ギター バックナンバー

町田直隆('08年12月号)

町田直隆

どんなに踏み潰されても守り続けた夢の欠片


前作の1st.フルアルバム『栄光なき兵士達に捧ぐ』から1年。町田直隆のニューミニアルバム『主題歌』が届けられた。今作もPK BATTLESのメンバーと共に作られた1枚。「人とわかりあえる可能性があるならわかり合いたいと思う」と町田が言っていたように、『栄光なき兵士達に捧ぐ』ではヒリヒリとした世界観のある楽曲が多く揃ったが、『主題歌』は聴きやすさを追究し、前作に比べると間口が広がったように思う。常に孤独を感じ、ロックンロールだけを心の友として過ごしてきた少年が挫折しても諦めきれなかった夢を見続け、「今さら帰る場所なんてないよ」とつぶやきながら今でもステージに立って歌っているのだ。
何の後ろ盾もないアーティストでも、これだけ素晴らしい作品を作っているということをまず知ってもらいたいと思う。(interview:やまだともこ)


聴きやすさを追究した『主題歌』

──今回の『主題歌』はミニアルバムでのリリースになるんですね。

町田:ライブ会場で売ることが多いんですけど、初めて見てくれた人がちょっといいなと思ってくれてもフルボリュームの2300円のCDって高いと思うんです。ミニアルバムで、1300円とかだったら曲数も値段もまだ買いやすい。フルアルバムを作れる曲数はあるんだけど、買いやすさを追究したんです。ライブに行く時って、チケット代と飲み代と帰りの飯食うぐらいのお金しか持って行かないですからね。

──これが一番ちょうど良いボリュームだということですね。そして、前作に引き続きPK BATTLESでの作品となりますが、バンドとしては固まってきていますか?

町田:今年はバンドのライブをたくさんやったから、バンドとしてのまとまりはすごくできた。最初は「町田くんの作るイメージに合わせるよ」っていう感じだったんだけど、最近は個性がすごく出てると思います。

──アレンジは、メンバーからアイディアがたくさん出てくるんですか?

町田:僕はアレンジ能力がないので、コードと主旋律は作って、あとは一応バックバンドという形なのにみんなに振っちゃう。だから、“アレンジ by PK BATTLES”。音楽性を信頼しているので、このメンバーでアレンジしてつまらくなるはずがないって思ってます。エンジニアの高原さんも含めて、このメンバーで良かったです。

──全体的にシンセのサウンドが一際印象に残りましたが、『栄光なき兵士達に捧ぐ』と録り方を変えたんですか?

町田:吉澤さん(Key)がすごく神がかっていたんですよ。今回はシンセを多用してます。前回のアルバムはみんなでスタジオに入って一気にレコーディングをしたんだけど、今回は基本的に俺と横チン(Ba)とPK(Dr)の3人でレコーディングして、それを吉澤さんに渡してシンセをかぶせるやり方をしてます。最終的なアレンジは全部吉澤さんに任せた。

──『拝啓ロックンロール』のようなヒリヒリとした曲はすごく好きでしたけど同時に聴く人を選んでいるんじゃないかと感じたんです。今回はシンセの効果もあると思いますが、あの尖った感じではなく大衆性がある作品になりましたね。

町田:ポップになりましたね。ライブ経験をいっぱい積んで、聴きやすさを追究したんです。前のアルバムは、バンジー(・ジャンプ・フェスティバル)と全然違うものを作りたかったので、僕のルーツになった80年代のロックサウンドを追究した作品になったんです。これが原点ですよって。今回はもうちょっと間口を広げるための楽曲を書きたかった。ファーストは伝えたいメッセージがあって、曲はその次だったからメロディアスな曲はあまり入ってないんだけど、今回はメッセージと同列にメロディーを作った感じ。ソロになって詞を先に作っていたんだけど、今回曲を先に作ってるんです。歌詞をメロディーにはめなくてはいけないから、歌いたい言葉があったとしてもはまらなかったら使えない。メロディーに合う言葉を選んでいかなければならない。よりシンガーソングライター的なアルバムになったと思います。

──楽曲全体として楽しんで聴いてもらいたいということですか?

町田:やっぱりライブを意識しているのはある。『拝啓ロックンロール』が大好きなんだけど、ライブでやっても盛り上がりづらいんです。「正座して聴けー!」みたいな曲じゃなくて、曲が楽しくてメロディーが覚えやすいんだけど、実はそこに深いメッセージがあるっていうことをやりたかった。前作がそれができてないわけじゃないけれど。

──ライブを想像するとできる曲は変わるんですか?

町田:そうだね。今までは俺たちが楽しいことをやるだけ、付いて来れないやつは付いてこなくていいんだよっていうスタンスで来ていたんだけど、音楽って人に聴いてもらってなんぼだって気づいたんです。人って孤独じゃないですか。わかり合える可能性があるならわかり合いたい。こっち側からわかり合おうぜっていう姿勢を出さないとわかり合えない。

夢があるから歌い続ける

──3曲目の『主題歌』は曲が楽しくてメロディーが覚えやすいを極めたところにあるような気がしますね。

町田:バンジー時代から含めて、今まで書いてきた曲の中で一番ポップスだったと思う。町田はポップスを作れないんじゃないかと思われてる説があって(笑)。ポップな存在になりたいわけじゃないんだけど、ポップス好きだし、聴いてたし、そういう曲が書けることを自分でも確認したかったんです。ポップな曲が書けないと思われるのもシャクだから。

──前回はロックンローラーの孤独が伝わってきたアルバムだったけれど、今回は周りに人が集まってきたようなイメージの楽曲が多いですよね。

町田:メッセージを共有したかったんです。前は薄暗いアパートで作った曲。今回はバンドの仲間が出来て、いろんな人たちと対バンしてツアー回って、自分自身も曲も社交性を持った。どっちが良いとか悪いとかではないんだけど、自分の伝えたいメッセージをより多くの人に伝えたかった。前回は、1曲目から全員の胸ぐらをつかみかかるようなアルバムだったけど、今回は「まあ、お茶でもしながらしゃべろうよ」って。今でもつっかかりたい気持ちもマンマンなんだけど、どうしても気持ちを伝えたいって思ったらこの方法だったんです。ずっと孤独は感じているんだけど、今回はその先に行きたかった。僕はできることなら誰かとわかり合いたいし愛し愛されたい。世の中は想像以上に愛と理解に溢れてないじゃないですか。期待通りじゃないと思うけど、それは致し方ないこと。これが現実。でも、事実が変わらないんだったら、自分が変わるしかない。

──でも、世の中に逆らっていながらも、『ボーイズキャンチェンジザワールド』のように「夢」を持った曲もあるんですよね。

町田:夢って言うと臭い言葉なんだけど、結局夢に動かされて生きているなって思うんです。僕自身、夢があるから今でも歌っているんだと思う。そうでもなければ、こんな金にもならないことやってないですよ(苦笑)。夢って、この先どういうことがあるんだろうっていうドキドキ。それを追いかけてここまで来ているし、否定はしたくない。10代はいくらでも夢を見られるけど、年を重ねると生活もあるからそうも言ってられなくなりますよね? そうなるとどんどん夢を潰していく生活になっていくと思うんだけど、これだけは守りたいっていう夢がある。その夢って尊いと思うんです。削られていった夢で残ったものだから、たくましい夢なんですよ。その夢を持っていること自体が誇らしいこと。叶う叶わないは別。夢は永遠だから。

──それは“いつか世界を変えてみたい”みたいな少年時代に純粋に見ていた夢とは違うものですか?

町田:少年時代には、大人になってから思い返すと恥ずかしいような夢をいっぱい見ている。それは高確率で叶わないけど、100%叶わないわけではない。みんな夢想家なんですよね。僕も30年生きてきて、何百・何千って夢を見て9割以上は叶わなかった。でも、叶った夢がけっこうある。それがこの歌に繋がるんです。僕は誰とも目を合わせたくないような暗い少年だったけど、未来はあった。周りの人たちを見返してやろうって思ってた。そんな暗い少年が、今ステージに立って歌を歌っているんです。世界を変えるっていうのは極端な話だけど、自分の見える世界は変わったと思ってます。

楽曲に嘘は付かない

──『ボーイズキャンチェンジザワールド』はストリングスも加わり、楽曲の幅が広がりましたね。

町田:夜長オーケストラの中村康隆さんがたまたまライブを見に来ていて『打倒運命』を気に入ってくれたんです。それで「町田君と何かやりたい」と言ってくださって、『ボーイズキャンチェンジザワールド』ができた時に、オーケストラが入ったらいいんじゃないかなって思って話をしたら快く引き受けてくれた。生オーケストラを入れたのは初めてなので感無量です。

──シンセで出せる音とは違うんですか?

町田:違いますよ。吉澤さんもオーケストラアレンジできるからいいものはできたと思うけれど、せっかくこういう機会があるならやってもらいたくて、想像していたよりもすごい感じになった。感極まるものがありました。俺の曲がこうなるんだ!って。

──ギター1本の弾き語りから、バンドサウンドとストリングスが入り、サウンドが膨らんでいく感じがゾクゾクしました。

町田:1人ぼっちの部屋の世界から世界が広がっていくイメージ。Xの『紅』みたいじゃないですか、この展開って。こういう臭いの好き(笑)。臭いものをやりたいんですよ、たまには。

──やっぱり感覚がバンドブームなんですね。『所感』は80年代ロックの影響がモロに出ていますしね。

町田:前回で80年代的なことをやるのに味をしめたんだけど、それをマックスまで表現したかった。日常会話で「ヘイベイビー」なんて100%言わないですよね? 日常会話で言わないことを言えるロックってすごいんです。

──あと、『タイムカプセル』の「眠れないのは暑さのせいじゃなくて 君のせいだよ」みたいな(笑)。

町田:なんかかっこいいじゃないですか(笑)。

──これは本気ですよね?

町田:もちろん。ロックはキザなことを言っても許されるんだから。恥ずかしがっちゃいけない。

──聴いてるほうは恥ずかしかったですけど(笑)。

町田:でも、恥ずかしいと思うことはいいことだと思う! 俺もこんな言葉が自分の中から出てくると思わなかった。でも言ってみたいですよね、日常で。一生言うことないだろうけど。

──そして壮大な曲のあとに、ボーナストラックで『栄光なき兵士達に捧ぐ』の弾き語りがありますけど、これこそ町田さんの原点と言えますね。

町田:町田直隆はこういうアーティストですよっていう、注意書きみたいなものです。

──前回のアルバムタイトルと同じですけど、元々はイメージがこれだったということですか?

町田:あのアルバムを作ったあとに書いているから、そういうわけではないです。普段なら1曲目でやってるところだけど。今回はアルバム全体的にギスギスしてないなって思ったので(笑)。これを聴いてからだったら、『栄光なき兵士達に捧ぐ』のアルバムの方もすんなり聴けると思います。

──『主題歌』ができあがってみてどうですか?

町田:いいアルバムになりましたよ。前のアルバムは耳の穴かっぽじって聴け系だったけど、今回は日常で聴けるCDだと思う。パって聴いて、その中に隠されたメッセージを見つけてくれたら嬉しいです。

──リリースしてツアーなどはまだ決まってないみたいですが…。

町田:ミニアルバムを作ることに集中しすぎて、レコ発ツアーを組むことを忘れてしまって…(苦笑)。12月7日の高円寺HIGHはレコ発なんだけど、発売して3ヶ月後ぐらいからレコ発ツアーになると思う。

──ツアーは全国まわる予定ですか?

町田:行きたいと思ってますが、まだわからないです。Rooftopを読んで私の街に来て下さいって方はメールください。あとは早く次のアルバムを作りたい。今回ポップなものを作ったなっていう達成感があって、これからもポップなものを追究したい気持ちはある。ただ、前回の作品をもっと濃くしたようなものも作りたいと思っているから、その時の気分によってどうなるかはわからないけれど(笑)。

──作品がイコール町田直隆そのものという感じですね。

町田:人間性はすごく表れていると思う。これからも嘘は付かずにやっていきたいですから。



主題歌

TRGR-0002 / 1,300yen(tax in)
12.07 ON SALE!!!


Live info.

12.07(Sun)高円寺HIGH
町田直隆ニューミニアルバム「主題歌」レコ発ワンマンライブ
「LAST TEENRAGE APPEARANCE〜約束の日〜」

出演: 町田直隆&PK BATTLES

12.12(Fri)新宿ロフト
12.19(Fri)新宿ジャム
12.20(Sat)新高円寺クラブライナー
12.21(Sun)渋谷ラママ
12.25(Thu)町田直隆30歳記念ライブ 西荻窪WAVER

町田直隆 official website
http://www.machidanaotaka.com/



posted by Rooftop at 17:58 | バックナンバー
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