ギター バックナンバー

石橋英子('08年12月号)

石橋英子

悪魔のように細心に、天使のように大胆に紡ぎ出される至上の歌


「“drifting devil”(彷徨う悪魔)っていうのは、自分自身のことだと思いますね。普段から悪いことをいっぱい考えてますから。天使か悪魔かで言えば絶対に悪魔ですよ」。そう言いながら、天使のような甘美な声を持つ悪魔が不敵な笑みを浮かべた──。
PANICSMILEのドラマー、KARENのアチコとのデュオ、鬼才・吉田達也とのデュオ、灰野敬二と共に参加したナスノミツルとのトリオ、EL-MALOやタテタカコのプロデュース、さらに過去にはNATSUMENやMONG HANGのメンバーとしても活躍し、現在も様々なライヴ・セッションとレコーディングに参加するなど、意の趣くまま縦横無尽に多彩な音楽活動を続ける石橋英子。初のソロ・アルバム『Works for Everything』から2年8ヶ月振りに発表されるセカンド・ソロ・アルバム『drifting devil』は、自身の歌を全面に押し出し、前作以上に彼女のパーソナリティが色濃く描写された傑作だと断言したい。七尾旅人(voice)、山本精一(vo, g)、日比谷カタン(vo, g)、坂本弘道(cello)、ナスノミツル(b)、加藤雄一郎(alto sax)・稲田貴貞(tenor sax)・カッキー(trumpet)のNATSUMEN管楽器隊、そのNATSUMENを司るAxSxE(b:録音&ミックスも担当)といった異能の才人たちを楽曲ごとに従え、極めて映像喚起力の高い音楽を具象化している。何よりもまず、唄うことにより意識的になった石橋の天性の歌声が素晴らしい。悪魔のように細心に、天使のように大胆に紡ぎ出される至上の歌に、我々はただひれ伏すしかない。(interview:椎名宗之)


唄うことに対してずっとジレンマがあった

──これだけ八面六臂の活動を続けていて、頭が混乱することがないのかなと単純に思うんですが。

石橋:意外とそうでもないんですよね。まぁ、2年くらい前にMONG HANGとPANICSMILEと自分のソロを同時にやっていた時はさすがに混乱しましたけど。基本的には寝たり食べたりしていればイヤなことは忘れちゃうタイプなんで(笑)。ライヴのスケジュール調整とかは苦手なんですけど、曲作りやセッションは頭のスイッチが自然と切り替わるので、ゴッチャになることもないんです。一見、凄くバラバラなことをやってそうで、実は自分の中で一貫性みたいなものがあるんですよ。そんなにやってることも違わないって言うか。

──歌とピアノとドラムというパートの違いだけでも相当なものだと思いますけど…。

石橋:確かにドラマーなんだけど、ドラマー道を究めてるドラマーじゃないんですよ。スネアとかキック・ペダルも持ってないし、いつもスティックを3本持ち歩いてるだけなんで。ドラムが一番何も考えずに演奏できる楽器なんですけどね。

──ファースト・アルバムを発表した2年ほど前から、尋常ではない多作っぷりが加速していきましたよね。

石橋:そうですね。ファーストはライヴ会場で販売していた2枚のCD-Rから選んだものなんですけど、自分のアルバムのために作った曲というよりは、『モロヘイヤWAR』という映画のために作った曲とかを片山君(片山智之:スペースカンフーマン、PERFECT MUSICディレクター)が監修してくれたものなんです。

──ソロ・アーティストとしての資質を引き出したのはAxSxEさんですよね?

石橋:最初はAxSxE君に「ピアノのラップを作ってくれ」って言われたんですよ。それが今回のアルバムに入ってる『Postcard from Ghost』なんです。これがある意味、最初のソロ楽曲なんですよね。これを聴いたAxSxE君に「面白いからもっと作ったらいい」って言われたのがきっかけですね。昔から宅録はやってたんですけど、それは人様に聴かせるようなものじゃないと思ってたし、作ったテープもどこかに行っちゃうような有り様で(笑)。作り捨てみたいな感じで、まるで執着がなかったんですよね。

──歌に関しては、PANICSMILEに加入して以降、すでに披露されていましたけど。

石橋:そうなんですけど、今回のアルバムを作るまでは唄うことに対してあまり積極的でもなかったし、むしろジレンマがあったくらいなんですよ。吉田さん(吉田肇:PANICSMILE代表)の勧めで唄うことにしたのは、ドラムを叩きながら唄うスタイルが客観的に見て面白いからだったんですけど、声量もあまりないからライヴのたびに難しさを感じてたんです。

──じゃあ、ファーストの頃も唄うことにあまり意識的ではなかったわけですか。

石橋:そうですね。何となく鼻歌で唄ったものを家でネクラに録ってた感じです(笑)。

──今回のアルバム、前作に比べてとにかくポップの純度がグンと上がったことが最も大きな特徴だと思いましたが。

石橋:そういったことはあまり意識していませんね。ポップなものは昔から好きだったんですよ。小学生の頃からプリンスとかも大好きだったし。プログレとかアヴァンギャルドの括りの中で語られる人たちと共演することが多いから同じようなイメージで捉えられがちですけど、私の中では吉田達也さんも灰野敬二さんも凄くポップな存在なんです。プログレとか特定のジャンルにはとても収まりきれない幅の広さや深さがあると思っているので。まぁ、そうは言っても私のソロはカラオケで唄えるような曲じゃないし、いわゆるJ-POP的なポップとはちょっと違いますけど。

──それにしても、本作における石橋さんの楽器のクレジットは凄まじいことになっていますね。ヴォーカル、コーラス、エレクトリック・ピアノ、オルガン、ドラム、フルート、マリンバ、ヴィブラフォン、鉄琴、チューブラーベル、チェンバロ、テルミン、ウィンドチャイム、鐘、クリスマスベル、あと驚いたのが譜面台っていう(笑)。

石橋:あのクレジットは全部本当に演奏しましたけど、全部書くこと自体は半分冗談みたいなものですね。譜面台はたまたまカーン!と叩いたら凄くいい音がしたんですよ(笑)。

その時々で持ち得る力を出せればいい

──ははは。それだけのマルチ・プレーヤーだからこそ、ここ数年知己を得た凄腕の面子の力を頼らなくても良かったような気もするんですけど。

石橋:ひとりでも作れたことは作れたでしょうけど、この物語の中に登場人物が増えてもいいんじゃないかと思ったんです。曲作りの段階で、“この曲を精一さんに唄って頂けたら素敵だな”とか“この曲は七尾さんに声を入れてもらえたらな”とかいろいろと思いついたのもあって。そういう時の行動は早いので、何も考えずに電話しちゃって。そんな慎重さに欠けるところもこのアルバムに反映されてますね(笑)。

──10月にアチコさんとのデュオ作『サマードレス』を発表したばかりなのに、どうしてこうも矢継ぎ早に新しい曲が生まれるのか不思議なんですよね。

石橋:いや、自分ではそんなふうに思わないんです。ひと月に何曲も作ってる人と比べたら遅いペースだし、もっと曲を作りたいと思うんですよね。

──ソロ楽曲の世界観はアチコさんとのデュオに近いと思うんですけど、曲作りの上で区分けみたいなものはあるんですか。

石橋:そういうのはないですね。ストックがあってそこから分ける感じじゃなくて、アチコさんとのデュオならアチコさんの声を思い浮かべて曲を作るんです。アチコさんが唄うものと私が唄うものとでは全然違うので、成り立ちからして全く違うものですね。

──録りも異常な早さだと思うんですよ。一度気持ち良く演奏できれば、後はもう振り返らないような感じですか。

石橋:そうですね。同じ演奏は二度とできないじゃないですか。それ以上のものを望んだらキリがないし、記録として残せたらいいと言うか、その時々で持ち得る力を出せたらそれでいいと思ってるんですよ。“自分はこんなもんだろ”と思うところもあるし。

──今回は録音場所がユニークですよね。お馴染みのサークルサウンズやサウンドクルーといったスタジオの他に、石橋さんの地元・千葉県茂原市の東部台文化会館というのがまず目を引きますが。

石橋:特に思い入れがあったわけでもないんですけどね。小さい時にピアノの発表会で使ったことはありましたけど。割と安く借りられるし、広いホールの中でいろんな音場があるから面白い音が録れるんじゃないかと思って。アチコさんとの最初のアルバムもそこで録ったし。

──楽曲で言うと、どれを地元で録ったんですか。

石橋:『Fanfare』、『橋の下にて』、『帰郷』のピアノ、『Last Sky』と『嘆きの砂』のピアノとドラムですね。それと、『Fanfare』、『嘆きの砂』、『drifting devil』、『Fearless【STOP】』の歌や七尾さんの声も東部台で録りました。余韻のある感じの音が録れましたね。

──近所のトンネルで録った音もあるそうですね(笑)。それは『Last Sky』の一番最後に入ってる足音ですか。

石橋:そうです。コーラスを録ってたら、カラスの声も入ってしまいました(笑)。よく近所を散歩していて好きなゾーンがあって、そこにあるトンネルなんです。パン! パン!と手を叩いたら“このトンネル、響くな”と思って。AxSxE君には「処理が難しい」って言われたんですけどね。飛行機の音がトンネルの中を回ったりしてたから(笑)。子供の頃から街に溢れる音を聴くのが好きだったんですよね。

──あと、watasiさんの部屋っていうのは…。

石橋:それは私の部屋ですね。

──ああ、やっぱり(笑)。曲に合わせて録音場所を変えてみたと。

石橋:まぁ、単なる思いつきですよ。ここでこの曲を録ったら面白いだろうな、っていう。

──タイトル・トラックの『drifting devil』は七尾旅人さんが監督を務めたPVも制作されましたが、それは本作の中でもポップ度が高いから選ばれたんでしょうか。

石橋:アルバムのタイトルにしようかなと考えていたので、代表曲として。あの曲は最初にドラムを5分間ずっと叩き続けて、その後に高音のシークエンスを5分間やり続けたんですよ。あんなの編集しちゃえば簡単なんですけど、自分の中では人力テクノみたいな感じですね。

──仮に石橋さんの音楽を難解だと思う人がいるならば、僕はまずポピュラリティのある『Last Sky』を勧めたいと思ったんですが。

石橋:そうかもしれないですね。『Last Sky』が一番親しみやすいし、普通っちゃ普通なのかなと。


向こう側に思いを馳せる国歌があってもいい

──まぁ、石橋さんの“普通”は一般的なそれとはだいぶ違う気もしますけどね(笑)。『Fearless【STOP】』と『drifting devil』には七尾さんの記名性の高い声がフィーチュアされていますが、“サラバ”の一声だけでその存在感を強く印象づけているのが凄いなと思いました。

石橋:そうなんですよ。七尾さんの声はただ喋ってるだけでも物語性があるんです。ライヴのMCで歌と全然関係ないことを喋っても、その歌の一環のように感じさせる不思議な魔力があるんですよね。一緒にライヴをしていつも思うのは、七尾さんの歌や声は、時間とか場所とかありとあらゆる限界を超えて世界に響き渡るような気がします。

──七尾さんのPV撮影はどんな感じだったんですか。

石橋:七尾さんは常に新しいひらめきやアイデアが凄いスピードで浮かぶ方なので、結構細やかな七尾さんの指示のもと行われました。浴衣を着るのも七尾さんの指示でした(笑)。とても楽しかったです。

──加藤雄一郎さん、稲田貴貞さん、カッキーさんというNATSUMENの管楽器隊(スターシップ)の演奏も随所で光っていますね。

石橋:あの3人が集まると、妙な化学反応が生まれるんですよね。全然曲も聴かずにその場で音を合わせただけなのに、音の混ざり具合が凄くいい感じになるんですよ。誰か1人が突出するんじゃなく、3人の調和した音が私のピアノの和音とよく混ざり合うんです。

──前作同様に録音とミックスを担当しているAxSxEさんは、『Fearless【STOP】』で何故かベースを弾いていますね。

石橋:最初はベースを入れるつもりがなかったんですけど、音のバランス的に低音があったほうがいいってAxSxE君に言われたんです。で、「俺が弾いとくわ」って言うからお任せして(笑)。『Dizzy Dance』にもナスノさんのベースが全面的に入ってるんですけどね。

──『橋の下にて』で聴かれる、缶を叩いているような跳ねた音は何なんですか。

石橋:あれが譜面台なんです(笑)。最初は『譜面台』っていうタイトルだったんですよ(笑)。街中には“これ叩いたらいい音がしそうだな”っていうのが結構転がってるんですよね。でも、そんなことして変人扱いされるのも困るし、今回はトンネルに留めておいたって言うか(笑)。トンネルでも子供たちから「何やってんのー!?」って声を掛けられましたから。

──この曲に参加している日比谷カタンさんの声とギターもやはり独特ですよね。

石橋:そうですね。橋の下でギターを弾いてるような、さすらいの旅人のイメージが私にはありました(笑)。日比谷さんは素晴らしい作曲家や演奏家であるのと同時に、どんな役も演じきる役者のような方だと思います。日比谷さんの声、ギター、存在自体からたくさんのイメージが湧きます。

──山本精一さんとがっぷり四つに組んだ『KOkKA』ですが、もしかしてこれ、将軍様マンセーな某国のことを唄っていますか?

石橋:エッ!? いやいやいや、そんな深い意味はないですよ。

──あれ、そうなんですか。“この国に生まれてきた/だけどあの子はあの国/見えるのに見えていない/あの子の街の出来事”と唄われるのを聴いて、てっきり…。

石橋:ああ、なるほど(笑)。そんな深い意味はなくて、離れた所に住んでる人間同士のことを唄ってるだけなんです。自分の国のことを唄うというよりかは、向こう側に思いを馳せる国歌があってもいいなと思って作った曲なんですよね。

──アルバム全体を通してギターの音が全面に出ていないので、山本さんのギターが際立って新鮮に聴こえますよね。

石橋:凄く素敵に仕上がったので嬉しいですね。山本さんの声とギターが前に出ていて。

──この曲は7分を超える大作ですけど、それほど長さを感じませんよね。実際はもっと長く演奏していたんですか。

石橋:終わり方はちゃんと定まってなかったんですよ。山本さんが歌をやめたところで終えたみたいな感じです(笑)。

──山本さんのギターは、適度に歪んで適度によろめいているのがとても味わい深いですね。

石橋:山本さんのギターはスタジオで泣きそうになりました。歌も凄く力が抜けて優しいのに、心に突き刺さる。山本さんは歌とギター3本を入れて下さったんですが、2時間半くらいで終わりました。メインのギターの他に、高音と低音でさりげなく弾いて下さいました。

無意識の部分と繋がれるのは音楽の醍醐味

──先ほども話題に上がった『Postcard from Ghost』ですが、この歌を聴いて石橋さんはラッパーとしても行けるんだなと思いまして(笑)。

石橋:ええ、できますよ、ラップ(笑)。

──“泳いでたらボールが飛んできて/水泳やめ野球をした”という歌詞も非常にユニークですよね。“まるつぶれ/めっためただ/こんなリスク”っていうのも凄い(笑)。

石橋:そうやって割と深刻なことを書いてるように思われるかもしれないですけど、大抵は思いつきで書き殴るように書いてるんですよ。ダーッと思いつくことを書いていって、それを整理する感じなんです。ただ、夢の中で見たことが割と歌詞に出てくることは多いですね。ちょっと暗い感じの歌詞は、自分の中の深層心理的なことなのかもしれないです。そういう自分の無意識の部分と繋がれるのは音楽の醍醐味だと思いますね。

──語感の響きを優先させたりとかは?

石橋:そういうのもあまりないですね。韻も踏んでないですし、全然。

──それじゃラッパーとしてはマズいですね(笑)。

石橋:ダメですかね? じゃ、これからは韻を踏むことを意識しますよ。ダジャレをメモったりとかして(笑)。

──何が凄いって、あの甘い声で“アル中になればよかった”っていう(笑)。

石橋:お酒も普段そんなに呑まないし、何であんな言葉が出てきたのか自分でも不思議です。何なんでしょうね、如何に普段くだらないことを考えてるかがよく出てると思いますよ(笑)。ただ、“『死んでしまう。世を去りたくない。』”っていう歌詞がある通り、死というのが自分の中では大きなテーマなんです。死は誰にでも平等にやって来るものだし。週に1回くらいは考えてるかもしれない。“今死んだらヤバイな”みたいなことを(笑)。

──『帰郷』は坂本弘道さんのチェロとのガチンコ勝負ですが、とても深く広がりのある音像に仕上がりましたね。

石橋:深さと輝きを増しましたね。坂本さんは、何かの物語から間違って飛び出してきちゃった人なんじゃないかとよく思うんです。グラインダーでチェロの支柱を削って火花を散らしたり、チェロを燃やしてみたり、チェロを膝に横たえて、その上でずっと鉛筆を削ってみたり、まるでサーカス団の一員みたいなんですよ。凄くパンクな方だと思います。一緒にライヴで演奏する時も、私の中の子供が手を叩いて大喜びするんです。

──これだけ多彩な楽曲が揃ったアルバムの最後をしっとりとした『アーケイドのクリスマス』で締めるのも粋な構成ですね。

石橋:この曲は入れようかどうか迷ったんですけどね。自分の歌声がちょっと気持ち悪く感じたので(笑)。でも、片山君も「入れたらいいじゃん」って言ってくれたので入れることにしたんです。

──気持ち悪いどころか、芯の太さと瑞々しさを感じる素晴らしい歌声だと思いますよ。これだけ歌に特化した作品を作り上げても、唄うことの楽しさはまだ実感できていませんか。

石橋:人前で唄うのは未だに緊張しますね。でも、これからもずっと唄い続けていきたい希望はあります。歌詞の伝わり方も面白いし、インストとはまた違う伝わり方や広がり方がありますから。そこに可能性を感じるんです。それに気がついたから、歌を軸に置いた曲をもっと作りたいと思うようになったんですよね。

──客観的に見て、ご自身の声はどう感じていますか。

石橋:ライヴの時は未だに結構苦しみますね。昔、PAの人に「もっと頑張って唄ってよ」って言われたトラウマがあるからかもしれないけど(笑)。

──轟音の中で唄うPANICSMILEの時と、音数の少ない演奏の中で唄うソロとではだいぶ唱法も変わるでしょうね。

石橋:PANICSMILEの時はホントはもっと声を張らないといけないんですけど、そうすると声質が変わっちゃうので、いつもそこがジレンマなんです。ただ、ソロのライヴでもバンド編成の時があるし、最近は声を張って唄うことに割り切りも出てきて。静かな曲はいつも通り囁くように唄って、張るところは張るっていう。

──今回のアルバムは、今年の8月に不慮の事故で亡くなったアツシタナカさん(MONG HANG)に捧げられたものなんですよね。

石橋:そうなんです。茂原の音楽ホールがあっちゃんの実家の八街に近かったんですよ。ちょうど茂原で録る時にあっちゃんが実家にいたので、ドラム・セットを借りたんです。全曲じゃないけど、このアルバムはあっちゃんのドラムを使ってるんですよ。そういうのもあって、このアルバムをあっちゃんに捧げたいと思って。あっちゃんは私のソロを応援してくれてたし、今度のアルバムもずっと楽しみにしてくれてたし。ドラムを借りた時は、まさか亡くなるなんて思いもしなかったけど。


あっちゃんは最期までドラマーだった

──茂原で録ったのはいつ頃だったんですか。

石橋:6月の頭くらいですね。あっちゃんの亡くなる2ヶ月前でした。

──しかも、タナカさんが亡くなったのは、PANICSMILEが初のワンマン・ライヴをやるまさに当日でしたよね。

石橋:そうでした。あっちゃんとも何か一緒にやろうとしてた矢先だったし、凄く残念でしたね。あっちゃんが最期までドラマーだったんだなと思ったのは、事故に遭った山にまでスティックを持っていってたことなんです。あっちゃんが山小屋でスティックをカタカタカタカタ叩いてるのを想像したら、ちょっとおかしくなったんですけどね(笑)。でも、ずっと音楽を続けたいっていう思いを持って山に登ってたんだなと思って。

──10月にタナカさんの実家の庭で行なわれた追悼ライヴは、ヘンに湿っぽくなることなく、親しかったバンド仲間が賑やかにタナカさんを見送っていたのが良かったですよね。

石橋:あのライヴは面白かったですね。私たちの知ってるあっちゃんはコミカルな感じだし、あっちゃんも笑ってくれたらいいなと思って送り出しましたけど。あっちゃんは普段あまりモノを言わないんだけど、たまにポロッと言うことが凄く面白かった人なんですよ。

──そんな話を伺うと、余計にMONG HANGの解散が悔やまれますね。

石橋:そうですね。あっちゃんが一番残念がってるんじゃないかと思います。でも、みんなが音楽を続けていれば何かしらの接点はあるかもしれないし。

──石橋さんのようにひとりで何でもできてしまうミュージシャンは、この先どんな方向へ向かうのか皆目見当がつきませんね。どんな方向へも向かえてしまうと思うし。

石橋:でも、私はやれてないなと思うことのほうが多いんですよね。ピアノももうちょっと真面目に練習しなきゃと思うし。ライヴをやると、自分の足りないところが凄くよく判るんです。もっと鍛えなきゃいけないなと思いますよ。家で好きに弾いてるぶんには別に不足はないと思うんですけど、人に聴かせる段階になると手がかじかんだりするんですよね。そのメンタル面を鍛えるには練習するしかないと思ってるんです。まぁ、実際にそれをやってるかと言えば全然やってないんですけど(笑)。

──ライヴを拝見していて、いつも堂々と演奏している印象しかありませんけどね(笑)。

石橋:そうでしょうか。結構びくびくしてますよ。

──石橋さんの場合、ひとつの楽器を究めるよりも、いろんな楽器に挑戦してみたいという好奇心のほうが強いんじゃないですか。

石橋:本当はもっと究めてみたいという気持ちはあります。たとえばベース1本で勝負して究めてる人は、その存在自体が音楽だと思うんですよね。ただ、私の場合は出発点として作曲がまず先にあったので、そこでいろいろとオーヴァー・ダビングをするにあたっていろんな楽器をひとりで引き籠もってやらざるを得なかった部分もありますね。あと、ワガママで欲張りな性格なのかもしれないです。

──でも、映画に喩えるなら、石橋さんは監督・脚本・主演まですべてをこなしているのが性に合うんじゃないかと思うんですよね。

石橋:そうかもしれません。私、大学の時に映画を撮ってみたかったんですよ。でも、映画はお金が掛かる上にいろんな人たちが関わることになるし、ある時、これは無理だなと諦めたんです。その代わり、音楽で映画に近いことができたらいいなと思うようになって。物語を生み出すという点では、1枚のCDを作るのと1本の映画を撮るのは似てるなと思うし、音楽なら自分ひとりでもできると思ったんですよね。

──『drifting devil』のPVで女優としての才能も開花したことですしね(笑)。

石橋:全然ですよ。七尾さんからは「石橋さん、歩き方が5歳の子供みたい!」「人間不信の顔してる!」ってダメ出しされてましたから(笑)。



second album
drifting devil

RHYTHM TRACKS / PERFECT MUSIC XQFL-1004 (TRACK-014)
2,520yen (tax in)
2008.12.03 IN STORES

★amazonで購入する


first album
Works for Everything

RHYTHM TRACKS / PERFECT MUSIC XQFL-1005 (TRACK-001)
1,500yen (tax in)
*『drifting devil』の発売に合わせて再リリース。

★amazonで購入する

Live info.

石橋英子 Presents drifting devil Vol.2
2008年12月14日(日)三軒茶屋GRAPEFRUIT MOON
出演:石橋英子(ソロ)/タテタカコ/日比谷カタン
OPEN 18:30 / START 19:00
adv.-2,500yen (+1drink) / door.-3,000yen (+1drink)
info.:GRAPEFRUIT MOON 03-3487-8159

drifting devil tour
12月6日(土)大阪 扇町ムジカジャポニカ
12月7日(日)京都 木屋町Urbanguild
12月8日(月)名古屋K.D Japon
*いずれも「石橋英子 feat 坂本弘道(cello)、一楽誉志幸(ds)」として出演。

石橋英子 official website
http://www.eikoishibashi.com/



posted by Rooftop at 17:56 | バックナンバー
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