ピアノトリオが奏でる極上のロック
華やかさも素朴さも持ち合わせた、色彩豊かなコントラスト
2008年4月に1st.ミニアルバム『ドラマチック』をリリースしたばかりのLaugh Lineが、2nd.ミニアルバムとなる『コントラスト』をリリースする。ピアノ&ボーカル、ベース、ドラムのトリオ編成でありながら、今回はロックの雰囲気を出した意欲作。所謂ピアノバンドとは一線を画し、彼らならではのサウンドを聴かせる。“ピアノトリオ”と聞いて、誰があれだけのライブを想像するだろう。誰がここまでピアノを弾きまくる楽曲を想像しただろう。ギターレスだからこそできる音、ピアノだからこそできる表現を改めて追求した今作は、Laugh Lineの新たな魅力を感じられる1枚となった。(interview:やまだともこ)
ロックのスパイスを加えた最新作『コントラスト』
──最近見る度にライブが良くなってきていますね。
渡邊友彦(Vo/key):リズム隊とか基本を大切にしようということで、練習の内容を変えつつ、ライブの見せ方も考えるようになったからかもしれないです。後でビデオで確認しながら、客観的に見るようになりました。
──ファーストの『ドラマチック』をリリースしてバンドの意識は変わってきてます?
天神(B/cho):ライブに関して言えば、今回よりも次回、次回よりもその次って、階段を上がっていくように考えているので、その結果が出たのかな。
渡辺:自分たちの作品がお店で置かれているのを見て、このままではいけないなと思うところがあったりとか、もっと広い視野で詞を書きたいとか、制作の面ではいろいろ感じました。そこは大きいです。
──責任が出てきたということですか?
天神:そうですね。今までは自分たちだけでやってきていましたけど。
渡辺:いろんな人が関わってくれているのを目の当たりにしたからね。
トミー(Dr/cho):1個1個の問題に対して、 深く追求するようになりました。
──その「視野が広くなった」という変化は、『コントラスト』の詞にも表れてますよね。1曲目の『タイムリミット』の中にある「君の手で変えていこうぜ」みたいな詞は今までにないものですし、外に意識が向いてきたのかなという感じがしました。
渡辺:殻を破れた感じがしますよね。そういう詞を書いていきたいと思うようになったんです。ピアノっておとなしいイメージがあると思いますが、外へ向かって飛び出すような感じは、ピアノのイメージと相反するところがあってもいいのかなと。自分の中に取り込まれた良い部分を出せたんじゃないかと思います。
──前回のインタビューの時に、「次はロックっぽい雰囲気にしたい」とおっしゃっていたのでどうなるのかと思っていましたが、『暴れ馬症候群』のようなライブを意識したような作品もあり。
渡辺:『暴れ馬症候群』は「こういうのねえべ?」って、今までにはない曲調のものを作った記憶があります。
天神:掛け合いのコーラスは、「これ、ライブでやったらめちゃくちゃ盛り上がるよ」って自信ありげに言ってましたからね(笑)。
──いい意味でピアノバンドだということを忘れさせてくれますね。
渡辺:ピアノというとバーやホールでやるイメージがあるし、クラシックとかジャズが主流だからこういう音楽があるということはまだ知られていないんですよね。
トミー:知り合った人に「バンドはどんな編成なの?」って言われて「ピアノトリオです」って言うと、「ピアノ3人いるの?」って言われる。
天神:ドラムやってるって最初に言ってるのにね(笑)。
渡辺:それだけ一般的じゃないってことだね。「ギター抜けちゃったんだ」って言われるから、「もともとギター入れてないんです」って。
──『アイデンティティ』も同じく、ワイワイとしたライブやレコーディングの空気をそのまま詰め込んだ感じで。
渡辺:暴れ馬症候群2のような雰囲気ですね。
トミー:テンション的には一番高かったと思います。ライブの感じで録れました。
──間奏で会話が入っていたり、ボーカルにエフェクトをかけていたり、新しく取り入れた手法もありますね。
渡辺:2枚目で遊びが出来るようになったんです。エフェクトもいいところに入れられたし、間奏は何気ない会話をいつの間にか録られていた。アイディアは出していたんですけど…。
トミー:「録りましょうか!」って言ったら、エンジニアの(杉山)オサムさんが「もう、録ったよ」って(笑)。ピアノ録りは残り15分しか時間がなくて、録れないことを覚悟で勢いで弾いたら直しがほとんどなくて。
トミー:これをグランド(ピアノ)で弾くのはすごいよね。
天神:初めてグランドで聴いた時にコイツうめえ! って思いました(笑)。
グランドピアノで広がる音の世界
──『コントラスト』は全曲グランドで弾いているんですか?
渡辺:本当は3曲だけの予定だったんですけど、思った以上に進行が早くて、残り15分のところで『アイデンティティ』を迎えて、結局全部録れた。エレピとグランドでは録り音も弾きやすさも全然違う。鍵盤の重さも違うので、ほんの少しなんですけどエレピに比べて誤差が出るんです。ピアノで育ってきたので、ピアノの感覚が抜けないんですよ。
トミー:でもスタジオのグランドはちょっと特殊なもので、聴いたことがない音がしたんです。慣れるまで変な感じでした。
渡辺:特殊なピアノで、一番最初に『ホタル』を録った時が苦労しました。しかも、茶色いグランドピアノだったんです。その時点で、なんだコイツ!って(笑)。
──音に関して言えば厚みが出たように感じましたけど、グランドを使ったっていうのは大きいですか?
渡辺:そうですね。グランドは隙間を埋めてくれるので、音自体が敷き詰まって厚みが出ているんだと思います。ピアノは鍵盤を押したら音が広がりますけど、エレピは平行に音が出る。ミックスする前の時点で違うなと思いました。
──グランドの方が良いですか?
渡辺:断然良いですよ。1回これでやっちゃったから、敢えてこれはエレピだろっていう曲がない限りはグランドがいいですね。エレピでやるなら、オルガンとかいろんな音を入れてみたりはやってみたいです。
──今回もピアノ、ベース、ドラム以外の音は入れていないんですか?
渡辺:実は『タイムリミット』でこっそり…。間奏とサビでオルガンをうっすら使っています。オルガンが入ったのと入ってないのとはだいぶ違ったんです。入れるつもりはなかったけど、弾いてみたら良くて入れちゃいました。ここだけですよ。他の音を入れるとなると、もっと強いアレンジをしないといけない。これから視野が広くなっていく上では不可欠なことなので、イメージはグルグルしているんですけど。
トミー:でも、今のところライブで再現できないものは作らない方向なのと、まだ3人だけで表現する段階なのかなと思っています。
──天神さんは、今回ウッドベースは使ってます?
天神:今回はエレキだけなんですけど、歪みを使い分けたんです。『アイデンティティ』は、レコーディングの日にふと、これ持って行ったらいいんじゃないかってブードゥーベースっていうゴリゴリに歪むヤツを持って行って試しに弾いてみたらみんな怒らなかったんで(笑)。
──怒るか怒らないかが基準なんですね(笑)。
天神:いいじゃん!って感じになってきたから採用。そういう意味で、1枚目とは違う形で音作りに取り組めたかな。歪みはそこまで研究はしていなかったんですけど、今回はロックっぽい感じにしたいっていうテーマだったので、じゃあ歪みだろうって。ロック=歪み。高校生的な考え方ですけど(笑)。歪み=男みたいなね。今回のアルバムのテーマは“男の子から男へ”ですからね。
渡辺:初めて聞いた(笑)。
天神:(笑)ゴリゴリ感は出したいと思っていたし、出せたんじゃないかな。そういうところは引き続き研究して、より男を磨きたいです。(一同:苦笑)
──でも確かに、男の子から男へってわかる気がします。トミーさんは?
トミー:僕は1枚目の経験を生かして、ドラムの音にこだわりたいっていうのがすごくあったんですけど、限られた時間でやるには自分一人では限界があるので音を作ってくれるプロの人に入ってもらいました。こういう音が出したいっていうイメージを伝えて2人で作り込んで、『暴れ馬症候群』とかはドラムがガツンと入り、スカンと抜ける感じですごく好きです。『タイムリミット』のスネアとか『それが、僕のすべて』は、何もチューニングしていない軽い音にしたいっていうイメージを伝えてできた音。あとバスドラは響く感じを出したくて、全曲こだわりましたね。満足のいく音になりました。
──Laugh Lineといえばこういう感じというものは、みなさんの中にあるんですか?
渡辺:音楽の幅を狭めたくはないですね。「ピアノでこれやるの?」っていう、サプライズ的なものは常に考えてます。個人的にはメロディーにはこだわっていきたい。「Laugh Lineと言えば曲の良いバンドね」って、それぐらい言われたい。そこは崩したくないところのひとつですね。
──曲が良いと言えば、『それが、僕のすべて』はまさにピアノバンドという綺麗な楽曲になりましたね。
渡辺:これは生ピアノで録って良かったもののひとつです。ギターではなく、ピアノという武器を使ったからこそ生かされる曲になりました。
トミー:今回はロックを意識して全体的に作ってますが、これだけ昔の曲なので新曲に比べると雰囲気がちょっと違うんですよ。1枚目にも入れなくて、いつ入れるんだよって話になって。
天神:ハメてみたらちょうどパズルのピースのようにハマったんです。
──なるほど。『口癖』ではトミーさん、また歌いましたね。
トミー:天神さんも歌っているんですよ。まあ…難しいですね(苦笑)。録った声を聴いて、なんて自分の声は幼いんだろうって思いましたよ。
──『優しくして』の掛け合いがすごく好きだったので今回楽しみにしていたんですけど、5曲目まで全然なくて、最後の最後にやっと聴けた(笑)。これもLaugh Lineの特徴のひとつになりつつありますよ。
トミー:よく思いつくよね。メロディーに別メロを付けるって。
渡辺:物足りなくなっちゃうんですよ。ループのイメージはあるんだけど、このまま突き通してどうするんだってなると別メロを入れたくなる。何がお手本とかも覚えてないんですけど、別メロを作るのは俺の中でアリになっちゃったから。
joint tour 2008
──それにしても全体的に深い音になりましたね。
トミー:1枚目はギターバンドに比べると音の乗り方とか、音圧的な問題とかあって、2枚目は音圧を出したいなって思ったんです。
渡辺:生ピアノはデカイと思いますよ。音の広がりは絶対にある。凝縮されつつ広がりつつ。
──アルバムタイトルが『コントラスト』ですけど、色彩豊かな6曲が揃ったという感じですね。
渡辺:“コントラスト”っていう言葉が浮かんで、これ以外思いつかないぐらい良いタイトルが付きました。
──リリースして『joint tour2008「コントラスト」発売記念ツアー』もありますが。
トミー:対バンが強力なので負けないようにしないと。いい経験になるよね。成長できるツアーになると思います。
──これまで一緒にやったバンドで刺激を受けたバンドっています?
天神:僕は前回のツアーで回ったa flood of circle。若いのにすごいなって思いました。俺らもしっかりせんといかんって。
トミー:レーベルメイトなんですけどツアーを一緒に回って、今も無意識のうちに意識してます。
渡辺:僕はUNISON SQUARE GARDEN。引き寄せられますね。今度一緒に回るtalk to meは、初めて僕らがロフトに出た時にtalk to meを見て衝撃を受けた覚えはありますね。すごいバンドですよ。
──このツアーが終わるとすぐに2009年を迎えますが、来年はどんな年にしたいですか?
渡辺:ライブのクオリティを上げないといけない。あと、もっと視野を広げて曲を書きたいです。
トミー:より良くなりたいよね。
──2枚目が出たらバンドのモチベーションが、また高くなる気がしますね。
トミー:やってやるしかねーよ!
渡辺:いきなり何が乗り移ったの? トミーくん、たまに変なスイッチが入るんです(苦笑)。『ドラマチック』と聴き比べて欲しいです。Rooftopで初めて知る人は、生ピアノでやるロックをとりあえず聴いてみて欲しいですね。
トミー:ピアノ3人じゃないぞと(笑)。
──ピアノの固定概念を外せるかもしれない。
渡辺:ライブは動きがあって楽しいですから。
──最近も、鍵盤を殴りながら弾いてるんですか?
渡辺:(笑)最近は飛んだりもしてます。
トミー:いつエレピの違うボタン押しちゃうかってハラハラするんですよ(笑)。
コントラスト
RTSC-017 / 1,890yen(tax in)
11.12 IN STORES
Live info.
11.01(Sat)knave
「パナソニック乾電池 evolta presents MINAMI WHEEL 2008」
11.03(Mon)下北沢GARAGE
「shimokita round up」
『joint tour2008「コントラスト」発売記念ツアー』
11.21(Fri)仙台PARK SQUARE
W)talk to me / パウンチホイール / 植木遊人 / etc...
11.25(Tue)愛知・池下CLUB UPSET
W)talk to me / 植木遊人 / Peeping Tom / etc...
11.26(Wed)utsunomiya HEAVEN'S ROCK VJ-2
W)talk to me / overall+ / YKJ / etc....
12.01(Mon)京都MUSE
W)talk to me / パウンチホイール / ワイ・ユー・ジー / etc...
12.02(Tue)大阪MUSE
W)talk to me / ハックルベリーフィン / ソウルジャンクションズ / BOO BEE BENZ
12.03(Wed)神戸VARIT
W)talk to me / ハックルベリーフィン / etc...
12.11(Thu)下北沢SHELTER
LAUGH&PEACE VOL.2「コントラスト」発売記念ツアーファイナル
W)ワイ・ユー・ジー(植木遊人グループ) / mojoco
Laugh Line official website
http://laughline.jp/
Joint Tour2008 official website
http://blog.livedoor.jp/jointtour2008/