ギター バックナンバー

RAVE('08年08月号)

rooftop

ほろ苦い経験を経て誕生した、嘘偽りのない作品『Oh! デッドボール』リリース!!


メンバー:藤田竜史(Vo) / 徳田直之(G) / 品治 正(B) / 野口達矢(Dr)

2006年9月にリリースされた1st.アルバム『僕のアパートに彗星がおちた日』から2年。この2年間、悩み、苦しむ日々を過ごしてきたRAVE。ボーカルの藤田は長年同棲していた彼女にフラれ漫画喫茶を流浪する日々、ベースの品治は現実に対する不安を打ち消すようにマラソンに没頭するが、マラソン大会では約300人中245位という悲惨な結果を残す。しかし、苦しんでいた彼らにも音楽という希望があったのだ。今自分たちが進むべき道、自分たちなりの表現の仕方を見つけることができた。そしてリリースされるニューアルバム『Oh! デッドボール』。嘘なし、ギミックゼロ、全てをさらけ出した今作は、彼らの人間味溢れる大傑作。さらけ出したからこそ見える景色がある。この作品をリリースすることにより、もっともっと成長していくだろうRAVEにこれからも期待したい。(interview:やまだともこ)


嘘なし、ギミックゼロの作品

──『僕のアパートに彗星がおちた日』から約2年ぶりのリリースになりますが、資料を読むと、この間に藤田さんは同棲していた彼女に別れを告げられホームレスになったり、品治さんがマラソンに没頭したり、いろいろと変化のあった2年間だったのではと感じましたが…。

藤田:『僕のアパート〜』は10代の頃に作った曲が中心で、『Oh! デッドボール』は20代になってから作り始めた曲なんですが、いろいろと変わったことはありましたね。いろんなことがわかってきたりとか、世の中ってこうなっているんだなとか、人間に興味が湧いたりとか、人と付き合うにしても中身が変わってきましたし、メンバー全員が20代になって、自分が何がしたいとか何が得意とかがわかってきたり、嘘をつかずにまっすぐにやっていくというのはどういうことだろうというのを、たくさん考えなきゃいけないんだなと思い始めました。そういう感覚で2年間を過ごして、自分の周りで起こった出来事とかをバンド活動やサウンドに端折らずに落とし込んだのは今回のアルバムが初めてです。結果40曲ぐらいできた中から厳選した14曲フルボリュームの作品ができました。

──トータルで65分近くありますしね。40曲ぐらいできていた中で、14曲に絞るのは大変な作業じゃなかったですか?

藤田:到達点がわからなくなっていた時期というか、何が良くて何が悪いのかわからない。周りが言うことは正しいけれど、自分の意見もある。じゃあどうしたらいいんだろうって思った時期もありましたけど、自ずと選ばれていったというか、最後はそんなに悩むことはなかったですよ。

──先程の話になりますけど、10代の時に作ったアルバムと20代の時に作ったアルバムでは具体的にどんなところが変わりましたか?

藤田:10代の頃は夢を見ながら音楽を続けていけば、素敵な音楽が作れるのかなって思っていたんですけど、夢を見るにもスキルが必要なんですよね。ずっと夢を持ち続けるためには毎日の生活が大事なんです。宇宙飛行士になった向井千秋さんの旦那さん(向井万起男さん)は宇宙系のことに口は出さないけれど、生活をちゃんと支えていたんです。だから向井千秋さんはずっと夢を見ていられたんですよね。

──藤田さんは支えてくれていた彼女がいなくなってしまったと…。

藤田:はい(苦笑)。何をやるにしても自分一人じゃできないことばっかりなんですよね。人を大切にするってどういうことだろうって考えたんですけど、相手のことを好きというより相手を好きな自分をどれだけちゃんとわかっていられるか。音楽に関して言えば、ただ音楽が好きなんじゃなくて、音楽を好きな自分やいろんな自分がいてそれをどれだけわかっていられるかだと思うんです。今回は、いろんなものを大切にしていく中でうまく歯車が合わなくなってしまったのかもしれませんね。『僕のアパートに彗星がおちた日』の後に15曲ぐらいできて、アルバムの形になりかけた時があったんですけど良くないってなって、人のせいにするわけではないですけれど環境を変えないといけないって思ったんです。目の前のことを全部変えれば変わるだろと。それで彼女がいる家では曲を書かずに漫喫に通い始めたんです。だからと言って、曲ができるわけではなかったんですけど…。それでだんだん家に帰らなくなって、結局別れることになり、その後一日中話し合いをした日に家に帰ってから『サラダ』ができたんです。そこからが始まり。

──『サラダ』は、そんな修羅場をくぐり抜けたとは思えない、アルバムの中で一番温かい曲でしたね。

藤田:そうなんです。身近にある大切なものってなかなか気付かないんですよね。バンドに関して言えば、今までは作詞・作曲をやってる僕が一人でがんばれば物事はまわると思っていたんです。でもそうじゃないなと。先頭に立つ人は、人を大切にすることがうまいんだと考えた時に、自分は何もできてなかったなと。今回全てを悟れたわけではないですけど、嘘なし、ギミックゼロの全部本物のことを書いてみたんです。

──ということは、バンドにしても恋愛にしても、思い描いていたものが崩れた上で作った作品というわけですね。

藤田:でも、壊れて良かったです。何も変わっていなかったら曲もできていなかったし、楽しくなかったですよ。



一歩前に進む強さ

──『Oh! デッドボール』のジャケットはボクシングのイラストで、タイトルは野球が題材という一見統一感のない感じがしますが、どんな意味を含ませているんですか?

藤田:デッドボールは当たって痛いけど一塁に進めますよね。だから前に進もうという気持ち。そのタイトルから闘う姿勢を出そうという時に、ボクシングがいいんじゃないかと思って高田馬場にあるボクシングジムに行ったんです。ボクサーってみんな孤独なんですよね。強くなりたいと思う気持ちと、いろいろ抱えているというのを払拭するように、ひたすらサンドバックを殴ったりしているのを見て、それぞれストーリーがあるんだなって思いました。

──とは言え、ジャケット以外に曲の中にはボクシングの話は出てこないですよね。

藤田:それはご愛敬ということで(笑)。

──ご愛敬ですか(笑)!? どれだけ深い意味があるのかと思ってました。

藤田:でも、バンドの現状をよく表せたと思いましたよ。よくわかんねえよっていうのもバンドの現状であり、何かわからないけれどちょっと背中を押したり一歩前に行こうというのは統一してる。恋愛の話が中心の楽曲だけど、結局はそういう話。

──2年間が良い方向に向いたってことですかね。

藤田:リリースしてからまた変わるでしょうね。

──この2年の間でマラソンやった品治さんは…。

品治:今までの自分を払拭したくなって急に走りたくなったんです。何かを変えたかったんです。マラソン大会ではさんざんな結果に終わったんですが(苦笑)。

──300人中245位ですもんね。

品治:ひどいんですよね。でも、健康にもなれたし、バンド活動を含めて何事にもフレッシュな気持ちで挑めるようになりましたよ。

野口:僕らから見ても、変わったような気がします。楽曲にも意見を言ってくるようになりましたし。

──今回のアルバム制作に関しても品治さんはけっこう意見を言っているんですか?

品治:いや、藤田がけっこう作ってきたものだったので、細かいところを言ったぐらいですよ。

藤田:バンドって楽観的というか快楽で始める人が多いですけど、そのまま生業になって続けられるかと言ったらほとんどないと思うんです。バンドは自分を表現する手段のひとつ。品治くんは何でバンドやってるんだろうって思ったから走ったんです。すぐには答えは見つからないけれど、これから確かめていけばいいと思いますよ。人それぞれ何かに気付く時期があって、RAVEとしての表現方法は、さらけ出すことなのかなと思ったんですよ。それっていろんな人に会えたからだし、4人の力だけではできなかったこともあるので、アルバムとして形にできたこともあって、これからが大事ですよね。

──さらけ出すと言うところで、照れとか恥じらいはないですか?

藤田:それはありましたよ。でも音楽ってすごいもんだと思っていたけれど、実はそうではなくて、聴いた人がどれだけすごいと感じるかだと思うんです。その方法をバンドは提示してあげるもので、僕らがまずはさらけ出さないと始まらないし、さらけ出して初めて何がしたいかをわかった上で、自分たちはこういう方法で背中を押してあげることができます、どうですか?ということを言いたいと思います。その一歩かな。

──さらけ出さない限り相手も近づいてこないですからね。

藤田:僕みたいに言いたいことも言わずに、黙っていて優しいふりばかりしていると女の子にフラれるということですね。

──(笑)そうかもしれませんね。ただ、いろいろと出来事があっただけにもっと詞の中で愛憎劇が繰り広げられていると思ったんですが、詞はドロドロとしているわけではなく、わかりやすいというか、イメージが湧いて世界が見えてきますね。

藤田:僕なりにRAVEを客観的に見て、どういう音楽だったら好きになるかなって思いながら曲を書いたんです。最初にメロディーを作って、後で歌詞を乗せるんですけど本当は一緒に出てくるのが理想で、そこはこれからの課題でもあります。今回『きみの名も知らない』では、小説家の内藤みかさんとコラボをしていて、この曲はご自身のエピソードが書かれているんです。内藤さんの詞にメロディーを付けるのは初めてなんですが、すごくメロディーが乗ったんですよ。SUPER CARのいしわたりさんがメロディーは歌詞の翻訳だとおっしゃっていましたけど、人によってメロディーも歌詞も違うんだなと思いましたよ。内藤さん的メロディーだなって思いました。

──内藤さんが書いた詞も、藤田さんの詞も世界観は似ていますよね。

藤田:フワフワしたものが好きです。内藤さんのイメージとしてRAVEは地に足付かない感じだけど、空高くどこかに行っちゃってない。内藤さんの小説もそういう感じなんです。そういうところで共感出来て良かったです。

経験を積んだからこそ得ることができたもの

──それにしても『僕のアパート〜』から比べるとバンドが変わってきた感じがしますね。

藤田:ですよね(笑)。

──ストリングスを使うのも今回が初めてですよね?

藤田:ファーストはシンプルに作ったので、ストリングスは今回が初めてです。

──徳田さんはこのアルバムの制作にあたり、ギタープレイで苦労した点とかありました?

徳田:あんまり苦労してないですね。

藤田:彼はけっこうソロギタリスト的なプレイが多くて、プロデューサーの方は音響系の方でタイプが違うので、アドバイスをもらったりしましたよ。足したり引いたりの作業が多かったと思います。

──最後の『また明日』は打ち込みなんですか?

藤田:そうです。今回プロデューサーのツネヨシ(リュウジ)さんも一緒に作業したので、4人だけではできないサウンドというところで、アイディアをもらって吸収して勉強させていただきました。でも、ライブでは僕ら4人なので、再現能力というところでもっともっと向上して、ライブで突き詰めて行きたいですね。

──ところで、1曲目の『walking on the rainbow』はすごく前向きな曲で、そこから曲が進むごとにネガティブになったり、気持ちが沈んでいくような感じで、最後の『また明日』では気持ちが上向きになって晴れ晴れとした気持ちでまた一歩進んでいこうというようなアルバムの構成になっているように思いましたが、その辺は考えられました?

藤田:このアルバムは、1曲目では高揚感があって、どんどん内部に入っていって、『また明日』でフワッと上がる感じにしたくて、その感覚を聴いてくれた人とも共感できたらいいな。俺らのネチネチに耐えられたらここが待ってる(笑)。

──全体的にはやられても立ち上がる感じはしますよね。

藤田:本当は全曲背中を押すような曲にしたかったんですけど、がんばれって14回言われても伝わらないですからね。『フラッシュバック』と『ターミナル』は男子の矛盾。男子はわかると言ってくれますけど、女性は本当に難しいという…。

──なるほど。これまでの話を聞いて、バンドがいい方向に固まってきている気がします。品治さんもこの勢いで、彼女いない歴23年から脱出できるかもしれませんね。

品治:チョリース(笑)!!

──では、最後にRooftop読者のみなさんに一言お願いします。

藤田:最初の高揚感と、途中の沈んでいく感じから最後のフワッと上がるところまで、いろいろなことを体験してきた分、誰かを勇気づけることができるようになりましたし、そっと背中を押してあげたいという方法として僕たちはこういうことをやりました。ぜひ聴いてください!



Oh! デッドボール

UKLB-048 / 2,205yen(tax in)
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Live info.

8.02(Sat) 新星堂カルチェ5柏店インストアライブ
RAVEインストアライブ「柏の街に帰ってきたぞー!! RAVEの冒険」

8.30(Sat)Zher the ZOO YOYOGI
RAVEワンマンライブ『Over the rainbow〜最期の夜〜』

RAVE official website
http://www.ukproject.com/rave/

posted by Rooftop at 15:12 | バックナンバー