ギター バックナンバー

DISK RECOMMEND ('09年2月号)

LOFT PROJECTのスタッフがイチオシのCD・DVDを紹介!!
レビューページの画像をクリックすると、Amazonのページにリンクします。

★以下のジャケットをクリックすると、各レビューが読めます。

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V.A / Melodizm

EFMD0001 1,800yen(tax in) / 2.04 IN STORES

 「GOOD MELODY」+「DYNAMISM」=「Melodizm」をコンセプトに、グッド・メロディーを生み出すことにアイデンティティの全てを捧げ、オーディエンスを惹きつける躍動感のあるライブを展開しているバンドを集めたコンピレーション・アルバム『Melodizm』がリリースされる。いわゆる歌モノやメロコア、ギターポップ、パワーポップなどの既存のシーンには属さず、独自の音楽となる“Melodizm Rock”を発信するバンドがここに集結した。11バンドが新録で挑んだというこのアルバムは、インタビューでFeeの長屋さんが言っていた、全員が1曲目狙いのガチンコ対決とも言える曲が揃っているというのもうなずける。
 URCHIN FARM、LACCO TOWER、Dirty Old Men、chickenrace、DOOKIE FESTA、UNDER LIFE、back number、chaqq、Lead-off Hitter、JANGA69、Feeと、見事なまでに英語ばかりがズラリと並んだバンド名が揃った。全曲をじっくり聴いてみると、今までに聴いたことがなかったバンドを聴いてこんなに素敵なバンドだったんだなと改めて知ることができた。それは、初めてチョコレートがコーティングされた柿ピーを食べた時のあの気持ちに似てる。「これはないだろー」と思って食べてみたら、「意外とおいしい!」ってなって気づいたら癖になってるみたいな。これ、LACCO TOWERの塩崎さんがインタビュー中に、各楽曲をひたすらカッ●寿司に例えていた感じに似てる…。ちなみに塩崎さん曰く追究心が高くてプロフェッショナルなLead-off Hitterをカ●パ寿司に例えると、2カンじゃなくて1カンしか乗ってなくて直接注文しないと出てこないような高級品の秋ジャケなのだそう(笑)。高級品の秋ジャケと例えられたLead-off Hitterの楽曲は『6月の雨 二人のドラマ』。春と夏の中間である6月という季節がピッタリの軽快なサウンドに乗せて届けられる曲。
 このアルバムの首謀者でもあり、本誌にも何度か登場していただいているURCHIN FARMは、キーボードの○貴が正式加入して以降、ライブが一層華やかになったように思う。そして、今作『merry go round』はあのカラフルなライブを完全にパッケージし、全員が憧れていた1曲目を獲得した。『Melodizm』対談に参加していただいたLACCO TOWERの『灯源(ランプ)』は、鍵盤の美しい旋律が印象的で、そこに力強さと繊細さを持ったサウンドが重なり、深みのあるボーカルで聴かせる。アルバムのトリを飾るFeeの『秘密のサイン』はポツリポツリと奏でるギターから始まり、テンポの良い曲へと展開する。ツイン・ボーカル編成でありコーラスも絶妙で、楽曲をよりドラマティックな世界へと導いてくれる。
 『Melodizm』のコンセプトにもある躍動感溢れる熱狂的なライブをするバンドが勢揃いしているので、まずは彼らのライブを体感してもらいたい。レコ発東名阪ツアーと、3/23・24には新宿ロフトでツアーファイナルが開催される。全バンドを一度に聴けるなかなかないチャンス!


(Rooftop:やまだともこ)


ASTRON FILM / CAROL e.p.

AST-13 300yen(tax in) / ライブ会場にて発売中

 ふとしたきっかけで出会ったASTRON FILM。初めて見たときはなんて危なげなバンドなんだろうと不安に思っていた。が、何か引っかかる物があって気になっていた。そこから半年後に見た彼等は、驚くべき成長を見せていた。まだまだかも知れないが、前回に見たときよりは格段にしっかりしていた。そして『CAROL e.p』を聴いて、その成長に納得した。中に詰め込められた、珠玉の3曲はどれも私のツボだった。凛とした歌声に、切ないギターメロディがちりばめられている。特筆すべきは、Chika Okamotoの謳う叙情的でいろいろな光景を思い出させる、その歌詞。お父さんやお母さんにも聴かせたい1枚。


(新宿ロフト:大塚智昭)


アレサ・フランクリン / Respect - The Very Best of Aretha Franklin

iTunes Store 1,000yen(tax in) / IN STORES NOW
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 先月20日に行われ、200万人が集まったというバラク・オバマ米大統領の歴史的な就任式でひときわ印象的だったのが、アレサ・フランクリンの熱唱だった。アレサ・フランクリンといえばゴスペル歌唱を特徴とするソウルの女王として有名だが、僕が初めて見たのは映画『ブルース・ブラザーズ』で『Think』を歌うシーンだった(そして、この映画は80年代にブルースやソウルミュージックが再評価されるきっかけにもなった)。彼女がデビューした1961年のアメリカはまだ公民権運動の真っ最中であったことを考えると、就任式でアレサが歌ったことの意味は大きい。しかも歌った曲は1963年のワシントン大行進でも歌った黒人歌手マリアン・アンダーソンの『アメリカ』だというのも粋な演出と言えるだろう。このアレサ・フランクリンのベストアルバムはiTunesで43曲入り1000円というお買い得価格なので、この機会に是非聴いてみてはどうだろう。


(梅)


アンダーグラフ / 遥かなる道

配信限定
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 2009年一発目のアンダーグラフの作品は配信限定でリリースされる『遥かなる道』。この曲は、昨年の秋に行なわれたツアー“live tour'08 vol.2〜六十四泊六十五日 乃 楽園〜”で初披露されている。ライブで一度聴いただけの曲だったにも関わらずメロディーも部分的な歌詞も心に焼き付いていた曲だった。
 前作の『ジャパニーズ ロック ファイター』では軽快なロックサウンドを聴かせ、PVにはド派手な衣装を着た西城秀樹さんが出演。これまでのアンダーグラフのイメージを一転させた。そして、今作『遥かなる道』は彼らの真骨頂ともいえる楽曲。大事に大事に音を奏でている姿を想像させるサウンド、一言一言を選びながら真っ直ぐに伝えていることを感じさせる歌詞、別れを描いた曲でありながらもその先は笑顔で迎えられるようにという奥深い人生観までが綴られている。  今年で結成10周年を迎えるアンダーグラフが歩んできた道、そしてこれからも向かい続ける遙かなる道。節目を迎えた彼らは2009年、この曲でスタートする。


(Rooftop:やまだともこ)


opening / 黙

IDBT-0004 1,800yen(tax in / 2.04 IN STORES

 緊張と緩和を自在に操る鍵盤と、それに衝突を繰り返し何度も屈曲を生み出すバンド音。初めてこのopeningを目の当たりにした新宿LOFTでのライヴは、ステージ後方から射した光を追うように背を向けて影になる姿が、まるで表情を隠したモザイクのようで印象的だった。エモーショナルと一言で片付けてしまうのは口惜しいが、無機質なイメージがあったインストゥルメンタルという音楽に、こんなに輪郭があるのだと驚いたのを憶えている。あえて定義しない姿勢。言葉では表せない空白や、目には映らない物質的なもの、伝えるには無駄なものが有り過ぎるから、潔い彼らの沈黙が、聴き手の想像力を掻き立ててくれる。そして、まだまだ頭の中の断片的な欠片の一部に過ぎないであろう楽曲は、光が放出するように誕生と消失を繰り返し、繊細な破裂が幾度も起きる小宇宙のようだ。こんなにも緻密で叙情的。openingというバンドを知る程に見えてくるのは、音楽に対する実直な敬愛と妥協の無い姿だった。限りある時間の中で結び付いた運命。それを大切に繋いできた彼らが辿り着いた、一枚の軌跡。熱意ある音の集合体が、美しい結晶を生まない訳が無い。生半可な覚悟では鳴らせない命の瞬きに、ただ黙って震えたい。


(新宿LOFT:岩波 亜朱香)


COLORS DEPARTMENT / CROSS ROAD

DQC-193 1,500yen(tax in) / 2.18 IN STORES

 これはなんなんだろう。ゆっくりと流れる時間に決して逆らう事なく、むしろその流れの中に同化するほど自然に、そして滑らかに耳に入ってくる音楽。その音楽はやがて体の中にしみ込まれていき、僕の心の中にまで入り込んでくる。土足で僕の心の中にまで入り込んできているはずなのにどこか心地よい。  クセのある独特の声、隙間を埋めるだけではなく自分の存在価値を前面に押し出すかのようにグイグイと攻めて来るベースラインに、軽快な中にも芯の図太さを感じるドラムのリズム。脳裏の奥底にまで残るメロディ。これだけの条件がそろえば良くない訳がない。しかし、このバンドに関して言えばそれだけでは無い。かなり個性の強い3人が引き起こす化学反応を、この3人でしか作れない形で表現した結果がここにある気がする。  いつからだろう。美しいものを素直に美しいと言えなくなってしまったのは。きっと僕ら大人になってしまったのであろう。でも今ならわかる。本当に美しいもの、本当に大切なもの。それが何なのか。


(新宿LOFT:HxGxK)


CUBISMO GRAFICO FIVE / FIVE FINE FILES FIXED FIRE(5Years Best)

NIW-34 2,940yen(tax in) / IN STORES NOW

 CUBISMO GRAFICO FIVEのFIVE Anniversary year!! 所属レーベルNiw!Recordsと同い年のキュビのでございます。昨年の8月に、様々な方々をフィーチャーしたカヴァーアルバムをリリースしたばかりではありますが、今迄リリースした3枚のアルバムの中から厳選した曲を集めてBEST盤として、節目である2009年にお届けです。宝箱を開いた時のようにいつもキラキラしていて、そのあどけない人柄からは想像が出来ないくらいの細かいニュアンスや緻密なフレーズ。定番のパーティーチューンから泣きの1曲、いろんな方々とのコラボや、ご存知であろうCMタイアップ曲も含めて、ずっと音源化を待っていました ! 『シェリーにくちづけ』(今まで未収録)まで、1から10まで、たくさんの色使いを余す所なく収録。これまでの方はもちろんの事、キュビ初心者の方にもきっと楽しんで頂けること間違い無しのヴォリュームです。初回限定にはDVD付きの特殊パッケージ使用となっております。そのセンスとお茶目っぷりに、毎回驚かせて頂いておりますが(笑)、つくづくすごい人達が集まっているなと。ロックスターが在籍したのは結成当初と思うと、あっという間の5年だった気がします。今年はSXSWへの出演が決まっていて、新作も予定しているというから、まさにこれから先の新たなキュビへの期待の年になるハズです。


(下北沢SHELTER:平子真由美)


スチャダラパー / CAN YOU COLLABORATE?〜best collaboration songs & music clips〜

NFCD-27142〜3/B 5,000yen(tax in) / IN STORES NOW

 スチャダラパーはブギーバックだけじゃありません!! 今までにフィーチャーしたアーティストの楽曲を中心にベストがでました。やったね!! あの曲もこの曲もと盛りだくさん。しかもDVD(映像クリップ)もついてて、気になった映像をリアルタイムで自分の好きな時に見れちゃうんです。なんてうれしい企画でしょうか。今年も木村カエラちゃんとフィーチャーしたりと、いつまでも目が離せないです。ゲストをうまく引き立たせ、しかも飲まれることなく、存在がバリバリなところに感動です。中身は聴き応えばっちり。SLY MONGOOSEとのDEFENSELESS CITYや伝説の名コンビ、電気グルーヴ×スチャダラパーの聖★おじさん(ほんとにいるのでしょうか)が入ってるのには涙いたしました。メロディ、詞も1回耳にしたらループ間違いなしデス。このCDから入っても全然大丈夫。ライブで一緒にコール&レスポンスでYO・RO・SHI・KU


(阿佐ヶ谷ロフトA:伊勢茜)


太陽とシスコムーン/T&Cボンバー / メガベスト

EPCE-5595〜6 3,500yen (tax in) / IN STORES NOW

 まさか2009年になって太陽とシスコムーンの勇姿を見られる時が来るとは夢にも思わなかった。ハロー!プロジェクト10周年を記念して発売された『メガベスト』シリーズの一環として発売されたこのベスト・アルバムのお陰で、誰も、いや恐らく本人達ですらも予想だにしかった展開が繰り広げられている。アルバム発売に合わせてメンバーが自主的に立ち上げたブログ・サイトの公開、HMV渋谷店で行なわれたインストア・イベントの開催、そしてメロン記念日主催の『MELON GREETING』への急遽ゲスト参加。この“浅ヤン”ばりの怒涛の急展開に茫然自失になりつつ、上海在住のRuRuが不参加とはいえ上記イベントへの出演はやはり非常に嬉しかった。何せ、解散から8年以上を経てのまさかの復活なのだ。それが基本的にメンバーの意向から端を発したものであり、かつての事務所の協力も相俟って様々な相乗効果を生んでいるのが微笑ましい。微笑ましいと言えば、『MELON GREETING』での太陽とシスコムーンのメンバーを迎えてのトークの際、メロン記念日の斉藤嬢が余りの感激に泣き崩れる場面があった。憧れだった先輩をこうして自分のイベントに迎えることができた感慨が一気に押し寄せてきたのだろう。メロン記念日と完全復活した太陽とシスコムーンの2マン・ライヴをいつか新宿ロフトで観るのが僕の夢である。


(Rooftop編集長:椎名宗之)


D.W.ニコルズ / 春うらら

RRCD-85373 1,500yen(tax in) / 2.25 IN STORES

 前作『愛に。』発売から約1年振りの新作リリース。その間に下北沢CLUB QUEでのワンマンライブを満員にしたり、数々のライブバンドと共演を果たし、遂には新宿ロフトでバンド主催の企画まで開催し、その活動は順風満帆である。彼らの音楽には彼らにしか出せない温度がある。彼らの温もりを感じられずにはいられないのだ。4人の人柄さえも伝わってしまう。惜しげもなく、今の彼らを出しているのがよく分かる。D.W.ニコルズ流エッセンスを加える事により、かさかさの心をすぐさま温かい気持ちにしてくれる楽曲達は逸品。まだまだ寒い日が続く毎日のお供に1枚いかがでしょうか?


(SONG-CRUX:樋口寛子)


Dr.Feelgood / Live at the BBC,1974-5

MSIF3649 3,000yen(tax in) / IN STORES NOW

 実際に俺が生まれたときには様々な音楽は完成していて、後にも先にもその時代にしかないモノってとにかく多いんだって思う。現代じゃ不自然な音楽。言い方は悪いけど良い意味で。此の音源を聴く度に何でもっと早く生まれなかったんだろうとか、ちょっとだけ寂しくなる。ちょっとだけ。此の作品は1st.『DOWN BY THE JETTY』と2nd.『MALPRACTICE』のレコーディングの前後に行ったロンドン、パリス・シアターでのライブから21曲を収録。エルモア・ジェイムスやB.Bキングの珍しいカヴァーも入っていて、俺の中で10本の指に入る名盤。嫌なことがあった時、楽しいことがあった時、どんな気分の時でもステレオから此のアルバムが流れれば万事OK。「STUPIDITYを持ってる奴は聴いて良し。」今更此の作品を書こうと思ったのは、今の俺に欠落したモノを完全に埋めてくれたから。そんな自己満足で紹介したアルバムだけど、知らない人が居たら是非聴いてみて欲しい。


(Asagaya Loft A:イリサワユウト)


トコワカチカ / 庭

C2008 OOPS Record 2,000yen / ライブ会場にて販売

 SSWの早健、詩や絵本製作などの活動をしている左桂もも、自身のバンドのテシモタシーの活動の他に映像音楽やマスタリングもしているサトウの3人から成るトコワカチカ。それぞれ個性的な世界観を持った3人だが、例えば心に居住地みたいなものがあるなら同じ村に住んでいるのだろうなと思わされるような、そしてこのアルバムがもしかしたらその村なのかも、と思わされる作品。トラックの上に時に原始的、時に幻想的な音が浮かび上がりまた沈んで声が重なっていく様は、タイトル通り『庭』の子供が無邪気に遊んでいるようであり、その子供が何かの拍子に宇宙へ飛び出してしまったような不思議な浮遊感で溢れています。3/1にトコワカチカpresents「トコワカの森の音楽祭」がNaked loftで開催されます。いったいライブでどのようにこの音の粒たちが紡ぎ出されるのか…目撃するべし!


(Naked Loft:林美香)


9GOATS BLACK OUT / Black rain

会場・通販限定盤:9GCD-003 2,700yen(tax in) / 流通盤:NINE-003 2,400yen(tax in) / 2.14 IN STORES

 「ヤバイ」と思った。そして同時に凄くワクワクしている。まだ始動して1年程のBANDとは、耳を疑ってしまう。vocal.ryo、guitars.utA、bass.hatiに、サポートメンバーでmanipulaterとdrumsが加わり5人編成となる9GOATS BLACK OUT。またとてつもないBANDが現われた事に、とても喜びを感じる。昨年の1月25日にreleaseされたalbum『devils in bedside』を聴いた時も感じたが、今回の『Black rain』を聴き、ますます9GOATS BLACK OUTの世界観や独特の感性を感じた。vocal.ryoの歌声にとても心が惹き付けられる。ありきたりな言葉だが、「上手い」と思った。上手くこの気持ちが表現出来ないのがもどかしい…言いたい事は、歌が、曲が心に響いてくるって事。そして、まだ観た事がない彼等のLIVE STAGEに、より一層期待感が強まった。このRooftopが配布されてる頃には、1月22日のLOFTでのLIVEを観た後になるのだが、その後にこのREVIEWが書けない事が残念だ。彼らは今月13日と21日にまた新宿LOFTに出演する。非常に楽しみである。4月11日には、渋谷BOXXにて初のワンマンライブが行なわれる。彼等の動向をリアルタイムで見ていける、今この時に、自分が音楽業界にいられる事に感謝しつつ、今後の彼等の活躍を応援していきたいと思います。


(新宿LOFT副店長:河西 香織)


HALCALI / Re:やさしい気持ち

ESCL3145 1,020yen(tax in) / 2.11 IN STORES

 6年前、『タンデム』でアイドルオタクと自称・アンテナ高い系男子を同時に胸キュンさせたHALCAちゃんとYUCALIちゃんも、すっかりオトナになりました。そんな2人のニューシングルは、Chara『やさしい気持ち』のサンプリングカバー。ただのカバーじゃなくて原曲をサンプリングし、HALCALI流解釈による新しい歌詞を追加。もちろん意地悪な評価はいくらだって出来るけど、それでもやっぱり耳慣れたメロディーと棒読みラップの絶妙なブレンドに、ついつい聴き入っちゃうのが悔しいっビクンビクン。あと、カップリングの『Orange Sunset』もお聴き逃しなく。アコースティックなアレンジと開放感溢れるメロディーがライブ映えしそうで、ビールか何かを飲みながら聴くと実に良い感じな隠れた佳作であります。……とそんな2曲なんですが、寄る年月が彼女たちに“アーティスト”としての風格を授けてしまい、本来の魅力である“やらされてる感”満載の脱力グルーヴが影を潜めつつあるのがちょっと残念。あの無邪気ゆえの底知れなさは、もう戻って来ないのかなあ。


(元★ギャラクシー:前川誠)


ピッピ隊長 / なまえをよぶな!

CD-R 2,500yen(tax in) / ライブ会場にて販売中

 考えることを考える。考えないこと考える? 考えないこと考えない…?! 考えないこと考える……☆◎※$;□♂£♀! わー、ややこしい!
 簡単な事を難しくするのは簡単で、難しい事を簡単にするのが難しい。僕の考えることはピッピ隊の音楽に影響を受けてること一目瞭然のバレバレ。え? ピッピ隊長を知らないって? 有名ミュージシャンにもファンが多い、無名ミュージシャン! ピッピ隊音楽部なる玩具楽団のボスより、通算4枚目のソロ音源です。アコーディオンの弾き語りで複雑な詩を軽快に唱えます。一般のレコード屋では手に入りませんのでネットで検索、通販で購入してみてください。


(Naked Loft:上里環)


BlieAN / so what?

ZEGY-2010 2,520yen(tax in) / 2.04 IN STORES

 BlieANからファーストフルアルバム『so what?』がリリースされる。PUNK、ガレージ、ハードコア、90年代のUK ROCK シーンなどにインスパイアされながらも、独自の解釈で表現されるサウンドとタイトなビートが生み出す強烈なGROOVE。今作はこれまでにライブを多く経験し、たくさん影響を受けてきたのだろうというのは一目瞭然で、前作から比べると確実にパワーアップしている。そして、サウンドの迫力も何割にも増していた。14曲入りでありながら40分弱というこのアルバムは、突然襲いかかり、多くの爪痕を残して「sorry」とも言わずに過ぎ去っていくゲリラ豪雨のようだ。ドラムの殺人的なテンポにも磨きがかかり、ライブでGenkiがどんな状態で叩いているのかを確認してみたくなった。
 このリリース後も2ヶ月に渡る全国ツアー(“so what is BlieAN?”)が行なわれる。このツアーでまたたくさんの音楽に触れ、バンドとしての成長を続けていくのだろう。この作品がまだファーストアルバムだということに驚くほどで、今後の活躍が期待できるバンドだ。


(Rooftop:やまだともこ)


PULLING TEETH / THRASH CATS CRISIS

DCCA-49 2,625yen(tax in) / IN STORES NOW

「言い訳するな。抜歯は繰り返される。」
 3年分の爆弾投下! 昨年から1年間かけBRAHMAN・マキシマム ザ ホルモン等を迎え行われた異種格闘技戦「抜歯十番勝負」を経て我らが抜歯楽団渾身の新作が完成!
 前作『THRASH CATS』の続編、または解答ともいえる今作品は大胆かつ繊細、攻撃的かつ計算されたサウンドがあなたを打ち抜くでしょう! 多彩な智也氏のドラミング、男気溢れる泰治氏のベース、そして寿々喜氏の強烈リフ&カッティング! 時に叫び、唸る“静と動”のヴォーカルが混ざり合い、パンクもメタルもハードコアもすべてを超越した“唯一無二”のサウンドがこの『THRASH CATS CRISIS』! 最速チューン『REPEAT』から始まりビートが印象的な『SLAUGHTER TRAIN』、『FRENZY』、ラスト『ROUGH MAN』まで12曲25分一本勝負! 早くも今年のMY BEST DISC決定!


(新宿LOFT:高田“サカナ”洋貴)


MOONWALK STREET / DIET DEATH COUNT

DLCR-09021 1,500yen(tax in) / 2.11 IN STORES

 今時、こんなにメロコアなバンドって珍しくないですか? 昨年は47都道府県全部でライブをしちゃうっていう暴挙(?)を成し遂げた3人が、今年は1stミニアルバムを出しちゃいます! 回を追うごとに着実に動員の増えている自主企画と同じタイトル『DIET DEATH COUNT』。自称ライブバンドのMOONWALK STREET(通称:ムンスト)ですが、音源もライブに負けてません。1st.ってことで、気合の入った1枚、1曲目からガンガン攻めてきます。EAGLESの名曲『Desperado』のカバーもムンスト節炸裂。速くて、メロディックで、エモくて、キャッチーで…簡単には言い表せないけど、簡単に体の中に入り込んでくる7曲です。今回のリリースツアーも全国各地を回るみたいです。初日は3月8日@下北沢屋根裏です。このアルバムを聴いてから、自称ライブバンドが本物かどうか確かめに行ってみてください。


(下北沢SHELTER:かとちゃん(侍は東松原にもあります))


Lily Chou-Chou / 呼吸

TOCT-24690 3,059yen(tax in) / IN STORES NOW

 『リリイ・シュシュのすべて』という映画が好きだ。この映画で言葉に出来ない衝撃を受けたのを今でもよく覚えている。繋がっているのに決して交わらない関係。絶望。感情の交錯。矛盾。やるせなさ。そこに救いなんてなかった。
 作品の中で大きな役割を担っていたのがLily Chou-Chouだというのは言わずとも知れたことだ。昨年末、廃盤となっていたLily Chou-Chouの『呼吸』が復刻した。目を閉じると浮かんでくる田園風景。混沌とした世界。あの空気感。自分の存在について。共鳴。全てがフラッシュバックしてしまう程に圧倒的な何かがそこにあった。その時の感情で、曲の情景が染まっていく。透明感のある音。唯一無二の声。エーテルとその先の何もない空間を連想させるようだった。この声でないと成立しない世界がある。痛くて寂しい。なのに温かく包まれるような感覚。映画でしか見られなかった世界が自分の日常でも感じられるなんて思ってもなかった。「人間にとっての最大の傷は存在」そう叫ぶリリイの世界を感じて欲しいと思う。傷を負い、何かを隠し抱えながら生きている。そんな毎日の中で私は叫ぶのだ。「リリイだ!リリイがいるぞ!!」と。


(新宿LOFT:チーさん)


he / susquatch / STUDIO VANQUISH

HKP-020 / 1,050yen(tax in) / 2.25 IN STORES

 ご存知STUDUO VANQUISH。06年より一般概念を覆すべく、TOUR、LIVEDVDと様々なシリーズとして、世に贈り届けられている。毎回の展開が目を見張ることばかりなのだが、今回届けられたのはhe、susquatchの両盟友が贈るスプリットシングル。場数を踏んだことにより、密に研ぎ澄まされ、よりLIVE感を増したともいえるhe。記憶にも新しい所から、昨年のFIVE ON THE MOVE-EXTRA-でも披露されていた『Sleet』。壮快ともいえるメロディーから彷彿される世界感が、LIVEでもより印象を残す。『Smudged Letters』と共に、個人的にはLIVEで是非体感して欲しいくらいの傑作だ!! 前作から約2年、久々の新曲であるsusquatchは、前者とは打って変わって、『Return Of Spring』と『Weathering』というこれから訪れる季節や叙情詩を巡るかのような儚さを歌い上げ、独特な世界観で攻めてくる。まさに両極端ともいえる両者が、更なる進化を問うべく、渾身の4曲を引っ提げて、2月からTOURにも出るというから楽しみだ。その答えはTOUR FINALである3月21日@ SHELTERにて披露されるだろう。


(下北沢SHELTER:平子真由美)


実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

DVD:CCRE-8821 / 4560292513368 / 定価:4,935yen(tax in) / 2.27 IN STORES

 1971年共産主義者同盟赤軍派によって設立された“日本赤軍”後に統合などのにより改名された“連合赤軍”。その連合赤軍によって、1972年にあさま山荘は占拠された。そこに至るまでの真実を描いたのが、この『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』だ。正直に言ってしまうと、最後まで見るのが本当に辛かった。本当にこれが真実なのだろうか? 映画だからって少し大げさに書いていたりするのではないのだろうか? と何度も疑いたくなった。しかし、これが真実なのです。やはり僕も人間なので辛い事や悲しい事からは顔を背け、逃げ出したくなる。しかし、それでは今までの自分と何も変わりはしない。逆の立場から言えば、この映画を作った監督は何かを訴えたくて作っている訳だし、それを感じる事もなく投げ捨ててしまっては単なる時間の無駄なのだ。僕自身、この映画を見た事によって歴史を知り、そこに存在した人々の流れ、感情、時には激情したくなるような事実を目の当たりに出来た。それだけでも大きな価値かもしれないが、何が善で何が悪なのかそれを知り得る事が出来ただけでも大きな価値なのだ。本当に自分を変えてみたい人。自分の殻を破れない人。そんな人に是非見ていただきたいと思います。


(新宿LOFT:HxGxK)


NUMBER GIRL / Live at FACTORY

TOBF-5615 2,625yen (tax in) / IN STORES NOW

 「風変わりなライヴハウス“FACTORY”へようこそ!」のMCでもお馴染み、フジテレビの完全生演奏番組『FACTORY』。その放映開始10周年を記念して発表されるアーカイヴDVD第1弾がこのNUMBER GIRLである。彼らのアーカイヴ映像と言えば、4年前に『記録映像』という4枚組DVD BOXが決定版的作品としてすでに発表されているが、名演がギッチリと詰まったこうした貴重なアイテムは歓迎すべきところだ。'99年11月20日、'01年3月24日、'02年5月3日の計3回出演分・全14曲が余すところなく収録されているのがまず嬉しい。特筆すべきは、彼らの楽曲およびパフォーマンスが解散から早6年以上が経った今なお高い鮮度を誇っていることである。マキシ・シングル『DESTRUCTION BABY』発表直後・ブッチャーズと初めて“HARAKIRI KOCORONO TOUR”を行なっていた頃の'99年11月20日放映分はまだあどけなさが残るものの、アルバム『SAPPUEKI』の制作・発表を経て出演した'01年3月24日放映分ではすでに堂に入った鬼気迫る演奏を聴かせている。最後の出演となった02年5月3日放映分は、ラスト・アルバム『NUM-HEAVYMETALLIC』発表直後・解散発表4ヶ月前というバンドが失速へと向かう時期であるゆえ感傷的にならざるを得ないけれど、獰猛さと狂気を増した各パートの凄味と圧倒的な熱量を存分に堪能できる。『FACTORY』初出演時から早10年が経過したとは軽くめまいを覚えるが、カットアウトの美学を貫いて疾走した彼らと同時代を生きられた幸運を改めて感じるアイテムだ。


(Rooftop編集長:椎名宗之)


ドキュメンタリー映画 / アナーキー

KIBF-619 4,179yen (tax in) / 2.04 IN STORES

 昨年末からシアターN渋谷でレイトショー公開されていたドキュメンタリー映画『アナーキー』が早くもDVD化された。ご承知の通り、本作は2006年に発表されたアナーキーのコンプリートBOX『内祝』に収録されていたドキュメンタリー『アナーキー!』に追加撮影とアレンジを加えたリミックス・ムービー。元アナーキー親衛隊の太田達也が監督を務めた作品を、ボアダムスの『77BOADRUM』、レンチやイースタンユースのPVなどで知られる川口潤が今日性を念頭に置いた客観的な視点で再編集を試みている。今から30年前に埼玉の5人の不良少年が勢いだけでバンドを組み、やがて日本のロック・シーンと社会に強烈なインパクトを与える時代の寵児となり、価値観の相違による瓦解の果てにとある“事件”が起こりバンドが失速していくまでの7年間を追った映像はどれも貴重なものばかりだが、アナーキーの現役時代を知らない若い世代にも充分訴求力のある内容になっているのが見事。とりわけ、アナーキーに多大な影響を受けたバンドマン達(花田裕之や池畑潤二、遠藤ミチロウといった同世代の盟友を始め、甲本ヒロト、ニューロティカのアツシ、怒髪天の増子直純、イースタンユースの吉野寿など総勢20名以上)がアナーキーに対する思いの丈を語ることでバンドの実像に肉迫することに成功している。アナーキーという傑出したパンク・バンドの軌跡を通じてパンク・ロックが日本に根付いて発展していく過程やパンクの在り方が窺えることからも、本誌の読者ならば是非体感して欲しい一作だ。


(Rooftop編集長:椎名宗之)


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the ARROWS / アロイ

PCCA-02855 2,520yen(tax in) / 2.18 IN STORES

 『踊れて泣けるダンスロックバンド!』に加え、プロデューサーにPolarisやohanaの活動でも知られているオオヤユウスケ氏を迎える事によって、新たなアプローチでフロアを沸かそうとしている。『アロイ』を掲げてのツアーはどんなものになるのか、早くも楽しみで仕方がない。それにしても、彼らの楽曲を聴くとその音楽の幅の広さには驚かされる事ばかり。またどんな曲にも”歌”がある事を忘れていない。彼らの『アロイ』を聴いているうちに、気づけば穏やかな気持ちになってしまう様な優しさが本作品にはある。the AROOWSを聴いて踊るも良し。聴いても良し。どんな時もリスナーを楽しませてくれる、サービス精神旺盛のthe ARROWSはホント凄いと思う。


(SONG-CRUX:樋口寛子)


 やわらかくて繊細で、でもどこか力強いぬくもり、そんな偉大さ。なんとも唯一無二なものです。まるで風のように自由で、なにものにも流されないスタイル。きっと誰もが心地よい気持ちになる。果たしてそれはどこから来てどこへ向かって行くか。きっと僕らが描いている、むしろ僕らが描くべき未来はこういう形なのだろう。the ARROWSにはそんな空気感を感じます。特に今作に関して言えばそのパワーをより一層濃く感じます。単純なポップミュージックとは一線を引くかのように透き通ったボーカル坂井氏の声。感情さえも表現するかのような耳に残るベースライン。the ARROWSの音楽をリードしているといっても過言ではない美しきギターの音色。かと思えばアコースティックのしらべ。タイトな中に時おり見え隠れする”味”のあるドラム。本当にすべてが繊細で1mmだってずれてしまえば今にも壊れてしまいそうなほど。
 僕の手元に届いたメジャー3枚目となるフルアルバム。そんな大きな大きな優しさや暖かさに満ち溢れたこの1枚。寒さも和らいで、少し風を感じることの喜びを感じられるこの冬の終わりと春の訪れ、こんな季節にピッタリな1枚になりました。


(新宿ロフト:HxGxK)


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