まぁ、歌はその人のパーソナリティとは関係なく評価しなければならないとは思うけれど、僕はやはりその人のパーソナリティが色濃く滲み出た歌のほうが好きだし、いくら虚構の世界とは言えリアリティを感じられるかどうかが非常に重要なポイントだったりする。もちろん耳心地の良いメロディのポップ・ソングは大好きだし、歌は言葉とメロディの両輪があってこそ成立するものなので歌詞ばかりに重きを置くわけにもいかないのだが、胸が躍るメロディの上にリアリティに肉薄した歌詞が載ればもっともっと好きになるような気がする。
インタビューをさせてもらうバンドの音資料を聴いて、気持ちを奮い立たせてもらえることがままある。サウンド至上主義を貫く表現者とその音楽ももちろん大好きだけれど、細かい音楽的なことよりも歌詞に込められた意図みたいなものを訊くほうが僕自身楽しかったりする。だから、平易な言葉で粋な言い回しをしていたり、心にグッと来る歌詞に出会うと思わずボールペンでその箇所を丸く囲ってしまうのだ。そしてその言葉を有り難く心の糧にさせてもらい、今日を凌ぎ明日へと繋ぐ。
この間も、仕事で聴いた音楽でそんな言葉に出会えた。仕事に留まらず、私生活でも多分死ぬまで聴き続けると思う。曲調はバンドの従来のイメージを覆す異常に明るいサンバなのだが(笑)、酒を呑みながら聴いていたらうっかり泣いた。ここまで平易な言葉で核心を衝いた歌詞に久々に出会えた気がする。その言葉には何の不純物もなく、強い説得力をもって僕の感受性に鋭利に突き刺さった。ちゃんと生きていることの大切さが、安直な頑張れソングとは一線も二線も画した軽くて重い言葉で淡々と綴られている。ちゃんと生きてさえいれば、またこんな純真な歌に出会えるのだ。やっぱり、生きてるだけでOK!、なんだなぁ。改めてそう痛感する。こんな駄文を読んでくれているあなたにも、心の糧となる現在進行形の歌があるだろうか。(しいな)