KEI
昭和36年6月26日生まれ 東京都中野区出身
いつも忙しいから、死んだらやっと楽になれるし、休むことができる
PANCHO
1970年9月12日生まれ サン・ペドロ出身
自殺志願者ではないけれど、母親と会えるから“死”を探している
KEIという人物をご存じだろうか? 昨年、自身の半生を記した著書『KEI チカーノになった日本人』を出版し、その壮絶な内容が話題になった人物だ。現在はチカーノカルチャー(チカーノ・ラップ、ローライダー、タトゥー、ギャング・ファッション…アメリカ生まれのメキシコ人“チカーノ”が生み出したカルチャー)の第一人者として知られるKEIであるが、その特異な人生は彼の略歴を聞くだけで充分に伝わってくる。
KEI──東京中野区生まれ。少年期は阿佐ヶ谷と八王子で過ごす。その後は暴走族を経て、ヤクザの道に進む。ヤクザ時代にハワイでFBIのおとり捜査にはめられ、10年以上、カリフォルニアの刑務所に収監される。刑務所内で知り合ったチカーノから人生に於ける大事なものを学び、帰国後はその経験を生かし、カウンセリングやイベントを通して日本の若者と触れ合う。現在は神奈川・寒川でチカーノ系ブランド「HOMIE」を経営し、チカーノカルチャーを広めている。
『KEI チカーノになった日本人』の監修者である特殊漫画家・根本敬は、KEIのことを「壮絶な修羅場の中の超俗なる常識人」と説明している。確かにKEIの経験は常人にはとても理解できないことであるかにみえるが、実際本書を読んでわかるのは、KEIの行動は常に人として当たり前のことをしているに過ぎないということだ。決して声高に語られてはいないが、家族を大切にすること、友人を裏切らないこと、筋を通すこと、それがKEIの信条なのだと思う。本書の最後にKEIは「あくまでもこの本は、何かを考えるきっかけになるだけでいい」と読者に判断を委ねている。
阿佐ヶ谷ロフトAで開催されている『HOMIE阿佐ヶ谷支店』は、KEIがホストとなり毎回様々なゲストを招いて行われているトークイベントだ(舞台監督役は根本敬)。これまでに3回開催され、第1回目には、エメラルド・カウボーイとして知られる早田英志、第2回目には〈プリズン・ガール〉有村朋美とルポライター藤井良樹、第3回目は、ミュージシャン山崎廣明、そしてビッグ・ホーミーのパンチョとチカーノ・ラッパーのセブン、マイカが登場している。今後も魅力的なゲストを招いて『HOMIE阿佐ヶ谷支店』は度々開店するだろう。
今回、ROOFTOPでは、KEIと、第3回目のゲスト“ビッグ・ホーミー”パンチョに「生者の遺影(特別版)」として登場していただいた。「生者の遺影」は雑誌『実話マッドマックス』で連載されているものだが、今回は『HOMIE阿佐ヶ谷支店』としての特別掲載である。吉永マサユキ撮影による2人の生者の遺影は、言葉以上に多くの事を語っていると思うが、あなたはこの写真から何を感じるだろうか? もし何かしらの感興があったとしたら、次回の『HOMIE阿佐ヶ谷支店』にも是非来店してみて欲しい。(文中敬称略)
チカーノカルチャーを知るには……
【BOOK】KEI チカーノになった日本人
ヤクザ時代、おとり捜査、ロス刑務所…。KEIが、初めて語り明かした壮絶な人生。ローライダーの第一人者としても知られる元ラッツ&スター山崎氏との「チカーノ・カルチャー対談」も収録。HIP-HOPミュージック、ファッション、タトゥーアート、ローライダーなど、今もっとも熱いチカーノ・カルチャーを知る上でも貴重な一冊!
著者:KEI 四六判・並製 224頁
定価¥1,575 発行:東京キララ社 発売:三一書房
【PHOTO BOOK】CHICANO
ローライダー、チカーノラップ、タトゥー、ギャング・ファッション……益々盛り上がるチカーノカルチャー・シーン。しかし、マイノリティとして虐げられてきた民族故の堅い結束が壁となり、私たちがその実態に触れることは不可能に等しい。KEIプロデュースの元、ロスの18thストリート、コンプトン、サンディエゴ、メキシコ・ティファナで密着し、彼らのリアルな姿を写真に収めた写真集である。ギャングとして生きていくしか選択肢がない彼らは、明日の命を決して保障されない。銃、タトゥー、ドラッグ、スキンヘッド……そして仲間との強い絆、家族愛。愛情と暴力が相反せずに同居するチカーノという人種の生の姿を見てほしい。
著者:名越啓介 プロデューサー:KEI A4並製 144頁
定価¥3,675 発行:東京キララ社 発売:河出書房新社
【CD】HOMIE Vol.1
人気アーティストが集結した珠玉のコンピレーションアルバム!KEIのために国内外の人気チカーノ・アーティスト11組が集結!カリフォルニアからは、チカーノ界の実力派Mr.SHADOW、日本でも絶大なる人気を博すDIDO BROWNらが参加。また日本からは名古屋を代表する人気アーティストEL LATINO やMr.KEI が発掘し人気急上昇中のMONA a.k.a.SAD GIRLなど、若くして才能を持ったさまざまなミュージシャンが名乗りを上げた。全13曲。
定価¥2,500 発売:HOMIE・東京キララ社 販売:アルドゥール
※11月にはKEIプロデュースのもと、PANCHOのアルバム『Playin Kinda Ruff』を限定復刻。購入はHOMIE(http://homie-japan.com/)で可能。