ギター バックナンバー

SMILEY HARASHIMA presents SMILEY'S TALK JAM session 2 田口トモロヲ('09年9月号)

田口トモロヲ

“世界を変えられるんだ!”という幻想を抱けた時代がかつてあった


 今回のゲストは、俳優、ナレーター、映画監督として八面六臂の活動を続ける田口トモロヲさん。かつてはばちかぶりという過激なパフォーマンスを繰り広げるパンク・バンドのヴォーカリストとしてその名を馳せたトモロヲさんと原島さんは実は同期。ばちかぶりの結成とアクシデンツのメジャー・デビューは共に1984年、今から四半世紀前のこと。トモロヲさんの監督作品第2作『色即ぜねれいしょん』の話を中心に、ばちかぶりだったあの時代からサブカルチャーとメインカルチャーのボーダレス化が進む現代まで、時間軸も話題も縦横無尽に、気心の知れた両者が存分に語り尽くします。(構成:椎名宗之)


童貞マインドは常にキープ・オン!

田口:僕、『少年メリケンサック』に出演するにあたって、監督の宮藤官九郎君から参考資料としてルースターズの再結成のDVDを渡されたんですよ。

原島:エッ、石井聰亙監督の『RE・BIRTH II』を!?

田口:そう、ルースターズがフジロックへ出演するまでのドキュメントを追った作品を。僕が演じた清水(ジミー)は車椅子に乗ったヴォーカリストという役所で、大江慎也さん的イメージで行きたいってことらしくて。でも、その映像を見て途方に暮れました。パンクをテーマにしたコメディ映画なのに、このシリアスな映像のどこを参考にすればいいんだ? と思って(笑)。結局、全部見させて頂いて、凄く面白かったんですけど。

原島:のっけから衝撃のエピソードですね。クドカンがトモロヲ君に求めるイメージがちょっと迂回してる気がしますけど(笑)。それはさておき、『色即ぜねれいしょん』の公開おめでとうございます。監督作品としては2004年に公開された『アイデン&ティティ』に続いて2作目となるわけですが、トモロヲ君は俳優・監督・音楽と三つ巴のご活躍で。

田口:まぁ、三重苦とも言いますけどね(笑)。

原島:今回も原作はみうらじゅんさんで、最早みうらじゅん専属監督みたいなものですよね。

田口:「俺は“みうらじゅん事務所専属監督”ですよ」とみうらさんに言ったら、みうらさんに「いやいや、こっちが“田口トモロヲ事務所専属原作”だから」と言い返されて、なるほどなと(笑)。

原島:双方がインタラクティヴな関係性にあると(笑)。でも、『色即ぜねれいしょん』を撮るならトモロヲ君しかいないという唯一無二感はあったんじゃないですか。

田口:いや、そんなこともないですよ。『アイデン&ティティ』を撮った直後に『色即ぜねれいしょん』を映画にしたいという話がみうらさんのほうにあって、それを飲み屋で聞いてはいたんです。決定事項は大抵飲み屋で聞くことが多いんですけど(笑)。その話を聞いた時は俳優として出る気満々で、「高校生役でも全然イケますから!」とか言ってたんですよ(笑)。

原島:余談になりますけど、今日のトモロヲ君はラバーソールを履いてますからね。ラバーソールを履く51歳もなかなかいないと思いますけど(笑)。

田口:最近、LASTORDERZというパンク・バンドに入ったので、すぐに買ったんですよ。50歳を過ぎると、まずは今までやったことのない形から入らないと(笑)。映画の話に戻すと、竹内力さんと一緒に高校生役をやっている『カオルちゃん最強伝説』という『岸和田少年愚連隊』の番外編シリーズがありまして、それもあって『色即ぜねれいしょん』でも高校生役ができると思ったんです。でも、一度映画化の話が立ち消えになって、しばらく経ってから今回のプロデューサーから「映画にしたいんですけど監督やりませんか?」とオファーがあったんです。それが今から2年前の話で。

原島:『アイデン&ティティ』の主演は『色即ぜねれいしょん』にも出演している峯田和伸君でしたけど、今回の主演は黒猫チェルシーの渡辺大知君で、2作ともロック・バンドのヴォーカルが主演を務めていますね。

田口:原作が歌を唄えてギターを弾けるという設定だから、そうなるのは必然ですね。今回はリアル高校生かつリアル童貞の話なので、プロの童貞に演じて欲しかったですし。

原島:プロの童貞って(笑)。ちなみに、渡辺君は童貞なんですか?(笑)

田口:童貞職人ですね。プロフェッショナル童貞と呼んでもいいでしょう。今は判らないですけど、少なくとも撮影時はそうでした。やっぱり、童貞の匂いが皆無な俳優さんには演じて欲しくなかったですから。実際に童貞なのかどうか訊いたりはしませんでしたけど、童貞であるか否かは嗅覚で判ります。

原島:さすが童貞原理主義者ですね(笑)。

田口:童貞マインドは常にキープ・オンしてますから、その見識眼は厳しいですよ(笑)。


映画の神様が引き合わせてくれたキャスト

原島:童貞である上に歌とギターができるのがマストとなると、選択範囲はかなり絞られるよね。『アイデン&ティティ』の時も、ギタリストの中島を演じられる人間が何度も挙がっては消える感じでしたけど。

田口:そうでしたね。大手の事務所やレコード会社のガードが固かったりするんですよ。実際に会って話をさせてもらうアプローチをしても、レコーディングに入っているからと1ヶ月ほど待たされた挙げ句に「今回はお断りさせて下さい」とか言われたり。まぁ、映画は拘束時間が長い割に利潤が少ない面は否めないから、大手だと致し方ないのかなとも思うんですけど。そんな経緯もあって、峯田君は僕から直接アプローチしたんです。

原島:GOING STEADYを解散した直後でしたっけ?

田口:いや、解散直前でした。僕はGOING STEADYのことを余り知らなかったので、まず直接会って話をしたんです。その何日か後に解散が発表されたから、凄く驚いたんですよ。映画に出るのは大丈夫なのかな? と思ったから。でも、解散によって予定がキャンセルになったから逆に大丈夫だったんです。

原島:今回もなかなか難儀だったんじゃないすか? 今や12歳くらいで童貞を失う子供もいるこのご時世に、絶滅危惧種である16、7歳くらいの童貞バンドマンを探すなんて。

田口:ええ、トキを探すより難しいですよ(笑)。書類選考を含めて2,000人ほどオーディションしたんですけど、オーディション会場である東京と大阪を何度往復したことか…。

原島:主演の渡辺君はどんな経緯で選ばれたんですか。

田口:『音燃え!』という高校生バンドのオーディション番組に面白いバンドが出ていると聞いたんです。そこで黒猫チェルシーのライヴとメンバーの私生活を紹介する映像を見たんです。初期衝動を爆発させるような激しいライヴをやる一方で、素顔の渡辺君はとても礼儀正しくて、古風で素朴な青年なんです。で、これはもしかしたら…と思って、関西のオーディションに来てもらえないかと打診をしたんですよ。それで映画をやりたいかの意思確認をしたら、「是非やりたい」ということで、これは脈があるなと思って。

原島:渡辺君は昔の町田町蔵(現・町田康)を彷彿とさせる佇まいもあると思うんですが、かなりの逸材を見つけましたよね。

田口:そうですね。タイミングがズレていたら全くなかった話だし、『アイデン&ティティ』の時の峯田君との出会いも縁とタイミングがすべてだったんですよ。そういうのは本当に不思議な巡り合わせですね。映画の神様が引き合わせてくれたのかな? って言うか。あと、『アイデン&ティティ』も『色即ぜねれいしょん』もロックがテーマになっているので、ここでロックのマジックが来たか! みたいな感もあります。全く未経験な新人を主役に起用するのは、この世界ではギャンブルですから。

原島:峯田君は今回も起用しようと最初から決めていたんですか。

田口:彼は僕が映画を撮り続ける限りレギュラーですから。

原島:山田洋次監督にとっての寅さん一家みたいなものですか。

田口:『男はつらいよ』におけるおいちゃんみたいな存在です、峯田君は(笑)。その約束は峯田君にもすでに取りつけてあるので。実は今回も最初は峯田君を主役にしようと考えていたんですけど、「もう俺も30ですよ!」と言われて考え直したんですよ(笑)。

原島:ヒッピーを演じるくるりの岸田繁君といい、マドンナ役の臼田あさ美さんといい、脇を固めるキャストもくせ者揃いですね。

田口:ちなみに、今僕が着ているこのTシャツは臼田さんが作ったんです。“FREE SEX”と描いてあるんですけど(笑)。臼田さんは『AneCan』の専属モデルだった方で、オーディションで初めてお会いして話をしたら原作も大好きで、『アイデン&ティティ』も見て下さっていて。

原島:『AneCan』の専属モデルでありながら童貞映画のオーディションを受けるっていうのが凄いですよね(笑)。昔で言えばナゴムギャルみたいなものじゃないですか。

田口:本人たちに自覚はないんでしょうけど、メジャーなこととマイナーなことがボーダレスになっているんでしょうね。しかも、ナゴムギャルはルックスがブサイクと言われてましたけど(笑)、今は容姿淡麗ですから。やっぱり、時代は進化したということですね。

ドラマティックな出来事皆無のリアリティ

原島:ナゴムギャルが産んだ娘がメチャクチャかわいいって可能性もあるんじゃないですかね。

田口:いや、全くないんじゃないですかね(笑)。かつてサブカルチャーと呼ばれたものだろうがメインカルチャーだろうが関係なく、純粋に自分の好きなものを選んでいく価値観が主流を占める時代なんでしょう。今回、臼田さんがメインのインタビュー記事に親友として山田優さんや安田美沙子さんからのコメントが寄せられているんですよ。基本的に僕らとは相容れない方々じゃないですか? そんな川向こうの方々とお付き合いしつつ、Rooftopみたいなアンダーグラウンドな雑誌ともお付き合いできるのだから有り難いことです(笑)。

原島:今回、映画の舞台として隠岐島のユースホステルが出てきますね。そこがフリー・セックスの巣窟だと主人公たちが勘違いして行ってみるという。我々の世代では、かつて“ナンパ島”として知られた新島みたいなものですよね(笑)。

田口:まぁ、喜び勇んで隠岐島へ行っても期待していたこともなく、違うものを得て帰ってくるんです。特にドラマティックなことも起こらない地味な話なんです。言ってみれば、“文化系『クローズ』”もしくは“文化系『ROOKIES』”みたいなものですね。童貞をこじらせて『ROOKIES』みたいに卒業ができないっていう(笑)。世の中の大多数の人はそんな感じだと思うんです。『ROOKIES』のようにドラマティックな話だからこそみんな見たいのかもしれないですけど、等身大でリアルな青春はこの映画で描いている情けないものなんじゃないかと。

原島:つまずいたらそのまま立ち上がれないのが現実ですしね。

田口:そうですね。でも、それでも世界は回っているという。自分の気持ち次第でちょっと世界が変わって見えるんじゃないですか? という良い話なんです。

原島:折からの不況で先行きの見えづらいこのご時世に則した物語とも言えますね。絵づらだけを見ると現代の話のようにも感じますし。

田口:1974年の京都を舞台にしているんですけど、70年代はちょっと中途半端な時代劇なんですね。ただ、携帯電話が出てこないことは大きいと思います。『アイデン&ティティ』の時も時代設定をちょっと曖昧にしたくて、携帯電話が出てくるのはアリかどうかをスタッフと話したんですけど、結局はナシにしたんです。

原島:なるほど。ただ、今の時代、童貞という言葉はもはや死語になりつつありますけど。

田口:でも、童貞と処女と死はどんな人間にも平等にあるものですからね。その3つが詰め込まれているので、ドラマティックなことは一切起こらないけどテーマは大きい映画なんです。何せテーマは“色即是空”、仏教高校出身のみうらさんが原作ですから。

原島:さすがみうらさん、伊達に仏像と崖っぷちの世界を探究しているわけじゃないと(笑)。

田口:そうですよ。人間のド暗闇をどれだけ明るく表現できるかっていう。それがサブカルチャーというものじゃないですか。つくづく生きていて良かったと思いますね。昔はただ「気持ち悪い」とか「暗い」としか言われなかったのに、今はサブカルチャーがメインカルチャーを侵食する時代ですから。

原島:ちなみに、トモロヲ君の演技指導はどんな感じなんですか。

田口:基本的には優しいと思いますよ。全然怒らないし。ただ、演技指導は徹底して何度もやります。俳優としてスクリーンに出る人は、戦場の最前線にいるわけです。その人たちが魅力的に見えなかったら映画は成立しません。それはどんな脇役でもそうです。

原島:これまで出演してきた映画やドラマの中で、トモロヲ君に影響を与えた監督は誰ですか。

田口:たくさんいます。塚本晋也監督、廣木隆一監督、三池崇史監督、SABU監督、今村昌平監督、今村昌平監督のご子息である天願大介監督、足立正生監督、『MASK DE 41』という映画を撮った村本天志監督…挙げていけばキリがないです。そういった諸先輩方の現場のエキスや方法論を自分なりに吸収して、自分は監督としてどういうことができるかですよね。諸先輩方と比べて自分が如何にダメかを痛感しますけど(笑)。


『ストリート・キングダム』みたいな映画を撮りたい

原島:音楽で言うアドリブ的な手法を採り入れたりは?

田口:僕はないですね。たとえば今回も渡辺君がライヴでハジけるシーンがあるんですけど、それも一発勝負という形ではやってないんです。何度でも衝動的な感情を再生できるようにリハーサルできっちり作り込んでいるんです。カメラの位置を変えて何度も撮ったりして、一定のコンディションを作って演じてもらいます。特に新人の渡辺君に関しては、頭のシーンから最後まできっちりとリハーサルをやりました。僕は“千本ノック”と呼んでいました(笑)。

原島:トモロヲ君は灰皿を投げたりしないから(笑)厳しくはないだろうけど、それはそれで大変そうですね。

田口:でも、そこで手を抜くのはプロの人たちに対して失礼ですから。映画はライヴと違って一生残るものだし、音楽で言えばスタジオ録音みたいなものです。『アイデン&ティティ』で言えば、峯田君演じる中島がブチ切れてテレビ局でムチャクチャな演奏をするシーンは一発撮りで、シーンによって臨機応変に撮りますけど、基本的にはきっちりと作り込んでいきたいんです。そういうことを僕はいろんな映画監督から教えられたし、『鉄男』でまず最初に叩き込まれましたね。『鉄男』は1年半掛けて作った映画で、映画作りがどれだけ大変なのかを教え込まれたんです。

原島:『鉄男』は映画というカテゴライズを超越したようなエネルギーが充満した作品でしたね。

田口:塚本晋也監督の欲求と衝動がすべて詰め込まれた作品ですね。撮影は大変でしたけど、比較の対象もなかったし、僕自身も若かったからできたと思うんです。スタッフ3人で撮影して、塚本監督が出演するシーンは僕が照明をやったりしましたから。そういうのが当たり前だと思ったし、だからこそ今日まで俳優を続けてこれたんだと思います。今でもヨーロッパを中心に海外で『鉄男』は人気が高いし、僕にとっては財産です。ちなみに、北野武監督が『HANA-BI』でヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞しましたけど、その時の審査員のひとりは塚本監督ですからね。つまり、北野監督よりも先にヨーロッパで評価を受けているんです。日本の評価は低すぎますよ。石井聰亙監督たちもそうですよね。

原島:何故そういったねじれ現象が起こるんでしょうか。

田口:結局、日本の場合は商業と興行的な成功を収めなければならないんですよね。ヨーロッパは映画をアートとして認める土壌がありますから。

原島:監督として次作の構想はすでにあるんですか。

田口:自分が経験したインディーズのロック・シーンをテーマにした映画をセミ・ドキュメンタリー・タッチで撮りたいんですよ。地引雄一さんが書いた『ストリート・キングダム〜東京ロッカーズと80'sインディーズ・シーン』という本があるじゃないですか。ああいう感じの映画を死ぬまでに作りたいです。『ストリート・キングダム』はリザードのモモヨさんを中心に描かれた本で、自分で作る映画はどこに軸を置くかをまだ全然考えていないんですけど、とにかくあの頃のアンダーグラウンドなシーンを描いてみたいんですよね。

原島:そこにはトモロヲ君がばちかぶり時代にやった脱糞シーンも入れるんですか?(笑)

田口:入れませんね。僕が出るわけじゃないし、それは凄く小さなエピソードに過ぎませんから(笑)。そんなことよりも、じゃがたらの江戸アケミさんのこととかを描きたいんですよ。

原島:トモロヲ君の音楽的な原点はその時代ですよね。

田口:まさにそうです。じゃがたらを見て、こんなに格好悪くて格好いいバンドは他にいないと思ったし、こんなヴィジュアルのヴォーカリストは三上寛さん以来見たことがないと思ったので(笑)。

原島:トモロヲ君がじゃがたらを初めて見たのは10代?

田口:いや、エロ漫画を描いていた頃だから、もう20代でした。大晦日に渋谷の山手教会でやったライヴが最初ですね。当時のアンダーグラウンドのトップランナーが軒並み出演するライヴで、騒音が余りに酷くて中止になりかけたんですよ。その時、その辺の酔っ払いオヤジみたいなアケミさんが現れて、「日本人って暗いね! 性格が暗いね!」と突然叫び出したんです(笑)。僕はてっきり何かのハプニングかと思ったんですけど、それからバンドの演奏が始まった。でも音は止められちゃって、グルーヴだけでグイグイ行くわけです。終いには「この後、代々木公園に場所を移して俺たちだけでもライヴをやるから、興味のあるヤツは見に来い!」と煽って、僕も代々木公園に行ったんですよ。ジェネで機材の電源を入れて、ドラム缶に火をつけたライヴでね。

衝動だけでバンドをやったっていいんだ

原島:それ、完全にホームレスの炊き出し状態じゃないですか(笑)。

田口:でも、そのライヴが凄く格好良かったんです。それまで自分が見たことのない世界だったので。アケミさんもそうだったし、自分がオッサンになって気づいたんですけど、僕は昔からオッサン・キャラが好きなんですよ。キャプテン・ビーフハートもそうだし。あと、僕はジョン・ライドンがパブリック・イメージ・リミテッドの頃からずっと好きなんですけど、今のほうが好きなんです。セックス・ピストルズが現役だった頃よりも、再結成してからのほうが好きだし。それもオッサン・キャラが好きだからなんですよね。

原島:朽ち果てた佇まいに哀愁を感じるとか?

田口:何て言うのかな、生き急いだシド・ヴィシャスが未だに人気が高いのはよく判るんですけど、生きることって大変じゃないですか? ミック・ジャガーみたいに格好良く生きる人は少数で、自分にとって遠い感じがするんです。それよりも僕は等身大でリアルな人が好きなんですね。と言うことは、普通のひとくせあるオッサンなんですよね。

原島:言わんとすることはよく判ります。早川義夫さんのアルバムにも『かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう』というのがありましたし。

田口:僕にとってオッサンは凄く格好いいんです。俳優でもチャールズ・ブロンソンが好きなのは、ひとえにオッサンだからです(笑)。要するに顔力のある“ブ男子”好きなんですね(笑)。

原島:アケミの話に戻すと、じゃがたらの歌詞は簡潔でストレートでしたよね。

田口:“詩”なんですよ。今で言うラップに近かったし、判りやすい日本語というのが大事だった気がします。あと、姿勢が本気だということ。僕はじゃがたらを見てすぐにバンドを作りたくなったんです。その衝動がパンク本来の意味と意義じゃないですか? 選ばれた人じゃなくてもバンドをやってもいい、技術なんかなくても衝動だけでバンドをやっていいんだという勇気をパンクが与えてくれたんですよ。それで僕はすぐにばちかぶりを始めたんです。

原島:凄くインパクトがあるバンド名でしたよね。“ばちかぶる”は九州弁で“罰が当たる”という意味ですけど。

田口:単純に、日本人なんだから日本語のバンド名にしたかっただけなんです。後で石井聰亙監督の『爆裂都市』を見返したら「ばちかぶれぇ!」というセリフがあったのに気づいて、もしかしたらあの映画でインプットされたのかもしれません。当時はそういうパンチのあるバンド名がたくさんありましたよね。じゃがたら、非常階段、あぶらだこ、ハナタラシ、腐れおめことか。あと、名古屋に女の子だけのバンドで毒まんこっていうのがいましたね(笑)。毒まんこのライヴの告知ポスターを新宿JAMで見た時は凄まじい衝撃を受けました(笑)。その毒まんこのポスター、JAMのスタッフから貰ったのを僕は今でも持ってます(笑)。

原島:毒まんこの元メンバーの皆さん、トモロヲ君が会いたがっているのでRooftop編集部まで連絡ください(笑)。ちなみに、ばちかぶり自体は何年稼動したんですか。

田口:10年続けました。アケミさんが90年に亡くなった頃を境に、インディーズがメジャー化して時代が変わったんです。僕らもバブル期にメジャー・デビューはしたけれど、バブルが弾けて契約も終わったので、もういいかなと思って。自分たちがやっていた音楽は大袈裟に言えば“インディーズ運動”で、音楽業界のシステムを内側から変えるつもりでやっていたんです。大きなものから個に返すつもりでやっていたのに、最終的には大きなものに吸収されてしまった。だったらこの先は個々人でやりたいことをやっていけばいいんじゃないかと思って、そこで僕の“インディーズ運動”は終わったんです。

原島:『ストリート・キングダム』を意識した映画は、その“インディーズ運動”の熱気やテンションが詰め込まれたものになりそうですね。

田口:“世界を変えられるんだ!”という幻想を抱けた熱気みたいなものですよね。結果はどうあれ、そんな時代を気の合う同志たちと一緒に過ごせて価値観を共有できたこと自体が僕には財産なんです。かつてそういった幻想を抱けた時代があったことを、ノスタルジックにではなく今日性を含めた視点でいつか提示できたらいいなと思います。


after talk jam...
message to TOMORROW

 いやぁ、何とも楽しめた対談でした。毒まんこの元メンバーの方のブログを『プロジェクトX』のナレーション口調で読んでもらったのは録音しておけば良かった。至福のくだらなさです(笑)。(スマイリー原島)



映画『色即ぜねれいしょん』

公式サイト:http://shikisoku.jp/ 配給:スタイルジャム
 イラストレーター、作家などマルチに活躍するみうらじゅんの自伝的青春小説を『アイデン&ティティ』の田口トモロヲが映画化。ロックな生き様に憧れながらも、平凡で退屈な日々を過ごす文科系男子高校生のひと夏の成長物語を描く。シネセゾン渋谷、新宿バルト9、吉祥寺バウスシアターほかにて全国ロードショー中。




色即ぜねれいしょん オリジナル・サウンドトラック

音楽:大友良英
歌:渡辺大知(黒猫チェルシー)/峯田和伸(銀杏BOYZ)/岸田 繁(くるり)etc...
演奏:Guitar:大友良英/Strings arrange, Keyboard:江藤直子/Bass:西村雄介/Drums:中村達也/Blues harp:百々和宏 etc...
UK PROJECT UKCD-1129
1,995yen (tax in)
IN STORES NOW

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posted by Rooftop at 12:00 | バックナンバー
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