空前絶後! 制御不能! 激情炸裂!
混沌とした時代の狭間に突如現れた異形の才、妖気と狂気の暴走を加速!
まさにキツネにつままれた気分である。和の情緒を想起させるメロディに、江戸川乱歩や太宰 治といった作家の影響下にある日本文学調のヴィヴィッドな歌詞。耳をつんざくスリリングな暴発サウンドから発せられるのは、ビート・ロック、ニュー・レイヴ、ポスト・パンク、ディスコ・パンク、ガレージ、オルタナティヴ、昭和の古き良き歌謡曲、黎明期のJ-ROCKと何でもござれ。ライヴでは七色の歌声を持つヴォーカリストが時にオーディエンスを全員座らせ、時にオーディエンスの顔面を踏み付けながら唄い、時にステージの下へと激しく落下し、客席への乱入は日常茶飯事。演奏陣は何かに取り憑かれたかのように一心不乱の轟音連射。FOX LOCO PHANTOMという奇妙な名前の5人組のことを対象化しようとすればするほど、その本質は女ぎつねon the Runとばかりに遠のいていく。ステージを降りた彼らはトラの威を借るキツネのような振る舞いは決してしないものの、そこはあくまでキツネに小豆飯、油断してはならない。キツネは人を化かすと言うではないか。彼らが直接悪さをはたらくことはないが、極めて中毒性の高い彼らの音楽があなたの心に住み着いて離れないことは充分考えられる。キツネはねぐらを最初にかぎ当てるものなのだ。(interview:椎名宗之)
生き急いで駆け抜けているうちが華
──結成からまだ1年というのに、ファースト・アルバム『百花繚乱』のリリース&好セールス、浅草クラウッドでの初のワンマン敢行&ソールド・アウト、ホームグラウンドである下北沢CLUB 251での3ヶ月連続共同企画ライヴ等々、凄まじい勢いでバンドが加速していますね。
ヒデオ:俗に言う“生き急いでいる”と言うか(笑)。でも、そうやって生き急いで駆け抜けていられるうちが華かなと思いまして。要するにこれが僕らなりのスピード感なのかなと思ってるんですよ。まぁ、多少の無理はしてますけど(笑)、今のところこの勢いのまま駆け足を続けている感じですね。
──当初から和のテイストとビート感のあるロックを融合させたバンドをやろうという構想があったんですか。
ヒデオ:いや、最初はまずピン・ヴォーカルのバンドをやりたいと思ったんですよ。マイク1本で唄い上げる“ザ・ヴォーカリスト”っていうものにロックを感じる部分が昔からあったので、そこが始まりだったんですね。それからヨダに出会ったんです。ヨダは確か、最初のライヴの5日前に加入することになったのかな。
──それもまた大胆すぎる急造っぷりですね(笑)。
ヒデオ:そうなんですよ。とにかくライヴが先に決まっていて、歌詞もろくに覚えられない状況でヨダも何とか歌詞を覚えてきたんですけど、実際に彼がステージの上でマイク1本で唄う姿が充分絵になっていたんです。それを見て、“お、これは面白いな”と手応えを感じたんですよね。あと決定的だったのは、ヨダが天然でステージから落っこちたことなんです(笑)。それを見て“これは行ける!”と思った。
──まるでglobeのオーディションでステージから派手に落ちて合格したKEIKOのようですね(笑)。
ヒデオ:そう、だから僕もTK的な観点でヨダを合格させたんです(笑)。最初はそんな始まりだったので、和のテイストっていうのは割と後から付いてきた部分なんですよね。何て言うのかな、海外のバンドが日本のバンドを通じて日本の文化に触れて、それによってさらにその日本のバンドのことを好きになるって言うか、そういう視点がまずあったんですね。
──ゴッホの描く浮世絵みたいな感覚ですか。
ヒデオ:うん、それに近いですね。僕らは日本に生まれ育って、音楽で言えばまず邦楽に触れてから洋楽に触れるのが順当じゃないですか? その邦楽にはロックだけではなくJ-POPや歌謡曲まで含まれるし、映画も書物もまずは国産のものに触れますよね。いきなり海外の文化へと飛び越えるわけじゃないし、そういった自分たちの根源的な資質を大事にしようと思ったんですよ。そういう考え方が音に反映されているような気がしますね。それと、メンバー各人の出す音にも意識していないところでそんな要素があるのかもしれないし。新曲を作るたびにそういった和のテイストのあるものが増えてきているのは確かですね。その理由は自分でもよく判らないんですけど。
──ヒデオさんが理想とするヴォーカリストというのは、たとえば氷室京介さんや吉川晃司さんといったミュージシャンですか。
ヒデオ:そうですね。ヨダのお兄さんはLA在住のヴォーカリスト、ヨムロキョウスケだったりもするので(笑)。昨日の深夜に251でやったDJパーティーにわざわざLAから駆け付けてくれたんですよ(笑)。
ヨダ:そうなんです。メイクをバッチリキメたアニキで。俺と同一人物という噂が絶えないんですけどね。
──ああ、そういうことですか(笑)。
ヒデオ:好きなヴォーカリストを挙げたらキリがないんですよね。日本人で言えばジュリー(沢田研二)や井上陽水、町田 康。海外で言えばデヴィッド・ボウイやイギー・ポップ、プライマル・スクリームのボビー・ギレスピー。彼らの共通点は、誰の歌を唄っても最終的にはその人の歌になるところなんです。そういうヴォーカリストに昔から魅力を感じていたんですよ。今のバンドはヴォーカル&ギターが多いし、僕もそういうバンドは大好きなんですが、いざ自分がバンドをやるとなるとピンのヴォーカルのバンドがいいんですよね。
根底にある今の時代とハズれた感覚
──今回発表されるセカンド・アルバム『CHAOTIC MONSTER』ですが、まだバンドの可能性を探りながら制作に当たったところはありますか。
ヒデオ:それはありますね。特にコンセプトを決めて作ったわけじゃないですし。ファーストが割と詰め込んだ感じだったので、セカンドは約1年間培ったライヴでの経験を反映させるようにしましたね。踊れる感じの曲を増やしたり、これで何度目かのYMOやイモ欽トリオのマイ・ブームが到来したので、そのエッセンスを入れてみたり。
──いくら細野晴臣が関与しているとは言え、イモ欽トリオですか!?(笑)
ヒデオ:よく「UKのスタイリッシュな音楽が好きなんですか?」って訊かれたりするんですけど、実は全然違ってベタベタな歌謡曲からインスパイアを受けていたりすることが多いんですよ。デヴィッド・ボウイかと思いきやジュリーだったりとか。それがヘンに絡まって、新しい音楽として聴いてくれる人もいれば、逆に懐かしいと感じてくれる人もいるんですよ。僕らとしては新しいものを生み出していこうという意識はなくて、いろいろと吸収したエッセンスを自分たちのフィルターを通じて発信しているだけなんですよね。根本としてあるのは、そういうちょっと今の時代とはハズれた感覚なんですよ。でもそれがハマる層もちゃんとあって、面白く聴いてもらえるというのが自分にとっても再発見でしたね。
──でも、安直な借り物ではなく、自らのルーツをちゃんと咀嚼した上で音として具現化していますよね。まぁ、「サッドモンキーズ」のイントロはYMOの「ライディーン」そのままに聴こえますけど(笑)。
ヒデオ:チッチキ、チッチキ言ってますからね(笑)。
──だからと言ってテクノ調ではないし、サビの大陸的なメロディから中国→人民服→YMOという連想ができたりするんですよね。
ヒデオ:確かに、そういうヘンなオリエンタルっぽさを醸し出してはいますね。
──そのオリエンタルっぽさは、さっきヒデオさんが言っていた“海外から見た日本”という感覚と相通ずるものを感じますが。
ヒデオ:海外の人が日本=ニンジャ、サムライっていう時代錯誤な固定観念を持ったままでもいいと思うんですよ。逆に僕らが海外の人たちに抱く間違った固定観念や幻想もあるし、それが格好良かったりもするわけですから。ということは、日本に対する間違った固定観念も海外の人は格好いいと思っているのかもしれない。つまり、異なる2つの文化が交わる部分は間違った認識なんですね。その間違った認識は間違ったままで、純粋に格好いいものだと信じて突っ走ったほうが面白いと思うんですよ。
──その間違った暴走は「東京ロックス」のような和の世界とデジタル・ビートが融合した曲に顕著ですが、やっぱり素直に格好いいと思える瞬間があるんですよね。僕もかなり間違ったところまで来てしまったんでしょうか?(笑) ただ、懐かしくも新しい部分が絶対にあるはずなんですよ。
ヒデオ:バンドとしてやり切れてない部分もあるんですよね。凝ろうと思えば、打ち込みを多用したりしていくらでも凝れたわけですから。でも、今回のアルバムは全部生音でやってるんですよ。ヘンな効果音も、ノイズを出してエフェクターに繋げてビュンビュン言わせているだけなんです。キーボードは一切使ってないですからね。裸一貫、全部アナログなんです。そういう人力なところが懐かしくも新しいニュアンスに繋がっているような気もしますね。
──「D! D! D!」もアッパーな人力ディスコ・チューンですもんね。
ヒデオ:後から加入したドラムのアンドリューは、今回が初めてのレコーディングだったんですよ。だから、あいつ自身の硬さがプレイの面に出てるところもあるんじゃないですかね(笑)。
三角形には丸になり切れない悲しさがある
──でも、性急なビートロック・ナンバーである「TRIANGLE MACHINE」でのアンドリューさんのドラム捌きは凄く聴き応えがありますよね。アルバムの1曲目を飾るこの曲は、バンドを好きになるかどうかを聴き手に選ばせる踏み絵的なところがあるようにも思えますね。僕は一発で胸倉を掴まれて好きになりましたけど。
ヒデオ:果たしてこの曲を1曲目にしていいのかどうか、結構迷ったんですよ。だって、いきなり「ライッ!」っていう叫び声から始まって、その後にポコポコポコポコ言ってるし(笑)。竿モノもリズムも微妙にズラしたりネジ込んでいったりしてヘンなグルーヴを生み出すのが僕は好きなんですよ。最終的な全体の聴こえ方で面白くさせる試みを全員が感覚的にやっていて、それが奇跡的に上手くハマッたんですよ、この「TRIANGLE MACHINE」は。
──現場での偶発性に委ねようとするところが多分に多いですか。
ヒデオ:レコーディングは特に多いかもしれませんね。緻密に構想を練るとドン詰まりになる気がするんですよ。機材を買いまくったり、レコーディングの日程が3倍、4倍になりかねないと思うんです。だから今はまだ人力で限界まで行きたいと考えてますね。
──この「TRIANGLE MACHINE」とは、何かの暗喩なんでしょうか。
ヒデオ:三角形というものに不思議な気持ちを覚えることが多いんです。三角形はいろんなマークにも使われているし、三角関係という在り方もあるし、鋭利なフォルムをしていたりする。仮に立体的にした時も、丸を回して見える景色よりも三角形を回して見た景色のほうがいろんな部分が見え隠れしますよね。そんな三角形に対して、僕はどうにも抗い難い魅力を感じているんですよ。丸には地球とか母体といったイメージがありますけど、三角形には丸になり切れない悲しさを感じてしまうんですね。そういう未完成なものに深い悲しみを感じるところがあるんです。
──不完全であるものの美しさ、未完成であるがゆえの魅力があるということですか。
ヒデオ:そうですね。アルバム・タイトルに使っている“MONSTER”もそれに近いニュアンスだし、僕は“MONSTER”=怪物にも深い悲しみを感じるんです。怪物という恐怖の対象の裏側に見え隠れする悲しさというのを、自分なりにどうにかして表現できないかと思うんですよね。傷付ける部分とその向こう側にある見えない深い悲しみというものを。そこから派生して、もし地球が三角形だったらどうなるんだろうとか、人間の指先が三角形だったら誰かを傷付けてしまうかもしれないとか、そういういろんなことを止め処なく考えてしまうんですよ。そこで僕なりに出したひとまずの答えは、どれだけ泣いて泣いて泣き喚いたとしても最後は笑うことで救われたい、ということなんです。
──それが“いつかは丸になるでしょう”というフレーズに繋がるわけですね。
ヒデオ:そうなんです。一時期そんなことをずっと考え続けていたことがあったんですよ。自分でもよく判らないんですけど。
──でも、もっとよく判らないのは“鼠の出口 六角形”という歌詞なんですけど(笑)。
ヒデオ:確かに(笑)。まぁ、六角形は三角形に比べたらまだ出口が多いし、三角形よりも丸には近付いているじゃないですか。あと、“6”という数字にも僕は何故か悲しみを感じるんですよ。逆さにすると“9”になるし、とても不思議な数字だなと思っていて。
──なるほど。ヒデオさんの言う“恐怖の対象の裏側に見え隠れする悲しさ”が江戸川乱歩の世界を愛好することに繋がるのが理解できましたよ。
ヒデオ:そういうことなんですよ。江戸川乱歩も太宰 治も昔から凄く好きなんです。特に太宰は儚く散っていった部分、世間に許されずに散っていった部分がフィーチュアされ気味なんですけど、出口のないギリギリのところで孤軍奮闘していたのではなく、もっと優しい部分で執筆に勤しんでいたんじゃないかと思うんですよね。確かにアップダウンは激しかったかもしれないけど、それがそのまま文章に出るのは凄く人間らしいと言えるんじゃないですかね。逆に言えばとても正直な人間で、もの凄く優しかったんじゃないかと思いますよ。だからこそ凄く好きだし、影響も受けているんです。
──デカダンな作風のイメージが強いから偏見もあるでしょうけど、太宰は『お伽草紙』や『新釈諸国噺』といったユーモアに溢れた作品も残しているし、彼の絶筆である『グッド・バイ』なんてドタバタ・コメディみたいなストーリーですからね。
ヒデオ:そうですよね。途中で終わっちゃうけど凄く笑える作品だと思いますよ。
虹色の声を持つ“レインヴォーカリスト”
──「蝙蝠傘」と「二十面相」はヒデオさんの乱歩好きが全面に出た曲ですよね。
ヒデオ:ええ、まさしく。「蝙蝠傘」はおどろおどろしい曲なので、寺山修司風にPVを撮りたいんですよね。ただ、そういうことをやるとバンドがどんどん日陰の方向に向かっていきそうなので(笑)。
──ご丁寧にも、古めかしい屋敷であろう重い扉が閉まるSEまでアタマに入れてありますね。
ヒデオ:ああいうダサさが好きなんですよ。今時あんなことやらないだろうっていう(笑)。
ヨダ:みんなで一生懸命ドアの閉まる音を録ったんですよ。「ちょっと今のタイミングは早かったねぇ」なんて言いながら(笑)。
──乱歩・ミーツ・デジタルパンクな装いの「二十面相」は江戸川乱歩へのオマージュ・ソングですよね。
ヒデオ:そうですね。歌録りも早かったんですよ。ヨダが気持ち良さそうに唄ってるのを見て、“ああ、乗り移ってるな”と思ったんですよ(笑)。だからこれは一切直さずにヒリヒリした感じを残そうと思って。
──図らずもなんでしょうけど、「二十面相」とは言い得て妙ですよね。種種雑多な音楽的ジャンルを内包するFOX LOCO PHANTOMを的確に言い表したような言葉じゃないですか。
ヨダ:ああ、言われてみればそうですね。
ヒデオ:ウチのメンバーはみんな相当な飽き性なんですよね。それがバンドの雑食性として表れているんでしょうね。感覚だけで生きているようなところもありますしね。ヨダは特に(笑)。
──このアルバムを聴くと、ヨダさんが実はとても器用なヴォーカリストだというのが窺えますよね。曲によってまるで万華鏡のように声の表情を変えているし。
ヨダ:そうですか? きっとすぐ曲に反応しちゃうからだと思いますよ。曲の世界観を理解して身体に入れるのがまず最初の作業なので。その上で声の表情を変えて、七色の歌声を聴かせたいと思ってるんです。つまり俺は“レインヴォーカリスト”になりたいんですよ。
──はい?(笑)
ヨダ:もう一度言いましょうか。“レインヴォーカリスト”。レインボーとヴォーカリストを掛けてるんですよ。
──いや、説明して頂かなくてもよく判ります(笑)。
ヒデオ:そういうのがダサイんですよね(笑)。まぁ、凄くこのバンドらしいんですけど。
──何かが自分に憑依して唄っているような感覚はありますか。バンド名にもあるキツネの霊が人に憑依して悪さをするなんてよく言うじゃないですか。
ヨダ:多少なりともあるんでしょうね。ライヴの時は何かが憑依してるんですよ、きっと。
──まぁ、何かが憑依していなければ、十手を片手に飛び回ったり、オーディエンス全員を座らせたり、終始客席に紛れたりする理解不能なパフォーマンスも起こらないでしょうしね(笑)。
ヒデオ:ホントですよね(笑)。
ヨダ:レコーディングでもライヴでも、憑依させてから虹色の声を出すわけですよ。“レインヴォーカリスト”ですから。…あの、これ、わざと言ってるんですよ? 頭は決して悪くないんですよ?(笑)
──そう思われてしまう人は、現実社会で「OUTSIDER」になるしかないですよね(笑)。
ヨダ:多分、このバンドってバカだと思われているんでしょうね。
ヒデオ:そりゃ相当思われてるだろうね。
──そのまま肯定しないで下さいよ(笑)。でも、そんなパブリック・イメージを持たれたバンドが「HUMAN LOST」というタイトルの曲をレパートリーにしているギャップがまたいいじゃないですか。勘のいい人は太宰 治の作品からの引用だということが判りますから。
ヒデオ:「HUMAN LOST」はヨダが気持ち良くなるための歌なので。凄まじく自虐的になる歌なんですよ。
ヨダ:この歌はホントに凄いんですよ。唄ってるとどんどんインナーに入ってきちゃって、最後の“HUMAN LOST”っていうくだりで一気に吐き出す感じなんです。
キツネの持つ妖気、狂気、幻想
──「HUMAN LOST」は和の情緒を感じさせるギターのリフレインがとても印象に残りますね。
ヒデオ:アレンジもそんなにしてないし、一発勝負みたいなところが出来た時からあったんですよ。歌詞も“赤い花を見つけた時は”っていう最初の一行がずっと前からあったんです。構って欲しいんだけど構って欲しくないみたいな、そういう感覚ってあるじゃないですか? そういうどっちつかずの歌で、結局最後には“僕の事を忘れて下さい”って唄ってるんです。
──勝手だなぁ(笑)。
ヒデオ:ホントですよね。でも、さっきの「TRIANGLE MACHINE」の話にも繋がってくるんですけど、人間になりたいんだけどなりきれない不完全さ、そこから生まれる深い悲しみを描いているんですよ。
──『妖怪人間ベム』みたいな感じですか。「早く人間になりたい!」っていう(笑)。
ヒデオ:そうです、まさにそうなんです。結局のところ、人間自体が未完成じゃないですか? ヒトの進化も現時点ではこの状態で止まってるし。今までずっと進化を遂げてきたのに、ここに来て何故進化が止まってしまったんだろうと思うんですけど。そういう未完成なまま生きているんだから、未完成な気持ちになるのもやむを得ないんじゃないかと僕は思うんですよ。
──『人間失格』になるのもやむを得ないんじゃないか、と。
ヒデオ:そういうことです。僕らは『人間失格』を地で行くバンドなんで(笑)。
──取り方次第では深い悲しみを湛えた歌詞なんですけど、そんな歌詞を闇雲に激しいパンキッシュなアレンジで暴走しているところに僕はおかしみを感じるんですよ。だから極めて正しい太宰 治の音楽的な捉え方のような気もするんですよね。
ヒデオ:そう、おかしいですよね? なんでこんなに悲しい歌を散々暴れながら演奏しているんだろうって自分たちでも思いますから(笑)。凄く刹那的なものを感じる曲だし、この曲でライヴの最後を締めることが多いんです。この曲で持ち得る力を全部出し切っちゃうので、この次に別の曲ができないんですよ。この後にどんなツラ下げて違う曲をやればいいんだ!? っていう。だから、自分でもちょっと面倒くさい曲を作っちゃったなと思うんですよね(笑)。
──ドアーズで言えば「The End」みたいな位置の曲なわけですね。
ヒデオ:そうなんですよ。だからこの曲は、今後消えていくかやり続けていくかのどちらかしかないんです(笑)。まぁ、楽曲的にはまだまだいろんな可能性のあるバンドなので、今のこの純度を保ったまま、二十面相じゃないですけどいろんな顔を見せていければいいなと思ってますね。あとは、あの異常なテンションのライヴをやり抜くために体力と精神力を鍛えたい(笑)。だからと言って無理に強くなろうとは思ってないんですけど。弱いヤツが泣きながらネコ・パンチをやったりするじゃないですか? でもそのネコ・パンチも、やめないでずっとやり続けていればかなり効くんじゃないかっていう(笑)。
──ところで、FOX LOCO PHANTOMというバンド名にはどんな意味が込められているんでしょうか。
ヒデオ:“FOX”=キツネという動物にいろんな魅力を感じるんですね。怪しさもあるし、人間を化かすという言い伝えもありますよね。“LOCO”っていうのは“狂気”っていう部分がある一方で“優しさ”や“愛”っていう部分もある。そこに“PHANTOM”っていう“幻想”が加わることによって、この3つの要素が三角形を成すわけですよ。余り深く考えずに考えたバンド名なんですけど、今のバンドの状態と凄くリンクしているところがあって、この名前で良かったと思ってますね。いろんな奇妙な符合のもとにバンドが成り立っていて、すべてがこのバンド名に集約されている気がするんです。キツネの持つ妖気的な部分、狂気的な部分、幻想的な部分が。だから自分たちを見失った時に原点に立ち返れそうな、ちゃんと家になってくれそうな名前なんです。家があればいろんな所へ行けるし、音楽的にもいろんな方向に行けると思うので、自分たちでもこれからが楽しみですね。
CHAOTIC MONSTER
01. TRIANGLE MACHINE
02. 東京ロックス
03. D! D! D!
04. サッドモンキーズ
05. 蝙蝠傘
06. OUTSIDER
07. 二十面相
08. HUMAN LOST
PICTUS DLHB-2004
2,100yen (tax in)
2008.7.16 IN STORES
Live info.
『CHAOTIC MONSTER』Release Party〜フォックスロコファントムの逆襲〜
7月18日(金)下北沢CLUB 251
with:RED ЯUM / アルカラ / BYEE the ROUND / GENERAL HEAD MOUNTAIN
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV. 2,300yen (+1DRINK) / DOOR 2,500yen (+1DRINK)
FOX LOCO PHANTOM TOUR 2008
MONSTER A GO-GO!
7月18日(金)下北沢CLUB251(上記参照)
7月19日(土)青森SUNSHINE
7月22日(火)名古屋CLUB UP SET
7月24日(木)大阪LIVE SQUARE 2nd LINE
7月25日(金)京都MOJO
7月27日(日)神戸STAR CLUB
7月30日(水)神戸ART HOUSE
8月4日(月)高崎CLUB FLEEZ
8月5日(火)下北沢SHELTER
8月7日(木)横浜F.A.D
8月11日(月)神戸STAR CLUB
8月14日(木)下北沢SHELTER
8月17日(日)本八幡ROUTE 14
8月18日(月)宇都宮HEAVEN'S ROCK VJ-2
8月20日(水)さいたま副都心HEAVEN'S ROCK VJ-3
8月22日(金)下北沢CLUB 251
8月23日(土)稲毛K'S DREAM
8月26日(火)岡山CRAZY MAMA 2nd ROOM
8月27日(水)広島NAMIKI JUNCTION
8月29日(金)福岡MUSIC FACTORY
8月30日(土)山口LIVE RISE SHUNAN
8月31日(日)福岡VIVRE HALL
9月2日(火)長崎STUDIO DO!
9月3日(水)熊本DJANGO
9月4日(木)国分FUZZ ROCK HALL
9月6日(土)宮崎SR-BOX
9月7日(日)鹿児島SR HALL
9月9日(火)黒崎MARCUS
9月14日(日)下北沢CLUB 251
9月15日(月・祝)郡山HIP SHOT JAPAN
9月16日(火)新潟CLUB RIVERST
9月18日(木)盛岡CLUB CHANGE WAVE
9月19日(金)仙台CLUB JUNK BOX
9月23日(火・祝)札幌SOUND LAB MOLE
9月24日(水)札幌SPIRITUAL LOUNGE
9月30日(火)下北沢BASEMENT BAR
10月13日(月・祝)神戸STAR CLUB
10月15日(水)大阪LIVE SQUARE 2nd LINE
10月26日(日)下北沢CLUB 251(TOUR FINAL ONE-MAN)
OTHERS
7月1日(火)新宿LOFT
7月7日(月)渋谷CYCLONE
FOX LOCO PHANTOM official website
http://www.foxlocophantom.net/