ギター バックナンバー

YOLZ IN THE SKY('09年11月号)

YOLZ IN THE SKY

レッド・ゾーンを振り切った超絶ハンマー・ビートが漆黒の夜を暴く!


 先月20日に新宿ロフトで行なわれた『DRIVE TO 2010』でもジャンクでフリーキーな16ビートでフロアを大いに沸かせた関西ニュー・ウェイヴの若手旗手、ヨルズ・イン・ザ・スカイが待望のセカンド・アルバム『IONIZATION』(アイオニゼーション)を発表する。オーディエンスを無条件に踊らせる高い演奏力と飛び抜けてハイテンションなライヴにはもともと定評のあった彼らだが、本作では不協和音やノイズといった歪みを存分に効かせつつもテクノ/ダンス・ミュージックの志向性がグッと増した未踏の領域へと到達。屈強のリズム隊が繰り出す熾烈な反復ビートの応酬に、もはやギターらしさの欠片もない音響的アプローチのギター、そして漆黒の闇を切り裂くかの如きハイトーン・ヴォーカル。そのどれもが真の意味でのオルタナティヴ的文脈に符合するものだ。無機質なハンマー・ビートを支えるのはあくまで脈打つ血潮と鼓動であることの必然、そしてその行方とは。ヴォーカルの萩原孝信とギターの柴田健太郎に訊く。(interview:椎名宗之)


人力だけど機械みたいな音像が面白い

──2年前にLess than TVからファースト・アルバムを発表して以降、ライヴでオーディエンスの反応が変わってきた手応えはありますか。

萩原孝信(vo):ありますね。アルバムを出してからライヴがめっちゃ盛り上がることが多くなりましたから。

──もの凄く乱暴な言い方をすると、最初にヨルズを聴いた時に“ハードコアなポリシックス”みたいな印象を受けたんですよ。ファーストの頃は同世代のバンドで言えばロストエイジやマヒルノなどに通じるロック・テイストがまだ残っていたと思うんですが、今回のセカンド・アルバムでここまでダンス・ミュージックに特化したのはどんな経緯があったんですか。

萩原:まず、ファーストと一緒のようなもんを作ってもしょうがないと思っていたのもあるし、聴く音楽が変わってきたのもありますね。

──SXSWを含むアメリカ・ツアーを経験したことも大きいのかなと思って。ダンス・ミュージックは言語を超えた世界共通の音楽であると確信したりとか。

萩原:確かに、アメリカへ行った時の反応は自分らでもビックリするくらい良かったんですよ。こんなに喜んでくれんねや!? と思って。

柴田健太郎(g):ただ、そのアメリカ・ツアー以降に「ダンス色を強めよう」とか具体的に話し合ったわけでもないんですよ。

──アルバムの質感がジョイ・ディヴィジョンやキリング・ジョークといった80年代のニュー・ウェイヴ・バンドにも通じるヒリヒリした硬質な印象を受けたんですが、あの辺のバンドはやはり好きですか。

柴田:P.I.L.とかは好きやんな?

萩原:好きやな。俺が一番好きなのはクラッシュなんですけど。クラッシュのTシャツの重ね着とかもしてますから(笑)。

──『DAWN』のイントロでギターにダブっぽい加工をしていたり、全体的に柴田さんのギターがアナログ・シンセのように音響的な役割をしているのが非常にユニークですよね。

柴田:何が面白いかを考えながら試行錯誤していたらああなったと言うか。長いギター・ソロとかも余り好きじゃないし、ギターっていう考え方では弾いてないんですよ。速弾きを練習したことも全くないし(笑)。

──サウンド・プロデューサーの吉田肇さん(panicsmile)とは事前にどんな話し合いをしたんですか。

柴田:YMOの『TECHNODELIC』みたいな雰囲気を作りたいみたいなことは話してましたね。あの頃の高橋幸宏さんのドラムって、人力なんだけど機械みたいな処理の仕方をしてるじゃないか。ああいうのが面白いんじゃないかと思って。あと、アンディ・パートリッジの『TAKE AWAY』っていうアルバムがめっちゃ好きで、ああいうチープだけど手作りな感じも出したかったんですよ。

──柴田さんのルーツ・ミュージックが色濃く出た感じと言うか。

柴田:ルーツとなる音楽っていうのも一概には言えなくて、飽き性やからすぐ違う方向に目が移ったりするんですよ。割と一貫してるのは80年代の音楽ですかね。ジャーマン系も結構好きやし。

──カンやノイ!といったジャーマン・ロックは吉田さんとの共通項でもありますね。

柴田:そうですね。録る時もコニー・プランクっていうノイ!とかを録った人のサウンドっぽいのを目指すのはどうかと吉田さんと話したりもしたんですよ。

名古屋の山奥にある蔵での合宿録音

──ヨルズのリズム隊による反復ビートってちょっと異常なくらいのバカテクですけど、リズム隊に引っ張られてサウンドが固まっていくことが多いんですか。

柴田:今回のアルバムに関しては、ギターとドラムで基盤を作った後にベースを乗せたりとかもしたんですよ。ギターに何となしのイメージがあってずっと弾いてると、それに合わせてくる感じですね。

──萩原さんのハイトーン・ヴォーカルもどんどん超絶な方向に向かってますよね。こめかみがプチンと切れる音がしそうだし(笑)。

萩原:どんどんイケイケになってますね(笑)。サウンドに刺激を受けて“ガンガン行ったろか!”みたいな感じで。これからもっと変わるんちゃうかな? とは思うんですよ。体力的にもまだまだ行けますから。

──何でも、今回の録りは名古屋の山奥で行なわれたそうですね。

萩原:吉田さんのいとこが住んでる一軒家の横に蔵があって、その中で録ったんですよ。戦前に立てられたらしいんですけど。蔵の反響のお陰でデッドな音が録れましたね。

──文字通り『DEAD HEAT』だったわけですね(笑)。

柴田:蔵の中で3日間集中して録りました。蔵と言ってもちゃんとスタジオに改造された所だったんですけど。

萩原:みんなで合宿してるみたいでおもろかったですよ。凄く和気藹々としていて。

──張り詰めた緊張感が全編を覆う本作とは裏腹な雰囲気じゃないですか(笑)。

萩原:周りが全部山で、街灯もないから夜になると真っ暗なんですよ。だからやることと言えばレコーディングしかないし、集中できて良かったなと思って(笑)。

──機械的なサウンドをあくまで人力でやり抜く音楽性には相応しいアナクロな環境だったんですね(笑)。やはり無機質なサウンドを人の手を介して演奏することに美意識を感じているんですよね。

柴田:たまたまそうなっただけですよ。ライヴでループさせるとかも今の段階では考えてないけど、それが格好いいことだと思えばやることもあるかもしれないし。今はこういう感じが一番格好いいと思ってるからとりあえずやってる感じですけどね。その時々で一番いいと感じるやり方をするだけです。

──アルバム・タイトルは4曲目にあるノイジーなインスト・ナンバーから取られていますけど。

柴田:そのインストも最初はタイトルがなくて、録ってる時の卓にエドガー・ヴァレーズのベスト・アルバムがあったんですよ。それを見てたら『IONISATION』(イオニザシオン)っていう曲があって、言葉の感じにピンと来たんですよ。意味を調べたら“電離”とあって、ちょっとテクノっぽくていいかなと思って。

──ファーストも聴き応えのある作品でしたけど、変則的なサウンドの余りポップさとは乖離した部分もあったと思うんですよ。それが今回のアルバムではヨルズなりの親しみやすさが出てきた側面もある気がしますね。高速を駆け抜ける車のライトやネオンが溶け合って伸びていくような音像の『UP SIDE DOWN』は最もデッドな音をしていながらもキャッチーさがあると思うし。

萩原:まぁ、聴きやすくなったのかなとは思いますね。

──それこそ、本作の音作りの上でお手本としたYMOくらいのポピュラリティを追求したいとは思いませんか。

柴田:聴くぶんには好きですけどね。ポップさを出そうとしてる意識があるかどうかは判らないですけど、今はどうしても気持ち悪い感じになってしまうと言うか(笑)。

──アルバムの最後は『DAWN』という“夜明け”と題された曲で締め括られていて、アッパーでポジティヴなニュアンスもありますよね。“夜明け”は希望の象徴なわけで。

萩原:まぁ、深読みするような意味は特にないんですけどね。できることなら希望を込めて唄ればいいなとは思いつつ。

もっとおもろいもんが出来るよな

──結成から6年が経過して、今のバンドはどんな時期に来ていると感じていますか。たとえば、ようやく自分たちの理想とする音楽を体現するコツを掴みかけてきたとか。

柴田:どうやろ。やってる感覚は昔からずっと変わらないですけどね。

──ライヴでオーディエンスを踊らせることにカタルシスを得たりとかは?

萩原:自分らの演奏で踊ってくれたら単純に嬉しいですね。ただ、お客さんにこうなって欲しいみたいなことはないかな。楽しんでもらえたらええなとは思いますけど。

柴田:俺もその辺は余り意識してへんけどな。

萩原:ジッとしてるよりは踊ってもらったほうがええかなっていう程度ですね。

──萩原さん以外の3人は一心不乱に演奏に入り込んでいる感じで、凄く殺伐とした空気を発しているように思えるんですけど。

萩原:その辺も異質でしょうね。柴田もガンガン行ってる時が日によってはあったりもするんですよ。ギターやのに何故か声が嗄れてる時もあったしな(笑)。

──萩原さんのハイテンションなパフォーマンスも特異の極みですけど、唄っている時は無心なんですか。

萩原:無心…ではないですね。何考えながら唄ってるんやろ。歌詞の世界観とかかな。

──萩原さんの声を含めた4人のアンサンブルが大きな音の塊となって放射する時に気持ちが昂ぶるようなことは?

柴田:気分によってなんですけど、自分の音だけでいい時もあるんですよ(笑)。今日はどんな感じなんかは自分でもちょっと予想ができないところがあるんですよね。そういうハプニング性みたいなものがライヴならではだと思うし、自分の思い通りに行くほうがイヤだったりしますね。スタジオとかでも、“こんな感じがええかな?”と思ってたのがバンドで合わせてみたら自分の思ってたのとは違った感じになったほうがおもろいし。そういうのがなければ、別にひとりでやったっていいと思いますしね。

──ところで、同世代で面白いことをやってるなとシンパシーを感じる日本のバンドっていますか。

柴田:それが結構いないんですよ。上の世代のバンドのほうがおもろいなと感じることは多いですね。このままで日本は大丈夫かな? と思ったりもしますよ。何と言うか、思春期に憧れてたバンドみたいな雰囲気が全くしないバンドばっかりな気がして。まぁ、同世代のバンドに対してそんなに興味が湧かへんっていうのも単純にあるんですけどね(笑)。音を聴いてもしっくり来なかったりして。

──しっくり来ないからこそ自分たちでやるしかないと?

柴田:そうですね。もっとおもろいもんが出来るよなって気持ちはありますよ。ホンマ凄いなって心底感じるバンドがいないっていうのが本音で、そんな音楽、誰でもできるやんって思うことがようあります。ホンマにええと思ってやってんの? って言うか。それよりも、全然失敗してるけどよう判らん感じになってるバンドとかのほうが興味は湧いたりしますね。今回、ジャケを手掛けてくれたコレヒコ君のデラシネとかはおもろいと思いますけど。音楽的にもなかなかないと思うし。

──ストーン・ローゼズ的に言えば“憧れられたい”感覚はあったりします?

萩原:こんなに格好ええことやってんねんから、格好ええと思ってくれる子たちは絶対おると思ってますね。自分たちのやってることには絶対の自信がありますから。



IONIZATION

felicity cap-93 (PCD-18600)
2,300yen (tax in)
2009.11.04 IN STORES

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Live info.

COOKIE SCENE NIGHT 09 #2 in OSAKA〜Winter Wonderland〜
11月20日(金)大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE
with:PARAELE STRIPES / √thumm / etc...
DJ:伊藤英嗣(Cookie Scene)、DAWA(FLAKE RECORDS)
OPEN & START 18:00
TICKET adv. 2,500yen (+1D) / door. 未定
info. SMASH WEST 06-6535-5569

YOLZ IN THE SKY MySpace
http://www.myspace.com/yolzinthesky

posted by Rooftop at 15:00 | バックナンバー
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