あらゆる境界線を突き破る、妙なる音色のワンダー・レボリューション
『超ロボット生命体トランスフォーマー マイクロン伝説』を筆頭として、『特捜戦隊デカレンジャー』、『爆丸バトルブローラーズ』、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX』、『侍戦隊シンケンジャー』といった数々のアニメや特撮の主題歌を世に送り出してきたロック・ユニット、サイキックラバーが3年振りとなるオリジナル・アルバム『PSYCHIC LOVER II』を発表する。アニメ・特撮と聞いただけでもしあなたがいぶかしい顔をするのならば、実にもったいない話だ。彼らのルーツ・ミュージックである往年のハード・ロックを基調としながらも多彩なジャンルの要素を加味したその音楽は襟を正したくなるほどクオリティが高く、艶やかで伸びやかなYOFFYのハイトーン・ヴォーカルと確かなテクニックで陰影に富んだ音色を聴かせるIMAJOのギターが織り成す楽曲はどこまでもポップかつメロディアスで、聴き手の感情を鼓舞させる躍動感に充ち満ちている。何の先入観もなく素直にサイキックラバーの音楽に耳を傾ければ、彼らが極めてポテンシャルの高いユニットであることが自ずと理解できるはずだ。アニメや特撮の主題歌という体を取りながらも、そこには音楽に対する無垢なる愛と情熱が見て取れる。その無垢なる愛と情熱こそが窮屈なカテゴライズや境界線、そして国境をも突き破っていくのだ。(interview:椎名宗之+やまだともこ)
音楽的に振り幅を広くしてきた3年間
──ファースト・アルバムの『PSYCHIC LOVER』を発表して以降、セカンド・アルバムとなる本作『PSYCHIC LOVER II』の発表に至るまでのこの3年間は、活動の充実ぶりも含めて、サイキックラバーにとっては激動の時期だったんじゃないですか。『PSYCHIC LOVER II』はそんな激動の3年間の軌跡が詰まった集大成的な内容になっていると思うんですが。
YOFFY:『PSYCHIC LOVER』はデビューから4年掛かってリリースしたんですよ。毎回ベスト盤的な構成なんですけど、如何にアーティスト・アルバムとしての見せ方をするかがいつもアルバムのテーマだったりするんです。やっぱり、僕らは基本的にシングル・アーティストなので。
IMAJO:アルバムのリリースとしては3年振りなんですが、リリース自体はコンスタントにしてきたんです。それらの楽曲がアニメやゲームのサウンドトラックに入ったりしていたので、それをギュッとひとつにまとめて“サイキックラバーはこんなことをやってます”と提示したアルバムという意味では、集大成と言えば集大成なのかもしれません。
──アニメやヴァラエティのオープニングやエンディングの楽曲を数多く発表してきた中で、改めてこのアルバムに収録する選曲の基準というのは?
YOFFY:比較的リリースした時期が新しい曲を中心に、リスナーが求めているオープニング曲やエンディング曲は絶対に入れようと決めていて、あとはライヴで人気がある曲を選びました。
──ブログを拝見したら、曲間の時間を決め終わるまで10時間くらい悩みに悩んだとありましたが。
YOFFY:僕らの場合、いろんな曲があるんですよね。もろに打ち込みのプログラミングがされた曲があったり、ギター以外で統一された音がそんなにあるわけでもないので、それを繋げていくのはけっこう大変なんです。だいたいのアーティストはアルバムを作る上で構成を考えたり、そのために曲を作ったりしますけど、僕らはシングルのリリースが多いぶん、それらをうまく繋げなくちゃいけないんですよ。サウンドの趣向も多種多様で、一番古いものはデビュー当時の曲も入っているんです。ファーストに入れられなかった『胸いっぱいの…』が本作では一番古い曲になるんですけど、3年間の空白を埋めるだけではなく、そういう発表時期の時間軸も繋がなければいけなかったんですよね。
──ベスト・アルバムとして純粋に楽しめる趣向も本作にはありますよね。
YOFFY:『特捜戦隊デカレンジャー』という曲で注目された時には、そういう曲を作って欲しいというオファーもありましたし、アニメ・ソングは必然的にテンポが早くなったりするんですけど、そんな作風を敢えて避けようとしてきた3年間だったような気もしています。音楽的に振り幅を広くしていこうという時期で、いろんな楽器を入れたりして楽曲のスタイルは違えど、ヴォーカルとギタリストのユニットであることは変わらないので、そういう意味では統一感があると思いますね。
──おふたりにとって、この3年はどんな時期でしたか。
IMAJO:夏だったら“ANIME JAPAN FES”など、必ず呼んで頂けるイヴェントもありますし、イヴェントのステージはとにかく多かったですね。
YOFFY:イヴェントをコンスタントにやっていると、つい流されてしまいがちなんです。この時期にイヴェントがあって、ここでリリースして…という決まったタームがあるんですよ。たとえばシングルを出すとしたら、春か秋。4月か10月のアニメ番組の改変期にリリースしましょうという感じです。そういう流れの中に身を任せてしまうと、アーティストとして次のステップを忘れてしまいそうになるんですよね。アニソン業界はJ-POPやJ-ROCKの流れと違って1年で周期があるので、その中で次の道を模索する3年間でした。これはアーティストの被害妄想かもしれないですけど、アルバムをリリースしないといちアーティストとして世間に認めてもらえないんじゃないかと思ってしまうんですよね(苦笑)。僕らのシングルもアルバムもすべて集めて下さる方々にはいつも感謝していますが、『PSYCHIC LOVER II』をリリースしたことで、そういう方々以外にもサイキックラバーの音楽を届けていきたいんです。本当はもっと早く出せるかなと思っていたのに、思ったよりも時間が掛かってしまったんですけど。
自分たちの音楽にはお手本がない
──アニソンや特撮の主題歌は、職業作曲家としての資質が求められるじゃないですか。その資質と、アーティストとしての表現欲との摺り合わせが凄く難しいんじゃないかと思うんですよね。
YOFFY:パーセンテージをどの割合で出していくかがテーマではありますね。作曲家としての側面で言えば、8ビートでみんなが盛り上がる曲を書き続けていればいいと思いますし、こういう楽曲を作ったら採用されるだろうというサジ加減が判ってくるんです。でも、それに敢えて行かない時もありますよ。挿入歌とかアニメではないタイアップの時は違う冒険をしてみたい欲求がありますし、歌詞のメッセージ性に関しても、デビュー当時は安易にタイトルを叫んでいただけなんですけど、もうそこも飛び越えたかなと思っているので、2番の歌詞には必ず自分の言いたいメッセージ、アニメの世界観とは違うメッセージを入れてみたりしています。
──楽曲依頼が来た時は、やはりそのアニメや特撮の世界観を充分に理解した上で書くんですよね?
YOFFY:アニメだったら原作の漫画を相当調べますよ。作品があれば全部読みます。何と言うか、ヴォーカリストは役者に近いんですよね。自分の主張を押し通して独り善がりの歌を唄っても、音楽ファンもアニメ・ファンもどちらも満足したものにはならない。だとしたら、自分がその世界の中に入って、まず最初に役になりきってから曲作りに臨んだほうがいい。あと、応援歌であることは必要なラインだと思うので、そこは気を留めています。
──サウンド作りも一見自由にやれているようで、大衆性の高い楽曲として成立させるにはいろんな苦労があるんじゃないかと思いますが。
IMAJO:曲作りに際してYOFFYは役者に徹していますけど、僕は客観的に見ていることが多いですね。プロデューサーから言われたことを一旦置いて遠くから見て、それから作るケースが多いんです。曲に関しては、デビュー当時はここにテクニックを入れて、ここにライトハンドを入れて…とかを現場でやっていましたけど、最近はある程度作り込んでいくんです。そこからさらに踏み込んで、スタジオでああでもない、こうでもないとか言いながらアドリブでフレーズを弾くのは最近になってからですね。レコーディングが終わって、ライヴでやる時に自分のフレーズを弾くのが大変だったりしますけど(笑)。
──ギタリストとしてもっと前に出たい欲はないですか。
IMAJO:基本的にふたりでやっているので、必然的に前に出ることが多いですよ。もともと目立ちたがり屋ですし(笑)。
YOFFY:全面的に出てるよね(笑)。僕らの音楽って圧倒的に音数が多いんです。だから、アレンジャーともよく話すんですけど、お手本がないんですよ。たとえばヴァン・ヘイレンみたいな曲をやろうとしても、そのままやったら音数が少なすぎて、僕らが求めているものに比べるとボリューム感が出なくなってしまうんです。今のサウンドを作り上げていくまでには試行錯誤がありましたし、未だにトラックダウンがメチャクチャ大変で、バランス芸術みたいな感じなんですよ。普通のロックを聴いていると、俺たちは音数が多いんだなと実感しますから。
──となると、ライヴで再現するのが大変ですよね?
YOFFY:だから同期が必要になるんです。
IMAJO:どっちがいいか悪いかは判断が難しいですけどね。
──『Blaze Out!』や『ブッちぎり∞ジェネレーション』といった打ち込みを大胆に採り入れた楽曲をライヴでやる時は同期が欠かせないでしょうね。
YOFFY:シンセ・ベースでやっているような曲も、ライヴだとベーシストのロックなセンスに任せて弾いてもらったりするマイナー・チェンジはありますけど、お客さんが叫んでくれるであろうパートもいっぱい入っていますからね。
──ライヴを意識した曲作りは随所に感じますね。『ナンバーワン・バトルブローラーズ』などは、オーディエンスがシンガロングしたくなる巧妙なトラップが仕掛けられていますし。
YOFFY:元ネタと言うか、自分の中で『ナンバーワン・バトルブローラーズ』はビーチ・ボーイズを意識した部分がちょっとあるんですけど、そういうのを気づいてもらえるんじゃないかという楽しみもあるんですよ。自分が好きだったロックを、自分のフィルターを通して今のリスナーに届けたい気持ちが凄くあるので、知らず知らずのうちでもそれを受け取ってもらえると嬉しいですね。
等身大のメッセージ・ソングを唄いたい
──本作に収録された新曲のひとつ『LET'S TRY TOGETHER』は、80年代のハード・ロックのテイストがよく出ていますよね。
YOFFY:今、ハード・ロックをストレートにやるバンドが少なくなりましたよね。中村あゆみさんが最近CMで唄っていますけど、アメリカン・ロックを堂々とやる歌謡ロック・バンドが少なくなった気がするんです。そんなテイストの楽曲も、サイキックラバーというフィルターを通して今のリスナーに是非聴いてもらいたいんです。
──アニメや特撮にしか興味がなかったリスナーがサイキックラバーのルーツ・ミュージックを聴いたりするフィードバックもありますか。たとえば、サイキックラバーをきっかけにエアロスミスを聴いてみたりとか。
IMAJO:ロック好きな人って、ロックが好きでアニメも好きな人が多いんですよ。
YOFFY:あと、お笑いとプロレスだよね。
IMAJO:アニメの主題歌だから聴いていたという人でも、僕らが好きなアーティストを聴いてみたら好きになったという声を聞いたことがあります。
YOFFY:それに、戦隊モノを見ているお子さんを持つお父さんやお母さんが世代的にもドンピシャだったりするんですよね。そういう人たちの反応は凄くいいんですよ。
IMAJO:自分が多感な時期に聴いた音楽って、絶対に頭にこびりついているものなんですよね。でも、それを人に勧めるのは価値観の強要だったりするじゃないですか。だからそのサジ加減は難しいと思っています。サイキックラバーを通じていろんな音楽的要素を感じてもらえたら嬉しいですけど。
──『侍戦隊シンケンジャー』もそうですが、気持ちを鼓舞されるようなメロディと言うか、ダイナミックに楽曲が展開していくところは80年代のハード・ロックと構造が似ていますよね。
YOFFY:僕はボン・ジョヴィのジョン・ボン・ジョヴィが『リヴィン・オン・ア・プレイヤー』で空を飛んでいるのを見て音楽をやろうと思ったので、その時の気持ちをずっと失いたくないし、あの気持ちの昂揚をみんなに味わって欲しいんです。となると、Aメロ→Bメロ→サビという流れがサイキックラバーには必要なんですよね。
──『Precious Time, Glory Days』みたいに疾走感のある楽曲でも胸を締めつけられるメロディ・ラインがあって、それはサイキックラバーの楽曲に通底していますよね。
YOFFY:哀愁ですね。ワム!の『ケアレス・ウィスパー』とか大好きですから。歌謡曲の血が自分の中には脈々と流れているし、去年は杉山清貴さんのライヴを見に行って興奮しましたから(笑)。
IMAJO:僕も哀愁系は好きですね。マイケル・フランクスの『アントニオの歌』とか大好きです。好きな曲は挙げるとキリがないですけど、哀愁の要素は必ずどこかにあると思います。ゲイリー・ムーアがブルースを始めた頃とかも好きでしたし。
──『PRAYER -somewhere on the planet-』のように哀愁の入り混じったエモーショナルな楽曲は、タイアップに関係なく純粋に良い曲ですよね。
YOFFY:あの曲は大映ドラマの主題歌を目指しました(笑)。
──ワム!の『ケアレス・ウィスパー』を西城秀樹が『抱きしめてジルバ』として唄うようなニュアンスを個人的に感じたんですよね(笑)。
YOFFY:恥ずかしげがない感じですね(笑)。そういう意味では洗練されたお洒落さはゼロなんですけど(笑)。クサいものを恥ずかしげもなくやれるユニットがサイキックラバーなのかもしれません。
──もうひとつの新曲『IT'S YOUR SONG』を聴くと、おふたりがリスナーをとても大事にしていることが窺えますね。
YOFFY:あれはラジオのテーマ・ソングとして作って、2年くらいデモ・ヴァージョンを流していたんですけど、今回改めてレコーディングをしたんです。いつものように熱い魂も宇宙も歌詞には出てこないんですけど、等身大のメッセージ・ソングを唄いたいという願望が凄くあって生まれた曲なんですよ。アニソンのファンには純粋な人が多いし、そういう人たちに投げかけるのはやっぱりメッセージ・ソングになることが多いですね。
完成度の高い楽曲を提供している自負
──アニソン・ファンは20年くらい前のロック・ファンに近いところがあると思うんですよ。CDもグッズも全部買うし、忠誠心が凄く高いじゃないですか。ひと昔前のロック・ファンもそんな感じでしたよね。
IMAJO:僕らのお客さんは男性が一時期けっこう多かったんですけど、最近は女性が増えて、いろんなタイプがいるんですよ。アニメも特撮も好きでライヴに来ていますという人でも、僕らの作品をコンプリートしてくれる人もいれば、アニメは見ないけどサイキックラバーは好きという人もいて、そういう人たちがひとつになって盛り上げてくれているのが嬉しいです。
──アニメや特撮のファンはヘンな先入観がないですよね。良いものは良いと純粋に評価を下すフラットな耳をしていると言うか。
YOFFY:欲を言えば、もっと批判を受けたい気持ちもありますけどね(笑)。
IMAJO:アニメや特撮の主題歌である以上、演奏も歌もアレンジもある程度のクオリティは絶対に求められるんです。その意味でも完成度の高い楽曲を提供している自負はありますし、その意識と志の高さは常に持つようにしていますね。
──マーチ風の荘厳なリズムで始まる『SWAT ON デカレンジャー』のように、アレンジが細部まで凝ってある楽曲も多いですよね。
YOFFY:あれは僕もびっくりしました。“3人目のサイキックラバー”と呼んでいるアレンジャーの大石憲一郎君の力ですね。あの曲の間奏の大袈裟な感じが凄く気に入っていて、そこを抜き出してライヴのイントロダクションとして使っているんです。オジー・オズボーンのライヴみたいに。
──大石さんからのアイディアで曲調がガラッと変わったり、膨らんでいった曲も多いんですか。
YOFFY:僕らの場合、他のアーティストに比べると制作に掛ける時間が凄く限られていると思うんです。以前は1週間掛けられた曲でも、今は3日で仕上げて欲しいって言われますから。レコーディング期間は2日くらいもらえるんですけど、プリプロをやることはほとんどないんです。MP3でやり取りしながら自宅でやれることをやって、すぐにレコーディングに突入するという濃縮された期間でやっているので、同じチームとして、同じ気持ちでいられる人が必要なんです。大石君はまさに適任ですね。大石君のアイディアで広がったものと言えば、イーボー(ギターのエフェクター)を使うというのがありました。
IMAJO:イーボーは知ってはいましたけど、大石君が「イーボーのニュアンスって良くない?」って買ってきて、その時に初めてちゃんと使ったんですよ。そのプレイが『PRAYER -somewhere on the planet-』のイントロになっています。
YOFFY:僕はヴァイオリンを入れたいってリクエストしたんですけど、ヴァイオリンはどうだろう? って言われて、だったら持続音としてテルミンとかで何とかならないの? って話をして、最終的にイーボーを使うことにしたんです。大石君はいつも思わぬアイディアを持ってきてくれるんですが、たまにあり得ないテンションのコーラス・ワークをやろうとか言ってくるんですよ。録れないよ、こんなの…みたいな(笑)。
──コーラスは柴田浩之さんを始め数名参加されていますが、柴田さんによると高音が難しかったそうですね。
YOFFY:最近はコーラス・アレンジも僕がやるようになっているんですけど、80'sロックの醍醐味って分厚いコーラスじゃないですか。ジョン・ボン・ジョヴィが唄っているわけがない音域がグアーッと出た感じと言うか。そういうのをどう出せばいいのかずっと考えていたんですが、強力なゲストをたくさん呼べばいいんだなと思って。だから最近はいろんな人の声を入れていますね。
──ハーモニーはサイキックラバーにとって大きな持ち味のひとつですよね。
YOFFY:デビュー当時はヴォーカル一本で聴かせる勇気がなかったので、全部ダブリングをしていたくらいなんですよ。
IMAJO:コーラスはデビュー当時から比べるとどんどん増えてますからね。最初のデモで、歌と歌の間に隙間があるからギターを入れようとか考えていると、「そこはコーラスが入るから」って言われるんですよ。隙間がないくらいコーラスが入ることになっていて(笑)。
YOFFY:僕が作るデモは、コーラス・アレンジも最初から完全に入っているんです。ここで追っかけが来て、ここでハーモニーになって…みたいな。設計図は事前に組み立ててあって、スタジオで追加で音を入れることはほとんどないんですよ。
アニソンの世界に辿り着いたのは必然だった
──IMAJOさんのギター・ソロもあらかじめ決められているんですか。
IMAJO:それは抽象的な感じですね。適当に弾いたのが採用されたりもしますが、曲のために弾くという感覚が一番大きいです。激しい曲はガーッと弾くし、メロウな感じのもあるし、『PRAYER -somewhere on the planet-』はイーボーだけだし。
YOFFY:周りのスタッフはジョー(IMAJO)の刹那的な部分を求めている感がありますね。組み上げられた世界なので、その中で自由にやっている雰囲気は残したいんですよ。
──『ブッちぎり∞ジェネレーション』の間奏は、火を吹くようなギター・ソロですけど。
IMAJO:『ブッちぎり∞ジェネレーション』は元々ロックっぽく作っていたんですけど、トランスにしようとプロデューサーから話があったんです。
YOFFY:浅倉大介さんが作ったガンダムの曲がトランス・サウンドをやっていたし、アニメ・ファンはどんな音楽性でも貪欲に楽しむんだなと思ったんですよ。
IMAJO:大石君が「トランスなら一瞬でできるから任せて」と言ってくれたこともあったしね。
YOFFY:歌とギターを抜いてオケだけを聴くと、“こんなジャンルだったの!?”みたいな驚きがサイキックラバーの曲にはあるんですよ。実は1曲目の『LOST IN SPACE』も、歌とギターを取って聴くとブンブンサテライツみたいになるんです。大げさなコード進行にこの2人の味が入ることで、X JAPANとブンブンサテライツが合体した感じになったと自分では思っています。敢えてシンセ・ベースで、生ドラマーが叩いたものをサンプリングしました的なコラージュをしました。ひとつのアーティストでこんなに節操がなくていいのかな? とも思うんですけどね(笑)。
──情報量が異常に詰め込まれたアルバムという言い方もできますね。
YOFFY:聴いていて疲れるかもしれませんね(笑)。
──収録時間も軽く1時間を越えていますからね。楽曲をフルに詰め込む意図は最初からあったんですか。
YOFFY:これでも削った曲があるし、これもあれも聴かせたいという欲求が出てしまったんですよ。
──ちなみに、『侍戦隊シンケンジャー』の三味線の音はシンセで作っているんですか。
YOFFY:サンプリングしたものです。実は、『侍戦隊シンケンジャー』は作曲家としてコンペに参加したもので、サイキックラバーとして唄うとは1ミリも考えていなかったんです。デモの時から仮歌と三味線は入れてあって、誰が唄うんだろうと思っていたくらいで。それがあれよあれよという間に僕らが唄うことが決まって、レコーディングに入ることになったんです。キーを変えることも忘れて、その結果、限界ぶっちぎりの音域で1年間頑張らなくてはいけなくなってしまったんですよ(笑)。
──でも、もの凄くポップでキャッチーな曲ですよね。
YOFFY:子供向けにしては入り組みすぎたかな? とも思いましたけどね。
──昔から不思議に思うんですけど、アニメや特撮の主題歌は何故ハード・ロック調の曲がしっくり来るんでしょうね。
YOFFY:テレビから流れてくる音圧って、ギターやハード・ロック、トランス系のダンス・ミュージックの音圧が一番燃えると思うんです。それが子供たちを燃え上がらせるんじゃないかと思いますね。
IMAJO:ギターのディストーションがフラットしたものじゃないですか。通常の使い方とは違って、音量をデカくしすぎて歪んじゃった感じなんですよ。それを子供たちが汲み取ってくれているのかなとも思いますし。
YOFFY:僕ら、ハード・ロックをベースとした音楽をやりたいなと思っていても、アマチュアの時はやる場所がなかったんです。ライヴハウスにブッキングしてもらっても、ソフト・ヴィジュアル・デーみたいな日にしか出られなかったりとか。ブッキングを断られたり、行き場がなかったので、アニソンの世界に辿り着いたのは必然だったと思います。八方塞がりのまま活動していても、デビューは絶対にできなかったでしょうし。
IMAJO:あれくらい歪ませたギター・サウンドって、一度終焉を迎えた気がするんです。そこから再度やるためには、サウンドもヴァラエティに富んでいないとダメと思うんですよね。
YOFFY:2000年に入ってから、ギター・ソロは格好悪いみたいな風潮になりましたよね。それでもジョーは未だにピロピロ弾いていますから(笑)。
IMAJO:昔、音楽の学校でギターを教えていた時期があるんですけど、10代の子がハロウィンのスコアを貸し借りしていて、ハード・ロックの世界は昔と全然変わっていないんだなって思いましたね。
色眼鏡で見るロック・ファンに聴いて欲しい
──古き良きハード・ロックを分母に置いた音楽でありながら、サイキックラバーはアメリカやブラジルなどの海外でもライヴを成功させていますよね。
YOFFY:ハード・ロックって、世界を見渡したらある程度の人気が未だにある音楽じゃないですか。ブラジルでもビックリするくらいにメタルが聴かれているんですよ。世界的にもJ-POPやJ-ROCKはクールな音楽として認知されている風潮がありますし、ヴィジュアル系は世界各国で通用していますからね。
IMAJO:日本人が思っている以上に、日本のカルチャーが世界に受け入れられているんですよ。
YOFFY:それに国内の皆さんはもうちょっと気づいて欲しいですね(笑)。
IMAJO:日本人が作る繊細なものに興味を持ってくれているみたいなんです。向こうのアニメって大抵大味なんですよ(笑)。オープニングの曲とバックの絵が全然リンクしていないこともよくありますし。そう考えると、日本のアニメはよく練って考えてあるところがリスペクトされているのかなと思いますね。
──言葉は日本語であろうが、自分たちの音楽は国境を越えられるという自負はありますか。
YOFFY:ありますね。アメリカに2回、ブラジルに1回というわずかな経験ですけど、最初にビビっていた自分からするとだいぶ自信がつきましたよ。歌詞も何となくですけど、みんな唄ってくれたりするんです。面白かったのは、プロレスラー並みに体が大きくてジャック・ダニエルを呑んでいるような人たちが、僕らが演奏するのを見て認めてくれたことなんですよ。
IMAJO:最初は何も喋ってくれないんですけど、ステージが終わってようやく話しかけてくれるんです。「一緒に飲むか?」って。
YOFFY:ライヴハウスにライヴを見に来ているというよりは、お酒を呑みに来ている感覚が強いと思うんですけど、その人たちが僕らの演奏に耳を傾けて、最後に声を掛けてくれたのは感動しましたね。
──海外のオーディエンスも、日本のアニメ・ファンと同じように何の先入観もなくサイキックラバーの音楽を聴いた上で評価してくれたわけですね。
YOFFY:だから、あとはアニメというだけで色眼鏡で見る日本のロック・ファンに僕らの音楽を聴いてもらいたいんですよ。
──たとえば『ALWAYS』は歌詞も素晴らしいし、何の偏見もなく聴けば純粋に楽しめる楽曲ですよね。
YOFFY:デビュー前は8ビートの曲がなかったんです。8ビートなんて格好悪いと思っていた時期で、スイングしているかシャッフルしている感じの曲ばかりだったんですよ。それがこの世界に来てから圧倒的に8ビートの曲が増えて、そういう曲を求められていることにも気づいていますけど、その中で本性をチラッと見せたのが『ALWAYS』なんです。
──本性丸出しのアルバムも是非聴いてみたいですけどね。
YOFFY:やりたいですね。アーティスト・アルバムを作るという目標は常にあります。CDが売れないご時世でも、買ってくれる人が増えるようなアルバムにしたいですね。
──ロックであろうが、アニメ・特撮であろうが、その垣根を飛び越える自由度の高さがサイキックラバーにはありますよね。
YOFFY:そうですね。みんなを巻き込みたいんですよ。まずは日曜の朝から洗脳しようという壮大な計画ですね(笑)。正直、僕も最初はアニソンなんて…と思っていたんです。プロの作曲家や編曲家が用意した曲をアニソン歌手が唄わされている世界だと思ったし、デビューした時もアニソンを好きで唄っているのか? やらされているのか? という偏見を持っていました。でも、今は違う。タイアップ音楽ではあるけれど、そこにアーティストの主張もちゃんと混在させられることが証明できてきていると思うんです。それでもアニソン歌手ということで色眼鏡で見られることはありますけど、僕らはサイキックラバーとして誇りを持って活動していますからね。
──今後もあらゆる境界線を突き破っていく姿勢は変わりませんか。
YOFFY:アニメだろうと特撮だろうと関係なく、ひとつのロック・バンドとして認知されたいですね。
IMAJO:アニメで僕らを知ってくれた人もいますし、シンケンジャーのテーマ曲しか知らないっていう人もけっこういると思いますけど、いろんな人に聴いてもらいたいです。
──何よりも本誌を読むロック・ファンにまず聴いてもらいましょうよ。シンケンジャーのテーマ曲はテレビで流れているのを聴きましたけど、スッと耳に入ってきますし。
YOFFY:如何に脳内でリフレインさせるかなんです。刷り込みが大事なんですね(笑)。
──それこそが本当の意味でのポップ・ソングなんだと思いますよ。今の時代、子供から大人まで唄える曲はアニソンくらいなものなのかもしれない。その意味で言えば、サイキックラバーはポップ・スターとしての資質も充分に兼ね備えていますよね。
YOFFY:いや、ポップ・スターという意識はないです。唯一それを感じるのは、後楽園の周りを歩いている時ですね。「お疲れ様です!」って戦隊ショーに通っている大きいお友達から声を掛けられますから(笑)。
PSYCHIC LOVER II
01. LOST IN SPACE(『TYTANIA』エンディング・テーマ)
02. IT'S YOUR SONG(『サイキックラバーのFw:アニカンRADIO』テーマ)
03. 侍戦隊シンケンジャー(『侍戦隊シンケンジャー』主題歌)
04. Precious Time, Glory Days(『遊戯王デュエルモンスターズGX』主題歌)
05. Blaze Out!(PSゲーム『ブレイザードライヴ』主題歌)
06. 胸いっぱいの…(『超ロボット生命体トランスフォーマー マイクロン伝説』挿入歌)
07. SUBLIMINAL I LOVE YOU(『完売劇場』エンディング・テーマ)
08. ナンバーワン・バトルブローラーズ(『爆丸 バトルブローラーズ』主題歌)
09. SWAT ON デカレンジャー(『特捜戦隊デカレンジャー』挿入歌)
10. ブッちぎり∞ジェネレーション(『爆丸 バトルブローラーズ』主題歌)
11. PRAYER -somewhere on the planet-(『TYTANIA』挿入歌)
12. WONDER REVOLUTION(『爆丸 バトルブローラーズ』挿入歌)
13. 鼓動 -get closer-(『WITCH BLADE』最終回エンディング・テーマ)
14. LET'S TRY TOGETHER
15. ALWAYS(『セレクションX』エンディング・テーマ)
Columbia Music Entertainment COCX-35742
2,940yen (tax in)
2009.9.02 IN STORES
Live info.
PSYCHIC LOVER LIVE 2009〜LET'S TRY TOGETHER〜
2009年10月4日(日)Shibuya DUO
OPEN 17:00 / START 18:00
【チケット料金】¥5,500(税込)*ドリンク代別途¥500
ローソンチケット(Lコード:72156)
受付電話番号:0570-084-003(Lコード必要・24時間受付)
【総合お問合せ】ラムズ 03-5368-2151(平日10:00〜17:30)
PSYCHIC LOVER official website
http://www.rams.jp/psy/