この秋、新宿ロフトで30日間にわたって開催される一大ロック・イベント「DRIVE TO 2010」がいよいよ来月に迫ってきた。1979年の伝説的イベント「DRIVE TO 80s」、1999 年の「DRIVE TO 2000」に続いて、30年以上にわたるライブハウス・シーンの歴史をリードしてきたミュージシャンが新宿ロフトに大結集するイベント、それがこの「DRIVE TO 2010」だ。30日間、しかも毎日2つのステージを使って行われるこのイベントには現在のライブシーンを代表するアーティスト達が多数出演するが、今回、あえて若手ミュージシャンの中から3組のアーティストにDRIVE TO 2010に対する意気込みを語っていただいた。パンク/ニューウェーブを後追いで体験した彼らが、DRIVE TO 80sから受け取ったバトンをどのように未来に伝えていくのか? それも今回の見所の一つである。
アーバンギャルド
アーバンギャルド(ニューアルバム『少女都市計画』10/9発売) |
昭和八十四年の思い出
一九八二年八月、楳図かずおの『わたしは真悟』の主人公・真悟と同じ頃に生を受けた僕は、工業用ロボットである彼が捨てられた夢の島の廃棄物処理場からそう遠くない埋立地の団地街で成長し、テクノポップやパンク/NWを聴いて育った訳ではないが、そのジャンクパーツで出来たようなフェイクでチープなアニメーションソング・コマーシャルソングを常に耳にしながらすくすくと育ち、バブルに沸く街の喧騒をTVの向こうに見て景気がいいなどと思った試しもなかったが、歌番組のセットがやたらに豪華だったこと、カトちゃんケンちゃんごきげんテレビでやたらにヘリやトラックが爆破されたことはよく憶えている。思春期はエヴァンゲリオンとともにやってきて、悩めるパイロットたちと同じ十四歳である自分を時に鬱陶しく感じたが、同年代の男子生徒のように猟奇犯になって警察に脅迫状を送りつける勇気はなかった。庵野監督は現実へ帰れとのメッセージを残し女子高生たちの渋谷をハンディカムで切り取り始め、FMラジオの周波に謎の空想Xが「こころの時代」のアンセムをかすめた頃、僕は図書館のレンタルCD棚の片隅に八十年代テクノポップ復刻盤の数枚を発見し、手に取った。ヒカシュー、ムーンライダーズ、ゲルニカ…ネットも普及していなく、今ほど過去がアーカイヴされていなかった頃の話だ。テクノポップやパンク/NWの流れを汲むこれらのサウンドは妙に懐かしく、しかし電子音という武器で未来へと加速しようとする意志がある点で非常にレトロフューチャー的でもあり、正直「ハマってしまった」。僕は自身の幼少の記憶とすり合わせるように、これら「過去の音楽」を「未来について語る過去の音楽」を、一心不乱に聞き込んだ。当時クラスメイトの誰もテクノポップなんて知らなかったし、聴いてもいなかった。やがて「未来」がやってきた。あなたがこれを読んでいる、いまこの瞬間に。(アーバンギャルド 松永天馬)
キノコホテル
キノコホテル |
1979年。この世に生を受けておらぬので記憶が無い。
1999年。私はクラシック音楽に傾倒するメランコリックで厭世的な少女であった。地球滅亡を心底願っていたが何にも起こらなかった。
2009年。私は女支配人と云う道を選び、ホテル経営の傍らステージ活動に勤しんで居る。惜しげも無く太股なぞ晒して。
その30年もの間、表現し続け、近頃の腑抜けた草食系野郎どもとは比べようも無いような危険な香りを放ち続ける諸先輩方、及び廃れる事の無いカルチュア。私は彼らの持久力に感嘆する。長きに渡り、変貌を遂げながらも自分の世界(それも、実に独創的な)を追求し続ける気力・体力は並々ならぬものであると想像する。しかも未だに熱心なリスナーが多く居ると云うこと。
私は現在のライブ・シーンに一応身を置く一人だが、今日、活動している若年層を仮に10年後、20年後に集めたところで、果たしてそれは記念すべき祭典になり得るだろうか? 時代の変移や個々の価値観の多様化もあろう。なかなかスターも出て来ないし、突出した若き才能にお目にかかれないのが残念である。
そんな中で活動を展開するキノコホテルなのだが、我々にとって2009年と云う年は実に有意義であったとして後々も振り返る1年になる事であろうと感じて居る。中でも最も幸運な出来事の一つが、この「Drive To 2010」への出場である。そもそも私は、念願の復活を遂げた戸川純さんのステージを、一観客として観に行くつもりで居たから、共演のお話を頂いた夜は身体中に電流が走り、興奮してどうにかなってしまいそうだった。キャリアも無い我々がロフトのメインステージに立つ事だけでも個人的には大事件なのである。この数奇な巡り合わせに感謝し、キノコホテルも精一杯華を添えさせて頂きつつ、ライブハウスが最高の遊び場だった時代を少しでも追体験出来たら良いと思う次第です。(マリアンヌ東雲/キノコホテル支配人)
JON(犬)
JON(犬) |
今回、私は4つのユニットで出演することになりました。
「マリリン&ジョン(犬)」は、かつてイカ天キングにもなった「有機生命体」というバンドのボーカリスト、マリリンさんとのデュオです。彼女の歌詞に私が曲をつけています。
「雷ごろジョン」は、元「のいづんずり」のごろうさんとの絶叫ユニットで、長くても15分くらいしかできません(笑)
「犬彦」は、「ガーゼ」のドラマーのヒコさんとのデュオです。彼はいろんな方とセッションしているんですが、これはインプロ(即興)ではなく、アレンジをヒコさんが考えてくれて私の曲をやるという完全なバンドです。
「ジョン(犬)」としてはもう94年から活動しています。自分の音楽はロックではないですけど、ここ何年かロックな生き方について考えています。「フールズ」を見た時も自分は、このまま音楽を続けていいんだなと気付いたところもあるんです。
子供の時から好きだった戸川純さんやケラさんからは、特に彼等の思想に強い影響を受けましたし、自分はその意思を引き継いでいるという自負はあります。そのような方々と同じイベントに出れることは本当に嬉しいことですね。(ジョン(犬))
INFORMATION
リザード
9月18日(金)@阿佐ヶ谷ロフトA
DRIVE TO 2010 直前!!プレイベント第4弾
「リザードが、フールズが、DRIVE TO 2010に大結集」
【出演】モモヨ(リザード)、伊藤耕(フールズ)、アーバンギャルド、ZIN(マダムエドワルダ)、折茂昌美(シャンプー)、他、DRIVE TO 2010 出演ミュージシャンDRIVE TO 2010実行委員会(清水寛、地引雄一、サエキけんぞう、サミー前田、いぬん堂、小暮秀夫、森早起子、小野島大)
OPEN18:30 / START19:30
予約¥1,500 /当日¥1,800(共に飲食代別)
予約は阿佐ヶ谷ロフトAにて電話またはWEB予約受付中。