絶妙で微妙で、爽快で軽快。
曖昧なニュアンスにキュンとする。『遅い昼食』ご一緒にいかが?
妖艶でドロっとした唄ごころを軽快に、複雑な女ごころをロケンローに。京都ライブハウスシーンでは知らない者はいない本格派・女・ロックバンド、the dokuros(ザ・ドクロズ)。『京都ライブハウスを中心に活動し、1998年〜1999年、1999年〜2000年には内田裕也氏主催「NEW YEAR ROCK FESTIVAL」に出演。また、2000年には京都大学西部講堂にて、BOGUMBOSのどんと追悼ライブ「どんとのりだせ屋根の上」を自ら企画・運営。のちに西部講堂で行われる野外フェスの先駆けとなる』という経歴を持つ。そんなthe dokurosが4th アルバム『遅い昼食』をリリース。これまでの「キャピキャピしない本格派・女・ロックバンド」の楽曲とは一変し、はんなり京都風味をふんだんに混ぜ込み、素朴さと温かみのある作品。また、女性らしくかわいさと強さも持ち合わせており、男子が聴いたらキュンとして、女子が聴いたらハッとする。女子特有の微妙なニュアンスが絶妙に表現されているところも魅力のひとつだろう。
今回は、京都と東京をインターネットで結んでのインタビュー。途中、何度か女子トークに脱線しながらも、楽しいインタビューになりました。(interview:やまだともこ)
格好つけることを完全にやめた結果
──バンド結成は1995年で、13年目に突入になるんですね。もともとはどうやって結成されたんですか?
一同:嵯峨芸術大学にて、ザ・ドクロズの前身、「山本アサコとドクロズ」というバンドを結成。今までにない良い感じに味を占め、決してキャピキャピしない本格派・女・ロックバンドを作ろう、と意気投合。「ロックは女のためにある」をスローガンに、本格的に活動開始と同時に「ザ・ドクロズ」とバンド名を変更し、現在に至ります。
──「山本アサコとドクロズ」ということは、もともとはアサコさんが主体のバンドだったということなんですか?
アサコ:いえ。もともとメンバーは、アサコ(Vo)、草(G)、おやびん(Ba)、ゆうこ(Dr)でして、草さんとおやびん中心で結成されたバンドです。そのうち、草は作曲に専念し、それまでアサコと他のバンドを組んで個性を放っていたクーが新たにギターで加入しました。2002年2月にユウコが脱退し、新ドラムにシカイちゃんが加入しました。
──初歩的な質問で申し訳ないのですが、草さんと、今回の『遅い昼食』で作曲を担当している「ソー」さんが同一人物なのかとても気になっていたのですが…。
おやびん:草とソーは同一人物なんですよ。表には出ていないですが、作曲を担当しているので、ある意味メンバーなんです。
──バンド結成当時からメンバーチェンジがあったり、大きな波があったかと思いますが、それでもバンドを続けていきたいと思ったのはどんな理由からですか?
おやびん:まだやめるわけにはいかないという思いが、それぞれにあったんだと思います。
──音楽をやっていくにあたり、長くバンドを続けてきたからこそ、わかったこととか削ぎ落としてきたもの、取り入れてきたものってありますか?
アサコ:かなりありますよ。格好つけることを完全にやめたってことと、自分で「自分はこうだ」っていうのを決めないようにしたことです。
──「キャピキャピしない本格派・女・ロックバンド」というところで考えると、キャピキャピしたくないって思いが強いだけに、今まではたくさんの鎧を付けていたのかなって思うんですが、今回のアルバムで感じたのはけっこう自然体でやられているような感じがします。
アサコ:ほんとそうです。自然体すぎて怒られる場合もよくありますけど(笑)。
微妙なニュアンスの表現
──今回リリースされる4枚目のアルバム『遅い昼食』は、以前リリースされている楽曲はもう少し尖った感じのサウンドだったように思いますが、だいぶ印象が変わりましたね。
アサコ:はい、それは意図的に変えてあります。うちらは、まずリリースごとにコンセプトを決めて作っているんですが、今回のコンセプトは5枚目にミニマムなアルバムを予定しており、それにうまく橋渡ししていけるような雰囲気をだしたかったので「大人しくなった」と感じられるのかなと思います。
──「大人しくなった」というよりは、サウンドにしても、歌詞にしてもそうなんですが、「女子」だからこそ出せる雰囲気だと思いました。
アサコ:そうなんです、そうなんです。わかってもらえてる喜びがあります。
──例えば3曲目の『ちょっと死ぬ』であれば、こういう微妙なニュアンスの表現方法って女子特有というか、女子同士で会話をしているとよくこういう表現をしていると思ったんですよ。なんかわかるみたいな。
一同: そうなんですよー(笑)!! そのニュアンスはかなり重要視しています。
──この曲が出来上がった経緯って覚えてますか?
アサコ:めちゃめちゃハッキリ覚えてますよ。説明すると、うちのギターのクーちゃんが酔っぱらったときに人格が裏返るんです。その裏返られたときに、誰かがちょっと死ぬっていうことです(笑)。ちなみに私もちょっと殺されてますし(笑)。そういう曲です。
──そうそう。その「ちょっと殺されている」っていう表現なんです。「どれぐらい?」と言われてもよくわからないんですけど、「ちょっと」な感じなんですよね。ところで、クーさんは、酔っぱらうとだいぶ人格が変わって、周りが被害を受けてちょっと死ぬそうですが、それを曲にしてしまうって、けっこう大胆な気もします(笑)。
おやびん:これはですね、もう曲にせざるを得ないくらい数々の人がちょっと殺されすぎたんで「反省してくれ」的な意味合いも込めて作りました。
──クーさんは、この曲ができたときに、納得いかな〜い!! ということはなかったですか? クー:ありがとうと思った(笑)
──…反省してなさそうな。
おやびん:いや、反省しまくってますし、おかげで最近は、裏返ったりしませんよ。
──そういう経緯を教えて頂くと、もう1回聴いてみたときに情景が浮かんできて面白いです。それが、またシンセサイザーのサウンドに乗ると、おもしろおかしくもあり、ちょっとマヌケな感じがして良い感じになってますよね。
一同:そういっていただけると嬉しいです!!
──このアレンジはみなさんで考えたそうですが、もともとこういう曲にしたいというのはあったんですか?
シカイ:もともとはタイトでちょっとテクノな感じにしたかったんだけども、やっているうちにこうなっちゃったっていう感じです。
──次の4曲目の『ペラペラ並木』はハワイアンのノリがある曲ですよね。
おやびん:それ、ドクロズとしては、カントリーのつもりで作っているんです。
──ユラユラとしている感じがハワイアンかなと思っていました。
おやびん:ハワイアンと言われるとは思わなかったですよ。でも、嬉しい誤解です(笑)。
『遅い昼食』= 今現在の自分
──『気を引くためだけの唄』ですが、このタイトルだけが目に入った時に、恋愛の駆け引きみたいな曲なんだろうなって勝手に想像していたんですが、詞を読んでみたら恋ではないなと。でも、「やがてやって来るだろう」という言葉が何度もループされる詞を読んでいけば読んでいくほど、何の気を引くためだけの唄なのかがよくわからなくなってくるんです。これはどういうことなんですか?
アサコ:これは、作り手側(うちら)には明確な答えがあるのですが、聴き手にゆだねたい部分です。ここだけの話、私たちの音楽を聴く人の気を引きたかっただけなんです(笑)。
──そういうことだったんですね。胸のつかえが取れました(笑)。これまでのthe dokurosの曲は最初にも言っていたようにもっとギターが鳴っていて、ボーカルも尖っていたように思いますが、今回『気を引くためだけの唄』が1曲目に来ると、ずっとthe dokurosを聴いていた方はかなり思ってもいない展開だと思いますが、アルバムの1曲目に置くために、この曲を作ったのですか? それとも、曲が最初にあってアルバムの入口としてはこの曲がいいだろうと思って1曲目に置いたのですか?
おやびん:「入り口」として、『気を引くためだけの唄』を置きましたが、この曲を作った段階ですでにこのタイトルで作っていて、マスタリングの後でこれを1曲目にするのが一番良いだろうということで1曲目になったんです。
──偶然の産物にしては、ピタリとハマる曲ですね。6曲目の『シーセーヤー!』は、このアルバム唯一の英詞の曲となっていまして、それにしては歌詞カードが全く読めないんですけど(笑)。
アサコ:英語でも何語でもないんです、実は。造語です(笑)。
──造語なんですか? だから、あの歌詞カード(手書きのフニャフニャ文字)になっているんですか?
シカイ:はい、そうなんです。
──それは新しいですね。
アサコ:曲は“なんちゃってビートルズ”みたいなことをやってみたいなぁと思いまして、作ったらこうなりました。
──そういわれると、ギターのフレーズが“ビートルズっぽい”と言われたら“ぽい”かもしれないです。
アサコ:その“ぽい”の感じなんです。
──アルバムタイトルが『遅い昼食』ですが、タイトルから想像するなんとなくけだるい感じは楽曲を聴き進めるごとに「なるほど」と思わせるものになっていますが、このタイトルにはどんな意味を持たせていますか?
アサコ:できるだけ「今現在の自分」をリアルに表現したかったんです。今現在の私たち世代の女性というと、いろいろと混乱したり、迷ったりする年齢だと思うんですよ。忙しい日々を送っていると、定時に昼食がとれることはまず無いし、やっと遅い昼食を食べながら、悶々と思いを巡らすあの感覚がこのタイトルで伝わればいいなと思って付けました。
──私も自分が遅い昼食を食べながら、ああでもないこうでもないって悶々と考えている日々を思い出しました。アルバム全体的にも女性が共感できる感じですね。
アサコ:そこを狙っています。
──今回はゲストミュージシャンを多く招かれていますが、レコーディングは順調でしたか?
おやびん:才能豊かな人たちに参加していただき、自分たちだけではフラつく部分をガッチリ固めてもらえたので順調だったと思います。
──レコーディング期間ってどれぐらいかけたんですか? クー:レコーディング自体は4ヶ月くらいかかりました。
──これまでに何枚も作品をリリースしているので、レコーディングのノウハウはわかっていると思いますが、今回はどんなところに一番気をつかいましたか?
おやびん:今回は今までの自主制作と違ってハナマウイレーベルから出すということで、ある程度の期限がある中でのレコーディングだったのでとにかく1回1回の録音を集中してやりました。
──サウンド的には、どうですか? これまでとは違うサウンドだと思うので、作り方として気にかけたところか気をつかっところってありますか?
アサコ:色んな人にミックスしてもらうこともアルバムを作る段階で決めていたので、自分たちの音を「素材」として意識するように気をつけました。
──調理しやすいようにということですか?
おやびん:はい。曲によっては、それがじゃまになる場合もあるので『しまのシャツ』などに関してはやってないですが。ミックスはソーがやっていて、唯一the dokurosのみで作った曲です。
──5枚目の橋渡し的な楽曲だということでしたが、次の構想はもうあったりするんですか?
アサコ:そうですね、いまは内緒でいいですか? 構想自体はありますよ。どんどんいい作品が作れるように頑張っていきます!!
──あと、これまでにいろいろな活躍をされてますが、今後the dokurosはどんな方向に進んでいきたいと考えていますか?
アサコ:えっと背伸びせず、妥協せず、芯は据えたままで、変化していきたいです。
一同:「ちょっと死ぬツアー」という全国ツアーがあるので、少しでもうちらの何かひっかかった人は是非会いに来てもらいたいです!!
遅い昼食
XQFE-1001 / 2,000yen(tax in)
IN STORES NOW
Live info.
たこ社長's ロックオペラ 第三作 「ボクと久保君」〜青春道中膝栗毛〜
8.01(Fri)名古屋 得三
8.03(Sun)京都 磔磔
THE DOKUROS レコ発「ちょっと死ぬツアー」
8.22(Fri)広島:Hiroshima Backbeat
w)まつきあゆむ / ALL STARS / negoto
8.23(Sat)福岡:四次元
w)folkenough / micemohee / CYCLOPS
8.24(Sun)山口:印度洋
w)佐々木匡人 / 乾家 / 友情出演 / ざ夜露恥馘バンド
9.05(Fri)東京:渋谷 屋根裏
w)BO GUMBO 3(ボガンボ・スリー)/ うつみようこGROUP(うつみようこ、G:鈴木純也、Ba:調先人、Dr:啓介)
9.08(Mon)大阪:十三 fandango
w)WATUSIZOMBIE / 他
10.04(Sat)京都 urbanguild
w)NIPLETS/ ははの気まぐれ/ 他
guest / 吉田省念 / 上條秀樹 / Justus Wallen,
mc / 涌井 慎
the dokuros official website
http://dokuros.hippy.jp/