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仲野 茂×池畑潤二×武藤昭平('10年1月号)

“THE COVER SPECIAL”三夜連続開催記念爆裂座談会 仲野 茂×池畑潤二×武藤昭平

天衣無縫のカヴァー・イヴェント、仲野 茂の生誕50周年を祝して三夜連続断行!
ヴォーカリストとドラマーの特殊な関係性から“THE COVER”の特性までをとっつぁんパワー全開で語り尽くす!


 前号での仲野 茂への単独インタビューに続き、“THE COVER SPECIAL”開催を記念したスペシャル・インタビューをお届けしよう。この1月2日にめでたく50歳と相成った仲野 茂に加え、アナーキーよりもデビューは9ヶ月遅いが茂よりも年齢はひとつ上な元ルースターズの池畑潤二、今回“THE COVER”初参戦となる勝手にしやがれの武藤昭平という当代きっての両ドラマーが顔を揃えた新春大放談だ。代替不可なヴォーカリストとドラマーの関係性とその資質の違い、小滝橋通り沿いにあった旧ロフト時代から連綿と続く“THE COVER”という一大イヴェントの魅力、純真な気持ちでカヴァー楽曲を演奏する醍醐味など、興味深い逸話がてんこ盛り。老兵は死なず、ただ消え去るのみだなんてとんでもない。老いてもなお血気盛ん、とっつぁんパワーはしかと健在だ。若手バンドマンに発破を掛ける存在として、“THE COVER”出演陣にはいつまでも目の上のタンコブであり続けて欲しいと思う。あなた方のやんちゃな後ろ姿が後進をどこまでも勇気づけるのだから。(interview:椎名宗之)


バンドの核は歌とドラムで決まる

──今回、武藤さんが“THE COVER”に初参戦されるわけですが、茂さんが武藤さんと面識があったのは少々意外でした。

武藤:僕はもちろん茂さんのことを一方的によく知ってましたけどね(笑)。今年、茂さんがSDRをやられた時に対バンさせて頂いて、その時に改めてきちんと連絡先まで交換させて頂いたんです。

仲野:俺は勝手にしやがれのことは名前だけ知ってて、聴いたことはなかった。初めはパンク・バンドかと思ってたら、ホーン・セクションをフィーチャーしたバンドで意外だったね。しかも、初めて会った時の武藤はソロのシンガーで、その後にレッドシューズのイヴェントで出くわした時もソロ名義だったから、いつも会う時はドラマーじゃなく唄い手としてなんだよ。ドラムの印象ゼロだからね。

武藤:今回、オーダーを頂いた流れでは主にドラマーとして参加しますけどね。

仲野:ホーンがいると楽しいから、いつか“THE COVER”に呼べればいいなと思うんだけどさ。

──片や池畑さんは“THE COVER”最多出場とのことですが。

池畑:ああ、そうなんだ? 初参加したのは…渋公?

仲野:…だったっけか?

池畑:初期のロフトにも出た記憶もあるけど…まぁ、こんな感じです(笑)。

武藤:池畑さんは同郷(福岡県北九州市)の先輩で、僕のドラムの師匠と言っても過言じゃないんですよ。憧れだったし、もの凄く影響を受けてます。とにかく音がデカいっていうのがまず第一ですね。僕が中学、高校くらいになってバンドを組んだ頃はめんたいロックが凄く流行ってたし、先輩の家に泊まりに行くと、子守歌みたいにルースターズ、ロッカーズ、モッズとかが流れてたんですよ。しかも、レアなデモ・テープとかが(笑)。

池畑:俺は勝手にしやがれのライヴを何度か見に行ったことがあるし、事前に音も聴いてたね。綺麗な仕上がりだと思ったよ。歌とドラムが一体となっていて、唄う人からすれば理想的な仕上がりになってた。ライヴも歌が常に寄り添ってる感じで良かったね。

──武藤さんに“THE COVER”の出演依頼が来た時は、召集令状が遂に来たかという感じでしたか?(笑)

武藤:赤紙が来たぞ、みたいな?(笑) いやいや、全然そんなことはなくて、凄く光栄でしたよ。

池畑:俺としては、いいドラマーが増えて嬉しかったね。

武藤:ただ、名だたる方々と一緒にやらせて頂くので、やっぱり凄く緊張しますよね。

──武藤さんクラスのバンドマンが“THE COVER”の出演者の平均年齢を下げているというのは、今の若手に粋のいいバンドマンが少ないということなんでしょうか。

仲野:いや、それはただ単に俺が若い連中を知らないってだけでさ、いきなりひとっ飛びで若手の連中のとこへ行くのも難しいんだよ。ムッシュ(かまやつひろし)なんかそうじゃない? ああいうフットワークの良さは俺も大好きなんだけど、今回みたいに武藤とかがいて、そこからまた下の世代へ人脈が広がっていくのが俺の好みなんだよね。でも、実際は意外とみんな繋がってて、レッドシューズのイヴェントの時も武藤とウエノ(コウジ)が一緒にやってたりして、そういうとこで繋がっていけてるのはいいなと思うよ。ドミノのようにパタパタパタって繋がりが生まれていくのが理想的だよね。

──ドラマーだけを見ても、HARISSの高橋浩司さんやVOLA & THE ORIENTAL MACHINEのアヒト・イナザワさんといった中堅所が新しい血として近年の“THE COVER”には参加されていますよね。

仲野:でも、“THE COVER”をあんましやらないから、その間にみんなが老けていくっていうのがあるよね(笑)。

──ジョン・レノンがビートルズの解散直後に発表した『ジョンの魂』でドラムを叩いたのはリンゴ・スターだったし、ヴォーカリストとドラマーの関係性は代替不可なところがありますよね。

池畑:ビートや間合いが歌には付いてくるから、唄い手にとってはそういう部分があるだろうね。昭平みたいに自分で叩きながら唄うのは凄くバランスがいいと言うか、野球で言えばキャッチャーみたいなものだよね。自分でサインを出して、ピッチャーを牽引したりして。

仲野:唄い手と一番近い感覚なのはドラムだよね。パッと見、きっちり叩いてるふうだけど実はそうでもねぇみたいなさ。

武藤:コード・ワークを覚えなくていいのがラクなんですよ(笑)。

池畑:バンドの核となるのは歌とドラムで決まるからね。音のデカさやバンド自体のサウンドもそこで決まるし。

武藤:ヴォーカルのリズムとドラムのリズムがダメなバンドは、どう考えてもダメなんですよ。その軸さえブレなければ、少々チューニングがズレていても何とか成り立つものなんです。それくらいヴォーカルとドラムは一番大切なパートなんですよね。

仲野:長くやってるとさ、間合いが判るようになるんだよね。ゲタカルビはドラムがコロコロ変わるから、初めはちょっと唄いづらいわけ。でも、それを楽しめなきゃなって思えるからね。歌のタイミングが一番合うのはやっぱりコバン(小林高夫)なんだけどさ。たとえば、高橋君はクラッシュ・フリークだから、クラッシュのカヴァーをやるとばっちりクラッシュなわけ。でも、俺たちがクラッシュをやってても結局はアナーキーになるから、リズムが全然違うんだよ。高橋君が叩く『SAFE EUROPEAN HOME』はコバンと全然違うし、これがオリジナルなんだなって思うけど(笑)。ただ、唄いやすいのはどっちかって言われりゃコバンなんだよ。クオリティとしてどうかって言うのはまた別モンだけどね。

ドラマーの日本的な受け身の美学

──同じドラマーでも個性の違いを楽しめるのが“THE COVER”の醍醐味のひとつですよね。

仲野:うん。ホント違うからね。同じ8ビートでもスネアのタイミングとかがさ。池畑の場合はヴィジョンが凄いよね。自分の歳と置かれてる立場を見極めて、やれることとやりたいことのバランスを上手く取ってるって言うか。パッと見は頑固な職人風情なんだけど、実はいろんなことを凄く考えてるしさ。バンドが崩壊した時に、スタジオ・ミュージシャンとして打って出たのが俺はロックっぽいと思ったね。27で死ぬとか退廃的な美学もロックの格好良さではあるけど、俺たちが本来パンクやロックにシビレたのは“関係ねぇだろこの野郎、やりてぇことをやるんだよ!”っていうブチ上げだよね。できるかできないかはどうでもいい。まぁ、池畑はそれができちゃうとこがまたイラッと来るんだけどさ(笑)。歳が一個下っていうハンデはしょうがないけど、芸能界じゃ俺のほうがルースターズより半年先輩だからね(笑)。

武藤:そればかりはどうにも拭えませんよね(笑)。

仲野:ロックって体育会系のイメージがあるけど俺は大ッ嫌いで、年功序列なんて関係ねぇじゃんと思ってたわけ。池畑はそこのこだわりを最後までずっと持ってたからね。それがまたイラッと来るんだよ(笑)。

武藤:池畑さんとレコーディングをご一緒させて頂いたことがあったんですよ。僕は別のセクションでドラムを叩いていて、池畑さんのセクションを見学させて頂いたんですが、凄いグルーヴなわけです。今のテイクでも充分いいんじゃないかと思うんだけど、池畑さんは「いや、もう一回」って何度も叩き直すんですよね。自分一人だけの問題じゃなくて、バンド全体で理想とするグルーヴが出るまでは何度もやるんですよ。ドラムは特にパンチ・イン&アウトができない楽器だから、曲の頭から最後までのグルーヴなり物語をドラマーは一発でキメなくちゃいけないところがあるんです。他の楽器なら、ちょっとミスをしても後から修正ができるけど、ドラムはそれができませんからね。そのノリが出るまでの池畑さんの姿勢を見て、僕は凄く勉強になったんですよ。

池畑:“何かおかしいな?”と思うと、俺はベースにやり直しをさせることが多いね。元の流れを変えずに、ちょっとベースを変えると上手く修正できることが多い。

──いろんなバンドのインタビューをしていると、温厚で責任感があって、俯瞰で物事を捉えているのはドラマーであることが多いんですよね。

池畑:結局、そうしないとバンドが成り立っていかないからね。ドラマーが自分勝手に好きなことをやってると絶対に続かないしさ。

仲野:この間、土屋昌巳とスタジオで会った時にマイケル・ジャクソンとかローリング・ストーンズの格好良さみたいな話をちょっとしたわけ。あいつらが背負ってる責任感は地球レヴェルだけど、俺たちの責任感は所詮日本レヴェルっていうさ。レコーディングって、ドラムがキマりゃほぼOKなんだよ。結局、俺たちがやってることはドラムのOK待ちなわけ、仮歌でも何でも。さっき武藤が言ったみたいに、ドラマーは一発でキメなくちゃいけないし、ドラマーの責任感たるや凄いと思うよ。唄い手なんてちゃらんぽらんだからね。唄うだけ唄って、「おう、先に帰るわ」だもん(笑)。

──高橋まことさんによると、ドラマー同士が集う“ドラム呑み会”があると。フラカンのグレート前川さんが主催する“ベース呑み会”もあるし、リズム隊は社交性の高い人が多いですよね。

仲野:“唄い手呑み会”なんて一切ないからね(笑)。

武藤:ちゃんとドラムをやってる人って、人の意見を聞く人が多いと思うんですよ。だからこそバンドが成り立ってるし、ドラマーは技術だけじゃ絶対に成り立たない。だから責任感があって、社交的な人間性が求められるんじゃないですかね。

池畑:ドラマーは“こうじゃなきゃいけない”っていう制約がそんなにないと思うし、いろんなバンドマンとやっても成り立つよね。プレイの基本とかは個人レヴェルでどこまで考えてるかっていうのはあるけど、人それぞれだし、人の数だけドラマーがいるって言うか。もちろん、ヴォーカルもそうなんだけどさ。ただ、ヴォーカルはドラム以上に選ばれた資質みたいなものがあるし、それはまた違う意味でいろんなものを背負わなきゃいけないよね。

仲野:70年代はギタリストの斜に構えた格好良さがあったけど、ドラムの格好良さっていうのはまた違うとこであるよね。攻撃じゃなくて受け身の美学って言うか、凄く日本的な気がするよ。

武藤:確かに、ドラムって武士道に通じるところがあるかもしれないですね。ドラムに限らず、出た音やフレーズに人間性が出てて、最初に耳に付くのはヴォーカル、その後に乗っかりものの楽器、最後にドラムなんだけど、ドラムが変わると支配感みたいなものがガラッと変わるんです。人前には出ないけど決定的な支配力がドラムにはあるんですよ。


生き様が伝わってくる池畑のドラム

──“THE COVER”は普段一緒にプレイすることのないバンドマンとの異種交流戦だし、出演する側としてはカヴァーする純粋な楽しさと共にヒリヒリした緊張感も味わうことになりますよね。

武藤:“この人と組んだら、あの人はどんなタイム感で来るんだろう?”っていう楽しみもあるし、凄く斬新で刺激的な企画ですよね。名前はもちろん知ってるし、よく呑んでもいるけど、一緒に音を出したことがないっていう人と演奏すると“この人はこんなクセがあるんだ”っていう発見があって、凄く面白いんですよ。緊張と共に楽しむことで、自分も磨かれますからね。

池畑:カヴァー曲に対してどういうアプローチをしていくのかも面白いよね。俺はみんなのプレイやその楽曲が活きるように叩いてるけど、各々がもっと好き勝手に勢いでやったほうがホントはもっと面白いんだと思う。ただ、セッションは親睦を深めることが大事だから、俺はみんなに合わせる感じになるんだよね。

仲野:池畑はすべてにおいてプロデューサー的な視点を持ってるから、そこがちょっと可哀想なところではあるよね。

池畑:どこか足りないものがあれば、特に歌が間違えそうになったら上手くフォローを入れたりはするね。

仲野:ぶっちゃけさ、格差っていうのはどうしようもないんだよ。長くやってりゃいいってもんでもなくて、若くても凄い感覚のいいヤツはいるし、長年やっててもボケてるヤツはいるし、でもそいつは悪いヤツじゃないし、小難しいヤツもいる。チョイスする側としてはバランスが凄い難しくて、そんな時に池畑がいい潤滑油になってくれるわけ。でも、池畑みたいに俯瞰できるヤツと全然できないヤツがいるからこそ面白いんだよね。

──池畑さんは学年主任の先生みたいな感じなんですね(笑)。

仲野:そうそう。“THE COVER”のCDを出した時のジャケットも先生役だったしね(笑)。

武藤:2年くらい前に、池畑さんの50歳を祝うイヴェントを見に行かせて頂いたんですよ。池畑さんはトータルで4時間くらい叩きっぱなしで、キュウちゃん(クハラカズユキ)とツイン・ドラムをやったり、いろんな楽曲を演奏されていたんですけど、池畑さんのドラムの音に人生観が出ているように感じたんですよね。その一音一音に叩きのめされたって言うか、池畑さんの生き様みたいなものが伝わってきたんですよ。今回の“THE COVER”は茂さんの50歳をお祝いするイヴェントだし、頑張って参加させて頂きつつも、茂さんの生き様が歌から滲み出てくるのを見るのが楽しみなんですよね。

仲野:池畑は今回、「茂の50歳なら協力してやるよ」って言ってくれたんだけど、池畑潤二として出るとこはここだっていう明確さがあるよね。何でもかんでも出てりゃいいとは思ってないとこがセンスがいいんだろうけどさ。

池畑:まぁ、後輩に頼まれたら断れないよね(笑)。茂は音楽だけじゃなくてバランス感覚に優れてるんだよね。面と向かっては言わないけど、そう思ってるよ。

──池畑さんから武藤さんにドラムの闘魂伝承があったり、“THE COVER”には音楽の地層が積み重なっていく面白さもありますね。

池畑:それはやっぱり、茂がいるからこそできることだよね。

仲野:俺は場が提供できてりゃいいなって思うだけだよ。みんながそこでいろんな楽しみ方をしてくれりゃいい。でも、“このほうがラクだな”って思うとこを自分でどれだけ消していけるかが難しいね。いろんなヤツがいて、いろんな楽しみ方があって、メチャクチャになることをどんだけ楽しめるかっていうさ。ただ、手を広げてイヴェンターが入っちゃうと、責任の所在が見えなくなるのがイヤなんだよ。文句があれば俺に言って欲しいわけ。まぁ、文句が来すぎるのも困るけど(笑)、そういう判りやすさだけは残しておきたいね。

武藤:好きな曲をカヴァーするのは、ミュージシャンとして原点に帰れるところがいいですよね。僕もいきなりオリジナルをやってたわけじゃなくて、最初に組んだのはコピー・バンドでしたから。好きな曲があって、それを演奏したい…それこそが原点で、なりきれないかもしれないけど、俺だってポール・クックになってみたいっていう。カヴァーをやると、音楽を始めた頃の初期衝動と同じような気持ちにすぐに戻れますよね。自分を解放できるし、純粋に遊べるし、カヴァーをやってる時のミュージシャンってホントにステキですよ。

池畑:選んだカヴァー曲によって、その人となりが窺えたりもするよね。

仲野:今回は俺の誕生会をいいことに、各ヴォーカリストに「1曲だけオリジナルを入れてくれ」ってリクエストしちゃったんだよ。本来の“THE COVER”とは路線がズレるけど、俺への誕生日プレゼントとして1曲オリジナルを唄ってくれと。

とっつぁんパワーを見せつけてやる!

──歌い継がれてきた名曲はスタンダード性が高いのと同時に、演奏する難しさもあると思うんですが、その辺はどうなんでしょうか。

池畑:俺はまず、原曲をちゃんとコピーすることから始める。基本的にはオリジナルに忠実な感じでやってるね。選曲は主にヴォーカルがやるんだけど、その中に自分も得意だった曲があると、“その曲は任せといてくれ、本物そっくりに叩くから”っていう気持ちになるよね。

武藤:自分はドラム&ヴォーカルとしても参加させて頂く場面があるので、ヴォーカルの立場で選曲をやらせてもらっているんですけど、ルースターズだけは選曲しないようにしてます。池畑さんの前だし、あまりに畏れ多いなと思って(笑)。当日はとにかく茂さんに“ありがとうございます”っていう気持ちで一生懸命やって、最終的にあったかさみたいなものを出せればと思ってますね。自分がションベン小僧だった頃から一線で活躍されてる方たちと一緒にやらせてもらえるんで、感謝の気持ちを込めながら頑張ってやるだけですよ。見ているお客さんからも、出演する僕らからも、愛情が溢れていれば成功かなと思いますね。

──50代の先輩として、池畑さんから茂さんに言っておきたいことはありますか。

池畑:まず、感謝の気持ちを忘れないように、ってことかな(笑)。優しさが凄くあるのはよく知ってるし、いつも矢面に立ってみんなを引っ張ってきた強さもある。そんな優しさと強さを兼ね備えたままで、これからも“THE COVER”を続けていって欲しいね。俺自身、50歳になる前と後じゃ意識が変わった部分があるんだよ。エネルギーが無尽蔵にあるわけじゃないから、あるものの中でそれをどこまで使い切るかのバランスが難しい。使いすぎると反動が大きいことは50歳になった時によく判ったから。

──リンゴ・スターは69歳、チャーリー・ワッツは68歳で、偉大なる先人がまだ現役で叩いている以上はまだまだ負けていられないぞという気持ちもありますか。

池畑:もちろんあるよ。そのためにも、いつでもいいコンディションで叩けるように身体を整えなきゃなと思ってる。かと言って、毎日走り込んでるわけじゃないけどね(笑)。やっぱり、何事も気力が一番大事かな。そこも含めて、今回の“THE COVER”は今までみたいに単なるまとめ役になっちゃダメかなと思ってるんだよね。行けるところは勢い良く行こうかなって。

仲野:池畑が今言ったエネルギーの使い切りのバランスは、俺も40代の後半になって感じたよ。30代の頃はまだイケイケじゃなきゃおかしいだろう!? って思ってたから、そのぶん悩みも多かったね。40代の後半なんてもうジジイだから開き直るしかないんだけど、エネルギーも限られてるわけ。“そんなことやるのはロックじゃねぇよ”みたいな30代とはちょっと違って、必要とあらばトレーニングもやらなきゃなんないし、そうは言いながらもツアー中に呑みすぎてダメになることは今も山のようにあるんだけどさ(笑)。

──今回の“THE COVER SPECIAL”での酒の消費量もとんでもないことになりそうですね(笑)。

仲野:うん。それまでに肝臓を鍛えとかなきゃ。まぁ、今度の3日間は平均年齢が異常に高いけど、とっつぁんパワーを見せつけてやる! って言うかさ。それが希望になると思うんだよね。“ああ、これでいいんだ”とか“まだやれんじゃん”みたいなことを若い輩が感じてくれればさ。楽曲の選曲とか細かいことはマニアに任せておいて、いくつになっても遊んでいられるんだっていう希望は見せたいよね。

武藤:ミック・ジャガーなんて、四捨五入したら70歳じゃないですか。それに比べたら茂さんや池畑さんはまだ中堅だし、僕なんてまだ41で全然若手ですよ(笑)。

仲野:いやいや、向こうは地球を相手取ってるけど、俺なんて村規模だよ? “せめて町まで行こうよ、茂!”って感じだからさ(笑)。でも、俺が子供の頃は大人の世界がまだ厳格にあったし、ガッツのあるとっつぁんどもが減ってくると対抗意識も盛り上がらねぇし、希望になんないよね。みんなヘタレて人生に疲れ切っちゃってたらさ。女の子はすぐにオバサンって言われるしさ、ギャルの時にさんざんやっとけみたいによく言うけど、その気持ちも判るよ。

池畑:判るか?(笑) よく聞いてみると突っ込むところがたくさんあるからね、茂は。こんなとっつぁんになっちゃダメだよね(笑)。


Live info.

仲野茂 50th ANNIVERSARY 〜THE COVER SPECIAL〜 前夜祭
2009年1月22日(金)新宿LOFT
ACT:SDR【Vo. 仲野茂(ANARCHY)、Gt. 内藤幸也(ARB/Zi:LiE-YA)、Ba. EBI(UNICORN/ARB)、Dr. 名越藤丸(ANARCHY)】/ニューロティカ/THE BACILLUS BRAINS/ライムサワー【MCソープ/MCヘルス/DJウメッシュ/DJトッシュ】
OPEN 18:00 / START 19:00
ADV ¥4,000 / DOOR ¥4,500(共にDRINK代別)

仲野茂 50th ANNIVERSARY 〜THE COVER SPECIAL〜
2009年1月23日(土)新宿LOFT
OPENING ACT:アコギなSS(仲野茂+下山淳)
ACT:仲野茂(ANARCHY/SDR)/PANTA(頭脳警察)/山下久美子/JILL(PERSONZ)/花田裕之(ROCK'N'ROLL GYPSIES/ex.THE ROOSTERS)/稲田錠(G.D.FLICKERS)/武藤昭平(勝手にしやがれ)/KYONO(WAGDUG FUTURISTIC UNITY/THE MAD CUPSULE MARKETS)/石坂マサヨ(ロリータ18号)/下山淳(ROCK'N'ROLL GYPSIES)/藤沼伸一(ANARCHY/REGINA)/木暮“shake”武彦(RED WARRIORS/Mt.デリシャス)/内藤幸也(ARB/SDR/Zi:LiE-YA)/KASUGA(MOSQUITO SPIRAL/ex.LAUGHIN' NOSE)/寺岡信芳(ANARCHY/Groovin')/渡邉貢(PERSONZ)/井上富雄(ex.THE ROOSTERS)/岡本雅彦(アンジー/ザ・ダンス天国)/EBI(UNICORN/ARB/SDR)/ウエノコウジ(the HIATUS/ex.Thee michelle gun elephant)/KEITH(ARB/Groovin')/池畑潤二(ROCK'N'ROLL GYPSIES/HEATWAVE/ex.THE ROOSTERS)/小林高夫(ex.ANARCHY)/名越藤丸(ANARCHY/SDR/ex.WRENCH)
OPEN 18:00 / START 19:00
ADV ¥4,500 / DOOR ¥5,000(共にDRINK代別)

仲野茂 50th ANNIVERSARY 〜THE COVER SPECIAL〜
2009年1月24日(日)新宿LOFT
OPENING ACT:ゲタカルビ(仲野茂/ゴロー/シズヲ/サモン/ナボ)
ACT:仲野茂(ANARCHY/SDR)/柴山俊之(サンハウス/Zi:LiE-YA)/宙也(De+LAX/LOOPUS)/延原達治(THE PRIVATES)/大木温之(Theピーズ)/藤井一彦(THE GROOVERS)/大槻ケンヂ(筋肉少女帯)/三宅洋平(犬式 a.k.a. Dogggy style)/藤沼伸一(ANARCHY/REGINA)/内藤幸也(ARB/SDR/Zi:LiE-YA)/NAOKI(SA)/榊原秀樹(De+LAX)/奈良敏博(サンハウス)/寺岡信芳(ANARCHY/Groovin')/岡本雅彦(アンジー/ザ・ダンス天国)/EBI(UNICORN/ARB/SDR)/市川勝也(ex.POTSHOT)/池畑潤二(ROCK'N'ROLL GYPSIES/HEATWAVE/ex.THE ROOSTERS)/小林高夫(ex.ANARCHY)/名越藤丸(ANARCHY/SDR/ex.WRENCH)/高橋浩司(HARISS/ex.PEALOUT)/etc...
OPEN 17:00 / START 18:00
ADV ¥4,500 / DOOR ¥5,000(共にDRINK代別)

TOTAL INFO. HOT STUFF 03-5720-9999

“THE COVER”official website
http://www.the-cover.com/

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