ギター バックナンバー

MAMORU & the DAViES('08年08月号)

rooftop

やることねぇからロックンロール!
ワタナベマモル、ソロ16年目のマスターピース『ヒコーキもしくは青春時代』


ニッポンが世界に誇る“炎のパブロッカー”、ワタナベマモル率いるMAMORU & the DAViESが実に4年振りとなるオリジナル・アルバム『ヒコーキもしくは青春時代』を完成させた。全編ほぼ3コードの金太郎飴状態、シンプルで普遍性の高いロックンロールを掻き鳴らすことは本作でも一貫しているが、マモル自身のルーツである70年代の音楽の質感がふんだんに盛り込まれていること、平易な言葉とポップなメロディ・ラインが有機的に調和していることがとりわけ大きな特徴と言える。
マモルは“やることねぇからロックンロール/ヒマ持て余してんのさ”とタイトル・トラックで唄い、事実このインタビューでも「他にやることがないから音楽を続けている」と自嘲気味に語っているが、これは彼一流のシャイネスと取るべきだろう。ブルースを分母に置いたロックンロールをこよなく愛し続けた男が紆余曲折の末に辿り着いた至高のロックンロール、とは言わない。そんな大袈裟なものではなく、独り酒にまみれた人恋しい夜にずっと寄り添ってくれる友のような音楽がここにはある。そんなどこまでも温かみのある音楽は、自嘲の笑みを浮かべるシャイな人間にしか作れないものだ。そして、そんなシャイな人間の掻き鳴らすシンプルな3コードにこそ真心のロックンロールが宿っているのである。(interview:椎名宗之)


やめられないままここまで来てしまった

──昨年、“MAGIC TONE RECORDS”を新たに立ち上げたのは何か理由があったんですか。

マモル:いや、特に大袈裟な理由はないです。自分のやりたいことをやってみたかったというだけで。

──それ以前の“SIMPLE RECORDS”との違いは何なのかなと単純に思ったんですが。

マモル:あれは遊びって言うか…まぁ今も遊びみたいなもんですけど、自分のCDを出す上での便宜的なものですよ。

──マモルさんには我がシェルターで毎年4月に行なわれている“リーブリロー追悼ライヴ”でお世話になりっぱなしなんですが、昨年12月に“MAGIC TONE RECORDS”から発表した『日本のロックンロール〜DR.FEELGOOD TRIBUTE ALBUM〜』はかれこれ14、5年越しの音源化でしたよね。

マモル:それくらいですね。シェルターで“リーブリロー追悼ライヴ”を始めて10年くらい経った時にトリビュート・アルバムを作れたらいいなとは漠然と考えていたんです。自分でも凄くいい形で音源にできたと思いますね。良かったですよ。

──今年の5月にはそのトリビュート・アルバムのレコ発ライヴの模様を収めたDVD『WHAT IS THE DEFINITION OF ROCK'N ROLL?〜Dr.FEELGOOD TRIBUTE CONCERT〜』も発売されましたが、演者も観客もロックンロールに対する愛情に充ち満ちた内容でしたね。

マモル:まぁ、揃いも揃って3コードのロックンロールをただやってるだけっていう(笑)。

──随所に挟み込まれた「あなたにとってロックンロールって何ですか?」という出演者に対する問い掛けが良いアクセントになっていましたけど、あれはマモルさんの発案なんですか。

マモル:あれは僕が考えました。「何でもいいから訊いてよ」って撮る人に頼んで、後はライヴ映像を撮ってくっつけて、それで面白かったら売ろうって話だったんですよ。実際に出演者のコメントをくっつけたのを見たら自分でも面白かったから、出すことにしたんです。

──「あなたにとってロックンロールって何ですか?」という問い掛けに、マモルさんは「ステージで3コードを回していて、“ワンモア・タイム!”と叫んだ時の快感。それがやめられない」と答えていましたよね。その延長線上にあって最良の形が今回発表となる『ヒコーキもしくは青春時代』という作品だと思うんですが。

マモル:そうですね。やめられないままここまで来てしまいました。

──前作『Pretty Swing』から4年振りのフル・アルバムとなるわけですが、ご本人としてはそれほど間の空いた感覚はないですか。

マモル:考えてみればそんなに経ってしまったんだなって言うか。しかも、全国流通するのはロフトレコードから出した『R&R HERO』以来10年振りなんですよ。『Pretty Swing』は完全な自主制作で、新曲もほとんどないセルフ・カヴァーみたいなアルバムだったから、純然たるオリジナル盤としてはかなり久し振りなんですよね。

──常にライヴを精力的に行なっていたし、新作を作る焦りみたいなものは感じていませんでしたか。

マモル:いや、そうでもないですよ。早く作んなきゃとはずっと思ってましたから。

──じゃあ、実際にお尻に火がついたのはいつ頃だったんでしょう。

マモル:4年前からずっと(笑)。今回、録音も全部自分のパソコンに取り込んで作ったんですけど、自分が納得できる音を作れるまで3、4年掛かったことが間の空いた原因なんです。

──MAMORU & the DAViESのファースト・アルバム『想像しよう』を発表した当時の本誌のインタビュー('97年10月号)でも、CDを出す前は8チャンネルのマルチトラックで自宅録音したものを独りでせっせとカセットにダビングしたと話していましたよね。

マモル:うん、あの時はそうでしたね。MTRに録ったのを1本1本ダビングしてました。その作業を今度はパソコンでやるようになって、今はもうちょっと本格的にできるようになった。新曲はずっと出来てたんだけど、それをちゃんとした音にして作りたかったんですよ。ホントは2年くらい前に出したかったんですけど、ツアーをやりながらだから時間的な制約がいろいろとあって。納得の行く音を作るっていうのがなかなか難しいんですよ。


70年代のテイストが僕にはちょうどいい

──アルバム・タイトルには真っ正面から“青春時代”というどこか気恥ずかしい言葉を敢えて選んでいますが、これはマモルさんが原点回帰モードの中にあることの表れなんでしょうか。

マモル:いや、いつも原点回帰モードですからね。性格的にも回帰しっぱなしなので。

──「ヒコーキもしくは青春時代」をアルバム・タイトルに選んだのは?

マモル:一番いい曲だと思って。まぁ、どの曲も自信はあるんですけど、アルバムの1曲目はこの曲だろうなと思ってたし。曲名じゃないタイトルにしようかとも思ったんですけど、何かピンと来なかったんですよ。『想像しよう』の時も、単に1曲目の曲名をそのままタイトルにしただけだったんです(笑)。何も考えてなくて、“これでいいや”って感じだったんじゃないかな。

──タイトル・トラックは“今度こそオレの番だぜ!”と唄われる威勢の良いナンバーで、マモルさんの高らかな復活宣言とも取れますよね。

マモル:うん。まぁ、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないし。威勢が良いのか空元気なのか判らないし、ただ言ってみただけなのかもしれない。聴く人の受け止め方次第ですよ。

──「炎のパブロッカー」というマモルさんを一言で言い表したようなナンバーがありますが、徹頭徹尾キャロル丸出しで清々しい気分すらしましたよ(笑)。

マモル:この間、ハル(大木温之、The ピーズ)にもそのことを突っ込まれましたよ。「よくそこまでやるな」って(笑)。突っ込まれたって言うか、褒められてたんだね、あれは結局。ハルには「ずっとキャロルを聴いてたんだよ」って言ってやりましたけど。“キャロルっぽい”っていうのが、ここ3、4年僕の中でキーワードでもあるんです。

──5年前にDVDの付いたベスト・アルバムも発表されたりしましたもんね。

マモル:うん。あのアルバムを買って、“やっぱりこれだ!”と思ったんですよね。それ以降何度目かのマイ・ブームが起きて、それがまだずっと続いてるんですよ。目新しいところは特にないんだけど、単純に曲がいいし、演奏が格好いい。初期のビートルズを日本的に解釈したものだからいい意味で日本くさくて、ちょっと野暮ったいところも凄く好きなんです。ビートルズほど洗練されていないところがね。

──どうしても日本的な情緒がにじみ出てしまうと言うか。

マモル:そういうことです。“そうか、オレはこれだったのか”って思ったんですよ。“そうだ、これだったな”って高校の頃に聴いてた感覚を思い出したりもして。

──つまり、マモルさんが青春時代を過ごした70年代のテイストが本作のキーワードということですか。

マモル:うん。ビートルズとかの60年代の音楽が一番好きかもしれないんだけど、60年代の音ってトラックも少ないし、それを今完全に再現するのは無理なんですよ。ホントは60年代の音を作りたい部分もあったんだけど、70年代のテイストっていうのがサウンドも歌の感じも僕にはちょうどいいんですね。僕のイメージでは、70年代は音楽が一番いい時代だったような気がするんです。50年代にロックンロールが生まれて、60年代にビートルズが出てきてみんなでそれに追い付け追い越せで、録音の技術も進歩してきたのが70年代。日本の歌謡曲も70年代はレヴェルが高かったし、丁寧な音の作り方をしていたと思う。

──ちなみに、マモルさんが当時好きだった日本の歌謡曲というのは?

マモル:沢田研二とか、井上堯之バンドの『傷だらけの天使』のテーマソングとかかな。

──ああいう手作り感のある温かい音色は80年代以降にはないですよね。

マモル:ないですね。70年代はみんな金がなかったせいもあるんじゃないですかね、よく判らないけど。あのちょっと湿った感じが格好いいんですよね。

──なるほど。そんな話を伺うと「ウォンチューな夜」という余りに南佳孝っぽいタイトルが付いているのも納得できますよ(笑)。

マモル:そう、タイトルの引用は南佳孝の「スローなブギにしてくれ(I want you)」なんですよ。僕の中で“ウォンチュー”に特に意味はないんですけど、あの曲のイメージは凄く格好いいものなんです。レコードを持ってるわけではないんですけどね(笑)。



無理に判りやすい表現にする必要はない

──「ウォンチューな夜」はイントロの「ツイスト&シャウト」風なコーラスや手拍子が入っているせいか、本作の中でもとりわけビートルズっぽいナンバーに思えますね。

マモル:ああ、リズムのモチーフは「ジョンとヨーコのバラード」ですからね。僕は一番キャロルっぽいと思ってるんですけどね(笑)。ギター・ソロはキャロルを意識してるんですよ。そういうことを余り言っちゃうのも何なんだけど。一番遊び心のある曲ですね、「ウォンチュー」は。

──サウンド面で最も気を遣ったのも、70年代っぽい温かみのある音作りだったんですか。

マモル:そうですね。いろいろと試行錯誤しましたよ、ドラムの音とか。エコーとかの歌の処理もそうだし、全体の聴いた感じとかね。聴きやすくてすんなり耳に入ってくるようにしたかったんですよ。

──かと言って、殊更にヴィンテージな音を意識した感じでもなく、とてもナチュラルで抜けのいい音をしていますよね。

マモル:うん、極々普通な感じですよ。ただ、録音するソフトのエフェクターがヴィンテージ仕様ではあるんです。まぁ、余り詳しいことは判らないんですけど。特別に古い感じで録ろうと意識したわけでもないんですよ、全部デジタルなんで。

──デジタルでアナログな雰囲気の音を出すのはかなり難しそうな気もしますけど。

マモル:アナログっぽかったですか?

──ええ、何とも言えぬアナログの温かみを感じましたよ。

マモル:ああ、じゃ良かったね。実際、難しいですよ。この4年間くらい研究してきた結果、今デジタルで録るのに僕が一番やりやすいのは70年代の音だと思った。さっきも言ったように60年代の音は無理です、僕の中では。ただの汚い音になっちゃうので。『Pretty Swing』は60年代風に録ってみたんだけど上手く行かなくて、どうしたらいいのかなと。昔は古い機材を使ってみたり、アナログのテープで録ったり、最後にマスターをカセットにしてみたり、いろいろとメチャクチャなことを試したんだけど、一向にダメでね。今はアナログを一切使ってないし、ベースとかも全部ライン録りだったりするのにアナログの質感を表現できる。だから僕が出した答えとしては、70年代の音を参考にすることだったんですよ。ここ数年、そういう70年代の音楽をずーっと聴いてましたもん。主に聴いてたのはキャロル、ポール・マッカートニー&ウイングス、『傷だらけの天使』のインスト、泉谷しげるの70年代のベスト盤とかで、音の質感に共通点があったんですよ。

──若い読者にはその共通する質感というのが伝わりにくいでしょうね。

マモル:それはちょっと伝わらないですね。無理に伝えなくてもいいんじゃないですか? いい音楽に時代なんて関係ないし、その音が別に何年代っぽくてもどうでもいいことですから。

──『Pretty Swing』発表前はなかなか歌詞が書けなかったとマモルさんが当時の日記に書いていた記憶があるんですが、本作では如何でしたか。

マモル:それは何とか乗り越えました。歌詞が難産だった時代は確かにあるんですよ。20世紀から21世紀に移る時は、唄いたいことが一個もねぇなっていう状態になりました。その結果、今も特に唄いたいことはないままなんですが、それでも自分の中では一歩前へ進めた。唄いたいことなんてどうせねぇんだよっていう考え方になって、その状態から出てきた言葉が一番ハッピーな言葉で、それが今なんだと思う。唄いたいことがなくなったからこういう歌が書けるようになったと言うか。ちょっと言い方は難しいんですけど。

──誰にでも判る平たい言葉であると同時に、いくらでも深読みできる歌詞じゃないですか。船長との航海を唄った「スキンシップは特効薬」は、“君の手でなぐさめてよ Baby”という歌詞からちょっとエッチな内容にも取れるし。

マモル:指圧の歌にも取れますしね(笑)。むしろ僕は指圧の歌のつもりで書いたんですけど、そういういろんな解釈があっていいんですよ。今の音楽は何でも判りやすいのがいいとされるけど、何かを表現するっていうのはホントは判りにくいほうが絶対にいいんですよ。70年代の音楽もそうですけど。まぁ、わざと判りにくくしてるわけじゃなくて、そんなに相手のことなんか判らねぇんだよって言うか。ありのままに表現しようとすればそんなに判りやすくはならないはずなのに、みんな無理に判りやすくしようとするでしょう? それは音楽に限らず、ファッションでも何でも。それが僕の中ではいまいち気に入らないことなんですよ、正直に言うと。21世紀が進めば進むほどそういうふうになってきてるのを感じますね。だって、クロマニヨンズなんかメチャメチャ判りにくいわけじゃないですか? 僕の中では最高ですよ、唄ってることが。メチャメチャ判りにくいもん。それが面白いんです。

──一見、とても平たい言葉を使っているにも関わらず。

マモル:そう。簡単なことを言ってるようだけどいろんなふうに取れるし、素晴らしいですよ。

メロディも言葉も等しく耳に残る音作り

──歌詞の話で言えば、「キャデラック3号」の“しぼんだキンタマ タンブリンダイス”というフレーズにはニヤリとしましたね。グレイトリッチーズの頃からマモルさんの言語感覚は一貫しているのが窺えて、個人的にも嬉しかったです(笑)。

マモル:キンタマですか? キンタマは大事な言葉なんで、つい使いたくなっちゃうんですよ。

──この“キャデラック”シリーズはまだ連綿と続いていきそうですね。

マモル:まだ続く予定です。『R&R HERO』を出した時に、曲を作るネタがないので自分のオートバイに“キャデラック”とマジックで書いて曲にしたのが最初のきっかけだったんですけど。

──“ウサギとカメならタコだ オレにはそれで充分だ”という歌詞はマモルさんの人間性をよく表していると思うし、マモルさんの人生観はこのフレーズに集約されているんじゃないでしょうか。

マモル:そうかもしれないですね。この曲にだいたいは集約されてるかもしれない。“ウサギとカメならタコだ”っていうのは自分でも面白いと思うし。

──「YOU! YOU! YOU!(ゆるい世の中)」での社会批判っぽい歌詞も、“しぼんだキンタマ タンブリンダイス”も等価なのがリアリティありますよね。“しぼんだキンタマ”のことを唄っている人間ですら“あきらめムードが 全開バリバリ”なゆるい世の中を批判しなければならない逼迫した状況だとも受け止められるわけで。

マモル:まぁ、「YOU! YOU! YOU!」はそれほど社会批判めいた感じでもないんですけどね。このアルバムの中では唯一物申す的な曲ではありますけど、“ゆるい世の中”も“キンタマ”もどっちも自分の中にはあることだから。酔っ払った勢いでエレキ・ギターを弾きながら大きいことを唄う自分と、どうでもいいくだらないことを唄う自分とが同居してるんですよ。

──“もはや死に体か ロックンロールは”という歌詞がありますが、これは反語的な意味ですよね?

マモル:どうですかね。実際、死に体かもしれないし。僕としてはちょっと大きいことを言ってみたかっただけですよ(笑)。歌入れした時に相当気持ち良かったんで。自分がジョン・ライドンになった気分で唄ってみましたから。ホントは間奏に「ファック!」とかフェイクを入れたんですけど、こんなの使えねぇやと思って後で消したんですよ。フェイクは必ず入れるんだけど、いつも多すぎてカットするんです。3テイク録るといっぱい入ってるから。

──この「YOU! YOU! YOU!」の「ジョニー・B・グッド」風なサウンドも、チャック・ベリーというよりはキャロルを意識してのものですか。

マモル:いや、これはチャック・ベリーです。チャック・ベリーのリフをどこまで迅速にできるかやってみたんですよ。

──チャック・ベリーのリフを模した曲は、マモルさんのアルバムに必ず1曲は盛り込まれていますよね。

マモル:うん。チャック・ベリーは僕の中で特別な人と言うか音楽なんですよ。そのサウンドに本気で取り組んだんです。

──ジョン・レノンがチャック・ベリーのことを「ロック界最高の詩人」と称したことがありましたが、ロックンロールな詩にかけてはマモルさんも負けていないと思いますよ。「けだるい午後のポーカーフェイス」の“土曜の夜ならSaturday Night/水曜の昼でもSaturday Night”というフレーズは簡潔にして秀逸だし。

マモル:ああ、ありがとうございます。そうやって「いい」って言われる歌詞が嬉しいところばっかりです。さっきの“キンタマ”も然りですが(笑)。昔は歌詞の作り方を変えないと音楽をやめるしかないなっていうくらいの危機感があって、今まで通りの表現をやろうと思えばできるんだけど、それだけじゃどうも自分がつまらなかったんですね。歌詞の作り方を変えてからは“水曜の昼でもSaturday Night”みたいな歌詞がいっぱい出てくるようになったから、今は平気だと思いますけど。歌詞も大事だけど、サウンドに合う言葉のノリを凄く大事にしただけなんですよ、最近は。

──それが今回のアルバムでは全編にわたって功を奏していますよね。

マモル:そうですね。意味も大事なんだけど、それは全部伝えられるものじゃないから、メロディも言葉も等しく耳に残る音作りを目標にしてきたんです。だから今度のアルバムは凄く聴きやすいと思いますよ。『Pretty Swing』の頃はまだ試行錯誤してたから。ロフトレコードにいた頃だって、うまくいかねぇうまくいかねぇって当時のA&Rを困らせてばっかりいたし(笑)。そこから何とか自分なりに掴んだものがあるんですよ。

ブルースは自分のハートなんですよ

──「君はブルースを信じるかい」のイントロに声で奏でたテナー・サックスの音が入っていますが、あれはマモルさんの声ですか。

マモル:そうです。Mooneyさん(橋詰宣明:MAD-WORDS、Mooney & his Lucky Rythm)に教わったんですよ。Mooneyさんは日本のジャグ・バンド界の大御所で、ああいうのがもの凄く上手いんです。自分でもできるようになって、ソロでライヴをやる時にいい武器として使わせてもらってますね。まぁ、シャレみたいなもんですよ。音楽は道楽なんだし、その道楽をどれだけ本気にやれるかが大事なんです。

──日本でブルースと言うとどこか求道的なイメージがあって、神聖なものに触れるような高尚さがあるじゃないですか。

マモル:うん。ブルースがそういうふうに世間から思われちゃってるのは悲しいよね。

──そういう胡散臭いブルースとは一線を画した、マモルさんみたいに歌心のあるブルースを提示できるミュージシャンってなかなかいないと思うんですよね。耐え難い悲しみを少しでも和らげるのが音楽の持つ大きな効能のひとつだと僕は思うし、“キンタマ”という突拍子のない一言でどれだけ朗らかになれることか(笑)。

マモル:外国の本場のブルースマンは“キンタマ”を連呼してると思うんですよ。日本だとそれを勘違いして敷居の高い音楽にしちゃってるんですよね。それは残念ですね。50年代の本物のブルースマンの映像を見れば、彼らが一番パンクなことをやってたのが判ると思いますよ。愛すべきパンクだしキンタマですよ(笑)。

──ロバート・ジョンソンだってどうしようもない女好きで、その恨みを買って毒を盛られたわけじゃないですか。

マモル:うん。どうしようもないヤツなんですよ。でも、そのどうしようもない音楽がメチャメチャ格好いいわけです。ブルースっていうのは音楽の形態じゃなくて、自分のハートなんですよ。生きていく上でのハートをブルースと呼んでもいいと思うし。どこかで見た50年代のジャズマンのDVDで、そのジャズマンが「オレの音楽にはブルースがあるんだよ」って言ってたんです。「ブルースっていう音楽はハートなんだよ」って。まさにそういうことなんですよね。

──ブルースを心に宿したマモルさんが「君はブルースを信じるかい」と唄えば、そりゃ無条件に「信じます!」と答えますよ。

マモル:いや、別に信じなくてもいいんだけどね(笑)。

──そう言うんじゃないかと思いました(笑)。こうして本作の収録曲を見ると、しみったれた感情をしみったれたまま曲にしたものはひとつもありませんね。

マモル:それはよく言われるんですよ。自分の性格上、そういうのは絶対にイヤみたいですね。しみったれた言葉を排除するのは無意識のうちにやってるんだと思いますよ。

──しみったれるのは普段の生活だけで充分だと?

マモル:充分です(笑)。そんなのは人に伝えるもんじゃないですから。

──ピロウズの山中さわおさんが「マモル君は本当に全く変わらない人だ」というコメントを本作に寄せていましたが、本当に1ミリたりともブレがありませんよね。その音楽性然り、こうしたインタビューでの発言然り。

マモル:まぁ、単純にアホだからじゃないですか?(笑)

──ははは。“ロックンロールを信じているから”なんて言葉があると、誌面的には映えるんですけどね(笑)。

マモル:信じてると言うか、ロックンロールは単純に好きですよ。まぁ、もうそんなにメチャクチャ好きって感じじゃないかもしれないけど、他にやることがないですからね。イヤだなと思うこともいっぱいあるけど、「じゃあ、やめんのか?」って自分に問い質せば「やるしかねぇな」って答えが返ってくるから。そしたらやるしかないですよ。

──ブルースと落語の真髄は演者が50歳を超えてからと言われますけど、マモルさんに“熟練”なんて言葉は似合わないですよね。

マモル:落語が凄く好きってわけじゃないけど、自分のライヴが落語みたいになればいいなとは思いますね。立川談志みたいな噺家はいいと思う。ああいうパンクな落語みたいな感じがね。



ヒコーキもしくは青春時代

01. ヒコーキもしくは青春時代
02. プリティーでGO
03. 炎のパブロッカー
04. 恋は何色?
05. ウォンチューな夜
06. スキンシップは特効薬
07. この胸のざわめきは何だ
08. キャデラック3号
09. けだるい午後のポーカーフェイス
10. YOU! YOU! YOU!(ゆるい世の中)
11. 君はブルースを信じるかい
MAGIC TONE RECORDS/ROLLER☆KING MAGI-0003
2,625yen (tax in)
2008.8.20 IN STORES

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日本のロックンロール
〜DR.FEELGOOD TRIBUTE ALBUM〜

MAGIC TONE RECORDS/ROLLER☆KING MAGI-0001
2,625yen (tax in) IN STORES NOW
イギリスを代表するパブ・ロック・バンド、DR.FEELGOODのトリビュート・アルバム。参加アーティストは3 CHORDS、赤羽ブリロー、MAMORU & the DAViES、石橋 勲BAND、夜のストレンジャーズ、Mooney & His Lucky Rhythm、THE PRIVATES、VIOLETS、マボロシハンターズ、ミステルズ、TERRY SHIMAMURA GROUP、THE SWITCH TROUT、ザ☆ダンス天国。「VIOLENT LOVE」のトリビュート・セッションあり。

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WHAT IS THE DEFINITION OF ROCK'N ROLL?
〜Dr.FEELGOOD TRIBUTE CONCERT〜

MAGIC TONE RECORDS/ROLLER☆KING MAGI-0002
2,940yen (tax in) IN STORES NOW
2007年12月9日、新宿クラブドクターにて行なわれた『日本のロックンロール〜DR.FEELGOOD TRIBUTE ALBUM〜』のCD発売記念ライヴの模様を収録したDVD。ボーナストラックとしてライヴ・フォトギャラリーの付いた初回限定生産(全60分)。ロックンロールを愛しロックンロールに溺れる、ロックンロールバカたちの大宴会がここにある。「あなたにとってロックンロールって何ですか?」という問い掛けに対する出演者の妙味に富んだ回答も面白い。

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Live info.

『ヒコーキもしくは青春時代』発売記念ツアー
8月2日(土)仙台長町ロス・アスレホス(ワタナベマモル)
8月6日(水)下北沢CCO(ワタナベマモル)
8月9日(土)名古屋ハックフィン(MAMORU & the DAViES)
8月10日(日)富士アニマルハウス(ワタナベマモル)
8月11日(月)富士いさわや(ワタナベマモル)
8月14日(木)岡山ペパーランド(ワタナベマモル)
8月15日(金)広島スマトラタイガー(ワタナベマモル)
8月16日(土)高知J's Bar(ワタナベマモル)
8月17日(日)高松ラフハウス(ワタナベマモル)
8月23日(土)神戸バックビート(MAMORU & the DAViES)
8月24日(日)大阪ロックライダー(MAMORU & the DAViES)
8月31日(日)高円寺ジロキチ(MAMORU & the DAViES ワンマン)
9月9日(火)米子ベリエ(ワタナベマモル)
9月10日(水)倉吉ラキュウ(ワタナベマモル)
9月11日(木)京都拾得(ワタナベマモル)
9月13日(土)松山星空ジェット(MAMORU & the DAViES)
9月14日(日)宇部ZAN☆CRO BLUES(MAMORU & the DAViES)
9月15日(月・祝)福岡プレアデス(MAMORU & the DAViES)
9月16日(火)小倉UN(ワタナベマモル)
9月19日(金)熊本ジャンゴ(ワタナベマモル)
9月20日(土)山口湯田オルガンズメロディー(ワタナベマモル)
9月23日(火・祝)新宿クラブドクター(MAMORU & the DAViES、with Theピーズ)

MAMORU & the DAViES / MAMORU WATANABE official website
http://www1.odn.ne.jp/davies/

MAGIC TONE RECORDS official website
http://www.magictone-blues.com/



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