ギター バックナンバー

namidacoat('09年12月号)

namidacoat

聴く人には笑顔になってもらいたい
ずっと色褪せない最良のポップスを奏でる4人組


 namidacoatが、前作の『namidacoat』から2年半ぶりとなる作品(この間に先行シングルあり)をリリースすることとなった。タイトルは『Park』。以前に比べると、ほどよく肩の力が抜けた今作は、よりポップへと進化し、キラキラとしたサウンドを鳴らす。誰の心にもある普遍的なものがイコール“ポップミュージック”とは言えないかもしれないが、彼らはいつの時代にも色褪せることのない音を聴かせてくれる。時に優しくて、ときに温かくて、時に涙を拭ってくれるような、そんな楽曲。
 今回は、新しく立ち上げられたレーベル“POPTOP”からの第一弾アーティストとしてリリースされることとなった。彼らの最良のポップスが世の中に浸透する日も遠くはないだろうと思う。(interview:やまだともこ)


長い制作期間を経て遂にリリース

──Rooftopへの登場は1st.ミニアルバム『namidacoat』以来となるので2年以上ぶりになりましたが、この期間はどんな活動をされていたんですか?

中川 敬雄(Vocal/Guitar):ほとんどアルバムの制作をしていました。今年の4月にアルバム先行第一弾という形でタワーレコード限定で『さくら』をリリースして、9月には第二弾で『いとしのlady』をリリースしたんです。それまでは曲を作って、レコーディングして、ライブをして、4人でアコースティックもやるのでショッピングモールで歌ったりしていました。

──いついつにはリリースしたいということは考えず、とにかく曲を作っていたんですか?

神田 尚紀(Guitar):目指すところはリリースですけど、良い曲が出揃うまではという感じでした。

中川:それで出揃ったので、レコーディングを始めたんです。

──今回の『Park』では、中川さんと神田さんが作った曲が半々ぐらいでありますよね。お2人が作った曲の中から良いものを選んでいったら、ちょうど良いバランスになったという感じですか?

中川:それに近いですね。あまり考えず、良いと思うものを出して、アルバムの軸が決まってきたらもっとこういう曲が欲しいなってまた作り始めて…。

──全体的にラブソングが多かったんですが、今回は恋しちゃいたいモードだったと?

中川:いやぁ、そうなんですかねぇ(苦笑)。その間に僕はフラれたりもしてますけど…。

一同:…(沈黙)

中川:ここは笑っていただいたほうが嬉しいんですけど(笑)。

神田:ラブソングは基本的に多いですよね。詞になりやすいと言ってしまうのはよくないかもしれませんが、自分の経験を踏まえると一番書きやすいんです。スッと書けるんですよ。

秋山 圭吾(Drums):この2年間、彼(神田)は輝いていましたよ。

──ラブソングって一番永遠なものだと思うんですが、ずっと歌い続けていきたいからこそこういう曲を書きたいというのはあるんですか?

中川:大事な人は誰にでもいると思うし、友達でもそうですけど喜怒哀楽をお互い見せ合える仲でいられる相手ってなかなかいないじゃないですか。そういう人に対する曲となると感情も入るし、できやすかったりするしというのはあると思いますね。

──『さくら』の「不安とか絶望が君を迷わせたとしても〜」という歌詞がすごく良かったんですが、これは応援歌になるんですよね?

中川:友達に向けて書いたんですけど、応援歌に近いですね。友達がギターの先生になったんです。初めて大学の時に組んだバンドのメンバーというのが中学から一緒だったその友達で、ギターを始めたきっかけにもなったヤツなんですけど、僕はお客さんの前でライブをしたい、友達はギターを教えたいって別々の道を選んで、ついに先生になったんです。同じ音楽の世界にいて近いようで遠いところにいるんですけど、お前はギターが上手くて自信もあるから頑張れよ、俺も頑張るからって。今おっしゃっていただいたフレーズは僕もすごく好きな部分です。

笑顔になれるような楽曲

──ところで、1st.ミニアルバムの『namidacoat』と聴き比べると、歌い方がだいぶ変わりましたよね。前も良かったんですけど、改めて聴くと今回のほうがリラックスして歌えているような気がすごくしたんです。

中川:『namidacoat』を出した時ぐらいから、このバンド名を付けたのも自分だし、サウンドプロデューサーの田中さんとの出会いも経て、僕は笑顔になれるような楽曲というのをやりたいんだということがわかってきたんですよ。それがあって、『Park』に入っているような楽曲ができたんですが、まだ自分がやりたい音楽がちょっと形になったかなというアルバムなので、個人的には思うところもあるし、もっと肩の力を抜きたいというのもあるし、このフレーズはこういう歌い方のほうが曲としては良いのかなというのは今後出てくると思っています。でも歌い方に関しては、変わってきているとは思います。前は力が入ったまま歌ってましたから。

鳴海 武(Bass):11曲目の『ねぇ』はフラットな状態で歌えていて、それは前のアルバムにはなかったですね。普段のライブではまだ力が入っているんですけど。

中川:お客さんが目の前にいるし、生の演奏だし、生声だし、感情がガーッとなってきてしまうんです…。

──伝えたい思いが強くなる?

中川:そう。今までがそういう歌い方をしていたし、それはそれで良いのかも知れないですけど、今回のアルバムで曲を揃えた時に、それはいつでもできるから自分が今足りないことややりたいことを身につけたいなと。そういう意味で、『ねぇ』はフラットな状態で歌ってみたんです。前のアルバムを作っている時からあった曲なんですけど、その時はこれを入れたら重くなるんじゃないかというのがあって入れなかったんですが、今回はアレンジも変えて入れてみようって。当時に比べると、曲の解釈もだいぶ変わってきてます。

鳴海:しかも、それが音になると余計に解釈が変わってきていて、ピアノの伴奏が入ったり、今のような感じになっていったんです。

──オーケストラでやったらすごいおもしろい曲になるんじゃないかと思いましたよ。

中川:それはやってみたいです。

──チェロが入っている部分もありましたが、これは打ち込みですよね?

中川:キーボードとピアノは弾いてますけど、あとは全部打ち込みなんです。だから、その曲はすごく冒険でした。最後の歌入れの時に、僕1人で東京まで来てスタジオに着いてから初めてオケを聴いたんですけど、思ってもいなかったオケになっていたので大丈夫かなって…。でも、今までにはなかったサウンドですし、こういう雰囲気の音で歌うというのは成長に繋がると思うし、全てプラスに考えたら、良い形に転がるんじゃないかと思っています。やはり、田中さんと一緒にやることで、どんどん新しいアイディアが入ってくるのは面白いですよ。スタジオもほとんど一緒に入って、「こういうアレンジで考えたんですけどどうですか?」って聴かせて、「こういうのもどう?」というやりとりがすごく刺激でもありましたし、発見がいっぱいあるんです。

神田:自分が作った曲が明らかに良くなっていくので、それが楽しい。

──思ってもない形になっていく?

神田:なることもあります。

中川:僕たちは、まだまだ引き出しが少ないと思うので、それを田中さんがいろいろ助けてくれるというか。最初はマイナーの曲が多かったですからね。

──前と比べて、よりポップになった感じはしますよ。

中川:そこは目指していたところでもありますね。今の僕達の状態で一番ポップなものを作ろうというのがテーマだったので満足してます。これからも楽しみですよ。

──では、みなさんが考えるポップというのはどんなものですか?

中川:僕自身が思うのは笑顔。今でもライブを見ている人が純粋に笑顔を見せてくれることもありますし、僕がライブ中にやるパフォーマンスは例え笑われているという状態でも、それは笑ってもらえているということですからね。namidacoatにとって笑顔は欠かせない。僕たちの音楽を聴いてもらったりライブを見てもらった時に、最終的には笑顔で「楽しかったよね。何かすごく残ったよね」って言ってもらえるようなものは目指しているところではあります。

秋山:前のインタビューの時にも言ったかもしれませんが、ライブを見て元気になって帰ってもらいたいと思っています。自分もライブを見て頑張ろうと思うこともあるし、それを与える側でありたいとも思いますし。あとは、そういった気持ちをわかりやすく伝えたいなと。

神田:僕は…楽しいという感じなんですかね。あとは体が揺れるとか、のれるとか。漠然としてますけど、そういうイメージですね。

鳴海:みんなそうだと思いますけど、子供の頃に聴いていた音楽って頭に残っていると思うんです。フォークソングとか歌謡曲とか、大人になってから聴いた音楽じゃなくて、昔聴いたことがある音楽。それは今でも歌えますし、そういう曲こそがポップだなって思います。



固定観念をなくしたい

──ライブ中のパフォーマンスの話が出ましたが、前のインタビューでもお話ししていたライブ中のあの不思議な踊りは今でもやられているんですか?

神田:『Drive』の時の話でしたね。今回は『君に恋してる〜I♥ฺYOU〜』がそういう曲です。

中川:ギターを持たない曲を作りたくてこの曲を作ったんですけど、自由に動き回れて、解放されたような感じです。

神田:自由になんでもできるようにという意味合いでギターを置いたんですけど。

鳴海:こないだ反復横跳びしてたしな。

──自由になりすぎちゃった感じですね。

中川:自分の中で、これはあかんやろというのを極力なくすようにしているんです。楽曲を聴いたらポップかもしれないですけど、ポップだからこうしなければいけないという固定観念をなくしたい。それが変な踊りとなって出ているのかもしれないですけど、そういう表現もひとつの武器だと思っています。僕にしかできないと思いますよ(笑)。

──『君に恋してる〜I♥ฺYOU〜』は、ダンスサウンドで純粋に踊れる曲ですしね。

中川:僕自身めっちゃ気に入ってるんですよ。

──サブタイトルは『〜I♥ฺYOU〜』ですが、ハートを記号で書いちゃう感じは、ちょっと古…くないですか?

中川:でしょ(笑)? ダサイかもしれないですけど、そうじゃないんです。5年後の僕がどう思っているかわからないですけど、それはそれでいいかなと思いますし、今やりたいことを形にしたらこうなりました。

──『君に恋してる〜I♥ฺYOU〜』は他の曲と比べても、サウンドにいろいろと手が加わった感じがしますけど、けっこう時間をかけてらっしゃいますよね?

中川:鍵盤を弾いてもらったりもしましたし、サウンドからすごく楽しい感じというのが出てるんじゃないかなと思いますね。聴いた時にライブでも楽しいんだろうなと想像できると思いますし、そういうのが作れたというのは嬉しいです。

──ということは、制作をしていた2年間という時間の中で吸収できたものがたくさんあったようですね。

中川:曽我部恵一さんや佐野元春さんのライブを見に行ったんですけど、すごい衝撃だったんです。歌もうまいし、体でも表現するし。もっと僕自身もボーカリストとして何かできるんちゃうか? と思ったんですよ。

──『いとしのlady』は歌詞やタイトルが、サザンオールスターズを意識したのかなとも思いましたが…。

中川:ボーカリストの中で好きなのが桑田佳祐さん、トータス松本さん、曽我部恵一さん、エレカシの宮本さんなんですけど、桑田さんからのエロティックな歌詞もすごく好きで、それもひとつの入り口だなと思い、『いとしのlady』ができたことによってまた新しい道ができたなと。この曲はテーマが夏なんですが、僕夏がすごい嫌いなんです。そんな僕でも夏は開放的になるんですよ。女性が薄着でいたら胸元見てしまうし。やるせない部分が出せればなと思って作ったんです。

──違う引き出しが開けられたということですね。

中川:はい。これもやりたかったことのひとつですね。またこういう曲を作りたいとかが出てきています。

──ギターもキラキラしていて、前はこんなに軽やかな音だったかなって思いましたよ。

神田:そこは意識していたというか、前の段階ではこうしたいけどできていない部分もあったんです。キラキラしたいなとは思ってましたけど、2年経ってようやくできるようになってきました。

鳴海:今回はまさに、キラキラさせようっていう言葉で作っていたんですよ。

──サウンドを作る上で、キーワードになった言葉ってキラキラ以外には何があったんですか?

鳴海:聴きやすいとかBGM感とか。何度も聴けるようなサウンドを目指してました。

神田:アレンジはそういうところは意識しましたね。



namidacoatにしかできないことを

──他のバンドとnamidacoatが違うというところはどんなところですか? 自分たちだからこそできるものというのは何だと思いますか?

中川:『いとしのlady』とか歌詞で見たらクサイと思いますし、“baby”とかイマドキ言わないけれど、僕達にはそれが言えるんです。

鳴海:それに『いとしのlady』の“sea side memory”とかは、今なかなか言えないですからね(苦笑)。

中川:僕しか歌えないですよ。

──聴いてるこっちが恥ずかしいぐらいでした。

鳴海:だけど俺達は恥ずかしくない(笑)。

中川:それができるのが武器だと思うし、他のバンドにはできないことだと思う。そういうところじゃないですかね。もちろんそれだけではないですけどね(笑)。そういうところも他にない部分なんじゃないかなと思います。

──サウンド的に言うと、他のバンドと違うところはどんなところですか?

秋山:「こういうのをやってみたらどう?」って言われた時に、「俺達はこういうイメージだから」というわけではなく、それもいいんじゃないかって吸収してやってみようと思うところですね。

──ちゃんと軸はあるけど、振り幅は大きくしたいと?

鳴海:軸を一本通した上で、やりたいことの幅が広げられているのも強みだと思っています。

──では、ちょっと早いかもしれませんが、今後の曲の構想はできてますか?

中川:僕が今形にしたい楽曲があるんですけど、その楽曲は自分に向けても書いている応援歌というか、僕達も30歳に近かったりするし、だけどこういった形でPOPTOPでbinyl recordsの人達と新しく出会えたり、年齢で決めたくないというのがすごく自分の中にあるんです。そういうので、やりたいことができてないとかはなくしたいと思っていますね。そして、変わらずに良いメロディーは作り続けていきたい。今後も気に入ってもらえる曲が生まれてくると思いますが、まずはぜひ『Park』を聴いて頂きたいですね。

──ところで、ここ最近は大きなイベントにもたくさん出演されていますが、そういうところで刺激は受けてきましたか?

神田:クアトロとか大阪BIG CATとか大きな会場でやらせていただきましたけど、お客さんが多くなればなるほど責任もすごく大きくなるような気がして、いろいろ勉強させてもらいました。

──ライブのことを考えながら曲を作ることも多くなりました?

神田:そうですね。あまり考えないで作ることもあったりしますけど、最終的にライブでどうしようとか思いますね。

──今回のアルバムはライブでも聴かせたり見せたり、バラエティーに富んだ曲が揃いましたよね。わかりやすくて笑顔になれて、目指している目標には近づいてるんじゃないですか?

中川:はい。そうだと嬉しいです。

──では12月号になるので、1年を振り返ってみて、そして来年の目標をお願いします。

鳴海:来年忙しくなりたいですね。ライブに呼ばれたり、いろんな人に出会っていきたい。

神田:1年を振り返ってみると今年はやっとフルアルバムが出せたので、来年はそれをいろんな人に聴いてもらえるようにライブを精力的にやっていきたいです。そのアルバムを聴いてもらった人には、次の作品を意識してもらえるような、次も楽しみにしてもらえるようなものをライブで表現していけたらなと思っています。

秋山:僕も音楽にまみれた生活にしたいです。今年は制作だったり、制作が辛いというわけではないんですが我慢の年だったと思っているんです。だから今はもっとライブをしたい。それから、音楽の世界では新人ですけど、年齢的には中堅という世代になってきていて、若い子で上手い子はたくさんいますから、俺達にしかできない熱いライブを見せたいです。

中川:ずっと楽しくいたいですね。常に笑顔でいたい。それでいろんな人といろんなバンドと出会って、いろんな音楽に触れて、楽しく過ごしたいですね。これからライブも増えていきますので、ぜひ見に来て笑顔になっていただけたらと思います。



1st フルアルバム『Park』

POPTOP0001 / 2,000yen(tax in)
12.16 IN STORES
POPTOP

1、ヒカリ
2、僕にはこんな歌とギターがあるんだ
3、さくら
4、君に恋してる〜I♥ฺYOU〜
5、ランデブー
6、キミノアメ
7、ヨルメロ
8、いとしのlady
9、LOVER
10、5年目のラブソング
11、ねぇ

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★iTunes Storeで購入する(PC ONLY) icon

Live info.

12.14(mon)渋谷O-Crest
『センチグラム×O-Crest presents 96段目の光景 Vol.2』

OPEN 18:00 / START 18:30
ADV. 2,000 / DOOR 2,500
w)センチグラム / LISTEN UP

12.20(sun)三宮 tower records
『1st フルアルバムPark 発売記念 インストアライブ』
※アコースティックセットでの演奏
入場無料
アルバム購入特典あり

12.24(thu)福島セカンドライン
『namidacoat フルアルバムPark発売記念 party』

w)recall and more

2010.1.12(tue)神戸STAR CLUB 『新春2マンウィーク』
1.24(sun)滋賀U-STONE 
3.10(wed)心斎橋BIG CAT 1stフルアルバムPark発売記念イベント『新春2マンウィーク』

詳細は決定次第ホームページで発表をします。

namidacoat official website
http://www7b.biglobe.ne.jp/~namidacoat/

posted by Rooftop at 12:00 | バックナンバー
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