ギター 編集無頼帖

SION-YAON 2009

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 自分の誕生日がゾロ目なもので、数の語呂合わせ的なものには普段から敏感だ。昨日は八月八日。ダブルスコアで末広がりだなんて、ただそれだけで目出度い。それだけで特別な一夜になることは約束されたようなものだ。
 今や日本の音楽シーンにおける夏の風物詩と言っても過言ではないSIONのYAON。今さら言うまでもないことだけれど、野音ってやっぱり格別な場所である。あの至上の開放感と高揚感はあの場でしか味わえない。聴こえてくるのはステージのソリッドかつタイトな演奏と真に迫るSIONの歌声だけではない。オーディエンスの歓声や話し声、蝉の鳴き声、上空を行き来するヘリコプターの音、昨日は遠方の花火の破裂音まで絶え間なく聴こえた。その雑然とした空間が何とも心地好く、酒がさらに進む。
 お陰で開演前から散々呑み過ぎてしまい、メンバーがステージに現れただけで胸がいっぱいになる。それでいきなり『放つ』だもん。そりゃ泣くわ(笑)。『放つ』、『お前の空まで曇らせてたまるか』、『Teardrop』、『鬼は外』とのっけから立て続けに新曲4曲、さらに早くも惜しげなく披露される『磨りガラス越しのオレンジ』。いい。やはりどれもいい。『鏡雨〜kagamiame〜』の収録曲がまるでかつてから在るスタンダード・ナンバーのように輝きを放っているのは、ライブ特有の高揚感からだけじゃない。事実、「俺、まだ新しいアルバム買ってないんだけどさー」とのたまう近くの不届き者(悪いこと言わないから早く買いなさい)が新曲でガッツリとノッている。
 そうなのだ、SIONのYAONはオーディエンスの姿を見るのも大きな楽しみのひとつなのである。激しく踊りまくる人、拳を突き上げる人、隣の仲間と何度も缶ビールで乾杯し合う人、座席と売店を何度も行き来して酒を喰らう人、じっと熱くステージを見守る人。皆それぞれ好きなようにSIONの音楽を心の底から楽しんでいて、見ているこちらまで胸が躍る。
 今年はあいにく井上富雄が不在でMOGAMIにはならなかったけれど、清水義将の奮闘が際立っていた。演奏は全体的にしなやかで締まりが良く、SIONがすこぶる気持ち良く唄っていたのが印象的。それも勝手知ったるメンバーによる鉄壁のアンサンブルゆえだろう。個人的には2度目のアンコールの1曲目『今日の全部を』に自分の過去を照らし合わせて、少し泣いた。
 だが、一番泣かされたのはメンバーがステージを去った後である。ひとりずつの挨拶を終え、これで終演なのだと皆理解しているはずなのに、オーディエンスは誰一人として客席を離れようとしない。何故なら、BGMとしてSIONが弾き語りで唄う川村カオリのカバー『金色のライオン』が流れたからだ。これには泣けた。SIONのそんなさりげない優しさに心をくすぐられて、バカみたいに泣いた。曲が終わり、大きな拍手と歓声に包まれる中、SIONがひとりステージに現れて挨拶した。聞けば、テレビの取材を断ってこの曲を家で録っていたのだという。そして、空の上にいる盟友に向かって「カオリー!」と叫んだ。その姿を見て、また泣いた。
 届いたかな? きっと届いたよね? SIONのYAONが“約束の場所”となる意義がまたひとつ増えたよ。来年、また、野音でね。SION、嘘のない優しさをどうもありがとう。(しいな)
 【SET LIST】01.放つ/02.お前の空まで曇らせてたまるか/03.Teardrop/04.鬼は外/05.磨りガラス越しのオレンジ/06.ガラクタ/07.Happy/08.Slide/09.エレファントソング/10.光へ/11.鏡雨/12.karan/13.住人/14.通報されるくらいに/15.一瞬/16.新宿の片隅から/17.マイナスを脱ぎ捨てる
 en1-01.遊ぼうよ/en1-02.お前がいる/en1-03.Hallelujah
 en2-01.今日の全部を/en2-02.彼女少々疲れぎみ/en2-03.たまには自分を褒めてやろう/en2-04.このままが
posted by Rooftop at 19:00 | Comment(0) | 編集無頼帖
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