ギター バックナンバー

DISK RECOMMEND ('10年01月号)

LOFT PROJECTのスタッフがイチオシのCD・DVDを紹介!!
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★以下のジャケットをクリックすると、各レビューが読めます。

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布袋寅泰 / MODERN TIMES ROCK'N'ROLL

TOCT-26920 3,000yen (tax in) / IN STORES NOW

松井常松 / RAVE ON

TOCT-26917 2,500yen (tax in) / IN STORES NOW

 元BOφWYのギタリストとベーシストがロックンロール黄金時代の不滅のクラシック・ナンバーをフィーチュアした洋楽カヴァー・アルバムをそれぞれ同時期に発表した。
 布袋寅泰の『MODERN TIMES ROCK'N'ROLL』にはエルヴィス・プレスリーの『ハートブレイクホテル』からユーリズミックスの『SWEET DREAMS (ARE MADE OF THIS)』まで、50年代から80年代までの割と知名度の高い楽曲をボーナストラック(ルベッツの『SUGAR BABY LOVE』)含め全14曲が収録されている。古今東西の洋楽に精通した布袋ゆえにもっとマニアックな選曲もできたはずだが、セルフライナーノーツによると「ロック・クラシックスが何故ゆえにクラシックとして語り継がれたかを実際にギターを握って検証してみたかったこともあるし、若い世代のロック・ファンの皆さんにとってのロックの入口は邦楽だったという方も多いと聞き、シンプルなスリーコードの曲は逆に新鮮に感じてもらえるのではないか、という思いもあった」とのこと。とは言えそこは布袋、ビートルズの『BACK IN THE U.S.S.R.』やキンクスの『ALL DAY AND ALL OF THE NIGHT』(ドアーズの『HELLO, I LOVE YOU』に非ず)、ストーンズの『悪魔を憐れむ歌』といった鉄板曲でも独自の“MODERN TIMES”なアレンジを施して楽曲の新たな解釈を提示している。自身が思春期にリアルタイムで聴いていたであろうT・レックスの『テレグラム・サム』やロキシー・ミュージックの『LOVE IS THE DRUG』、クラフトワークの『THE MODEL』といったグラム・ロックやニュー・ウェイヴの選曲がやはり本作では白眉で、布袋の核らしきものがよく窺える。だからこそ、彼が今なお敬愛してやまないデヴィッド・ボウイのカヴァーが収録されていないのが唯一惜しむべきところなのだ。是非続編を期待したい。
 一方、松井常松の『RAVE ON』はタイトルにも冠しているバディ・ホリーを筆頭に、リッチー・ヴァレンスの『COME ON LET'S GO』、デル・シャノンの『KEEP SEARCHIN'』、ボビー・フリーマンの『DO YOU WANNA DANCE?』といった50年代のロック黎明期の楽曲を中心に構成されているのが特徴。ポール・マッカートニーが愛しすぎる余りに版権を買い占めたバディ・ホリーの楽曲は『RAVE ON』以外にも『MAYBE BABY』など3曲が収録されているが、選曲にもう少し幅広さが欲しかった。リトル・リチャードやチャック・ベリー、ファッツ・ドミノといった同時代のロック創世者たちのナンバーも加味すれば、ジョン・レノンの『ロックンロール』にも相通ずる内容になったと思う。だが、歌と演奏はすこぶる良い。松井も数年間封印していたダウン・ピッキング奏法全開で迸る8ビートを存分に披露しているし、流麗なコーラス・ワークに支えられたクールで柔らかいヴォーカルも実に味わい深い。こちらも是非続編を望みたいところだ。
 なお、『MODERN TIMES ROCK'N'ROLL』は12月23日の水曜日発売で、『RAVE ON』は12月24日発売だった。あくまでもチャートの上位ランキングを目論む布袋と、BOφWYが解散したメモリアルな日を選んだ松井という両者の資質の違いが窺えるのも興味深かった。


(Rooftop編集長:椎名宗之)


wash? / love me

DDCZ-1654 2,300yen (tax in) / 1.20 IN STORES

 前作『Slacker's high』以来、2年振りに放たれるwash?通算5作目となるオリジナル・アルバム。断言しよう。真正面から歌を基軸に据えた作品としては過去随一の内容であると。初期の緻密な音作りもそれはそれで良かったが、奥村 大(vo, g)の真摯な姿勢がゆえの糊代の少なさも確かに目立った。それが作品を追うごとにいい塩梅に肩の力が抜けるようになり、一聴するとラフな音作りながら真に迫る音像という理想的な境地にいよいよ達したと言っていい。また、奥村の歌の力量が格段に増した。コーラス・ワークが美しすぎるにも程がある『I know I know』で聴ける艶のあるヴォーカルはとりわけ素晴らしく、ラフ・ミックスを聴かせてもらった段階で思わず身震いした。何の先入観もなくこの徹頭徹尾肉感的なロックンロールを享受して欲しいので必要以上に重いことは書きたくないのだが、この2年の間に逝去した上田現とmiya38こと宮沢昌宏への至上のレクイエムが本作に収録されていることには触れざるを得ない。だが、それを単なる感傷に浸った独り善がりの歌ではなく、万人の心にも染み入る普遍的な歌として昇華させているのは見事である。これだけの技量を勝ち得たのは、彼らが歌を介して思いを届けることに意識的になったことが大きな理由のひとつとして挙げられると思う。歌をコミュニケートの手段として聴き手と共有することに腹を括った彼らの“君に捧げる咆哮”はあなたに届くだろうか。


(Rooftop編集長:椎名宗之)


GRiP / Dear my friend

SFR-041 rpc-015df 1,050yen(tax in) / IN STORES NOW(ライブ会場限定販売)

 前作から約8ヶ月という短いスパンで届けられたGRiPのライブ会場限定シングル。相変わらずと言うか、楽曲のクオリティとセンスは抜群に良い。1曲目のタイトルナンバー『Dear my friend』からまさに「節」全開のポップナンバー。Vo/Gtゴンダタケシが歌うメロディは、もう彼にしか歌えないだろう独特のアクセントを持ち、彼が書く誰でも優しくなれるような温かい詞を一層際立たせてる。今の日本にこんなボーカリストは少ないんじゃないだろうか? Ba高間有一とDr野口カオルのリズム隊も非常にタイト、つかず離れずの絶妙さで曲全体がもの凄く締まっている。2曲目の『please tell me』は、それでも自分達がロックバンドである事を証明するかのようなハードナンバー。全体的に歪み成分が多く、GRiP流90年代グランジといったところだろうか。1時曲目がメロウな曲だっただけに、次にここまでハードな曲を持ってくるのは勇気が要る気もする。そこはこのバンドの懐の深さ…だなぁと思ったのは最後の3曲目『H_C_D』がインストだったからという理由もある。シングルと言えどここまでバラけさせれるのは、正直相当自信がないと出来ないのではないか? これを上手くまとめれるのはバンドのスキルの高さを物語っている。そのスキルの高さは正にライブで培われたもの。GRiP=ライブバンドである。ライブを見れば一層歌が響いてくるし、ロックバンドの極上グルーブが味わえる。何よりライブに来なければこのシングル買えませんから!


(新宿LOFT:水野 慎也)


割礼 / PARADISE K(パラダイス・カッパ)

PCD-18611 2,800yen (tax in) / 1.20 IN STORES

 思わず快哉を叫びたくなるリイシューである。昨年11月に新宿ロフトで開催された“DRIVE TO 2010”でもその健在振りを示した割礼が1987年に発表したファースト・アルバム『PARADISE K』が、宍戸幸司(vo, g)による選曲の貴重なボーナストラック5曲を追加収録して紙ジャケット仕様で完全復刻されるのだ。リマスター作業も実に丁寧で、オリジナル盤に欠けていた低音域を増幅したことによって現在のニュー・ウェイヴ、ゴスパンク・リヴァイヴァルにも呼応した今日性の高い作品として蘇っているところが素晴らしい。めくるめく至高のサイケデリック・ロックが堪能できる名盤として発表当時から評価の高い作品だったが、同時期のレア音源が加味されたことでコンプリート・パッケージされた感がある。宍戸自身が「これでやっと完成した気がする」と言うだけのことはあるし、これはひとえに制作サイドによる愛情の賜物と言えるだろう。10分を優に超える『溺れぱなし』(シークレット・トラックがまたいい)のうねるような超絶フィードバック・ノイズはただただ圧巻。また、『光り輝く少女』のドゥーミーな不穏さとキラキラ輝く光の粒が交錯するかのような音像、吐き捨てるような不安定なヴォーカルは何度聴いても息を呑んでしまう。『ゲーペーウー』のオリジナルとスロー・ヴァージョンの比較も割礼の多面性が理解できて面白い。ゆらゆら帝国辺りが好きな若いリスナーには是非一度聴いて欲しい一枚である。


(Rooftop編集長:椎名宗之)


PEELANDER-Z / P-POP-HIGH SCHOOL

PNK0907-087 1,500yen(tax in) / IN STORES NOW

 数年前、アメリカはNYで偶然彼らの存在を知った時、「宇宙人は実在した!」という、30年前のオカルト雑誌の見出しのような言葉をつい口走ってしまった。日本語と英語を流暢に操る彼らは、黄、赤、緑の皮膚をしたPEELANDER-Z(ピーランダー・ズィー、以下PZと表記)。ピーランダープラネットからやってきた宇宙人で、活動拠点はNY。謎だらけ。日本向け(地球向け)アルバム発売から3ヶ月が経過し、じわじわとその名を轟かせつつある。彼らの音源はライブショウの予備知識のためにあるようなものであると言っても過言ではないほど、ライブバンドとして名高い。ジャケットがRamonesのそれのパロディであることや、メロディが体に気持ちよく、聴いていて楽しいのは言わずもがな。ボーナストラックに代表曲『MAD TIGER』と『S・T・E・A・K』とあとおまけ。着眼点はたくさんあるが、ライナーノーツの豪華さが半端じゃない。John Holmstrom氏(Punk Magazine編集長)を筆頭に、ZAZEN BOYS向井氏は「マッド・タイガー向井」と名乗り、つしまみれから絶賛され、その他各界の有名人著名人から支持を受け、ツアーファイナルには森雪之丞氏から花束が届き…。とにかくこのアルバムを聴いて、彼らがスーパーハッピーな宇宙人だということがわかっていただけたら幸いである。謎だらけのPZから、目が離せない。SHELTERでのライブレポも掲載されておりますので、そちらも是非。ああ、言葉では伝わらない!


(下北沢SHELTER:石川 愛)


真野恵里菜 / FRIENDS

HKCN-50102 3,780yen (tax in) / IN STORES NOW

 アイドルに一番大切なものはやっぱり純真だ! なんてことを恥ずかしげもなく声を大にして言いたくなるのが、アイドル真野恵里菜の魅力だ。今やアイドルの定義も多種多様で(地下アイドルにネットアイドル、パチンコアイドルなんてのもいて…)、アイドルという言葉自体が無意味なものになっているが、そんな状況だからこそ真野恵里菜のような正当派アイドルの存在が輝くのだろう。彼女はそもそも、あややに憧れてハロプロのオーディションに応募したものの落選、夢を諦めきれずに再度オーディションに挑戦して合格。ハロプロ内の音楽ガッタスのメンバーとなり地道な活動を続け、2008年インディーズデビュー、2009年にメジャーデビュー。そして昨年6月の初ソロコンサートは大成功を収めた。これを作られたサクセスストーリーだと笑う人もいるだろうが、そんな人にこそこのファーストアルバムを聴いて欲しい。彼女のトレードマークであるピアノ弾き語り『乙女の祈り』『マノピアノ』などを聴けば、きっと彼女のひたむきさと実力を感じられるだろう。また、54分に及ぶ付属DVD『まのえりHISTORY』は、まのえりのデビューまでの歴史が映像と本人のコメントで回想されていて、まのえり本人の努力があって初めて今の状況があることがわかるはずだ。シングル曲以外のアルバム楽曲の出来もとてもいい。お買い得です。


(加藤梅造)


V.A / Girls Sazanami Beat! Volume.1

SZNM-1025 1,575 yen(tax in) / IN STORES NOW

 前略、このDisc Recommendをお読みの皆様へ。何もかも忘れて無心で踊りたくなる時がありませんか。ちょっと飲み過ぎ終電逃しタクシーでご帰宅、アロマランプの横で「婚活」「キレイになる某」などの文字をちらちらと目で追い、お風呂上がりに集中スキンケアをしつつ、クローゼットの奥にしまわれて忘れ去られた傷だらけのギターをひっぱりだし、薄暗いライブハウスに通い詰めていた頃を思い返しながらEやらGあたりをガッキョガッキョとかきならし、隣の部屋の住人(顔知らない)に壁をドン! と叩かれてふと我にかえり、ため息まじりに皮肉な笑顔で「あたし何やってんだろ…」と呟いているそこのあなた、あなたにこそ聴いてもらいたいCDがあるのです。あなたがライブハウス通いをいつの間にか辞めてしまった今でも、毎日毎日どこかしらでライブは行われているのです。日々名曲がうまれ、奏でられ、それを聴く人は笑顔で踊っているのです。タクシーの領収書をもらい忘れただとか、日中会社で部長がしつこく八つ当たりしてきただとか、そんなことが、本当にどうでもよくなるのです。あなたがこのお得なコンピアルバムを聴き、「あ、この曲好き」と思った瞬間に、あなたはきっと「音楽の素晴らしさ」を思い出して、自然と笑顔になって美しい女性になっていることと思います。まだまだ寒い日が続きますが、スキンケアは怠らず、ご自愛しながらもたまにはライブハウスにお越し下さいませ。草々。


(下北沢SHELTER:石川 愛)


avengers in sci-fi / jupiter jupiter

VICL-63479 1,890yen(tax in) / IN STORES NOW

 ずっと応援していたバンド、avengers in sci-fiがとうとうメジャーデビュー!! 5年ほど前に出会った時の彼等は、その音楽が唯一無二で誰よりも早く、新し物好きの自分にはとてもハマりました。いつかこの音楽に時代が追いついたら良いなと思っていました。そんなavengers in sci-fiが、メジャーデビューする時代がやってきました。バンドのイメージを大胆に真っ直ぐに表現するような最新作のタイトルは『jupiter jupiter』。そして1曲目のタイトルは『Universe Universe』。その音楽は自信を持って地球を飛び越えている。行進曲のような力強さを、人間味のある電子音の洪水で感じながらも何故か、時に猛々しく、時に優しく不思議な歌声から表現される詞が心地よいのです。宇宙なのに心地よい、それがこのバンドの魅力だと思います。『Universe Universe』から続く、人力ダンスロックナンバー『HYPER SPACE MUSIC』は、彼等の持ち味である切なくも腰にくる名曲です。追いかけあう弦楽器と詞のリフレインが心地よいバラード『Ursa Minor』、ここに込められている音楽は目の前の事から、宇宙まで全ての繋がりを見渡すような巨大なスケールでした。


(新宿LOFT店長:大塚智昭)


ASPHALT FRUSTRATION / Autochrome

NIW-049 2,625yen(tax in) / 1.08 IN STORES

 Vo ReoとGt 高梨の2人のユニットであったasphalt frustration。紆余曲折を経て5人というバンド体制になり、新生ASPHALT FRUSTRATIONとして、遂に1st FULL ALBUMをリリースさせる。これまでにmini ALBUMを3枚リリース。驚異的なセールスと共に、COUNTDOWN JAPANやROCK IN JAPANの常連になりつつある。「FIVE ON THE MOVE」をはじめとする、この世代の最重要BANDであり、今後ますます加速するであろう展開に目が離せない。そして、今作品はNiw!Recordsからリリースとなり、プロデューサーは起用せず、自らが手掛けた作品となっている。多種多様な要素を取り込んでいる部分は残しつつも、1曲目の『time has come!』から3曲目の『money makes the world go round』の流れや10曲目の『223』、これまでに無かった部分が存分に打ち出されていて、BANDとしての醍醐味が伝わってくる。まさにようやくこの時代(トキ)が来たのだ。彼等が得意とするキャッチーでポップなラインには磨きがかかり、これまでには無かった『night falls』のアコースティックへの試みなど、実に素晴らしい作品である。新年早々に恒例となったレーベル祭り“Niw!Collection'10”があり、1/22にはSHELTERにも出演。等身大の彼等をしっかりと体感出来ればと思う。


(下北沢SHELTER:平子真由美)


soulkids / アネモネ

XWCG-30002 315yen(tax in) / 1.20 IN STORES

 soulkidsの2010年、第1発目のニューシングル『アネモネ』が届きました。いつだって真っ直ぐに、恋愛ともなれば一途でピュアで情熱的な音楽を届けてくれるsoulkidsが新たに発信するラブソングは、愛する人との別れの後に「愛とはなんだい?」と歌うちょっと切ない歌詞。でもメロディは突き抜けるように元気で明るい。走って、走って、流した涙を吹き飛ばすような、そんな疾走感と爽快感も持ち合わせています。サビで韻を踏んで遊び心を忘れないのも、彼ららしい持ち味のひとつ。そしてVocalの柴山さんとともにBassの角谷さんがツインボーカルを務めているところは、楽曲としても常に進化をし続けるバンドsoulkidsとしても注目すべき点。
 結成10年、度重なるメンバーチェンジなどの苦難を乗り越えてきた彼らは、力強く人間味に溢れたヒーローのよう。そんなドラマチックな魅力が滲み出ているsoulkidsというバンドに、わたしは愛情を通り越して尊敬の意すら抱いております。カップリングには、ライブでもお馴染みの『Friday』を収録、こちらも超名曲です! 一足早いバレンタインデーをチョコレートよりも甘く、そしてほろ苦く彩ってくれる名盤の誕生です。  


(新宿LOFT店長:大塚智昭)


D.W.ニコルズ / 春風

AVCH-78009 1,800yen(tax in) / 1.20 IN STORES

 メジャーデビュー盤『マイライフストーリー』で決意表明した後、また力強くも優しい1枚『春風』が私の手元に届きました。相変わらず存在感と芯がある歌声、愛嬌あるコーラス、4人のグルーヴがギュッと詰まっている作品。アルバムタイトルと同じタイトルである1曲目『春風』は、誰しも感じた事があるであろう思いや、出来事が惜しげもなく歌われている。制服を着ていた頃に聴いたらさらにグッと来てしまうんだろうな。これから来る卒業シーズンにオススメの1曲。6曲が持つ「愛」の歌は、聴く人の平凡な毎日を楽しいものにしてくれる魔法のようだ。「愛」をテーマに歌うミュージシャンは沢山いるけど、私はニコルズが歌う等身大の「愛」の歌がとても好き。
 2009年の彼らはニコルズに引っ掛け、毎月25日に何かしらの形で彼ら流アプローチで私達リスナーを湧かしてくれた。2010年はどんなアプローチで私達を驚かせてくれるのだろうか? 素敵な歌を届けてくれる事はもちろん、バンドとして新たな挑戦に期待したい。


(ロフトプロジェクト:樋口寛子)


The Birthday / PIANO

初回限定盤(CD+DVD)UMCK-9314 1,500yen(tax in) / IN STORES NOW

 FUJI ROCK FESTIVAL' 09直前の訃報、アベフトシの急逝。年の瀬に今年1年を振り返ってみると、真っ先にこのニュースが頭に浮かぶ。人はいつ死ぬかわかんないって、昔から耳にタコが出来るくらい聞いてきたけど、彼の死が一番説得力があった。
 今年の秋に、The BirthdayはPAINT IT LOVE?(愛でぬりつぶせ)ツアーを敢行し、月イチでの連続CDリリース。12月1日のROOFTOP PROOFとクリスマスイブに新宿ロフトに出演。精力的な活動のその中で、12月16日のアベフトシの誕生日にTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのベスト盤と、今回紹介するThe Birthdayの新譜『PIANO』は投下された。両方買って家に帰る途中、ジャケットを見ながら色んな事を想った。焦燥とか、追悼とかじゃなく、月に向かって吠えてるわけじゃなくて、どうにもならない気持ちがそうさせてんじゃないかって、チバユウスケの過去の楽曲達が頭の中をグルグル回る。
 さて、この『PIANO』は発売前からすでにライブでも披露されていて、ネットからPVを観る事もできた。イントロから名曲を予感させる、叙情的で研ぎ澄まされた世界観、彼らのアルバムやカップリングには名曲が多いが、この楽曲はシングルカットで良かった。それが第一印象。優しくメロディをなぞるチバの声と歌詞が、頭の中のどっかを刺激して重くのしかかる。間違いなく名曲。カップリングの『HUM69』はマクドナルドのクォーターパウンダーCM曲で、良くテレビで聴いていた。チバとイマイの絡み合うギターと疾走感がたまらない。待望の音源化がようやく実現された。3曲目の『いとしのヤンキーガール』はこのCDで初めて聴いたけど一発で好きになった。ファンキーで、どこか懐かしいノリノリのロックンロールナンバー。この先も彼らは止まんないんだって思う。この“お誕生日”ってバンド、多分世界で一番好き。


(Asagaya Loft A:ユウト)


ふちがみとふなとカルテット / 博学と無学

YHL-003 2,940yen (tax in)/ IN STORES NOW

 年末年始に騒ぐ世間に飽きたので、あとはしっぽり春を待ちたい。そんな貴方にお薦めしたい1枚です。  新年明けましておめでとうございます。僕がこのCDと出会ったのも昨年の今時分でした。ふちがみとふなとは、ボーカル渕上純子、コントラバス船戸博史の2人から成る正真正銘のアコースティックデュオ。独り言のように囁かれる歌からは、確かに人間の体温が宿っています。これはその「ふちふな」の2人が当時、ライブでの共演を経て大熊亘(クラリネット他)、千野秀一(ピアノ)の一流陣と共に仕上げたものです。発売から10年近くが経過しても色褪せず、確かな温度を維持し続けているのはなぜでしょう。面子から考えてさすがの一言で片付けるにはあまりに複雑、しかし分析を試みれば極めて純粋な「うた」のレパートリーに酔ってください。
 タイトルの『博学と無学』とは沖縄の詩人・山之口貘の詩からとったもの。何度読んでも彼の詩には味わい深いものがありますね。もちろん、タイトルナンバーも収録されています。そういえば山之口貘に興味をもったのも、渕上純子さんの歌でした。ムーディーだけどシカトできない。温かいけど胸がチクチクする。マフラーと静電気のような作品です。


(Naked Loft:上里環)


FLiP / DEAR GIRLS

DFCL-1599 1,800yen(tax in) / 2.03 IN STORES

 沖縄出身の4人組のガールズバンド、FliP。地元沖縄にて着実にLIVE活動をし、2009年、1st mini ALBUMのリリースをきっかにSXSW2009に参戦し、そのまま全米TOUR“SXSW 2009,US TOUR”に参加し、計8カ所9公演のLIVEを行なってきた。様々のBANDとの競演を経て、2010年、サウンドプロデューサーにいしわたり順治氏を迎え、Major Debut Mini Album『DEAR GIRLS』と共に、いよいよ本土に殴り込みだ。ただのガールズバンドと侮るなかれ、彼女たちのLIVEからはとてつもなく大きな想いと切なさとBAND感、そして全身に鳥肌がたつような衝撃が潜んでいる。2曲目『ライラ』から訴えかけられる想い。4曲目『かごめかごめ』には独特のサウンド。久々に心をえぐられてしまった、6曲目『VANZAI VANZAI』。音源もさることながら、彼女たちのLIVEを1度はチェックして欲しい。普通とは違う衝動が潜んでいるのだから、体感してみればわかるハズ。この目紛しい時代に風穴をあけるべく、彼女たちが魅せる新世代のROCKの波に乗り遅れるな。


(下北沢SHELTER:平子真由美)


ホフディラン / ブランニューピース

GNCL-1195 3,675yen (tax in) / IN STORES NOW

 ホフの2人、ベイビーはひたすら自分の周りの世界を歌にしている。実名登場シリーズなんかもある。♪空気なんか読んでるヒマはなぁ〜いって歌詞も、誰かに「空気読め」って言われちゃったんじゃないかなあ? 対してユウヒくんは、ぐろーばるな視点で世界を歌う。環境や世代のこととかだって歌っちゃう。このアルバムじゃないけど、『TOKYO CURRY LIFE』って曲とか世界観が小沢健二の『LIFE』に似ていて、オザケンが音楽をやめたって噂を聞く今、ユウヒくんにはそのオザケン的世界観をお任せしたいです。唐突に♪食べよう〜って歌詞が入るとこなんかは、とってもホフディランらしい可笑しさがあってオザケンより好きかもです。ベイビーがちっちゃい地球の上を♪転がって回ってる一方で、ユウヒ氏はツイッターでも毎朝世界に向かって「おはよう!」って、つぶやく…というより叫んでいる。なんて対照的な2人。でも画家が自分の恋人を描いた絵が世界中の恋人の象徴になるみたいに、ベイビーの個人的な歌はみんなのうた♪となって、ユウヒくんのぐろーばるな歌とグラデーションを成し、ダジャレとヘンなパロディとかを織り交ぜるとホフのこういうアルバムができる。


(LOFT/PLUSONE:伊藤ゆかりん)


LOVE LOVE LOVE / 空想パドル

VOCL-63478 1,680yen(tax in) / 1.13 IN STORES

 温もりに包まれた歌声と、人なつっこいメロディの持ち主LOVE LOVE LOVEから渾身の1枚が届きました。『ターコイズ』、『ソライロオト』を経ての3部作目『空想パドル』は、今だかつてないほど素直で真っすぐな作品。聴いてるこちらがちょっと恥ずかしくなるくらい、3部作目にて素直になったなと(笑)。はるばる京都から上京し、まるでサバイバルのような東京ライフは、なかなか自分達の思い通りにならないかもしれないけれど、こうした思いが『空想パドル』へと繋がったのなら、こんな素敵な東京ライフはないなと思うのです。思い通りにいかない、こそばゆい日常さえも愛しく感じさせる『空想パドル』。また、自分の日常にそっと寄り添ってくれるかのような曲の数々は、私の背中を押してくれるかのよう。
 そんな作品を抱えてのワンマンライブ“ソラノムコウガワ”でどんな風に表現されるのか気になる所です。感情を剥き出しにした嘘がないステージに期待しつつ、東京公演を待っていたい。


(ロフトプロジェクト:樋口寛子)


V.A / file under: ORDINARY MUSIC~ compilation album from hammer label〜

H512 2,310yen(tax in) / IN STORES NOW

 プログラマーとして、ムーンライダーズからおにゃん子クラブまで幅広く手掛け、エンジニアとしてはカヒミカリィ、ラブタンバリンズ、コーネリアスなどで手腕を振るった森達彦氏が主催するハンマーレーベルが長い沈黙を破ってコンピアルバムをリリース!! タイトルにもあるように、今回のコンセプトは「フツウ」。でもフツウの音楽ってなんだろって思いません? ユルルっとした気分で聴ける、アコースティックフレーバー溢れるさわやかな全12曲に答えがあるやもしれません。参加アーティストはmicrostar、ポータブル・ロックの変名バンド:Marblefudge、戸田誠司(ex. フェアチャイルド)、辻睦詞(ex. 詩人の血)、bargainsなど注目の11組。
 売れたら第2弾はテクノで作られるそうなので、是非みんな買ってください。田中雄二氏が初めて手掛けたジャケットもカワユスだし。


(LOFT/PLUSONE:天野宇空)


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