ギター 編集無頼帖

『DOLL』の休刊

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 『DOLL』が来たる7月1日発売号をもって休刊するという話を聞いた。日本における活字パンクの先駆的存在であり、『DOLL』にインタビューが掲載されることがひとつのステイタスとされるなど、揺るぎないブランド性を保持した存在だと思っていただけに大きなショックだし、非常に残念だ。
 これもやはり、未曾有のCDパッケージのセールス激減と有料活字誌面の読者離れが原因なのだろうか。我々のようなフリーマガジンと違って、メーカーの宣伝費に頼らずとも同業他誌と一線を画した誌面作りをして実売で何とか売上を維持できるのではないかとも思うが、日本のパンク・カルチャーにおける絶対的な権威として君臨した『DOLL』を休刊に追い込むほどまでに活字離れが進む一方ということなのだろうか。
 パンクやヘヴィメタルといったジャンルに特化した専門誌は景気の動向に余り左右されないものだと思っていた。『DOLL』も『BURRN!』も独占企業みたいなものだから、休刊とは縁遠いと存在だと考えていたのだが…。
 言うまでもなく、この事態は対岸の火事ではない。音楽を活字で伝える文化は今風前の灯火となっている。何とかしなければと切に感じている。ネットで拾える情報には決してない、表現者のパーソナリティや作品作りの裏側に肉薄し、独自の切り口による企画や妙味な組み合わせの対談など、より一層知恵を振り絞らなければならない。
 読者の皆さんに無料配布するため、毎月の印刷製本代を稼ぐために我々も同業他誌同様に広告営業に勤しんでいるが、この一年ほどは本当に厳しい状況が続いている。こちらの提案をことごとく断られると、まるで人格まで否定されるようでとても辛い。
 だが、こんな世知辛い時代でもちゃんと好セールスを維持しているバンドはいるし、広告需要の高い媒体は依然としてある。つまり、我々の媒体認知度と努力がまだまだ足りないのだ。
 欧米のロックが豊かだなと思うのは、ルーツ・ミュージックやクラシカルなロックに対して一定のリスペクトがあるところである。散らばった点と点が一本の太い線となり、ロックの一大絵巻の体を成している。時間軸を超え、ロックが豊穣な文化となって脈々と受け継がれているのだ。だから父と子が等価でビートルズを愛聴できる。流行が流行のまま終結し、消耗品として点在したままで終わる日本のポピュラー・ミュージックとはまるで異なる。
 『DOLL』にはそういった海外・国内問わずパンク・ロックの歴史をビギナーに判りやすく伝える好企画が多々あった。ジャームスの詳細なバイオグラフィ本なんて逸品を出せたのは『DOLL』だけだった。つくづく休刊が悔やまれる。
 同時代の横軸の音楽と、連綿と受け継がれる縦軸の歴史を立体的かつ奥深く伝えるのは紙媒体にしかできない芸当だと僕は思う。日本のロックの更なる成熟に寄与するためにも、我々は何としてでもRooftopを刊行し続けなければならないし、かつて出資元を探して復刊を果たした『音楽と人』のように、『DOLL』には是が非でも復刊してもらいたい。ストリートから生まれるポテンシャルの高いロックを支える媒体が痩せ細る一方では、日本に明日のビートルズが生まれなくなってしまうのだから。(しいな)


posted by Rooftop at 01:00 | Comment(2) | 編集無頼帖
この記事へのコメント
噂を聞いて、検索したらここにたどり着きました。
ZOOの時からの読者でした。当時、僕が宣伝を担当した、ミッキー森脇さんが何故か浅川マキを好きでいてくれて少し場違いな紙面に何度か取り上げてくれました。最近は手に取る事も稀でしたが、寂しい限りです。
Posted by KAMO at 2009年08月03日 23:32
>KAMOさん
書き込みありがとうございます。
月並みな言葉ですが、確実にひとつの時代が終焉を迎えた感がありますよね。本当に寂しい。
今年に入ってからSTUDIO VOICEとかマリ・クレールとかかつて一時代を築いた雑誌が次々と休刊となる報を聞くにつけ、気が滅入ります。
まぁ、終わりは始まりですし、雑誌媒体にとって今は特に「再生」がテーマなのかもしれません。本誌も手綱を引き締めて精進あるのみです。
Posted by しいな at 2009年08月04日 14:26
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