ギター バックナンバー

9mm Parabellum Bullet('08年10月号)

9mm Parabellum Bullet

未曾有の快進撃を続ける轟音生命体、
メジャー・アルバム2作目にして早くも不滅の金字塔的作品を完成!


今年の夏フェス最多出演バンド(9回)となった9mm Parabellum Bulletが、2nd.アルバム『VAMPIRE』をリリースする。歌謡曲、メタル、ポストロックからサーフミュージックまで。アルバムタイトルでもある“VAMPIRE”のように、聴く者の心に噛み付いて離さない強さと破壊力を持った全12曲。また、あのはちゃめちゃでめちゃくちゃに暴れまくるライヴは一度見たら忘れることができないほど、強烈なインパクトを残す。
今回はフリーペーパー各紙での2名ずつ対談ということでRooftopでは菅原卓郎(vo.g)と、かみじょうちひろ(ds)、菅原卓郎(vo.g)と滝 善充(g)の対談が行われた。普段は聞くことができない、対談で新たな一面を見ることができるだろう。(text:やまだともこ)


菅原卓郎(vo, g)×かみじょうちひろ(ds)
楽曲と発せられる言葉から得られる達成感


詞を書く上での新しいスタイル

──2枚目のアルバム『VAMPIRE』がリリースされますが、“魔の2枚目”という言葉があるように制作の段階でプレッシャーを感じることはありましたか?

菅原:具体的なプレッシャーはそんなに感じていませんでしたが、制作が終わって解放された時にすごく気が楽になっていたので、実は感じていたのかもしれないです(笑)。1枚目を踏まえて、良いものを作ろうというのは常に考えていましたが、まずはCDを聴いた人が驚くものや楽しめるものを作るのが大事だと思っています。

かみじょう:無意識ですけど、徐々に進化していこうとは思ってましたね。

──『VAMPIRE』を1枚通して聴いて、全曲アルバム・タイトルを連想させる曲だと感じましたが、アルバム・タイトルは最初に決まっていたんですか?

菅原:いえ。いつも曲が出揃うぐらいまではアルバム・タイトルを考えられないんです。曲順を決めるぐらいになってようやく…。それで(中村)和彦が「“VAMPIRE”がいいと思う」って。どの曲も個性的ではちゃめちゃな感じなんですけど、9mmらしさで統一されていると思います。

──9mmらしさというのは、ご自身ではどんなところだと思いますか?

かみじょう:80年代〜90年代ぐらいの歌謡曲っぽい、くさいメロディーを聴かせるような感じです。

菅原:めちゃくちゃにやっちゃうところですね。

──『VAMPIRE』はまさに吸血鬼のようでもあり、殺傷能力が高そうな凶器のような雰囲気もありますね。ところで、今回はお2人で作詞をされている曲(『Trigger』と『Faust』)がありますが、これはどういう経緯からですか?

菅原:曲はできていて、最初は僕がテンポよく詞を書いていたんですが、行き詰まってしまったんです。その時に、このままではこの曲たちがアルバムに入らなくなってしまうと、みんなで完成させていこうと言う話になったんです。普段も曲ができてからイメージ会議をしているんですが、『Trigger』はイメージ会議後に、かみじょうくんと2人で話をしながら進めていきました。かみじょうくんの歌詞はシンプルに言いたいことを言うっていうスタイルだったので、段落の進み方とか話の進み方の骨になるところを参考にして僕が書いていきました。

かみじょう:僕が書いた詞を直接使っているわけではなくて、雰囲気的なところですね。今は戦場の詞になってますが、僕が書いていたのはOLの話ですから。この歌詞を読んでそこまでわかってくれる人がいたらなかなかするどいですね。仲良くなれそうな気がします(笑)。

──『Faust』は“知識と権力を得るため、悪魔に魂を売った”という、中世伝説のお話を元に書かれているんですか?

菅原:はい。ちゃんとなぞられている感じの曲になりました。前から『Faust』っていうタイトルの曲があったらいいなとは思っていたんです。イメージ会議の時に、滝がこの曲に持っているイメージを“万里の長城”だと言っていたので、俯瞰で見ているようなイメージにしていったらいいかなと、僕はひたすらイメージを、かみじょうくんも雄大な感じのイメージで書いてきてたので良い部分を足して完成させました。

かみじょう:万里の長城と言われたので、視点を上に向けたような歌詞で意識して、『Trigger』とは気分を変えて真面目に書きましたね。

shimmy

芯のある言葉

──かみじょうさんは、菅原さんが書く詞を読んでどんなことを感じますか?

かみじょう:暗いなって思います(笑)。

──私は普段菅原さんはどんなことを考えているんだろうなって思いました。

かみじょう:この子の頭は宇宙なので(笑)。

──菅原さんはどんなことを考えながら詞を書いているんですか?

菅原:インディーの時は曲の雰囲気に合う言葉を入れていたんですけど、(いしわたり)淳治さんと作業をし始めた時に、何かしらメッセージがあったり、聴いた人のとっかかりになるものがないとだめだなって感じたんです。自分が好きな歌詞はすごくストーリーがあって、その上ですごく気になる言葉とかグッと来て乗っているものだなって思って、それを書きたいなと今は思っています。

──普段思いつかない言葉が並んでますしね。

菅原:例えばどんな?

──根本的な話になっちゃいますけど“VAMPIRE”とか…。

かみじょう:言われてみれば使わないですね(笑)!!

──だからなのか、現実よりもちょっと離れたところを感じられるという意味で、詞は小説を読んでいるみたいでした。

菅原:そういうふうに書きたいなと思っているんです。発音して気持ちいい言葉が乗っている曲もすごく好きなんですけど、自分がやるんだったら歌う時に発した言葉で達成感を得たいんです。曲も物語っぽい展開があるし、ビートも早い曲が多いし、みんなの演奏が力強いので、そこでイメージの断片にしちゃうと歌が負けちゃうと思うんです。何かしら芯がある言葉にしたいと思ってます。

──ビートが早いという話が出ましたが、今回もドラムの早さは圧巻でしたね。

かみじょう:自分で録ったものを聴いていて、バカだなって思いますよ(笑)。

──『Hide & Seek』とかとんでもないですからね(笑)。

かみじょう:あれはうちのメデューサみたいなやつが…。

菅原:和彦のことですね(笑)。

かみじょう:曲を作る時に、最初はBPM250ぐらいだったんですけど、早くやれば早くやるほど喜んでくれたのでいつのまにかBPM280ぐらいになってしまいました。

菅原:それで、自分で「この曲早くて辛いんだ」って、倒錯した事態になってましたけど。

かみじょう:でもライヴでやると意外と地味に見えるんです(苦笑)。

菅原:一生懸命弾かないといけないので暴れられないんです、早すぎて。僕らがすごく暴れているところを想像するかもしれないですけど、曲の存在感で推していく曲だと思います。

──『Vampiregirl』もリズム隊のサウンドを聴いているだけでもかなり楽しめましたよ。菅原さんから見たリズム隊の方々はどうですか?

菅原:普段スタジオで、演奏の話をしているのを一切見たことがない。それでも一体感があって、彼ら独自の味がある演奏になっているから不思議だなといつも思っています。すごく好きです。

──ライヴ時は、ドラムのプレイを見ていてどうですか?

菅原:ライヴ中にかみじょうくんのところに遊びに行ってます。シンバルが手前にいっぱい並んでいるので、気分が良い時に叩いてますよ。

──叩いている時は気分がいいんだなって思えばいいですか?

菅原:そうですね(笑)。「卓郎、盛り上がっているんだな」って思ってもらえれば。

──かみじょうさんはライヴ中に菅原さんがはちゃめちゃに暴れている姿を見ていてどうですか?

かみじょう:よくやるぜって思いますよ(笑)。あと逆光の中、ダビデ像みたいなシルエットが見えています(笑)。

菅原:デカイからね。

──9mmのあのライヴを初めて見た人にはかなりの衝撃を与えると思いますが、だからこそライヴをやる側もお客さんも次のステージに対して求めるものがどんどん大きくなっていくと思うんです。ライヴ 前にイメージをしてからステージに立ったりはされますか?

菅原:前回よりもいいライヴをしようと毎回思ってます。その前の回がすごく良いライヴだったら、「あれぐらいいけたらいいね」ってやんわり話はしています。あと反省会もよくやるんです。みんなでビデオを見て、ここの繋ぎはあまり良くなかったとか、ここのMCは喋りすぎだとか。…MCはオレだけですけど(笑)。

──あれだけ演奏しながら暴れていて、冷静になる瞬間ってありますか?

菅原:けっこう冷静にやってるつもりですよ。そうじゃない瞬間もありますけど。

shimmy

意外とやっちゃってるぞ

──ところで、今回もこの作品のリリースツアーがたくさんありますが、2枚目が出てお客さんの反応も楽しみですね。

菅原:すでにライヴでやっている曲もありますが、『The Revenge of Surf Queen』はインストだから明らかに困惑しているんですよ。こいつらは何をやりたいんだ?って。でも、曲が進むにつれて、そういうことかって納得してくれているようです。

──これ良いですよね。ギターのメロディーはさすがだと思いました。

菅原:ギターが歌ってますからね。

──こういう遊びができるようになったのも2枚目という余裕が出てきたんですね。

菅原:自由な空気が出来てきました。

──CDは爆音で聴いても良いですよね。

菅原:音の分離もすごくいいし、全体で聴くと塊でガツンと出てくるので気に入ってます。

──今年はフェスにも多く出場し、いろんな人に聴いてもらえる環境になってきましたね。

菅原:名前を知ってるけど見たことないっていう人が、フェスだといっぱい見てくれると思うんです。サマソニだと洋楽目当てで来ている人が見に来てくれてましたよ。

かみじょう:コールドプレイが始まる直前まで僕らのライヴを見てくれてました。アンコールまでしてくれてるから「よし!派手にかましてやろうぜ!!」って出て行ったら半分ぐらいになってましたけど(笑)。

──でも、ギリギリまで残ってくれていたんですね。では、最後にRooftop読者の方に一言ずつお願いしても良いですか?

菅原:『VAMPIRE』は自分たちが気に入ったものができたので楽しんでもらえると思います。『Termination』の時はシリアスでクールで真面目なバンドだと見られていたと思いますけど、実は意外とやっちゃってるぞっていうのがサウンドに表れていると思うので、聴いて楽しんでもらえたらいいなと思います。それでライヴにも来てくれたら嬉しいです。

かみじょう:みなさん、こんにちは。Rooftopはすごく面白い雑誌なんですけど、『VAMPIRE』もすごくいいのでぜひ聴いて下さい(笑)。

一同:…??

菅原:何で比べてるんだよ(笑)。

──…こんな感じで、もう大丈夫ですか?

かみじょう:僕にできるのはこれぐらいでした。ご期待にそえなくてすみません(笑)。

interview:やまだともこ





菅原卓郎(vo, g)×滝 善充(g)

互いの存在なしでは成立し得ぬ怒濤のツイン・ギター


アイアン・メイデンを意識した『Supernova』

──まず、お互いのギタリストとしての特性をどう見ていますか。

滝:卓郎のギターは俺の弾きたいところを弾いてくれるから、ギターがもう1人いてホントに良かったと思うことが多いんですよ。

菅原:絡みとか、押さえてる所とかね。

滝:あと、音の厚みもね。卓郎のギターがなければ、自分の理想的なプレイは絶対にできないと思ってますから。ホントになくてはならない存在ですよ。

菅原:そんなこと言われると照れくさいね(笑)。以前は滝の弾くフレーズを聴いてから自分なりに攻める弾き方をしていたんですけど、それだと曲がどんどん混乱していくだけだから、2本のギターを合わせてその曲の一部だと考えるようになったんです。今もそれが基本だし、俺としては滝が自由に弾ければいいなといつも思ってますね。

──本作では特に『Supernova』でツイン・ギターの妙が楽しめますね。どことなくテレヴィジョンの『Marquee Moon』を彷彿とさせる曲ですけど。

菅原:ああ、格好いいほうに行っちゃったね(笑)。

滝:確かにそう言われると『Marquee Moon』っぽいですけど、俺たちとしてはアイアン・メイデンを意識したつもりなんですよ。俺の友達はメタラーが多くて、みんな「あの曲はメイデンだよね」と言ってくれるので嬉しいです(笑)。

菅原:ただ、メイデンと決定的に違うのは、ギターが1本足りないことですね。

滝:そう、1本足りないからペラペラになっちゃってるんですよ(笑)。

──僕が9mmの音楽を聴いていつもグッと来る要素のひとつは、記名性の高いギター・リフなんですよ。一度聴いたら忘れられない、凄く印象的なリフを量産しているじゃないですか。あれはちょっとした発明品だと思うんですよね。

滝:リフは俺がメインで作ってるんですけど、リフが鳴った瞬間にテンションが上がらないと自分が困るので、できるだけテンションの高いリフを作るようにしてますね。自分もメタリカみたいな耳に残るリフを考えて、何度も弾いて、後世まで伝えたいんですよ(笑)。

菅原:昔の曲には俺の作ったリフもあるんですけど、最近は減りましたね。家ではちょいちょい作って遊んでますけど。

──しかし、9mmのアルバムでデンデケデケデケなサーフ・インスト(『The Revenge of Surf Queen』)が聴けるとは夢にも思いませんでしたね(笑)。

滝:ベースの中村(和彦)君がああいうサーフ・インストを好きだったみたいで。ある日、彼がヴェンチャーズを聴きながらスタジオに来て、「これ格好いいから聴いてみてよ」ってラジカセでみんなに聴かせたんです。確かに格好良かったから、こういう曲を作って夏フェスでやろうぜっていう話になって。それで、俺の思い描くサーフ的な感じで弾いてみたら、ものの10分で完成したんですよ(笑)。

──でも、せっかく完成させたのにアルバムが出るのはすっかり秋という(笑)。

菅原:完全にシーズン・オフですね。過ぎ去った夏を思い返して切なくなって下さい(笑)。
9mm Parabellum Bullet

ギターは思い込みこそが大事

──あと、昔の歌謡曲の匂いがする楽曲も9mmの大きな持ち味のひとつだと思うんです。『悪いクスリ』はドアーズの『Touch Me』とも言えるけど井上陽水の『氷の世界』を想起させるし、『Living Dying Message』はイントロのギターが中森明菜の『少女A』みたいだし(笑)。こういうの、僕らのような30代には思い切りストライク・ゾーンなんですけど。

滝:申し訳ないことに、『氷の世界』も『少女A』もよく知らないんですよね(笑)。昔の歌謡曲は全然詳しくなくて、そういうのを聴いて育ったわけでもないんです。ただ何となく“この感じがいい”っていうだけなんですよ。“ああ、ギター泣いてるなぁ…”っていう痛快な感じが好きで。そう思いながら弾いてると、どことなく歌謡曲っぽいテイストを帯びてくるって言うか。

菅原:不思議ですよね。歌謡曲が一番歌謡曲らしかったのは、俺たちが生まれた頃やそれ以前なわけだから、実際には聴いてないはずですからね。俺は最近、阿久悠さんのBOXセットを買ってよく聴いてますけど、曲作りに直接的な影響は受けてないですし。

──取り立ててコンセプトはないとのことですが、僕には今回のアルバムが“飽くなき自由への渇望とその闘争”をテーマとしているように感じたんですよ。『Wanderland』は理想郷とする約束の地の象徴であり、『Faust』はゲーテの戯曲と同タイトルであることからも悪魔と契約して魂を売り払うニュアンスがあるし、『次の駅まで』はティッシュと同等の希望を抱えながら生きていく人生を暗喩したものだし、通底するテーマをどことなく感じるんですよね。

菅原:自然とそうなっている感じですかね。あるいはそういう資質が元から自分にあって、その目立つ部分を拾い集めたらこうなったと言うか。まぁ、“自由への渇望”とかそんな大袈裟なもんじゃないですけど、凄く自由にやりたいと思ってこのアルバムの制作を始めたのは確かですね。その自由を求める感じは音にも表れてると思いますよ。楽しく曲を作りたい、楽しく作業をしたい気持ちがずっとあったし。

──ギターの音色は録る前に細かく決めてから臨むんですか。

滝:いや、そうでもないですね。曲ごとにアンプやギターを大まかに決めてるだけです。で、そのギターをアンプに差し込めば考えてる音が出ると信じ込んでやってるので。今回もハイとかローとかをほとんどいじらずにやりましたし。

菅原:俺も似たような感じです。ESPから借りてきたギターが凄く良くて、それを自分が普段使ってるアンプに突っ込んだらいい音になるのが判ってたから、それで大体は正解でしたね。これで大丈夫と思い込んでやるのが大事って言うか。

滝:思い込みは大事ですね。ジャガーをデラックス・リヴァーブっていう昔のアンプに突っ込んだら絶対にサーフの音が出るっていう、その思い込みだけで弾いてましたから(笑)。

菅原:俺はナヴィゲーターのレスポールを使ってるんですけど、“ここは絶対にナヴィゲーターでしょ?”ってブースに行く前から決めて実際に弾いてみると、“やっぱりこれだ!”と思いますからね。

──楽曲ごとに目を向けると、まず、初めて曲作りに携わったという中村さんの作った楽曲が一際ユニークですね。『Hide & Seek』はドラムの乱れ打ちとメロディアスな曲調との対比が面白いカオティックな曲だし、滝さんと共作した『悪いクスリ』は先述したとおり歌謡曲のテイストがあって、捻りの効いたメロディも心地好い。

滝:『Hide & Seek』は生まれて初めて作った曲らしいんですけど、かなりいい線行ってますよね。完成型が全く見えてない状況で録ることにして、実際に録ってみたら凄く格好良かった。

──『Faust』のジャムっぽい間奏は非常に有機的なアンサンブルで、バンドの成長の跡が窺えますね。

滝:あれは新機軸でしたね。あのインスト・ゾーンは最初にはなかったセクションなんですけど、割と壮大なイメージの曲だったし、短くコンパクトにまとめるよりは“やれるところまで引き伸ばしてやれ!”と思って足したんですよ(笑)。
9mm Parabellum Bullet

音楽も、映画も、小説も“生き続けるメッセージ”

──『次の駅まで』は霞の向こうにギターが聴こえるような音像で、エンジニアである日下貴世志さん(毒組)の手腕が光る逸品ですね。人間の一生を電車になぞらえた歌詞も素晴らしいし。

菅原:人生を凝縮しているイメージも受け取ってもらえたら嬉しいですね。まぁ、歌詞のとおりに聴いてもらっても全然構わないんですけど。

滝:こういう従来の9mmっぽくない曲は、決まって俺が体調の悪い時に出来るんですよ。この曲も、俺がお腹を壊してスタジオを休んで、家でうずくまりながら書き上げたんです(笑)。『Termination』に入ってる『Butterfly Effect』も、40℃の高熱を出した時に生まれた曲だったし。

──じゃあ、滝さんにはこれからもどんどん体調不良になってもらわないと(笑)。

滝:そうですよね。そのほうが珍しい曲をたくさん書けますから(笑)。

──曲によってエンジニアを変えているのは、その曲の持つ世界観に準じてのことですか。

滝:パンチのある音がもうひと味欲しい時とか、他とは違うエッセンスが欲しい時とか、ケース・バイ・ケースですね。

菅原:俺たちがそういう希望を出して、プロデューサーの(いしわたり)淳治さんが作業全体を俯瞰して現場ごとを取り仕切るって言うか。

──今思えば、『Termination』は多分にストイックな面が出すぎたと言うか、肩に力が入りすぎていた感がありますよね。今回のように自由奔放なアイディアがふんだんに詰め込まれたアルバムを聴くと余計に。

滝:今回は本来の自分たちにかなり近づけたと思うんですよ。『Termination』はメジャーに進出して最初のアルバムで気負いが凄くあって、ちょっと固い感じになってましたからね。それに対して、今度のアルバムはリラックスした状態で制作に臨めたのが良い効果を生んでいると思います。

菅原:作詞の面で言うと、リラックスできた部分と肩に力が入った部分が両方あるんですけどね。基本的に考えていたのは、もっと作品全体の一部として生きる歌詞にしたかったと言うか。俺の書いた歌詞が全部個人的なことだと捉えて欲しくなかったんですよ。“おれ”とか“僕”という一人称は出てくるけれど、そこに余り自分らしさを込めたくなかった。

──だからこそ“Vampiregirl”や“Faust”といった寓話をモチーフとした曲が重なったわけですね。

菅原:うん。ストーリーのある歌詞がいいと思ったんですよ。最初から物事の真理や普遍性を直接的に唄うんじゃなくて、本を読んで感動したとか、彼女が電車に乗って行ってしまったとか、そういう日常のありふれた物語を描いてみたかったんです。

──最後の『Living Dying Message』で唄われる“あなたは二度と孤独になれない”という歌詞は、楽観的にも悲観的にも捉えられますよね。僕は絶望的なまでに悲観的な意味で捉えましたけど(笑)。

菅原:どうとでも取れますね。その部分を書けた時は、自分でも凄くいいなと思って。タイトルは、死に際で遺すメッセージがずっと生き続けているイメージなんですけどね。“二度と孤独になれない”と言われた時はいくら説明されても理解できないかもしれないけど、いつか必ず判る日が来る。それはそのメッセージが生き続けているからだよ、っていう。音楽も、映画も、小説も、みんなそういう生き続けるメッセージなんだと思いますよ。

interview:椎名宗之



2nd Album
VAMPIRE

01. Wanderland
02. Vampiregirl
03. Trigger
04. Keyword
05. Hide & Seek
06. The Revenge of Surf Queen
07. Supernova
08. Faust
09. 悪いクスリ
10. We are Innocent
11. 次の駅まで
12. Living Dying Message
EMI Music Japan TOCT-26599
2,500yen (tax in)
2008.10.15 IN STORES

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Live info.

ワンマン・ライヴ『暁の野音』
10月18日(土)東京 日比谷野外大音楽堂
OPEN 17:00 / START 18:00
TICKET SOLD OUT!!
info.:DISK GARAGE 03-5436-9600(平日 12:00〜19:00)

VAMPIRE EMPIRE TOUR 08/09
11月6日(木)横浜 club Lizard/11月8日(土)水戸 LIGHT HOUSE/11月9日(日)宇都宮 HEAVEN'S ROCK VJ-2/11月11日(火)千葉 LOOK/11月13日(木)高崎 club FLEEZ/11月15日(土)熊谷 HEAVEN'S ROCK VJ-1/11月19日(水)仙台 CLUB JUNK BOX/11月21日(金)青森 Quarter/11月22日(土)盛岡 CLUB CHANGE WAVE/11月23日(日)酒田 MUSIC FACTORY/11月25日(火)郡山 CLUB#9/11月27日(木)新潟 CLUB JUNK BOX/11月28日(金)金沢 vanvan V4/11月30日(日)松本 ALECX/12月6日(土)札幌 PENNY LANE 24/12月7日(日)帯広 MEGA STONE/12月20日(土)Zepp Osaka(ワンマン)/12月21日(日)Zepp Nagoya(ワンマン)/12月28日(日)Zepp Tokyo(ワンマン)/1月9日(金)滋賀 U★STONE/1月10日(土)奈良 NEVERLAND/1月12日(月)高松 DIME/1月13日(火)松山 SALONKITTY/1月15日(木)大分 T.O.P.S/1月17日(土)熊本 DRUM Be-9/1月18日(日)鹿児島 SR HALL/1月20日(火)長崎 DRUM Be-7/1月22日(木)福岡 DRUM Be-1/1月24日(土)広島 ナミキジャンクション/1月25日(日)岡山 PEPPER LAND/1月27日(火)神戸 STARCLUB/1月29日(木)京都 磔磔/1月31日(土)山梨 KAZOO HALL/2月1日(日)浜松 窓枠
*ワンマン表記以外の会場は対バン・ライヴになります。

9mm Parabellum Bullet official website
http://9mm.jp/

posted by Rooftop at 18:19 | バックナンバー