ギター バックナンバー

a flood of circle『PARADOX PARADE』発売記念特別座談会('09年12月号)

佐々木亮介(a flood of circle)×奥村 大(wash?)×竹尾典明(FoZZtone)

臆することなく続ける“逆説の行進”とその行方


 天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず。──大事を成すには“天の時”、“地の利”、“人の和”が不可欠であるという孟子の教えである。その三才が揃えば理想的だが、“天の時”よりも“地の利”、“地の利”よりも“人の和”が重視される。オリジナル・ギタリストの失踪というバンド結成以来最大の危機に見舞われたa flood of circleだが、“人の和”を常に大切に育んできた彼らは名うてのギタリストたちの加勢によってピンチをチャンスに変えた。『PARADOX PARADE』と題された彼らのセカンド・アルバムは、佐々木亮介(vo, g)、石井康崇(b)、渡邊一丘(ds)の3人に加えて、奥村 大(wash?)、竹尾典明(FoZZtone)、菅波栄純(THE BACK HORN)、安高拓郎(椿屋四重奏)という“人の和”が成し得た至高の作品であり、同時に“天の時”と“地の利”をも奇跡的に手中へ収めてしまった文字通りパラドックスな一枚だ。a flood of circleが描出する洪水の如き“輪”は人の“和”として結実し、それを介して“逆説の行進”は今日もなお続いていく。バンドは違えどその行進の最前線を往く佐々木、奥村、竹尾の3人に『PARADOX PARADE』を巡って存分に語り合ってもらった。(interview:椎名宗之)


“afoc & FRIENDS”で成り立った作品

──奥村さん待ちですが、始めましょうか。その奥村さんがサポート・ギタリストとして参加してから早5ヶ月、a flood of circle(以下、afoc)の今のコンディションはどんな感じですか。

佐々木:混乱期はもう抜けましたね。結局やることは何も変わらないという意識が3人ともあったし、自分たちの持ち寄ったものを形にするのがバンドだから、3人で持ち寄ったものをそのまま形にしていこうと思って。気持ちの整理は結構前からついてたんですけど、バンドの見え方とか周囲のことも含めて最近やっと落ち着いた感じです。

──今回発表された『PARADOX PARADE』は“ひょうたんから駒アルバム”と言うか、逆転の発想から生まれた作品ですよね。リード・ギタリストが不在なら、いっそ腕利きのサポート・ギタリストを迎えたアルバムをこしらえてしまえという。

佐々木:そう、まさに“不幸中の幸いアルバム”ですよ(笑)。これだけ腕利きのギタリストが揃ったアルバムもそうはないと思うし、その中でどれだけafocの名前の下にブレない作品にするかはよく考えましたね。

竹尾:『LES PAUL & FRIENDS』っていうトリビュート・アルバムがあるけど、あれもレス・ポールという圧倒的な存在がいるからこそいろんなギタリストが参加しても何らブレがないですよね。それと同じで、この『PARADOX PARADE』も“afoc & FRIENDS”で成り立ったアルバムだと思うんですよ。

──いきなり見出し級の発言をありがとうございます(笑)。“FRIENDS”の人選基準はどんなところだったんですか。

佐々木:一番ブレたくなかったのは、“3人で作り上げたアルバム”ということなんです。だから、あくまでもこの3人で生み出した曲のイメージにピッタリ来るギタリストを選ぼうと。

──竹尾さんは対バンを通じて知り得たんですか。

佐々木:今回参加して下さったギタリストの中で一番古い仲なんですよ。と言うか、あらゆるバンドマンの中でも俺たちとしては一番古い仲かもしれないですね。

竹尾:でも、彼らと最初に出会った時のことは全然覚えてないんですよ(笑)。

佐々木:シェルターの夜の部に初めて出させてもらったのが、FoZZtoneやエビタイガーとかが出たヴィンテージ・ロックのイヴェントだったんです(2006年5月29日、“ヴィンテージフレッシャーズキャンペーン 06夏”)。そこで初めて竹尾さんとお会いしたんですが、最初はもちろん無視されまして(笑)。俺は『フラッシュワープ』が入ってる『VERTIGO』が凄く好きで、打ち上げの席で竹尾さんに話し掛けたら何故かカレーせんべいをくれたんですよ(笑)。そこから仲が良くなるまでにちょっと時間が掛かったんですけど。

竹尾:カレーせんべいをあげたのがこいつらだったことすらも覚えてないですね(笑)。あの時は俺たちもシェルターの夜の部が初めてだったんですよ。

佐々木:FoZZtoneはルーツ・ミュージックを感じさせながら骨太なロックを聴かせるバンドっていう印象が俺の中にはあったんです。メンバー各自の音楽的な趣味嗜好はバラバラなんでしょうけど、渡會(将士)さんっていう歌の凄く立った人のためにメンバーが一丸となっている感じもあって。『アンドロメダ』と『プリズム』は俺の中で特に歌を凄く意識していた曲なんですけど、だからと言って歌モノっぽいギターにはしたくなかった。そう考えた時に、こちらにいらっしゃるスラッシュの兄貴に頼むしかないなと(笑)。

──竹尾さんが多大な影響を受けたハード・ロック/ヘヴィ・メタルのルーツはブルースにあるし、ブルースに根差したafocの音楽性と竹尾さんのタイトでソリッドなプレイが合致するのはある程度予測できたんじゃないですか。

佐々木:そうなんですよ。初めて竹尾さんと話した時もツェッペリンの話をしたりして。

竹尾:岡庭(匡志)と俺の音楽の趣味が凄く近かったんですよ。

佐々木:メインで使う楽器も同じレスポールだし、好きな音楽の話をして距離が縮まったんですよね。『アンドロメダ』も『プリズム』も曲のイメージ的に竹尾さんしかいないと思ったし、録りの少し前からスタジオに来てもらってやり取りをしたんですよ。

──だからなのか、その2曲はとりわけアンサンブルの一体感が強い印象を受けますね。

竹尾:やるからには大人の自分と子供の自分のサジ加減が大事だと思ったんです。あくまで人のバンドの曲ではあるけれど、人のバンドの中に自分がいるってだけじゃ面白くないと思って。基本的には曲を立てつつも、たとえば間奏の部分では子供の自分全開で行ってみたりとか。ライヴでは大さんが弾いてますけど、俺じゃないと弾けないものを絶対にやらなアカンなと。“さァ、困れ!”みたいな(笑)。

佐々木:確かに「ライヴで大さんを困らせたい」って言ってましたよね(笑)。

このバンドにとって何が一番必要なのか?

──それぞれのギタリストがそれぞれ至上のカードを切って臨むわけですから、それも道理ですね。竹尾さんはafocに対してそれまでどんな印象を抱いていましたか。

竹尾:さっきも言ったように、最初にシェルターで会った時の印象はゼロなんですよ。ちゃんと喋った記憶もないし(笑)。ただ、その後に確かユニットに出た時に彼らのライヴを見て、今時珍しいくらいにギターを弾きまくるバンドだなという印象を持ったんです。俺の好みにドンズバやったんで。話をするようになっていいヤツらなのもよく判ったし、そこから急速に仲良くなった感じですね。やっぱり、ちゃんとギタリストがいるバンドっていうのが大きいんですよ。これは俺、いろんなところで言ってるんですけど、“ギター・ロック”なんていうしょうもない言葉が独り歩きしてるじゃないですか。

佐々木:“ギター・ロック”って、俺たちにとってはジミヘンとかだったりするはずなんですよ。

竹尾:そうそう。今の“ギター・ロック”に何が一番足りないかと言えば、間違いなく“ギター”なんです。凄く使い勝手のいい言葉として“ギター・ロック”が使われてるし、リスナーの中でも“ギター・ロック”というある種のイメージが出来てると思うんですよ。でも、それはちゃんとしたギタリストがいるバンドにとってはクソみたいなもんなんです。 (ここで奥村が遅れて到着)

奥村:大変申し訳ないです! お待たせしました!

竹尾:オイッス、大さん!

佐々木:ちょうど今、大さんの悪口で盛り上がってたんですよ(笑)。

竹尾:まだまだ行けるけどな(笑)。

奥村:それは取り返さないとな。お前らの悪口、言いまくってやる!(笑)

──ニュー・アルバムのミックスはこれで無事終了ですか。

奥村:さっき何とか。超名盤を作ってしまいましたよ。ヤバイ、売れちゃうかもしれない(笑)。

──いやいや、売れてもらわないと(笑)。wash?のニュー・アルバムについては来月号の本誌でじっくり伺うとして、奥村さんは『PARADOX PARADE』のレコーディングにどんな意識で臨みましたか。他のギタリストに負けてたまるかという思いは当然あったと思いますが。

奥村:そうだね。小手先で臨んでも人柄が音に絶対出るから、全身全霊で弾くしかなかったよ。

竹尾:出してる音色が全員違うし、面白いアルバムですよね。

──THE BACK HORNの栄純さんも椿屋四重奏の安高さんも持ち味と特性がよく出ていますしね。

佐々木:栄純さんはレコーディングの時も栄純さんらしかったですよ。裸足で胡座をかいてグレッチのデュオ・ジェットを弾くっていう(笑)。

──奥村さんをライヴのサポートとして迎えたのは、以前からafocのサウンド作りに携わっていたからこそですよね。

佐々木:そうですね。ただ、当然のことながらwash?があるし、大さんからOKを頂けないことも考えてはいました。でも、真っ先に思い浮かんだのはやっぱり大さんだったんですよ。

──奥村さんはwash?本体のレコーディングを押してまで3日間にわたるafocの泊まり込みリハーサルに参加するという男気を見せてくれましたね。

奥村:レコーディングを2日ずらしてもらったのかな。ウチのメンバーも快く送り出してくれたしね。

佐々木:その時、南波(政人)さんが「そういうのをいちいち受け止めて行くのが俺らっぽいよ」と言ってくれたみたいで、心底感激したんですよ。

──ニクいことを言いますね、スケベ椅子ゴールド仕様のストラト男が(笑)。奥村さんから見たそれまでのafoc像とはどんなものでしたか。

奥村:素直にいいバンドだと思ってた。徹頭徹尾“ロック・バンド”だよ。ムチャクチャもあるし、グッと来るところもあるし、急いてるところもあるしさ。

──個人的には奥村さんのオルタナティヴ志向がafocのブルース・フィーリングと溶け合うのか一抹の不安が当初は正直あったんですけど、これが不思議と混じり具合がいいんですよね。

佐々木:俺たち3人は岡庭の代わりとしてではなく、大さん自身に対して全幅の信頼を置いていたんです。大さんのプレイでバンドが未知の領域へ踏み込める確信があったし、afocという枠はありつつも、それぞれのミュージシャンが持ち寄った音でひとつの形にすることが目標だったんですよ。最初は大さんも“もっと岡庭っぽく弾いたほうがいいのかな?”と悩んでくれたりもしたんですけど、少しずつ時間を共有できた今は大さんの持ち味がよく出た形になってると思うんです。

奥村:俺は岡庭のギターも好きだったし、岡庭がいた頃のafocに対しても敬意を払っていたから、どこまでやっちゃっていいのかがずっと悩みなんだよ。未だにそうなんだけどさ。でも、afocはまだこれから新しいお客さんを掴んでいこうとしている攻めの姿勢のバンドだし、初めてライヴを見る人にとってはサポートだろうが何だろうが関係ないわけじゃない? まずは“いいバンドだな”って思われなきゃしょうがないから、自分がどうこうってことじゃなくて、“このバンドにとって何が一番必要なのか?”とか“自分の持ってるどの部分がこのバンドで化学反応を起こせるのか?”とかを凄く考えた。



日々の生活の中から歌を作るのがブルース

──私見ですが、初めて奥村さんがサポートを務めたafocのライヴを見た時、wash?で言えば南波さんがヴォーカルを取る『garden』を演奏する時の“ギタリスト・奥村 大”の凄味に似たものを感じたんですよ。ヴォーカルから一歩引いて、ギタリストに徹するからこその奔放さが遺憾なく発揮されていると言うか。

奥村:うん、判るよ。さっきは堅苦しいことを言ったけど、afocで弾いてる時は純粋に楽しんでるところもあるからね。“ギターっていいな”とか素直に思うし(笑)。

佐々木:相当無邪気ですね(笑)。

奥村:いや、最近そんなことをしみじみ思う。“バンドっていいな”とかさ。

──勝手知ったるバンドだけどよそ行き顔な面もあって…たとえるなら、タキシード姿で近所の銭湯へ行くような感覚なんですかね?(笑)

竹尾:タキシード姿でも、パンツは穿いてないでしょうね(笑)。

奥村:はははは。やっぱり、常にバンドという塊の一部になっていたいね。ひとりだけ必要以上に弾くのもイヤだし、醒めて弾くのもイヤなんだよ。個性が全面に出てるだけなのも俺は違うと思うしさ。俺が好きなのはロックンロール・バンドだから。自分のことはミュージシャンと言うよりもバンドマンだと思ってるし。

──奥村さんはライヴで果敢にオーディエンスを煽ってもいますね。

奥村:あれも鍛えさせて頂いたんですよ(笑)。

佐々木:何を仰いますか(笑)。大さんの煽りに呼応する部分が俺たちにもあるんですよ。サポートしてもらってる前提がありつつ、それ以上に4人のバンドとしていいライヴをするにはどうしたらいいかを大さんとはよく話し合ってるんです。

──今回のアルバムで度肝を抜かれたのは1曲目の『博士の異常な愛情』なんですよね。僅か8ヶ月前にリリースされた『BUFFALO SOUL』の世界観から大きく変化した、afocが更なる高みに達したことを実感できる楽曲だと思うんですよ。オリジナル・ギタリストを失った災いを見事に福へと転じさせた力量をまざまざと見せつけていると言うか。

佐々木:そこで心が折れなかったことがこのアルバムに大きな影響を与えていると思いますね。『博士の異常な愛情』はぼんやりとした形が昔からあったんですけど、曲作りはちゃんとしてなかったんです。インパクトのあるリフの曲が作りたいと思って膨らませた曲ですね。今回はサウンドの意味合いでのブルース感を敢えて敬遠した部分があって、それが前作との一番大きな違いだと思います。

──佐々木さんが定義するブルースというのは?

佐々木:日々暮らしてきた生活の中から歌を作る、それ自体がブルースだと思ってます。その考えは今もブレてないんですけど、『博士の異常な愛情』は“神様の発明品がこの愚かな人間なのか/人間の発明品が神様なのか”というパラドックスを歌詞に込めたかったんですね。大さんに弾いてもらったのはこの曲が一番ストレートだったからだし、大さんのスタイルが活きると思ったからなんですよ。

──“オルタナティヴ・ブルース”というスタイルが確立された感もありますね。

佐々木:そうですね。俺としては凄く上手くミックスできたと思ってます。

奥村:俺もこの曲は凄く好き。竹尾が弾いた曲もいいよね。竹尾が凄いのを弾きやがったとafocのマネージャーから聞いて、iPodで聴かせてもらうことにしたんだよ。でも、イントロを聴いて「やっぱり聴かない!」ってイヤフォンを外したから(笑)。「怖い! 怖い!」って(笑)。

竹尾:俺と大さんは全くベクトルの違うギタリストだと思うんですよ。俺が初めて大さんのプレイを見たのが岡庭がいなくなって一発目のライヴ(7月12日、代官山UNIT)で、単純に弾いてる姿が格好いいし、出してる音も文句なしに格好いいし、サポートで弾いてる人っていう感じが全然しなかったんです。多分、大さんと俺はお互いが持ってないものを持ってるからすぐに仲良くなれたんじゃないですかね。岡庭と俺は同じベクトルだし、ハッキリ言って俺が岡庭に負けるわけがないんですよ(笑)。でも、大さんは俺にないものをいっぱい持ってるからギタリストとして対等に向き合えるんです。

奥村:とにかく俺、ライヴで竹尾のギターが弾けないよ(笑)。

──奥村さんが来る前、ちょうどそんな話になったんですよ(笑)。

奥村:だって、竹尾が27年間背負ってきたものをギターに詰め込んでるのを感じるからさ。それは感動的なことでもあるし、そう簡単に弾ける次元の問題じゃないよ。だから、これはもう俺なりに解釈するしかないと思ってる。

竹尾:でも、afocのファンは誰がサポートで弾いていようが余り関係ないと思うんですよ。それよりも、ライヴでどれだけ格好良く見せつけるかに振り切ったほうが絶対にいいと思う。ライヴ・アルバムじゃないわけだし、このアルバムに参加した4人のギタリストのフレーズをライヴでそのまま再現する必要もないんじゃないですかね。

佐々木:その時々でベストの形を提示できればいいわけですからね。

竹尾:そうそう。だから、さっきは「大さんを困らせたい」なんて言いましたけど、別にそれほど困る必要もないと思いますよ。

奥村:いやいや、困るわ!(笑)

──『月に吠える』だけは完全に3人だけの演奏ですが、何か意図するところがあったんですか。

佐々木:これは単純に俺がずっと弾き語りでやってた曲なんです。凄くパーソナルな曲だし、自分のギター・ソロをこのアルバムの中に刻んでおきたかったんですよ。

奥村:亮介はコードの感覚と唄い手ならではのリズム感のバランスが凄くいいよね。もちろん感情が昂ぶった時はガーッと行くし、そんな部分も含めて俺は好きだな。大別すると、ギタリストって弦を6本で考える人と1本から考えて紡ぐ人がいると思うんだ。ピアノ的な人とヴァイオリン的な人の違いって言うかさ。竹尾や岡庭はヴァイオリン的な人だと俺は感じるわけ。セカンド・メロディを紡ぐのが上手いからね。俺が亮介にシンパシーを感じるのは、俺自身がギターをピアノ的に捉えてるからなんだよ。亮介にもそういう部分があるからね。

ファースト・アルバムの経験値とメンバーの成長

──それだけタイプの異なるギタリストが一堂に会したアルバムだから、afocという一本の太い芯を貫き通すのがかなり難儀だったんじゃないかと思いますが。

奥村:うん、ホントにそう思うよ。

佐々木:そこで軸としてあったのが俺のブルース持論なんですよ。どんな音楽にせよブルースとして紐解くのが俺は好きで、どんな音楽でもブルースに通じると俺は思ってるんです。だから、どんなギタリストを迎えようが絶対に大丈夫だと思ったんですよね。それは曲作りの方法論としての形式的なブルースではなく、俺が思う精神的なブルースをやってる自信があったからこそですね。フィクションの世界で構築する芸術の在り方もあるんでしょうけど、俺はそうじゃないんですよ。岡庭がいなくなったことで自分自身から滲み出たものを「戦友がいなくなった」と直接的に表現するのも違うし、架空の表現にするのも違うし、そこから生まれた感情を表現のレヴェルにまで持っていった上で唄ったり、ギターを弾くことが大事なんです。

──単純に、諸先輩方とのセッションがやりづらかった部分はありませんか?(笑)

佐々木:俺たちは別に遠慮するところもなかったし、逆に諸先輩方が俺たちに気を遣って下さったんじゃないですかね。波長を合わせてチューニングしていくのは確かにトライアルだったけど、純粋に楽しめましたよ。

奥村:でも、大変だったと思うよ。俺だったらイヤだもん(笑)。

竹尾:確かに(笑)。

佐々木:今さらそんなこと言わないで下さいよ(笑)。

──アレンジを詰める段階で、奥村さんや竹尾さんのほうからアドバイスをしたりもしたんですか。

竹尾:俺は結構入り込んだかもしれないですね。音作りから何から何まで。だって、仮に俺が参加した曲がダメだったら、俺のバンドがダメな評価を受けるわけじゃないですか。

──自分の店の看板を背負って立つ部分はあるでしょうね。

竹尾:うん。だから仕事云々ってことではなく、音楽に携わるひとりのガキとしてせめぎ合いをする感覚がありましたね。

佐々木:FoZZtoneなりwash?なり、その看板を汚したら俺たちの責任になりますよ。

奥村:でも、何をやってもwash?は俺自身だから、何をやったって大丈夫なんだよ。俺はこれしか能がないしさ。

──全体的にレコーディングはスムーズに進行できたんですか。

佐々木:リズム録りとか俺のギターとか、俺たちのほうがむしろ時間が掛かりましたね。ゲストの皆さんは割とさっくりやって下さった感じです。そこに経験値の差を感じましたけど。

奥村:俺はライヴを手伝ってるから、リハで雰囲気を合わせることもスムーズだったんだけどね。

佐々木:俺たちメンバーとしては、ファースト・アルバムを作った経験が今回いろんな判断に活きた気がしますね。昔はAとBのどっちがいいか凄く悩んだ末に結局どちらもダメにするようなことがあったんですけど、今はいいほうの判断を早くできるようになったんですよ。その辺はメンバーの成長が大きく作用してると思います。

──著しい成長の跡は随所に窺えますよね。『Ghost』はドラムの渡邊さんが作曲していたり。

佐々木:渡邊がバンドに入った時から「曲を書け!」とケツを叩いてて、やっとここまで来たという喜びがあるんですよ。ベースの石井も曲を書いてはいるんですけど、選ばれてないだけなんです(笑)。

奥村:石井は今アコギまで買って、必死に曲を書いてるもんね(笑)。

佐々木:バンドに甘えることなく、ひとりのバンドマンとしてどれだけのことができるのかが3人とも大事だと思ってるんです。だから、渡邊が書いた曲を入れられたのはその最初の一歩を踏み出せた感じですね。

──ここで改めて、佐々木さんから見た4人のゲスト・ギタリストの特性を伺いたいのですが。

佐々木:まず、大さんのギターには“鋼”(はがね)を感じますね。弦という“鋼”が6本並んでるのが判るコード感と言うか。wash?の曲を聴いても“鋼”感が凄くあって、剥き出した感じもあるし、丁寧で繊細な部分もあるんですよね。安高さんは内に秘めたものがある方ですね。個人的には安高さんが椿屋四重奏の加入以前にやっていたクラッシュ・イン・アントワープで弾きまくっていたイメージが強かったので、「ソロもガンガン行っちゃって下さい」とお願いしたんです。それに応えて下さった『Paradox』も『Flashlight & Flashback』も攻めた名演が多くて、どのテイクを選ぶか凄く悩みました。竹尾さんは俺が勝手にシンパシーを感じてる方ですからね。自分とスタイルが近いとは思ってないですけど、方向性は近いんじゃないかなと。岡庭と気が合ってたところも大きいのかもしれません。俺は岡庭に対して凄くシンパシーを感じてこのバンドを結成しましたから。岡庭とは同い年だし、肩を組んでやってきた感じですけど、竹尾さんは“兄貴”って感じですね。頭を撫でられるんじゃなくて、ワシャワシャやられながら「こっち来いよ!」と呼ばれてる安心感があります(笑)。

──「よーしよしよし!」と言いながら動物と戯れるムツゴロウさんのようですね(笑)。

佐々木:近いかもしれません(笑)。栄純さんのTHE BACK HORNは昔から大好きで、ちょくちょくライヴにも行ってたんですよ。『Forest Walker』も『噂の火』も“栄純さんが弾いてくれたらいいんじゃないか?”と思いながら作ったフレーズなので、実現できて嬉しいですね。ピッキングに凄くアタックがあるし、栄純さんの個性がそのまま出たテイクが録れたと思います。音からも栄純さんが裸足で弾いてる感じが出てると思うし、一番“ケモノ感”が強いんじゃないですかね(笑)。あと、「全員が歌詞を理解していないとやりたくない」と仰っていたんですよ。最初、歌詞を全部決め込んでなくて、「この部分はどれくらいのところまで自分の中では決まりなの?」と逐一訊いて下さったんです。それに応じて音を選んで、歌に寄り添って下さったんですよね。

パラドックスを抱えたままパレードを続ける

──歌に寄り添ったギターというのは、4人のゲスト・ギタリストに共通した重要なポイントかもしれませんね。

奥村:みんなバンドマンだよね。afocの存在を踏まえてのアンサンブルを第一に考えられるギタリストが弾いてる気がする。

──『PARADOX PARADE』というアルバム・タイトルにはどんな意味が込められているんですか。

佐々木:歌詞の言葉を選んでいく上で、パラドックスなことに目が行く時期だったんですね。さっき言った『博士の異常な愛情』の中の神様のくだりもそうだし、『プリズム』で言えば“七色に染まっても透明の光で世界は満ちている”というくだりだったり。あと、バンドを取り巻く状況的なこともありましたね。当初はミニ・アルバムの予定だったのに、メンバーがひとりいなくなった状況でフル・アルバムを作ったっていう。そのパラドックスはまさに不幸中の幸いでしたけど、良し悪しがあると思うんですよ。諸先輩方の力を借りてこれだけの力作を作れたことは間違いなくプラスだけど、岡庭がいなくなったことでマイナスの面も絶対にあると思うし。ただ、日々の生活から生まれた感情には嘘をつかないという俺の決断で行くと、パラドックスを抱えたまま前へ進んでいくしかないし、パレードは絶対に止めたくないんですよ。

奥村:『ロシナンテ』にも“何かをなくしながらそれでも行かなくちゃ”っていう歌詞があったよね。あれがすべてだと思うよ。

佐々木:そうですね。『ロシナンテ』はスタイルではなく自分なりの確信を持って初めて書けた歌なんですよ。スタイルは後から付いてくればいいと思ってましたから。

──でも、つくづく面白いアルバムですよね。ゲスト・ギタリストの存在と演奏が触媒となってafocの新たな側面が浮き彫りになるという。『プリズム』でも竹尾さんのギターに引っ張られるかのように3人のアンサンブルが有機性を増したのが感じられますし。

竹尾:まぁ、3人とも怯えてましたけどね(笑)。

佐々木:竹尾さんのスキルに付いていけなくてブルブル震えてましたよ(笑)。

竹尾:とにかくしきりに「あと2年待って下さい」って言ってたしな(笑)。

奥村:プロポーズか! っつーの(笑)。

竹尾:俺はこういうケースは初めてだったけど、大さんは結構ありますよね?

奥村:うん。今回のケースは現ちゃん(故・上田 現)の曲に参加した時に近いかな。現ちゃんも家で素材を聴かせてくれて、ギターのフレーズを好きに考えさせてくれたから。俺もどっかで助っ人の意識が飛んでるところはあるんだよ。afocのメンバーのひとりとして“一番いい形は何だろう?”って考えるのがクセになってるしさ。

佐々木:サポートでもあり刺客でもある、みたいな(笑)。

竹尾:スタジオ・ミュージシャンと呼ばれる人たちは器用に何でも弾きこなせるじゃないですか。俺はそれと全くの正反対だと思っていて、俺のギターを自分のバンド以外で弾くことなんて全く考えてなかったんですよ。まさかそんな仕事が俺に来るなんて! っていう感じですから(笑)。結局、何でもできる人って何もできない人だと俺は思うんですよ。だから俺を必要としてくれるってことは、俺が何でもできるような体で臨んでは絶対にダメなんです。俺がこれしかできないのを要求してるんだろ? って言うか。

佐々木:仰る通りです(笑)。

竹尾:でも、自分にとっても凄くいい経験になりましたよ。まぁ、これからもスタジオ・ミュージシャンになる気なんてさらさらありませんけどね。なれないとも思うし。

──afocはこの3人編成のままで当面行くんですか。

佐々木:その点に関しては余り焦りを感じていないんですよ。諸先輩方にはご迷惑を掛けっぱなしなんですけど(笑)。いずれは正式メンバーを迎え入れたいとは思ってますけど、今すぐに誰かを…というのは考えてないです。3人編成だからこそできる曲もあるんでしょうけど、俺が作ってる曲のスタイル的には4人編成がいいなと思ってるんですよね。来るべき時が来たら、20人編成のバンドになってもいいと思うし(笑)。

竹尾:それじゃEXILEだろ(笑)。

佐々木:はははは。まぁ、形にはこだわってませんよ。昔からあるブルース・ロックを2009年版にアップ・デートしたり、2009年の洋楽を俺なりにブルースに分解したり、曲作りの作業をもっと自由にやっていきたいですね。

竹尾:亮ちゃんは他のメンバーにも曲を書いて欲しいって言うけど、ヴォーカリストはすべてを背負っていって欲しいと俺は思うんです。他のメンバーやスタッフを食わせていくくらいの揺るぎない存在になって欲しい。俺は亮ちゃんと友達だと思ってるから敢えて言うけど、ちょっといいヤツすぎるから(笑)。もっと図太く不貞不貞しくなれば、よりソリッドな格好良さとしてステージや曲に反映されていくと思うんですよ。

奥村:それは言えるね。俺は変わっていくことを恐れないで欲しいよ。変化するものだけが正しいと俺は思うからさ。何かに寄せる想いや気持ちいいフィーリングとかはある程度不変かもしれないけど、それによって生み落とされる音楽はその時々で絶対に変化していくんだよ。どういう変化であれ、それを恐れないで突き進んで欲しい。そのためにも、俺が助っ人の間はまだまだケツを叩いていこうと思うけど(笑)。

佐々木:変化は恐れたくないですね。変化を恐れてこなかったからこそ、ブルースは変遷を遂げて2009年まで来たと思ってるので。ブルースが普遍の音楽であるためには不変ではダメだっていう…それが一番のパラドックスなのかもしれないですね。



2nd Album
PARADOX PARADE

01. 博士の異常な愛情
02. Paradox
03. Ghost
04. アンドロメダ
05. 月に吠える
06. -session #3-
07. Forest Walker
08. 噂の火
09. Flashlight & Flashback
10. 水の泡
11. プリズム
Speedstar Records VICL-63477
2,500yen (tax in)
IN STORES NOW

Guitar by
M-1, 3, 10:奥村 大(wash?)
M-7, 8:菅波栄純(THE BACK HORN)
M-4, 11:竹尾典明(FoZZtone)
M-2, 9:安高拓郎(椿屋四重奏)

★amazonで購入する

Live info.

2nd Album Release Event“PARADOX NIGHT”
2009年12月2日(水)新代田LIVE HOUSE FEVER
guest:VOLA & THE ORIENTAL MACHINE / DJ:HOWL (RUDE GALLERY)

TOUR“PARADOX PARADE”
2010年2月6日(土)仙台PARK SQUARE
2010年2月14日(日)新潟CLUB RIVERST
2010年2月18日(木)名古屋CLUB UPSET(ワンマン)
2010年2月25日(木)広島NAMIKI JUNCTION
2010年2月26日(金)福岡graf
2010年2月28日(日)十三FANDANGO(ワンマン)
2010年3月5日(金)恵比寿LIQUIDROOM(ワンマン)

OTHER EVENTS
2009年12月3日(木)新潟CLUB JUNK BOX mini(serial TV drama“STAR TOURS!!”)
2009年12月8日(火)松山サロンキティ(GLORY HILL“Signs TOUR 2009”)
2009年12月9日(水)周南TIKI-TA(GLORY HILL“Signs TOUR 2009”)
2009年12月10日(木)福岡DRUM SON(serial TV drama“STAR TOURS!!”)
2009年12月12日(土)長崎DRUM Be-7(GLORY HILL“Signs TOUR 2009”)
2009年12月13日(日)大分T.O.P.S(GLORY HILL“Signs TOUR 2009”)
2009年12月15日(火)高松DIME(serial TV drama“STAR TOURS!!”)
2009年12月17日(木)千葉LOOK(千葉LOOK 20th ANNIVERSARY 〜6×9=53days〜)
2009年12月19日(土)仙台HOOK(serial TV drama“STAR TOURS!!”)
2009年12月21日(月)青森Quarter(serial TV drama“STAR TOURS!!”)
2009年12月26日(土)横浜F.A.D(爆裂FxAxD 〜THE REAL THINGS年末スペシャル!!〜)
2009年12月28日(月)幕張メッセ国際展示場1〜8ホール(rockin'on presents“COUNTDOWN JAPAN 09/10”)
2009年12月31日(木)新宿LOFT(THE FINAL OF 2009 第一部〜シンジュクアクション「日本のロックの夜明け」)
2010年1月17日(日)新木場STUDIO COAST(MINE ROCK★FESTIVAL)

a flood of circle official website
http://afloodofcircle.com/

wash? official website
http://xplasma.net/wash/

FoZZtone official website
http://www.fozztone.com/

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