ギター バックナンバー

DRIVE TO 2010 AT SHINJUKU LOFT 2009.10.5 - 11.11('09年11月号)

DRIVE TO 2010

 日本のライブハウス・カルチャーを確立した1979年の伝説的イベント「DRIVE TO 80s」。100を越えるバンドが結集し、シーンの多様な収穫を新世紀に伝えた1999年の「DRIVE TO 2000」。そして今年、ライブ・シーンにさらなる活力を呼び込むべく、DRIVEシリーズ第三弾「DRIVE TO 2010」が30日というロングラン・イベントとして10月5日より開催されている。PART1(10/5〜10/22)、PART2(10/26〜10/29)に引き続き、いよいよ最終章であるPART3(11/4〜11/11)開幕にあたって、今回のシリーズギグにとって一つの重要なキーである「ストリートロック」の観点から、このイヴェントを紹介したい。


ストリートロックの未来へ向けて

TEXT:森サリー


 1979年の夏の終わりに新宿ロフトに赴いた時には、まさか歴史の証人になるとは思ってもいなかった。まして、30年後に同じ趣旨を持ったイヴェントが開催されるとは、知る由も無い。確かにそれまでも日本にはロックはあったが、そこ、ロフトで催されていたのは、とても自分に身近で共感すべき、それまでに体験したことのない、いわばストリート・ロックと言えるものだった。
 86年に出版された地引雄一の「ストリート・キングダム」(*1)(ミュージックマガジン刊)の中には、その79年に開催された「DRIVE TO 80's」を含む、78年から83年頃までのシーンに於ける、真の意味でのインディペンテンド精神が溢れんばかりに掲載されており、郷愁で言うのではなく、あの頃の熱気というモノを今でもはっきりと思い出せるからこそ、現在、読んで見てみても面白い。
 10月12日「DRIVE TO 2010〜R&R will never die」に出演した騒音寺のNABE(vo)は、そのステージで「あのモノクロの写真に写し出された目付きに憧れた。モノクロの写真が似合うロッカーになりたかった。」と語っていたが、あれから30年、そこに存在したはずの、日本のロックは変わったのだろうか。  現在の東京のライヴハウスは400とも言われ、ロックを標榜するバンドやアーティストは数知れない。その一方、リスナーは細分化されてゆき、バンド側もリスナー側も、ロックの根源である“独立心”に欠ける場面と多々、遭遇する。しかし、その当時からずっと変わらず、アグレッシヴに動き続けているアーティストも多いし、オルタナティヴ・シーンでは、現況を打破しようと活発な活動をしている若者達もいる。私達が“音楽”を捉えるとき、精神性や実験性は少なからずとも影響があるはずである。
 この「DRIVE TO 2010」というシリーズギグは、一部を除き、パンク黎明期から現在に至る、DRIVE TO 80'sの潮流を汲んだ面々を集めたものである。10月5日から始まったので既に三分の二が終了してしまったが、11月以降のイヴェントをいくつか紹介したい。


DRIVE TO 80's 開催時のフライヤー

 11月6日に冠されるのは「STREET SHUFFLE」。西村茂樹(ex.THE LOODS、THE GROOVERS)、伊藤秀孝(ex.GYMNOPEDIA)、ヤマジカズヒデ(dip)、須藤俊明(ex.MELT-BANANA)、サワサキヨシヒロから成るLOUDSに、恒松正敏(ex.フリクション(*2)、E.D.P.S)、梶原徹也(ex.ブルーハーツ)が加わるスーパーバンド、LOUDS+2。大駱駝艦出身で映画「闇のカーニバル」(*3)主演、その後、ジャングルズを経てJAZZY UPPER CUT(*4)を主宰していた桑原延享が率いるDEEP COUNT。「さんピンCAMP」(*5)を主催した最初期の日本のヒップホップの中心人物ECDとターンテーブルの破壊者、イリシットツボイのコンビほか。BAR-HALLの方は、LIVE-HALL出演者の生き様に呼応するひとつの返答でもある、ワイルド・サイドを突き進む青年達。「東京BOREDOM」のbossston cruzing mania、「ボロフェスタ」のLimited Express(has gone?)など、過激なイヴェントの首謀者達が集まった。
 その日のオールナイトは、いぬん堂presentsの「いぬ屋敷」の特別編。DRIVE TO 80's最年少出演者(15才)であった中村清(ex.不正療法、ジャングルズ、GOD、カノン)がドラムを叩く鵺院。足踏みオルガンを弾きながら犬の日常を歌うJON(犬)をGAUZE(*6)のドラマーHIKOががっつりツーバスで支える犬彦、BAR-HALLは太陽肛門スパパーンの5時間ぶっ通しのワンマンなど個性が際立つ。
 オリジネーターが勢揃いした8日。このラインナップが2009年のロフトで行なわれるというのは実に感慨深い。日本インディーズの祖、ヒゴヒロシ(*7)とラピス(フリクションのオリジナル・メンバー)のMAJIKA-NAHARU。まさに「メインストリートのならずもの」の名に相応しいTHE FOOLSは、来年結成30年を迎える。女性ロッカーの草分けであるNON率いるNON BANDは、80年代当時のメンバーでの復活を果たす。サイケデリックの雄、割礼は映像とのセッションに依り一層トランス感を深め、再結成以来、伝説を生み出して来た奇形児はキーボード奏者が加入、新機軸を打ち出すライヴとなる。あぶらだこの長谷川倫裕と大國正人らが結成したkitoimizukumi roberは3ピースの痙攣ダンス・バンド。元LIP CREAMのジャジャが盟友と共に新境地を開拓したWATER BED。奇才・故片岡理の魂を受け継ぐヤマジカズヒデが加入して強力になったAFTER THE SLUDGE。16才で突然段ボールに参加していたkwkmのswaraga。九州ロックのカリスマ・バンド、ちゅうぶらんこの榎木俊二とpanicsmile吉田肇(*8)が組んだFUN☆ANA。DJには東京ロッカーズで人生が変わったと言い切るサミー前田。ここで重要なのは、在野の精神を貫いているアーティストのみが出演するということで、こういう人々がメインストリートを闊歩すべきあるというメッセージを感じたい。  9日は、画家としても名高い恒松(前述)が原点に返ったかのようなロック・グループで出演。アレルギーやP-MODELを渡り歩いて来た荒木康弘らが参加している。蛍光灯を使用した自作音具を駆使する伊東篤弘のOptrum。ドラムによるコンピューター・コントロール・システムで映像と音楽をシンクロさせるドラびでお他。芸術ではあるがオハイソではない、粗野ではあるが野卑ではない、先鋭的でアーティスティックな夜になることだろう。
 10日には、東京ロッカーズ仕掛人のひとり、S-KENがHOT BOMBOMSで出演。ゲストに孤高のアーティスト、こだま和文。中西俊夫はプラスチックスの発展系のパーティバンド、PLASTIC SEX featuring 野宮真貴で参戦。ピテカントロプスや東京ソイソースの夢の再来だ。
 そしてオーラスの11日は、LIZARDとAUTO-MOD。LIZARDは、オリジナル・メンバーであるワカとコウに加え、ARBのキースというメンツでの本年2月に続く、復活第2弾。同志であるジュネのAUTO-MODと共に、1979年から2009年をどう総括するか興味深い、両者の対決である。
 確実に「ロック」は変わった。だからこそ、この「DRIVE TO 2010」の意義があるのである。

(註釈)
(*1)2009年に大幅加筆され「STREET KINGDOM 東京ロッカーズと80'sインディーシーン」(K&Bパブリッシャーズ刊)として復刊。
(*2)東京ロッカーズの中心バンド。恒松はDRIVE TO 80's出演時のギタリスト。
(*3)山本政志監督による夜とロックで血みどろな真のストリート映画。83年公開。JAGATARAの江戸アケミ、スターリンの遠藤ミチロウ、THE FOOLSの伊藤耕、AUTO-MODのジュネ、サミー前田等が出演している。
(*4)90年の江戸アケミ追悼コンサートを機に結成。石渡明廣、早川岳晴、つのだけん、川田良、DJ KRUSH等が在籍した、ジャズ、パンク、ラップ、ファンク、舞踏などを内包した総勢11名の人力ヒップホップ・グループ。
(*5)96年に日比谷野外音楽堂で開催された日本初の巨大ヒップホップ・イヴェント。出演は、YOU THE ROCK、ZEEBRA、Rhymester、SHAKKAZOMBIE、MURO等。
(*6)81年結成、日本ハードコア・パンクの創始バンド。筋が通っている。
(*7)活動歴37年のミュージシャン。3/3、フリクション。ミラーズ、チャンスオペレーションを経て、現在はIjar Connect's、渋さ知らズ他。世界を股に掛けるDJとしても名高い。日本初のインディー・レーベルであるゴジラ・レコードの主宰者であり、日本に於けるパーティ・オーガナイザーの第一人者であり、パーティーシーンとライヴハウスシーンを橋渡しする、「80's」と「2010」をつなぐ最重要人物のひとり。
(*8)本誌連載でおなじみ、九州のNO WAVE文化を創った人物。彼の先導もあって東京ロッカーズの血脈は九州で息づいている。今回はプロデューサーであると共に、S AND THE NICOLEKIDMEN(kbd)、My Toys Are Broken Girls(b)、FUN☆ANA(g)で出演している。


「STREET KINGDOM 東京ロッカーズと80'sインディーズシーン」

地引雄一著(K&B Publishers)



11/4(水)

<不思議な旅人>
原マスミバンド、くじら、D-DAY
<BAR STAGE>
さいとういんこ、after the rain(秋山勝彦ソロ+バンド)、POiSON GiRL FRiEND、プラハデパート


11/5(木)

戸川純、キノコホテル
<BAR STAGE>
JON(犬)


11/6(金)

<STREET SHUFFLE>
DEEPCOUNT、LOUDS+2、ECD+イリシット・ツボイ、リトルキヨシトミニマム!gnk!
<BAR STAGE>
bossston cruizing mania、トップサルジャー、マンホール、Limited Express (has gone?)、日比谷カタン


11/7(土)

<テクノ・フロンティア>
千葉レーダ(茂木淳一)、大正九年、デッドコピー、CTO branch(岡田徹ユニット)、ぶどう÷グレープ、松前公高、DJ : ホンダトロン
<BAR STAGE>
Pyokn、ジーニアス、装置メガネ、カシミール・ナポレオン、ダニエル、MIR(ミール)


11/8(日)

<メインストリートのならずもの>
THE FOOLS、MAJIKA〜NAHARU(ヒゴヒロシ+ラピス)、NON BAND、奇形児、、割礼、KITO MIZUKUMI ROUBER、WATERBED、FUN☆ANA、AFTER THE SLUDGE、swaraga、DJ サミー前田、飲食出店 不純喫茶・しんぱしい(デモ田中 from hybrid zombies & 原子ガールズ from 原子心母)


11/9(月)

<ギャラリー・オブ・ロック>
恒松正敏グループ、あふりらんぽ、OPTRUM、ドラびでお
<BAR STAGE>
埋火、LONESOME DOVE WOODROWS、PABLO+山崎巌、HerniA


11/10(火)

<東京オリエンタル サロン>
S-KEN & HOT BOMBOMS(ゲスト:こだま和文)、PLASTIC SEX featuring 野宮真貴、DJ:朝本浩文、森 雅樹(EGO-WRAPPIN')
<BAR STAGE>
Black Velvets


11/11(水)


リザード、オートモッド
<BAR STAGE>
Darkside Mirrors、髑髏海月、グーニーズ(ゲスト:ブラボー小松)


11/6(金)深夜

<いぬ屋敷 ALL NIGHT ROCKの間 -朝までスパパーン->
犬彦(JON(犬)+HIKO from GAUZE)、鵺院、SPEARMEN、kingofOpus featロボ宙、モデルプランツ、肩こり(from大阪)and more!、高橋敏幸 with 泥舟
BAR STAGE:太陽肛門スパパーン(ワンマン)、ゲスト:ザ・ヒメジョオン、ザ・青春


11/7(土) 深夜

<NEWSWAVE Night '09 DRIVE to 2010 Special>
DJs:小野島大/24no/TKD/Zodiac 他
Guest DJ : 大貫憲章


DRIVE TO 2010公式ガイドブック

DRIVE TO 2010全出演アーティスト紹介、インタビュー、コメント、ヒストリーなどこの歴史的イベントのすべてが分かる公式ガイドブック。イベント開催中は勿論、10年後、20年後と時を経るに従って、本書はその価値を増していくだろう。
全100頁/¥1000(tax in)
会場にて限定販売中



DRIVE TO 2010

日本のストリート・カルチャーに多大な影響を与えてきたキーパーソン、中西俊夫。DRIVE TO 2010への出演を控えた彼にメール・インタビューを試み、プラスチックスから現在に至るまでを語ってもらった。(TEXT:小暮秀夫)

■パンクとはどのようにして出会いましたか?

中西俊夫(以下・中西):78年、ロンドンのMUSIC MACHINE(後のCAMDEN PALACE)でのリチャード・ヘルのコンサート。ここでSID&NANCY、ジョニー・ロットン、CLASHやDAMNEDのメンバー全員目撃した。前座がスージー&バンシーズだった。

■中西さんがそれまで聴いてきた音楽とは違った魅力をパンクに感じましたか?

中西:それ以前はテクニック至上主義が続いていて出番がなかったけど、パンクには自分にも出来るようなDIY精神があった。

■最初は大所帯のパーティーバンドであったプラスチックスがテクノポップ/ニューウェイヴ・バンドに移行していった経緯を教えてください。

中西:最初はロキシー・ミュージックやVELVETSやデビッド・ボウイのコピーをしていたが、ハジメがLAでDEVOを見て感化され、僕がロンドンでヘルを見てオリジナルを書き始めたから…(そのころ聴いていたクラフトワークの影響も)。

■ニューヨークやロンドンから遅れて、70年代後半に日本でもようやくパンク/ニューウェイヴ・ムーヴメントが起こりましたが、現地で動きを見てきた中西さんの目にそれらは どのようなものとして映りましたか? かっこいいと思ったのか悪いと思ったのか、どちらでしょうか?

中西:日本のパンクは貧乏と政治的を勘違いしておしゃれじゃなかった。ま、比べたらかっこ悪いと思ったさ…。ロンドンはストリートから起こったものと思われていたが実は逆で、SEDITIONARIES一派が始めたものがストリートに広がっていった。少数で始まったダダイズムやシチュエーショニストなどの流れと同じ…。

■日本のパンク/ニューウェイヴのバンドで、当時、中西さんがシンパシーを覚えたバンドはいましたか?

中西:ヒカシューさん。すきすきスウィッチ。

■日本のパンク/ニューウェイヴ・バンドが総出演した伝説のイベント、DRIVE TO 80’sにプラスチックスは出演しています。ちなみにその日の共演バンドは、自殺、ノイズ、高木完さんがいたフレッシュでした。この日を含めて、DRIVE TO 80’sにはどのような思い出がありますか?

中西:しょせんコピーって東京ロッカーズファンからやじられたけど、すぐ「コピー」を演奏したら皆だまってしまった…。

■プラスチックスが解散した理由をコッソリ教えてください。

中西:公に言ってるように、ハジメと僕の音楽的相違。ハジメはポップやファンクに飽き飽きしててクラシックに行ってたし、僕は僕でポップやファンクやすでにヒップホップに行ってた。

■中西さんが現在やられているプラスチックス・セックスは、“ヴァーチャルなプラスチックス”をコンセプトとしています。今、プラスチックス的なことをやりたくなったのは、どのような理由からですか?

中西:別にニューウェーブ的なものが今また来てるよね?とかそういう感じではなくて、すでにニューウェーブ的なものは自分の中ではいつになってもある定番的なものに位置づいてる訳で、ロンドンから帰ってきてすぐプラスチックス再結成したかったんだけど、その頃ハジメが鬱状態だったのでヴァーチャルなプラスチックスを作った系。

■今回プラスチック・セックスが出演する日は、「東京オリエンタルサロン」と出して、S-KEN & HOTOBOMBOMS、DJとして朝本浩文さんらが出演されます。このような日に出演することをどう思われますか?

中西:お日柄も良いようで、S-KENさんとも久しぶりなんで楽しみ…。東京ロッカーズ時代はあれがあれであれだったけどね…。朝本君は今だにジャングルかな? がんこおやじの会になったりして。

■プラスチックスも出演したDRIVE TOシリーズに今回中西さんが遂に登場されるということで、期待している人もかなり多いと思われます。この日のための特別な演出やメニューは計画されているのでしょうか?

中西:それは秘密です。が……メニューは一杯あるよ。忘れなければ…。

■中西さんは、パンク/ニューウェイヴ/ヒップホップ/アブストラクトなど、一貫してストリート・カルチャー/クラブ・カルチャーの先頭を走ってきました。ストリート・カルチャーのどういうところに魅力を感じているのでしょうか?

中西:さっきも書いたけど、ごく一部のトレンドセッターからストリートに広がっていった訳で、その逆ではないと思うので、ストリートがカルチャーになっちゃった時には魅力感じてません。

■長々と質問にお答えいただき、ありがとうございます。それでは最後に、11月10日のPLASTIC SEXのライヴを楽しみにしている人にメッセージをお願いします。

中西:LET IT ROCK


PLASTIC SEX featuring 野宮真貴
メンバー:中西俊夫 a.k.a. tycoon to$h ex PLASTICS, MELON(vo.&Gt.)、野宮真貴(vo.)、大西つる(Gt.)、mom0(key.& synbass)、sally(Rhythm Box)

posted by Rooftop at 15:00 | バックナンバー