ”みたいな胸クソの悪い歌ばっかりで。私は物語として情景や色彩が浮かんでくるようなものを歌いたい。

──マリアンヌさん本人は意識してないかもしれないですが、キノコホテルを聴いて70年代的なものを連想する感覚って、昔の映画を見ているようなイメージが沸くからだと思うんです。例えば「還らざる海」では波止場での男女の別れが歌われてますが、これを聴いて僕は70年代の日活映画的な情景が思い浮かびました。

マリアンヌ お前、船かよ、って(笑) まあ今時の共感を求めるものではないですよね。私はある物語を一方的に提示しているだけで、それをどう解釈するのかは聴く方の自由です。

──物語を提示するという所が昭和的なものをイメージさせるのかもしれないですね。

マリアンヌ そういう意味では、昭和の歌謡曲は歌詞のレベルが高いと思います。ウェットな世界を一歩引いた乾いた目線で歌っている感覚というか。さらけ出しているかに見えても、それは私の中から絞り出したものではなくて、ただの物語でしかないという。

──実際にそんな体験してたら大変ですよね。

マリアンヌ 人を殺したりとかね。

──殺してそうですけど…

マリアンヌ (笑)

──ウェットな情景であっても、支配人のクールな声質で歌われることで突き放した感じになってると思います。

マリアンヌ 人間的な部分と人工的な部分のバランスは大事だと思う。人間くさい音楽ももちろんいいんですけど、キノコホテルでやる場合はもう少し人工的で無機質な感じを織り込みたいと思っています。


マリアンヌのせいで憂鬱

──CDもいいんですが、キノコホテルはやはりライブを体験して欲しいと思うんです。特に後半のケメさんの客席に飛び込んでのパフォーマンスや、支配人のキーボードにまたがってのプレイなどは観ていて鳥肌ものですからね。

ケメ いつも筋肉痛です。アザもめっちゃできてて。

マリアンヌ ギタリストはあのぐらいでないと。

──ライブではいつも陶酔するまでのめり込む方ですか。

ケメ その時のテンションにもよるんですが、難しいですね。毎回違うので。

──一方でエマさんの淡々としたプレイが対照的です。余裕が有りそうな感じで。

マリアンヌ 余裕がないから動けないだけよ。

エマ あえて冷静にやってるみたいに見られてるんですが…

マリアンヌ 本当は一歩でも動くとおしっこ漏らしちゃうから、この娘。

エマ はい、たいがいちびってます… いつも換えのパンツ持ってますから。

マリアンヌ 漏らしながらもがんばって弾いてる所が健気で可愛いの。涙目でね。

──(笑) えー、それでは最後にキノコホテルの次なる野望をお聞きしたいのですが。

マリアンヌ 今は音楽を演奏するバンドとしてやっていますが、いずれは映画など他の文化へも浸透していくようなものを目指したいと思います。

──キノコホテルというホテルができるといいですね。全国に支店ができるぐらいに。

マリアンヌ コピーバンドはすでにいくつかあるらしく、キノコ倶楽部とか、キノコ学級だとかキノコホテル別館というのもあるみたい。それも、なぜか名古屋に集中しているという・・。

──全国にキノコ中毒者が増殖中ですね。マリアンヌ様も憂鬱になっている場合じゃないですよ。

マリアンヌ いや、私はぜんぜん憂鬱なんかじゃなくてよ。どちらかというとむしろ、マリアンヌが人を憂鬱にさせることの方が多いし。だからアルバムタイトルは『マリアンヌのせいで憂鬱』が正式名称ということで(笑)



これを聴いてなにも感じない人は、ロックを聴くのをやめるべき

吉田明裕(土龍団)

 キノコホテル、満を持してのスタジオ録音アルバム『マリアンヌの憂鬱』の登場である。自主制作シングル「真っ赤なゼリー」がインディーズとしては異例の大ヒット(某有名チェーン店のトップ)、初期メンバーによる演奏をおさめたDVD『キノコホテルの夜明け〜初期実演会』、そしてライヴ・アルバム『サロン・ド・キノコ〜実況録音盤』もそれぞれ好調の売れ行きで、さらには何度かTV出演もしており、その筋には既に国内外で周知されているガールズ・バンドといえよう。2009年11月に六本木SuperDeluxeで催された『サロン・ド・キノコ〜秋の収穫祭』は、あの広いハコが大入り満員で身動きがとれないほどであった。
 マイナー・チェンジを繰り返した末の固定メンバーは、電気ベースのエマニュエル小湊、電気ギターのイザベル=ケメ鴨川、ドラムスのファビエンヌ猪苗代、そして歌と電子オルガンであり支配人であるマリアンヌ東雲。ライヴではエマニュエル=静、イザベル=動、ファビエンヌ=笑、マリアンヌ=色(エロ)というキャラで、前後左右の相対関係にあるように思った。さらに説明するとエマニュエルが左、イザベルが右、フェビエンヌが後、マリアンヌが前。これは絶妙の十字架なのである。この十字架を完成させるためにメンバー・チェンジを繰り返したとしか思えない。
 閑話休題。内容に触れよう。
 冒頭は1stシングルのB面だった「静かな森で」で始まる。環境がよくなったせいもあり、マリアンヌが思い描く本来のサウンドに限りなく近い“音”になっているはずで、これでは旧メンバーによる録音の立場がなくなるが、オリジナル・ヴァージョンの所有者は宝物がひとつ増えたと思えばいい。続いて「真っ赤なゼリー」が収録されているので、“私たちはあの時の私たちではないのよ。冒頭の2曲で気付いて”と告白されたような気分である。とにかくドラムが変わるだけで、ここまで雰囲気が変わるのか、という良い見本だ。
 その現行メンバーの持ち味がそれぞれ発揮されていると思われるのがライヴではおなじみの「私のスナイパー」で、いまのメンバーなら可能だとマリアンヌが未発表ストックから引っ張り出してきた曲である。イザベルの殺人ギターとマリアンヌのチカーノ系オルガンの絡みを聴いてなにも感じない人は、ロックを聴くのをいますぐやめるべきだ。インスト版の「ネオンの泪」ではロックの重要なポイントのひとつである“狂騒”を見事に表現している。したり顔の音楽評論家が語る“大人のロック”なんぞはこの世に必要ない。ゴミの日に全部出してしまえ。ライヴでは毎回聴ける「キノコホテル唱歌」も本盤の演奏がベスト・トラックではないだろうか。全パートが一丸となり、ここが聴かせどころという勢いで聴き手の五臓六腑を刺激する。
 また、「還らざる海」のようなマイナー調のビート・バラードをレパートリーにしているところも強みで、前述のSuperDeluxeではマリアンヌのヴァイオリンをフィーチャーした演奏であった。今後も様々な機会に様々な形態で披露される重要曲だろう。ちなみにビート・バラードとは故・黒沢進による造語である。
 そう。キノコホテルは黒沢が存命なら絶賛したはずなのだ。そういうことで直弟子である小生が推薦文を書かせて頂くこととなった。当バンドは我が国の音楽シーンを牽引する力を充分持っており、海外公演をしても各国で好評を博すと保証する。おそらく師は最後にこう書くだろう。ライヴで演ってる「恋はふりむかない」や「ピーコック・ベイビー」のスタジオ版も聴きたいと。小生も同感である。
 業界向けに超マニアックな余談だが、60年代にはピンキー・チックス、ザ・ハイビスカス、スター・サファイヤーズ、東京エンゼル・シスターズ、ザ・スパンキー、松田智加子とTokyo Pink Pearls、ザ・フォクシー・レディズなど、いくつかのプロの女性GS(事務所に所属)が存在し、そのうちレコードを出したのはピンキー・チックスのみである。



1st Album
マリアンヌの憂鬱

TKCA-73507 2500yen(tax in)
2010年2月3日発売 iTunes Storeで先行配信中

1. 静かな森で
2. 真っ赤なゼリー
3. もえつきたいの
4. 還らざる海
5. ネオンの泪
6. あたしのスナイパー
7. 夕焼けがしっている
8. キノコホテル唱歌
CD-Extra.もえつきたいの (PV)

★amazonで購入する
★iTunes Storeで購入する(PC ONLY)icon

Live info.

<キノコホテル・アルバム発売前夜祭>
2月2日(火)@新宿歌舞伎町ロフトプラスワン
<サロン・ド・キノコ祇園編〜「マリアンヌの憂鬱」発表記念公演>
2月6日(土)@京都磔磔(TAKUTAKU)
共演:ザ・シャロウズ
<サロン・ド・キノコ今池編〜「マリアンヌの憂鬱」発表記念公演>
2月7日(日)@名古屋得三(tokuzo)
共演:ザ・シャロウズ
<サロン・ド・キノコ特別編〜「マリアンヌの憂鬱」発表記念単独公演>
2月14日(日)@下北沢club Que
<ストライカーズバンデミックepisode Umeets Rooftop>
3月3日(水)@下北沢シェルター
共演:ストライカーズ、hare-barined unity
<梅田ノスタルジア>
3月5日(金)@大阪シャングリラ
共演:片山ブレイカーズ&ザ☆ロケンローパーティ、ミドリカワ書房ほか
<The no man's insistence>
3月7日(日)@下北沢club Que
共演:noodles、tokyo pinsalocks

キノコホテル official website
http://kinocohotel.web.fc2.com/

キノコホテル official MySpace
http://www.myspace.com/kinocohotel

posted by Rooftop at 12:00 | バックナンバー
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